［　彼のメッセージを何度も読んでは
　　まるで恋人にもらったかのように大事にした。
　　無事に帰ったよ、とか
　　今日はとっても楽しかった、とか
　　また話したい、とか。　　　　　　］
　　

　　

──────


　　ううん、ないよ？
　　麻央くんいっつも、優しいから！

　　無理は…してないよ？


　　

［　抱きしめられて、頭をなでられている時間は
　　幸せそのもの。このために来ている、とすら。

　　家に行こうかと言われれば喜んで家に招くし
　　手料理を食べたいと言われるなら、作る。
　　私が人並みにできることはそれくらいしかないから。
　　

　　それを彼がどう、受け取ったかはさておき。


　　恋愛関係になったから
　　それを見せつけるように甘えて見せて
　　もっともっと、アピールしたくて。
　　彼の売り上げに少しでも、貢献したくて
　　ギリギリでも、お酒を頼むのはやめなかった。　］
　　

　　　麻央くんが幸せなら、わたしも幸せ……。

　　　5段、かあ……。

　　　
　　　ご飯は、えっと……
　　　
　　　でも、大丈夫だから！

　　

［　無理はしないという約束は呆気なく破られる。
　　だってもっと愛されたいから。
　　王子様を独占するためならなんだって。

　　

　　今日の1本も高いものをと思ったけれど
　　無理はしないで、と言われてしまうなら
　　ギリギリのライン、無理をしているけれど
　　無茶ではない、そんな注文を。　］
　　

──────


［　仕事上、別にお酒に弱くはないのかもしれないけど
　　それでも、心配になるときはある。
　　今日も、そんな日。

　　だから、家で待っているときは
　　ミネラルウォーターも用意している。
　　今日はお祝いの日だから
　　手作りのケーキもあるけど、
　　でも、食べられないって言われたら諦めるつもり。　］
　

　　　おかえりなさい！
　　
　　　……お疲れ様。
　　　お酒たくさん飲んで、平気……？


［　少しうとうとしていたけど、
　　玄関扉をたたく音に気づけば跳ね起きて。

　　笑顔で彼を迎え入れた。
　　合鍵を渡しても…と思っているけど
　　まだ渡していない。

　　

　　ぎゅうっと抱きついて、
　　彼の頬を労わるようにするりと撫でた。　］*
　　

［　家族のことは

　　話せるわけなんてなかった。>>20



　　
　　誕生日を祝われたのは遠い遠い過去のこと。
　　蠟燭が三本立てられたケーキを朧気に覚えてて






　　それでも、“あの日”までは。
　　家族ではない誰かから愛を貰える日が来るって
　　何にもない私が唯一持ち得るものを
　　愛する人に捧げる日が来るって、
　　

［　お互いに話さない。
　　私が家族のことを話せないのに
　　麻央くんは？なんて聞けなかった。



　　
　　　　　　　　　　何も、間違ってないでしょう？　］
　　

──────

［　労わられているようにしか感じていない。
　　それがただのサービスだとは思っていない。

　　

　　手料理なんて、と言われたら
　　どうしようと最初だけは怯えていた。
　　認められたことがなかったから。

　　でも、美味しいと何度も言われれば
　　献身的に、何度でも。
　　求められるままに作っていた。
　　材料費とお礼を込めたお金は
　　受け取るか迷って、受け取った分、
　　心を込めて料理で返していた。