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人狼物語 三日月国


69 【R18RP】乾いた風の向こうへ

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到着:宵闇 ヴェレス

【人】 宵闇 ヴェレス

[ いつか旅行に行こう、との約束を叶えたのは冬だった。北方の冬の祭り。

 灯籠に照らされた雪の風情と凍える白い吐息の中で、今度は海へ行こうと約束をした。ふたりとも泳いではしゃぐという歳でもなかったし、己の体調のこともあったから、盛夏は避けたいと時期を練り、そうして今の季節。

 行程については随分と歳下の彼の方がよほど旅慣れており、この国は通り過ぎるだけの筈だった。
 王制というこの国の、統治者が崩御したのは最近のことだという。

 未だ治安や情勢が落ち着いてはいないのか、国境を跨ぐ際に足留められた。何れか揉事もあったのかもしれない。ただの旅行客であることはすぐに認められたが、同様移動を妨げられた旅人は多く、その手続きの順に数日待たねばならないとの事だった。国内ならば自由に行動してもよいらしい。]

 此処も旅程のひとつだと思って過ごすしかないね。

[ 半分は公吏との交渉の順を待つ間に読んだ新聞の受け売りだ。ベンチに腰掛け、先程まで目を通していた更紙を折る。此処は日陰だが、朝方であっても気温の上昇は早く、暑い国なのだろう。空気が乾燥しているのが幸いだ。
 旅の間は自分を慮り移動は大抵陽の高い時間に行われたが、足留めを受けたことが不慮であり、今は未だ浅い午前の時刻。庇が影を落とす陽の光が眩しく目を細めた。]

 朝ご飯でも食べに行く?

[ この場で出来ることは済んだ。ならば右顧左顧していても仕方あるまい。市場は既に空いている時間だろう。賑やかな喧騒が途切れ途切れ風に乗り聴こえ、そう離れた場所ではないのが知れる。旅の連れ合いにそう声を掛けた。]*
(2) 2021/04/14(Wed) 10:41:22

【人】 宵闇 ヴェレス

 君のせいじゃないだろう。

[ そこが目的地ならいざ知らず、遠国の元首の崩御を予め計れる筈もない。
 ましてや何処へ往くにも便の良い国に長く住まいながら、無精が故に旅のひとつも出たことのない自分が、彼の旅慣れを理由に旅程の手配を甘え任せていた。であるから、責める気持ちなど毛頭ないし、自分の口ぶりからもしそう伝わったのなら誤解であると言外に語調に滲む。]

 悪いことばかりじゃないよ。

[ 街並みがとても素敵だと>>5彼の言う通り、故郷は違えど北方生まれのふたりにとって、熱射に晒された景観は色鮮やかで目に眩しく、住み慣れた国を離れて旅に出たのだと実感が湧く。
 それに、そもそも自分たちが出会うきっかけも、彼が急ぎの旅路に足留めを食ったとこの状況に似たりよったりなものだから、悪いことばかりじゃないというのも本心だ。根が楽天的なせいもあるかもしれない。]

 ねえ、ダンテはこんな暑い国にも

[ ふたり北国生まれなのだからと無意識にダンテにもこの景色が珍しいのではと思ったが、仕事柄遠出も多い彼は似た風土の地域に訪れたこともあるかもしれない。問い掛けが尻すぼみに消えたのは、不意に彼が被った帽子を自分の頭に乗せ掛けた>>5驚きの為だ。]

 …………

[ いつもなら、日傘のうえに帽子なんて大袈裟だよ、と抗議のひとつも言うのだが、実際風景が白茶けて見えるような陽射しは目を灼いて、染みるに似た微かな痛みを覚える。本来の目的地はまだ先なのだから、こんな処で意地を張り旅を台無しなどしたくない。大人しく肯い、その代わりに自分の分の荷物まで纏める彼へ片腕を伸ばした。]

 日傘を持ったって片手は空いてるんだから、僕も持つよ。

[ いつもなら寝台に入るような時刻だ。欠伸を噛み殺しながら彼に言う。]
(16) 2021/04/14(Wed) 19:41:24

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 見知らぬ国でも迷うもなく、喧騒を辿ればじき市に着いた。
 王が死に後継は定まらず、治安は悪化していると駅で買い求めた紙面で見たが、流通や商業に大きな影響はないらしく、活気盛んに商売人の声が飛び交う>>1
 もしかすれば平常時に比べ官吏の目の隙を突いた阿漕や粗雑が目につくのかもしれないが>>3、初めてこの地を訪れた自分にはわかりはしない。

 見慣れない意匠の縫い取りで飾られた装束、嗅ぎ慣れない香辛料の香り、聞きつけない訛りの言葉。]
 
 なにか気になるものあった?

[ 連れ合いに好き嫌いがないのは知っているし、自分も特段食べられないものはないからこういう時は都合が良い。
 本当は食べ歩きながら市を遊覧できればよいのだが、片手に日傘、片手に食事に飲み物は無理がある。
 露店に併設された大きな差し掛け傘が作る影にある卓を示し、そこに着いた。
 薄いパンに、トマトと豆を煮詰めたディップ。干した果実に香辛料の強いコーヒー。買い求めた自分の分の朝食を卓の上に並べた。

 それから、彼が駅で案内された宿>>5の書き付けを、見せて、とねだる。]*
(17) 2021/04/14(Wed) 19:44:41
宵闇 ヴェレスは、メモを貼った。
(a4) 2021/04/14(Wed) 20:35:27

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 拗ねたような響きに思わず笑った>>34。胸に陰った罪悪感が払われるような思いだ。

 一国の君主の命脈の前にスマートとは、と揶揄も口を衝きそうになるが、何処に耳があるか知らず、流石に不敬と口を噤んだ。これ以上厄介事を増やしたくない。]

 ひとりだと思っていたの?

[ ターミナル駅の役割を果たす国そのものが、1日の休業を迎える為にその前後列車を運休し、溢れた旅客で宿は埋まり、実益を兼ね住処を宿として貸し出している己の所に彼は客人として訪れ、また列車が動き出すまでの数日を共に過ごした。宿の主と通り過ぎる旅人。それだけの関係の筈だった。

 抗いもなく受け渡された鞄>>35は衣類の他、数冊の本も詰められており、それなりの重さはあるが苦になる程ではない。

 それでも片手に日傘、片手に荷物では買い歩きもままならず、一先ず荷物の置き場所も兼ねて差し掛け傘の影が落ちる卓を確保した。ひとりが荷を見ている間にひとりが買い出しに出ればいい。

 おのおの好きなものを買い寄れば、肉と野菜、甘い茶とコーヒーとてんでばらばらな嗜好にも笑ってしまう。]
(44) 2021/04/14(Wed) 23:29:21

【人】 宵闇 ヴェレス

 軍人だ。

[ ちょうどダンテが両手に朝食を贖い席に戻った頃合い、巡回らしい金糸雀色の軍服>>29が人波の向こうに垣間見えるのに呟いた。その征衣が国軍と異なるもの>>a5であるのは知る由もないが、旅人にとっては闊達な露天市に見えても、実情穏やかでない事はその姿で知れる。

 時折不審げな、探るような目付きを現地の住人らしき者に向けられるのもそのせいか。

 市への道すがら、広い鍔で隠したつもりの欠伸は覗き込まれて>>35しっかり見つかってしまった。]

 そうだね、宿に落ち着いたら一眠りしようかな。君は街を見て回ってくれていてもいいし……、いや、やっぱり夕方くらいまで一緒に寝る?

[ 先の軍人の姿や、向けられる視線の治安を思えば、彼をひとりにすることも憚られた。
 宿の書き付けを差し出されるのと入れ違いに、干し果実を茶請けに彼の方へと押しやる。]
(45) 2021/04/14(Wed) 23:31:15

【人】 宵闇 ヴェレス

 食事は街に出ればいいから拘らないけど、折角だから見晴らしのいい、景色のいいところがいいな。

[ 如何なる意匠や意味が込められているのか、幾何学的文様と淡い色合いが美しい建築物が、雑然とした街並みの合間合間から遠くに見える。それらを視界の遮るもののない場所から眺めてみたかった。

 安価で良いと勧められた宿は地図で見れば市や酒場街に至近で、平時なら利便性高いが今の情勢では些か安全性に懸念が残る。

 結局丸を幾重に重ねられて勧められた宿と、そこから少し川沿いの宿を候補として希望した。幾らか高値の宿といっても食事を外せば予算内であったし、なんなら予算を越す分は自分が負担してもいい。

 荷物を手放し伸び伸びとした様子を見れば>>36、宿までの道は僕がスーツケースを持とうか? と伺う。多分それが荷物の中で一番重い。]**
(46) 2021/04/14(Wed) 23:32:37

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 出会った頃の旅の不安が最初のうちだけであったと聞けば>>47、己の存在が何か彼の助けになっていたかと仄かに胸のうちが綻ぶ思いがする。けれど恩師の危篤を受けた彼の旅の目的をすぐに思い起こせば、心細さは成り行き不明の不安ではなく焦燥と哀切であった筈で、随分と思い上がった事を言ったと口を撞いた端から思う。

 それでも彼が衒いなく出会えてよかったなどと言うものだから、自分の考え無しに発した言葉が拗ねが由来だと自覚せざるをえず、今は借り物の帽子で陽射しを遮りながら、まるで眩しいものを見たかのような素振りで目を逸らした。]

 地理も不案内だしね。

[ 裏路地は避けようとのダンテの言葉に同意する。あての無い数日の滞在であれば、利便で裏道を覚える必要も、そうして急ぐ必要もない。

 軍服姿は此方に一瞥を留める事もなく>>52、何かを見つけたかのように走り去ってしまった。
 ああして警邏の目が光っているなら、政争こそあれ、未だ国体を維持できる体は保っているのだろうと旅人としては願うしかない。願わくば此処を出立するまで。

 それよりも、街路でのすれ違いざま、露店の主人、こうして卓に座っている今も、通りすがりに投げられる不躾にも似た視線は、物盗りのような単純ではない含みを感じる。]
(61) 2021/04/15(Thu) 14:19:31

【人】 宵闇 ヴェレス

 ……ああ。

[ ダンテの言葉でようやく思い当たった>>51。この国の情勢の半分は駅スタンドで購った紙面で得たが、元より国名の聞き覚えと共にそれに付随する常識程度の知識はある。旅多く、その地の習俗への理解も時に必要となるだろう彼ならましてだろう。西方の国には妻を多数娶る文化が、その逆に女が家を持ち男が通う国、家族の概念が広く共同体で子を育てる風習の国、そんな覚えのうちのひとつ。アルファルドは石油の産出で豊かな国であると同程度に、同性愛は厳罰、あり体に言えば死罪であると知られていた。

 そういうことかと眉を寄せた。ダンテがそれを口にするまで知識にはあっても我が事として思い至らなかったのは、自分にどちらである、という明確な自意識がないからだ。

 ダンテの性的嗜好が女性に向いているのは知っているし、格好をつけさせて欲しいと>>49、例えば重い荷は率先して請け負おうとしてくれるのは、彼が自覚しているかは別にして、自分を女性、ないしは庇護すべき対象として見てくれているからだろうと理解している。

 男性か、女性か。どちらかの性に完全に分化して成人と認められる己の種族の、その風習に纏わる諸々が煩わしく国を出て、分化の必要も覚えないまま、とうに成人と見做されてもおかしくない歳を過ぎても、だらだらと未分化のまま過ごしているのが自分だ。
 男性と、男にしては線が細いが、女にしては幾らか線が硬い人間のふたり連れ。要は、国の規範を逸脱する関係ではないかと探られているのだろう。探られる程度には、そういった間柄に見えてもおかしくない振る舞いをしているということだ。体温が低い為か、あまり頬に色が乗らない体質でよかったと思う。]

 ……ごめん。

[ 自分の曖昧な在り方と、振る舞いの心情を透かされたようで、口籠もる様に謝罪を口にする。]
(62) 2021/04/15(Thu) 14:23:31

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 宿の候補はすんなりと決まり、こういった時、大抵彼は自分の要望を優先してくれる。] 

 この国にいる間だけ使っておしまいもなんだし、どうせならずっと使えそうなのがいいかなって。

[ 彼は一刻も早く陽射しに弱い自分に日光を遮るものを与えたいようだが、店を流し見に歩いていると、場当たり的に選ぶには勿体ないとの思いが深まる。軒に並ぶショールにはひとつとして同じ意匠はなく、細やかな刺繍は名産品としても名を馳せるそうだ。陽が暮れてからゆっくり見たいのだと続ける。

 一番に勧められた宿はゆるやかな坂を長く登った先にあり、顰めっ面>>49に敬意を表して荷を任せるのに甘えてしまった。]

 着いたら何か冷たいものを飲もう。

[ 甘い酒は好きではないと知っている。まだ陽は高いから酒でなくても、薄荷水か、炭酸で割った果実水か。
 何らかの理由で手放された小規模な城は、今は宿にと姿を変えている。だらだらと坂を登っただけあって、ロビーからも既に街を見下ろす見晴らしの良さだ。

 予算も手の届く範囲なら、此処にしようとのダンテの言葉に否もなく頷く。
 生憎陽が登る様が見えるという一番展望の東の部屋には予算が追いつかなかったが、どの道朝日をまともに見ることなど望まないのだから構わない。少なくとも自分は。

 石造りの重厚な建造物は、強い陽射しを完全に遮り、足元にひんやりと底冷えさえ感じさせる。

 寝室と応接室は一続きだが充分に広く、湯船のついたバスルームが併設されている。窓は市街を見下ろすように大きく開かれ、市の向こうには大河が見える。一際目立つ豪奢な宮殿は、あれが王宮だろうか。高台だけあって風がよく通る。]

 天幕がある。

[ 荷物と下ろし落ち着くと長椅子に足を乗せ腰掛け、寝台の方を改めてみればシンプルな覆いだがいかにも城である、という印象でダンテに指し示しながら笑ってしまった。元々は王族の誰かの別宅だったのかもしれない。笑いながらひとつ欠伸を噛み潰す。元より寝入る時間もそうだが、昼の光にあてられた身体はいささか火照り気怠い。]**
(63) 2021/04/15(Thu) 14:26:43

【人】 宵闇 ヴェレス

 そんなこと思ってもない。 

[ 迂闊な己の振る舞いに謝意を述べれば、逆に彼から詫びの言葉を述べられた>>74。否定の言葉が強く出るがそれ以上は続かず、ましてや彼の健康的な肌色が、わずかに赤らむのを認めれば自分に何が言えようか。
 賑やかな市の中、ふたりして口を噤み卓を挟んで奇妙な沈黙が落ちた。]

 陽が、高くなる前に行こう。

[ ようやく絞り出したのは極くつまらない言葉だったが、彼が由縁ではない邪推や嫌疑を受ける場からも離れたかった。

 だからと言って一刻も早く羽織るものをと彼が急くのを>>75、買い物は陽が暮れた後でとやんわり遮ったのは先を急ぐばかりではなく、正直な気持ちでもあった。
 彼自身も鷹揚として忙しい質ではなかったが、何かしらを急くという気持ちが自分には薄いのだと気付くことがあった。時間は幾らでもあるし、折角の旅行なのだから長く残る良いものを彼と一緒に選びたい。それは後々も思い出として残るだろう。]
(87) 2021/04/15(Thu) 21:17:26

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 宿に荷を下ろし、明るいが陽を遮る壁と天井のある部屋に落ち着くと、ようやく人心地がついた。]

 もしかして。

[ 広い窓からそよぐ風が心地良い。石造りの壁は確かに熱気を遮断はするが、それにしてもあまりに外気と室温が異なる。ダンテの言葉に>>77よたよたと長椅子を下り、怠惰に四つ足で室内を華やげる飾壷へ向かう。床を這う膝や手を厚い絨毯が柔らかく受け止める。陶磁器で出来た壺の手触りは冷たく、中を覗くとみっしりと一つ塊の氷が詰まっている。保冷庫代わりだろう。同じ様な壺が形や大きさは違えど部屋のあちらこちら邪魔にならぬ程度飾られている。それから頭上を見上げれば、5つ羽根の扇が窓から吹く風とは異なる動きで旋回し、ゆっくりと空気を撹拌している。指を指し。]

 多分これとこれのせいじゃないかな。氷をどうやって維持しているかとか、風を巡らせている仕組みはわからないけど。

[ アルファルドで石油と同等に有名なのが魔法の文化だ>>6。資源もあり、学術の水準も高いのであれば長い繁栄も頷ける。]
(97) 2021/04/15(Thu) 22:24:32

【人】 宵闇 ヴェレス

 なんでもない時に来れたら良かったのにね。

[ 此度の滞在は事故のようなものだが、敢えてこの国を旅の目的地とするなら、暑さと陽に弱い自分の体質をまずなんとかしなければならない。暑さに弱いのは同じ北方の出身であるダンテも同じ筈だが、そこは越えられない種族の差がある。

 冷えた白ワインをとの提案には一も二もなく頷き、ボトルで、と強請る。葡萄酒なぞ水のようなものだ。つい先刻、重ための朝食を済ませたばかりの彼がサンドイッチを注文している健啖ぶりに目を丸くするが、昼食の当てとは知らず、自分はそれに加えてチーズとクラッカー、それと干し葡萄を頼んだ。

 暫く壺の冷気を楽しみ、またよたよたと長椅子に戻りよじ登ろうとすれば見兼ねたのか寝台を指し示される。

 言葉に甘えシャツの襟元を緩め柔らかな掛け布に埋もれるように横たわる。]

 そんなに気を使ってくれなくても大丈夫だよ……。

[ のぼせたような自分の体に、濡れたタオルを用意しようかという彼は何処までも優しい。
 本格的に横になれば、泥のような眠気が身体を浸す。1日2日の徹夜なら、少し昼間を歩いたくらいならこんな様にはならない筈だが、未だ午前というのに熱帯の陽光はかなり身体に堪えたようだ。]

 ルームサービスが来たら起こして……。

[ 呼び止めるに似た動きで手が宙を掻く。指先が近くの彼の袖に触れたならそのまま捕まえようとする。]*
(98) 2021/04/15(Thu) 22:25:56

【人】 宵闇 ヴェレス

 どうだろう。
 でも君の場合、冷房器具より暖房器具の方が必要かもしれない。

[ 室内の空気を巡らせるファンを呆けて眺めていると、ダンテが自分たちにも扱えるような器具はあるだろうかと言う>>112

 土産物に、予め籠められた魔力を使用するものはあるかもしれないが、永続的に利用できるかと言えばどうだろう。
 それは別に空調器具に限ったことでもないかもしれないが、ちょうど部屋の設備に続けての話だったから、ちょっとした揶揄いとしてそう口にした。

 北の果ての生国を離れ、今は内陸の気候温暖な場所に暮らしている。冬に彼が自分の住処を訪れた際に、北方より南の国の冬の備えはなっていないと憤っていた。
 殆ど怒るというところを見た覚えのない温厚な彼が、しかもこれより厳しい北方の冬を知っている筈の彼がそうして憤慨していたのが珍しく印象に残っていた。

 アルファルドも冬はそれなりの寒さと言うが、今は夏であるし流石に暖房器具は売っていないだろう。だからこれは完全な揶揄だ。

 空調器具でなくとも、他に魔具のようなものを扱っているかもしれないから、後でそれも見てみよう、と締めくくって、寝台に沈んだ。]*
(119) 2021/04/16(Fri) 7:33:41

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 眠りに就くまで、ひとつ、ふたつ言葉を交わすのがやっとだった。掴んだ裾をいつ手放したのかも覚えていない。

 次に目を覚ますと室内には既に夕闇が垂れ込んでいた。]

 起こしてって言ったのに。

[ 大方、眠り込んでいる自分を気遣いなどしたのだろう。旅の連れの姿は室内にあっただろうか>>115。窓際に設置された椅子と、卓の上には既に温くなった白ワインのボトルが半分以上残されている。喉の乾きを思い出したように覚え、未使用のグラスへ注ぐと一息に煽る。

 葡萄の果汁を玻璃に満ちた水面へ流した様な夕空はまだ明るいが、地では人々の営みが洋燈を赤赤と広げており、窓から見える景色は大層美しい。
 この宿を選んで正解だったと思う。

 簡単な着替えをまとめてバスルームへ足を運ぶと、使用された形跡はあっただろうか。真鍮の湯の栓を開いた。]**
(120) 2021/04/16(Fri) 7:40:26

【人】 宵闇 ヴェレス

 次の冬には君が満足する暖房設備を準備しておくよ。

[ 朗らかに>>128、けれどやはり北国以外の暖房設備が許し難いといった彼の様子に、寝台に横たわりながら噛み殺すに似た笑いは伝わったろうか。

 北国の冬は下手に空調に手を抜くと死につながる。
 自分も元は北方の出であるから、長い冬を宅内で快適に過ごそうとする文化は承知しており、彼の言いたいことはわかるのだが、それでも初めて出会ったのは春から初夏であったから、その冬に彼が訪れた時の、室内で暫く外套を手放さなかった理由には目を丸くした。
 自分が寒さに強いと言うより無頓着であったせいもあり、不自由をさせたのを恐縮したものだ。

 また来る、と 旅立つ時に彼は言った。その言葉通り、纏まった休みが取れると、そうでなくとも旅の所用で近くを通りすがる事があれば、彼は自分の元へ顔を出してくれた。

 また次に会う時、と約束に約束を繋ぐようなところがふたりにはあり、この旅行も以前の旅行の合間に約束したものだ。
 次の冬もダンテが訪れてくれる。それを言外に望みとして滲ませている。

 言葉はすぐに寝息に変わった。]*
(162) 2021/04/16(Fri) 22:43:42

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 寝穢い質である方は自覚している。寝入って間もなく、ルームサービスが訪れたことも、ダンテが浴室に湯を溜める音>>129にも眠りを妨げられることなく寝息を立てた。
 靴音を吸い取る柔らかな絨毯、厚い壁と、宿銭に見合う設備もあっただろう。

 ダンテは宿に着いた時よりも幾分小ざっぱりとした様子で、自分が起きた様子を認めると長椅子より身を起こし手にしていたメモ帳を閉じた。

 自分が寝入った後、外出した様子はない。窓際の卓に、空になったサンドウィッチの皿がそのままになっている。]

 それはいいんだけど。

[ 酸味のある白ワインは冷えておらずとも喉の乾きを癒すと共に爽やかに口を濯ぎ、すぐに空にしたグラスにまた半分ほど酒精を満たした。]

 退屈じゃなかった?

[ 眠っていたとは知らずそう問う。寝台には自分以外が横たわった形跡がないからだ。本を読んだり、書き付けをしたり、街に出回ったり、太陽の高い時刻自分が寝入っている間も彼がひとりで時間を使えるのは知っている。

 けれど折角の旅先であるというのにだ。]
(166) 2021/04/16(Fri) 23:29:32

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 平均的な人種の寿命を持つ彼を、長命の自分につきあわせる事に負い目がないと言えば嘘になる。昼夜が逆転している自分の生活時間に彼を添わせることに素直に肯えないのもそのひとつだ>>77

 けれど旅先では同じい時間に活動しようとなると、どうしても夕から夜に彼をつきあわせてしまう事が多い。
 自分に合わせ夜更しをする、と意気込む彼が、夜半に寝入ってしまうのを眺めて深夜に本を片手に過ごす時間も悪くないが、自分が眠りに過ごしてしまうのは酷く勿体無く感じる。

 浴室を先に使ったと詫びる彼に気にしなくていいと手を振ると、眠気覚ましと身支度を整える為に浴室に入る。

 金属の鈍い光を放つ湯側の栓を開くと、待つことなく温かい水が手を濡らした。ダンテも充分に足を伸ばせるだろう広さの猫脚の浴槽へ湯を溜める事に魅力を感じなくもなかったが、うかうかしているとすっかり遅い時間になってしまう。髪だけ洗い、シャワーで済ますことにした。]

 ……そういえば、これは予定していなかった。

[ 水気は拭ったがまだ髪に湿り気を残したまま、着替えたシャツの袖を捲くりながら浴室を出る。
 筋張りを見せていた身体の線は幾らか柔らかく、頬も少し丸みを帯びている ふたまわりほどサイズの大きな衣類に辟易しながら、見せた姿は女性のもの。]**
(167) 2021/04/16(Fri) 23:31:40

【人】 宵闇 ヴェレス

 ベッドで寝ればよかったのに。

[ 自分が休んでいる間、ダンテも少し眠っていた>>168と聞いて眉を寄せる。
 広い寝台はふたり四肢を伸ばしても眠れるくらいの余裕がある。
 ひとりで街に出ることに懸念していたから>>45、眠っていたと聞けば寧ろ安堵したが、表情を曇らせたのは別の理由だ。

 書き付けをしていたと言うから、暇を持て余していたのではないだろうことはよかった。旅先の情景を詩文にして彼はよく見せてくれた。そのうち一冊の本に纏めるのだと言う。出向いた先では仕事柄陰鬱な成り行きも多いだろうのに、彼の筆先は翳りよりも光彩を輪郭に描き出しているようで、それも彼の人柄故かと思う。時偶求められれば簡単な校閲を行うこともあったが、詩文は自分の執筆する分野とは異なるからたいそれたものではない。単純に彼が書くものが好きだった。

 彼の昔の初恋の詩篇を目にして、その煌めきが自分にはもう決して手に入らない事に愛惜を覚える程。]

 まとまったら見せて。

[ メモ止まりだと言うから、草案の形にもなっていないストックだろう。旅の合間に形になるかもしれない事を思うと楽しみだ。
 そう言い置いて浴室に向かう。]
(171) 2021/04/17(Sat) 1:42:46

【人】 宵闇 ヴェレス

[ 浴室を出ると、見慣れないが故に戸惑ったのか、女性の形をした自分を認めダンテが口噤む様子で>>169、所在無げにその視線に身を晒す。]

 男性の方になる用がなくてよかったよ。

[ 暫くして、寸の合わない自分の衣服に、服を買わなければいつもの口調で彼が言う。それに合わせる形で自分も軽口を叩く。
 男性の姿であれば普段より、いやダンテの身長をもゆうに越す体格であるので、服を買いに行く為の服がない、などという事態になりかねなかった。

 袖は捲くっても下衣のベルトは一番に絞っても弛く、今までの靴は歩き難いだけであるので、海辺を歩く為に誂えたサンダルに替えた。]

 靴も買わなきゃ駄目かなあ。

[ だらだらと登った坂を今度はだらだらと下る。宿に帰るときにはもう一度登らなければいけないが、荷物がない分楽だろう。

 陽が暮れても外気は名残の熱気が未だ残っており>>131、冷えるとまで行かず風があればなお心地良い。]

 服を見てから食事でもいい? お腹すいてない?

[ 市へ近付くと、幾つか早仕舞いの露店もあったが、それと入れ替わるように酒や軽食の屋台が出ており昼とはまた別の活気がある。
 夜は何処かの酒場に入ろうと考えていたが、おそらく飲食の店は遅くまで開いても服飾の店はそれより閉じるのは早いのではないか。

 いつもどおりに話し掛けているつもりでも、何処か間合いがずれる。見上げる位置が違うからだとすぐに気付いた。]

 変な感じ。
(172) 2021/04/17(Sat) 1:44:32