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人狼物語 三日月国


82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】

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【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ

嫉妬に狂う自身を肯定され、ほのかに笑顔を咲かせていた女のかんばせが。

大皿のプレートを見た瞬間凍りつく。
自分は関係者として船に関する資料を集め、頭に叩き込んできた。
乗船客たちの名前も。
"従業員"の名前も。

「……な、…………ぁ……?」

食器に触れる指から血の気が引いていく。
一瞬、自分が企てたシアターの薬に集まった面々の様子を思い出す。
この女は自分がやってきた辺りのタイミングで、警備員に何をしていた?

あの一件を知った女は、大皿のプレートを見て己の頭で警鐘が響いているのを自覚する。

「……アルレシャ。この……この、食材……は。
このプレートの名前は何?この料理を作ってくれた人の名前?この人、今日は見かけなかった、けど……」

先ほどまで花開いていた笑みがいとも容易く引き攣り崩れる。
ポーカーフェイスさえも貫く余裕がない。
(-41) 2021/07/08(Thu) 0:45:17

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

暑いほどのスポットライトが当てられる。灼熱の中にあるようだった。
仮面をつけた従業員達はなにやら大仰なセットをステージへと持ち運んだ。磔台のようにも見える。
木製の台を運び終えた従業員達は、今度はナフと呼ばれた少年を持ち上げ、着衣の一切を剥ぐ。
その体は、台の上に乗り上げさせられた。まるで処刑される直前の光景のようだ。

「さあ皆様、ご覧ください。我らの前より逃げ出した天上の虎の姿を。彼は再び我らの楽園に足を踏み入れてくださいました、そして……、
 『エンジェル』の演目に投票されたチップの数はいくらであると思いますでしょうか、本日はそれを彼に当てていただきましゃう!」

『命の価値は天使の為に!』
『命の価値は天使の為に!』
『命の価値は天使の為に!』

まるで一切に示し合わせたかのような声があちこちから上がる。それは次第に合唱のように膨れ上がった。
女はそのフレーズが、大層お気に入りらしいーー命の価値は貴方が決める。
(*10) 2021/07/08(Thu) 9:33:09

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

まず、体は仰向けに台の上に横たえられた。首に輪を嵌めずり落ちないようにしているが、シリコンを噛んで傷が出来ないようには配慮されている。
腕はやはり透明の覆いのつけられた箱の中へと入れられた。腕の下にはクッションがあって、力を抜いても壁に当たらない。
ただ、腕のすぐ横に何か……モーター式で駆動する、鋸刃のような大掛かりな器具が横たわっている。
それは腕よりも太く、差し詰めカートゥーンのドリルにも似た、でも全く違う……有刺鉄線のようにとげとげした何か。

足元には何かのペダルがあった。数は三つ。透明のアクリル玉覆われているが、膝下を全て入れないとならず、しかと膝が天井に引っかかって足を抜きにくい。
ペダルにはラベルが張られている。客席にもナフにも見えるように表裏にしっかりと。
そこにはこう書かれている。『200万ドル』『5000ドル』『4.65セント』。
ところで、貴方が暗殺を請け負った報酬というのはどんなものだっただろう? 実費に換算し、経費を差し引いて、感情的な値を差し引いて。
貴方の命の価値はいくらだった?

「ナフ、選択肢は三つ。あのペダルを踏んで解答するのよ。
 ペダルを踏むと軽い電流が流れます。痛めつけるためではありません。ペダルから簡単に足を離さないようにするためです。
 チョンっと踏んですぐに引き上げてはつまらないし、賭けにもならないでしょう?
 貴方が己の価値を考えるの。正答はひとつだけ。命の価値はいくらでしょう、貴方の命の価値はいくらでしょう?」

動揺も冷めやらないだろうに、女はそっと囁くとすぐに客席の方を向いた。パチパチと拍手が二人を迎える。
スポットライトとカメラは正しくナフの方を向いて、貴方が主役であることを指すように惜しみなく飾った。

「皆様、固唾を呑んでお見守りください、じっとですよ……彼が怯えてしまわないように。
 命の価値は、
 命の価値は、
 命の価値はーー」
(*11) 2021/07/08(Thu) 10:23:58

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 悪い子 ナフ

/*
Q.何?
A.どれを選んでも一緒で、最後に残ったペダルが「命の価値」になります。
間違い(とされる1,2番目)のペダルを踏むと腕部の機械が作動します。
これにより1.ズタズタになるけど後日完全回復 2.皮が剥がれる 3.骨の手前まで挽肉になって修復不可能
どうなるかはお好きに選んでいただければと思います。エピローグやりたいこともあると思いますのでね!
後遺症の如何を決めていただければそれに基づいて描写します。
好みの味付けでお楽しみください……
(-63) 2021/07/08(Thu) 11:10:03

【秘】 悪い子 ナフ → ルビーの花 アルレシャ

/* おのれ〜〜〜!!!!
 5000ドルも価値があったら従業員になんかなってないので当然ですわね!おほほ!

個人的な好みとしては
ズタズタにされたうえで完全には治らない
って感じなんですけれど、その3つから選ぶのであれば…3…ですわね…わたくし破滅人間、踊り手としても暗殺者としても致命的な損害を負ってほしいためですわ…
(-65) 2021/07/08(Thu) 11:17:30

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 悪い子 ナフ

/*
Kiss……
ご回答ありがとうございます。一番ひどい状況にしていきますわね。
今日のご飯はハンバーグよ〜
(-66) 2021/07/08(Thu) 11:38:42

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

「命の価値は、5000ドル!」

笑い声がオーケストラの演奏を掻き消すようにこだまする。
ぴり、と電流が走るものの、細い針を刺したような鋭い痛みはあれど心臓を蝕むほどではないだろう。
けれども確かに足の動きは縫い止められるように硬直して、ペダルから足を離すまでには時間がかかる。
その、一呼吸深く肺に酸素を入れるように時間。たったそれだけの時間。


ギャルルルルルルルル!



凄まじい轟音を立ててモーターが回転した。
左腕を捕捉している回転鋸はまず最初に肌に棘を引っ掛けて、シーツを巻き取るかのように皮膚を引き剥がした。
真っ赤な肉が露出して、思い出したかのように遅れて鮮血が噴き出す。容器の中に血は溜まることなく、繋がれたチューブから台の下のケースに流れていった。
回転鋸は止まらずに肉を轢き潰し、フォークで何度もステーキを引っ掻くように細い粗挽きを作り出した。
端々に見える白い芯は骨だろうか? 辛うじて当たらないものの、身動ぎをして暴れたならばそれも同じように巻き込まれるのだと言うのは想像に難くない。

少年の腕は側面の半分の肉をごっそりと抉り取られ、もはや自分の意思で動かすのもむずかしいほど原型を無くしてしまった。

「おや、これはこれは。どうやら間違えてしまったようですね?
 選んだのは中間。思い切りのなさが不安を生んでしまったのかもしれない、悲しいことです……。
 さあ、ショウはまだ終わっていませんよ。ナフ、さあ、選び取りなさい。
 貴方の命の価値は?」
(*12) 2021/07/08(Thu) 11:49:51

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 悪い子 ナフ

/*
あ! 伝え忘れです。
腕をズタズタにした後は肩甲骨を剥がそうかと考えているのですが、どう思います?
(-67) 2021/07/08(Thu) 11:50:57

【秘】 悪い子 ナフ → ルビーの花 アルレシャ

/* 肩甲骨!ということはもう腕とはおさらばということでございますわね!!
 わたくしは構いませんことよ!

飼い殺しにされようね、ナフ
(-68) 2021/07/08(Thu) 11:56:16

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 悪い子 ナフ

/*
新しい腕はつけてあげますし好事家に好かれれば前よりいい暮らしは出来るかもしれませんわよ。
朝は無事だからステップは踏めますしね。
元の生活には…………………………
(-70) 2021/07/08(Thu) 12:16:15

【秘】 悪い子 ナフ → ルビーの花 アルレシャ

/* 元の生活には戻れませんわねぇ〜〜!
かわいいナフ、お船で頑張って暮らそうね
(-72) 2021/07/08(Thu) 12:19:11

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

少年は悲鳴をあげ、血飛沫は容器の口から少年の顔へ、胴体へも血を飛ばす。そばで補佐する女も例外ではない。
真っ赤な衣装に更なる絢を重ねながら、少年がよく見えるように顔の血を拭ってやった。美しい顔を皆に見てもらえるように。
少年の勇気を讃えでもするかのように、客席からは拍手喝采が上がる。見世物としてはとても喜ばれているらしい。
一度の痛みを与えられても、ショウは平然と、終わらない。

「命の価値は4.65セント!
さあ果たして彼の選択は……おや!」

まるで道端に美しい花でも見つけたかのように声を上げる。それはすぐにやはり、モーター音にかき消された。
高速で回転する刃が少年の残った腕を引き裂いたのだ。
刃には糸のように細い血管や神経が絡み、カツカツと引っかかる音を立てながらそれでも止まらずに奔らせる。
チチ、と火花でも散らすように鳴っているのは、肩まで繋がる組織を巻き取って引きちぎる音だ。
電流に呼び止められた脚がようやくペダルから離れる頃には、両腕は揃いの傷を抱えていた。

「さあ、残るペダルは後一つ。
 皆様はどう見受けましょう、これにも仕掛けがあるのかどうか?
 いいえ、神は彼を見放さず天上へと迎え入れてくれるでしょうか。
 拍手でお見送りくださいませ、彼の勇気ある第一歩を!
 命の価値は━━」

最後のペダルは、『200万』。それは彼の命の価値に、見合っているだろうか?
(*13) 2021/07/08(Thu) 12:42:39

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

「ふふ、どうも。貴方のその嫉妬を楽しんでしまうといいわよ。
 貴方のそれは、貴方が思っているほど欠点ではないのですから。悪徳の栄えが醜いなら、どうして人は枢要徳だけであれないの?
 悪徳とはたいへんに美しく楽しいものだから、神に禁じられてしまうのよ」

ころころと笑いながら、当たり前のように『グラトニー』は語る。最初からそんな名前であったかのように。
シャンパングラスに注がれたリースリングでほんのりと唇を湿らせると、艶めく朱色は愛の言葉でも紡ぐ様にあついため息を吐いた。

「私の本性が知りたいのでしょう? これで納得がいくかしら。
 美食は言葉では言い表しにくいもの。舌で語り、味わうものなのだから。
 "それ"こそが私の本性、本質。危険を冒すに値するもの。貴方の嫉妬と等しいもの」

対面にいるのにその言葉は頭の中に染み入る様に部屋の中へと反響する。貴方のグラスにもワインが注がれ、すっかりと食事の準備は整ってしまった。
キャビアは金のスプーンで食べるのが良いのだという。雑味を感じにくい様に。
銀のカトラリーが並ぶ中、ひとつだけ柔らかなゴールドの輝きを放つスプーンを女は手に取った。
スフレのように"食材"は一瞬食器に吸い付いて、すぐにつぷんと沈ませる。
ああ、いとも簡単にピンク色の肉質はスプーンの上に切り取られて、ふるふると怯えるように身を震わせている。
つい、と見せつける様にゆっくりとスプーンは女の口の中に運ばれた。少しだけ咀嚼して、嚥下して、目を細める。

貴方は今食事の席にいるのだ。そうだろう。
(-75) 2021/07/08(Thu) 12:59:33

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

最後のペダルが踏まれたならば、踏む勇気があったならば。
パン、パン! と甲高い破裂音が鳴り響くことだろう。
それはチープなクラッカーだった。祝祭の始まりのような音が鳴り響くと、両側から従業員が進み出る。

「命の価値は……200万ドル!
 これこそがみなさまが此度の演目に投票し積み上げた金額になります。法外とお思いでしょうか、いいえみなさまの愛あればこそ!
 良かったわね、ナフ。彼らはみな貴方のファンなの。戻ってくるのを待っていたのよ。
 おめでとう、貴方の価値は200万ドル。貴方は皆に選ばれたのよ……」

賓客に、少年に。それぞれにポジティブな言葉を投げかける。
客席の中には貴方を見てうっとりと頰を染める貴婦人があれば、熱烈な愛の言葉を叫びかける紳士もあった。
貴方は求められているのだ。貴方が求められているのだ。
貴方に払われた価値は200万ドル。貴方の大切なものを守るのに、不足することはないだろう。
貴方自身は守れないけれど。

「"前座"はこれまで。いよいよナフには極上の踊りを踊っていただきましょう。
 その為にも、彼が寵愛に満たされるさまを、ご覧くださいな」

血に塗れた台は斜めに傾けられ、体のよく見えやすいように。今度はうつ伏せに転がされ、顔は客席の方に向いた。
ペダルは運ばれていき、両腕の器具は取り外される。すぐさま傷口は清潔な布に包まれ、みるみる赤く染まった。
きつく肩口は縛り付けられて、パフォーマンス以上の出血がないように施される。当然だ。殺す意味などない。
かれの命には価値があり、値打ちがつけられ、金を生むのだ。
必要なだけの輸血も施され、命を失わず、気を失わないようにしっかりとケアがされていく。
ならば、なぜまだ、見世物台の上に?

「刮目ください、彼の美しい顔を、身体を。彼に称賛を。
 これよりみなさまに、『エンジェル』の誕生をお見せいたします」
(*14) 2021/07/08(Thu) 13:33:35

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ

贅を尽くした食事の席。腕によりをかけて作られた料理たちは食べられるのを今か今かと待ち侘びている。女はそれを血の気の引いた顔のまま見下ろしていた。むしろこの女こそ狼に喰われることに怯える羊のようだった。

……けれど。

「……ぁ、う」

命を掬い取るカトラリーへ手を伸ばす。
理解ができないと糾弾してめちゃくちゃにしてやろうと一瞬思った。しかしここは相手の空間。彼女の本質とも呼ぶべき業を傷つける真似をして、いったい何が返ってくるか分かったものではない。
それに、何より自分自身が望んだものだ。
素顔を晒したのが自分だけなどずるいと。仲間の本性も見てみたいと。そう願ったのは、己に他ならない。

「……ぃ、いただ、き、ます」

昨日まで人の形をしていたであろう者に別れの言葉を送る。
輝くような金色も、桜のようなピンク色も。全てが色褪せぐねぐねと歪むような視界の中で必死に料理をつつく自分の手が見える。

──ああ、自分も君のようだったなら、どんなものも楽しく喰いつき飲み干す事が出来たのかな。

掬い取った食材がその食感ゆえに震えているのか、或いは自分の手が震えているのか、もう女には分からない。
それでも"嫉妬"は手を止めない。深呼吸をひとつ置いた後、一息に掬い上げた命を口に放り込んだ。

理解したいとは思えない。でも、理解できずとも知らないままなのはとても悔しかった。
(-81) 2021/07/08(Thu) 14:20:31

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 悪い子 ナフ

/*
されている側はなかなかリアクションも大変だと思うので、
痛覚の緩和の名目で薬を入れようかな……と思うのですがいります? いりません?
入れる場合、覚醒剤(気絶は出来ないが悲鳴等のリアクション増加)と痛覚を快に感じる薬(痛みが消えるわけではない)のどちらがいいでしょう?
(-92) 2021/07/08(Thu) 20:08:53

【秘】 悪い子 ナフ → ルビーの花 アルレシャ

/* おっほっほ
 それなると快感に変わる方がお客様にも喜んでもらえそうですわねえ?めちゃくちゃになってしまいそうですけれど!

 そういう方向性でよろしくお願いいたしますわ〜!kiss!
(-93) 2021/07/08(Thu) 20:17:57

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

貴方が"食事"を拒否したとて、失笑はすれど怒りはしなかっただろう。
なにせ、この期に及んで悪徳を否定するというのだから、かわいらしいものではないか?
きっといつもどおりにほほえみ、ひどく哀れんだように見つめて、謝りもしたかもしれない。
怯え惑って逃げるものを、わざわざ追いかける意味もないのだから。

けれど貴方は立ち向かった。或いは受け入れたのかも知れない。
口に入れたババロアのようになめらかな料理は、白子か卵か、肝臓のように重かった。
ねっちりと歯にほんの僅かに縋り付いては、歯切れもよく噛み切れた。
舌で押しつぶすことも出来るくらいには柔らかく、溶けるようにしっとりとしている。
濃厚な味わいはハーブソースの味に劣らずに主張し、コクのある味を舌の上に広げる。
体温でとろけて形をなくした食材は、引っかかるところもなく喉に滑り落ちていくだろう。
本来臓器ならばあるような匂いも、新鮮であることとレモングラスの調和で、全く気にならない。
けれどもかすかに呼吸とともに抜ける肉質の匂いが、ふわん、と貴方の嗅覚を刺激した。

ああ、でも、貴方は口に入れたのだ。味わってしまったのだ。
たとえ胃の中身を全てひっくり返したって、舌は覚えてしまった。
人間の記憶に最も直結している五感は嗅覚であるという。
貴方は自分が一体ぜんたい何を食べたのかわかっているだろうか?
(-94) 2021/07/08(Thu) 20:21:55

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

ゴトン! と台が傾いた。背中がよく見えるようにだ。下側には細い桶が置かれ血を受け止めている。
まず、体をしっかりと固定した。なめしたベルトは肌触りがよい。何の慰みにもなりはしないが。
やはり仮面を付けた従業員が傍に立ち、幾重にも生命維持の為の装置や器具を取り付ける。
無理矢理に消費分を補う輸血に加えて、透明な薬が硬膜へと追加された。

「気絶されてしまっては見ごたえがないというもの。
 副船長に投与したのと同じ薬を入れております、中身はご承知おきでしょう。
 やはり人間を昇華させるのであれば、天にのぼるような気持ちでなくては……」

わっと笑い声が上がった。ジョークのつもりなのだろうか、この場ではきっとそうなのだ。
少年にとっては見えない背後で、何かが行われている。本人以外には、ようく見える。

よく手入れのされた刃物がスッと背中に入った。鋭すぎてすぐには痛みを感じないかも知れない。
背中の肉を観音開きにするように、体から離れすぎないように中央から離されていく。
信じられないほど手際よく薄い肉が退かされて、その下から骨が見えた。
肉と骨の境に、ヘラのような器具が入り込む。

ベキッ、とアーチを描く鎖骨の裏側から固いものの折れる音がした。
肩甲骨が剥がれ、背中に突き立つようにしているのだ。
広い骨が菱形筋からサクサクと料理でもしているかのように剥がされて、鎖骨から離れた。
からっぽになってしまった背中はまたパタ、パタと縫い合わされていく。
手術と言うには手荒で、そして暴力と言うにはやけに繊細だ。
異質だ。生命の維持のためではないのだから、当然といえばそうなのだろうか?
未だ露出したままの細い背中に。従業員は、今度は工具を手にした。

(*18) 2021/07/08(Thu) 20:38:15

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

まず取り出された骨に取り付けられたのは蝶番だった。
ドアーのように骨が動くところを、従業員は客席に見せた。
それから、蝶番の一片はかすかに肉の隙間から見える鎖骨に打ち付けられた。
文字通り骨身に響くような衝撃がガツン、ガツンと少年の体を踊らせる。
ふらふらと、血と肉のこびりついた肩甲骨は外部に露出したまま、少年の体に戻された。

それから先は、こんな場でなければ職人芸と言って良いような様子だった。
肩甲骨に指を広げるような形のワイヤーが打ち付けられ――勿論体につながったまま――、
そこに人工皮膚が張り巡らされた。他者のものではないから、不適合の兆候もない。
無残な剥製のように広げられた骨組みは、銀で塗装されてきらきらと照明を反射した。
いずれはそこに羽が縫い付けられていくのだろうか。けれど今は、はだかの翼のまま。

ステージの上からフックが下がり、少年の皮膚に縫い付けられていく。
サスペンション、というパフォーマンスを知っているだろうか?
直に皮膚にいくつものかぎ針を取り付けて、人間の体を浮き上がらせるものだ。
的確な場所に、十本以上ものフックが薄皮を通過していく。
人間の皮膚というのは存外に丈夫なものだ。重心を分散すれば、こうした芸当もできる。
偏らず皮膚を破ることもなくしっかりとフックは体重を支え、ゆっくりと少年の体を客席に見せた。

まるで磔にされているか、そうでなければ、天から降りてきた神の使いのようだ。
痛みがない、なんてことはないし、血は細く流れ続けているのだけれど。
オーケストラはいよいよクライマックスというように、激しい演奏にホールを揺らす。
夥しいほどの出血と血の匂いに満たされた空間は、今まででいちばんの拍手に満たされる。
まさしくそれは――

「さあ、紳士淑女の皆様、今宵こちらにいらしたあなた方はとても運がいい!
 これこそ一番人気の演目――『エンジェル』でございます!
 愛し愛されし我らの踊り子に、あなた方の愛を――!」
(*19) 2021/07/08(Thu) 20:53:13

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

「明日よりナフには"従業員"として復帰させていただきます。
 それまでの投資によっては、彼の"翼"の完成は早まることでしょう。
 彼を御使いに昇華するのは誰であるか、早いものがちですよ……」

口笛を吹き手を振り手を打ち鳴らし、ショウのエンディングを歓呼が華々しくかざる。
白い花びらがぱっと舞い散り、辺り一面に散った血ですぐに染まってしまう。
快楽にとろりと溶けた少年の表情を向けられた客は、いっそう興奮した声を挙げるだろう。
貴方は彼らにとってのアイドルとなった。此処で愛され、欲されていくのだ。

「これよりナフは処置にあたります……すぐにでも元気な姿をお見せいたしますよ。
 その時にあなた方の天使がどんな"ぐあい"になっているか。存分にご想像ください。
 ご覧いただき、誠にありがとうございました」

貴方を求め見上げるような喧騒の中で、一時幕は下ろされる。
次の演目に向けて少年の体は降ろされ、台は片付けられて辺りの血もきれいに掃除されることだろう。
苦痛は終わったのだ。そして終わることがない。すぐに、傷口に対して適切な処理が行われる。
正しく、手術や手当がされるのだ、ようやく。貴方は大事な従業員なのだから。

「お疲れ様、ナフ。……今はどんな気持ちかしら、気持ちがよくってなにもわからない?
 これが貴方の甘受すべき幸福であり、今後の人生なのよ。
 貴方に掛けられた命の価値は、きちんと貴方の身元に送金すると約束しましょう。
 なに、ほかの演目に賭けられた金がありますからね。心配しなくたっていいのよ」

貴方の乗せられた担架はステージの控えへと走り、貴方の体を運んでいくだろう。
勿論俯せで。改造された貴方の体は、もう仰向けに眠ることは出来ない。
施術さえ終わったならば、大丈夫。貴方は貴方の好きな者のところへ、会いに行ける。
貴方達は同じ従業員なのだから。何も心配しなくていい。
貴方達は同じ従業員なのだから。何も苦しむことはない。
貴方の命の価値は200万ドル。
売り買いされる命の価値は、帳面に書き込めるほどのものなのだ。
(*20) 2021/07/08(Thu) 22:45:33

【赤】 ルビーの花 アルレシャ

/*
オッス! オラ狼!
エピローグを目前にした襲撃について、現状相談事がありますの。
というのもその原因のガンガン一端ではあるのですが、このタイミングで墓下に来るとエピローグの語りに困る人、或いは今の流れに突っ込むと様々な事情により身動きがとれずみんなでエピローグに参加するのが難しくなってしまう……などの人がいらっしゃると思うんですのよね。
今の状態でランダムに襲撃先を選ぶと芳しくないのでは? というのが要点です。
パスするか、それとも快諾してくれそうな方(キエとか)(失礼)にお願いするかにして、
ランダムで行う以外の方法を取れないかと模索しています。
いかがでしょうか?
(*21) 2021/07/08(Thu) 23:15:31

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ

唇で確かめ、歯で千切り、舌で潰して、喉奥へと落としこむ。

「……、ぅ…………っ、……ッ!」

知りたくなかった。感じたくなかった。
その意思を嘲笑うかのように自分の身体は的確に感触を伝えてきて、脳は嫌でもその食材の輪郭を捉えていく。意識したくないと考えれば考えるほど、その存在感は主張し始める。

悲鳴を上げ始める心と裏腹に舌や鼻は甘美な味を伝えてきた。まるで麻酔のようだと思った。
眼前と口腔に広がる事実から逃げたくて、意識を逸らそうとして──目に入れてしまう。

最上のご馳走となった人間が並べられたその向こう。食卓を挟んだ先にいる、一人の生きた女。
ベビードールという頼りない布の下にある……あたたかいからだ。おそらく今口にしているものと同じものが入っているであろう器。

想像してしまう。
同じ人の形をした生き物が、丁寧に料理へと昇華されてしまう様を。

「──ッ、ぅ、っ……んぐ、……ゔ……!」

スプーンを持つ手と反対の手で口元を押さえる。
腹部、胸、喉奥から何かがせり上がる衝動。それに耐えれば耐えるほど、代わりに濁り切った深緑色の瞳の表面に水の膜が張られていく。

そうして体の中でせめぎ合う美食への快楽と事実への苦悶を味わい……女は、時間をかけて己の口内を空にした。

「…………ぅ、……あ、ア、グラトニー……これ……何…………?」

彼女の好みは、アミルスタン羊。
それが意味するものは、つまり。
(-107) 2021/07/08(Thu) 23:47:15

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

おいしいでしょう、と女は笑った。貴方が食事するさまを、演劇でも眺める様に目を細めていた。
一挙手一投足、瞼の震えから喉の上下に至るまで、何を思い器官を動かすのかをよく観察していた。
ほのかな高揚が目元をほんのりと赤く彩って、目尻に潤いを湛えている。
貴方が食事する様子を見て、興奮しているのだ。

「就業者である貴方と食事する機会なんて、なかなかなかったものね。
 ……おかしなことを言うのね、『エンヴィー』。わかつてないなんて、顔してはいないわよ、貴方。
 確証をほしがらなくても、それが何かなんてわかっているのでしょう?」

指先のひとすじに至るまで洗練された手が、白く塗られた爪が食器を手に取った。
曇りもなくよく磨かれた銀のフォークが、ちょうど人差し指に沿わせる様に手の中に収められる。

トントン、とフォークを持った一本指で、アルレシャは自身の側頭部をつつくマネをした。
「これで共犯ね」と、嬉しそうにころりと首を傾げて見せた。
おめでとう、貴方はもう知らなかったいつかには戻れない。
(-128) 2021/07/09(Fri) 9:01:29

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ

「、」

ぽろ、と瞳に留まり続けた涙が一粒頬を滑り落ちる。
再び胃の腑から込み上げてくる嘔吐感を握りつぶすように空いた手で己の胸元を掻きむしり、不規則な呼吸を数回繰り返す。

「……しりたく、なかった」

食べた部位の事?違う。それは自分から尋ねてしまった。
食べさせられたこの結末の事?違う。それはこの食卓が用意された時、或いは"暴食"の報酬の話の時点で薄々可能性を感じていた。
では、何を知りたくなかったのか。

「私と同じ人間が……っ、嫌でも美味しいと感じる味をしていたなんて、知りたくなかった……!」


人を食したその舌から言葉が飛び出したのを皮切りに、濁り切った瞳から続けて涙が溢れて止まらない。
これが席を立ちたくなるほど異臭を放つものであったなら。
これが嚥下できない程不味いものであったなら。

女の望みと裏腹に、自身さえも騙り続ける女の心とは反対に、彼女の味覚と嗅覚は用意された食事を正しく評価する。

「…………『グラトニー』。君、は……君は。
例えば、つい最近楽しく話をした隣人を食べることはできる?美味しそうという基準以外に、食べる人の条件はある?

人という生き物を……どう思っている?」

ぐすん、と鼻を鳴らしながら問いを投げる。責めるわけでも怒りを叩きつけるわけでもない。ただ純粋に湧き上がる疑問だった。
(-134) 2021/07/09(Fri) 11:16:35

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

ゆうゆうと自分は料理の片割れを食べ進めていく。がっつくわけでも避けるわけでもなく、当たり前に。
時折薄琥珀色のリースリングを傾けると、口の中のコクをドライなテイストがすっきりと洗い流す。
そうするとまた、新鮮な味わいを舌に感じることができるのだ。

「これでも個人差があるのよ。動物と同じ。
 去勢していない雄は固くて不味いし、食生活だって肉質には関係してくるわ。
 それでも部位によっては若い雌ならば十分に口にするに値するときもある。
 遠い東の国ではオランウータンの唇の蒸し物が美食の極の一つとして珍重されるのですって」

どこか答えになっているような、なっていないような、躱すような言葉を並べる。
そばに居る従業員は黙ったままだが、動揺は所作には見られない。
彼女もまた、この行為を平然と見下ろしているのだろうか?
この二者と貴方との境界線はなんだろうか?

「ひとはひと。私は私。貴方と同じよ。特に変わった線引きなんてないわ。
 貴方が人を妬む時に自らにとって対象が自然とめざましいものを持つ者であるように。
 怠惰がコトを放棄するときに、自分ばかりがそれ以上の損害を得る様な打ち捨て方はしない様に。
 色欲が自らを貶め美意識にそぐわないものを自然と選ばない様に。
 憤怒が自らにとって少しばかり引っかかっても腑に落ちないことのないような指標を持つ様に。
 強欲かいかに不要なものであっても、他者の目を一切引かないものは自然と選ばない様に。
 傲慢なるものが進んで自らを顧みてしまう様な落とし穴には、望んで足を踏み入れることのないように。
 べつに、本当は、なぁんにも特別なことではないのよ……」

苦悶すべきことはないのだ。咎められる一線すら、本当はあやふやに滲む境界なのだ。
私たちは同じもの出来ている。受け入れて仕舞えば、なんてことはないのだ。
明確な表裏などはなく、欲した悪徳は本性などといかめしく睨みつける様なものでもない。
それに人の心が耐えられぬから、悪徳だなどと名をつけるのだ。
(-151) 2021/07/09(Fri) 12:51:46

【秘】 ルビーの花 アルレシャ → 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル

あ、と急に声をあげる。
普段通り、茶目っけを滲ませるような若々しい表情に顔をひたし、
飲み干したグラスに改めてワインを注がせた。
「乾杯をし忘れていたわね、いけないわ。サプライズに気がいってばかりいたわね」
すすいと女のグラスが前に進み出た。
白い湖面を通して、ルビーの瞳が貴方に笑いかける。

「乾杯、ようこそ。ディーラー・サダル」
夜は無常なほどに更けていき、悪徳から目を逸らすだろう。
(-152) 2021/07/09(Fri) 12:52:13

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ

「特別なことではない……」

自分の視界を狭める隔たりを取り払う。雁字搦めの価値観を解し、投げ捨てる。
自らが抱えているものは業であると、悪であると、そう名付けて自虐することを放棄する。
そうすれば自分は貴方のような強い人間になれるのだろうか?
貴方は己のことを強い人間だとは思っていないのかもしれない。ただ、人より境界線が薄れた器で、あらゆるものを受け止めているだけなのかもしれないけれど。

「…………むずかしいよ、アルレシャ」

女はまだ全てを受け入れ飲み干すことが出来ない。
幾ばくかの隔たりの向こう側で、女は困ったように首を振る。

……ただし。

(-158) 2021/07/09(Fri) 15:40:53

【秘】 凶つ"嫉妬"の悪狼 サダル → ルビーの花 アルレシャ

「……うん」

一口食べてしまった。
もう脳が味を覚えてしまった。
後戻りできない一歩を踏み出して、確かにその境界線は食べる前より薄れてしまった。

自分もまたグラスを掲げて貴方に応じようとする。
それからもまたどれだけ目に涙を溜めようがどれだけ嘔吐こうが、用意されたものを残さず食べようとするだろう。

だって、貴方が羨ましくて

「………………乾杯」

貴方が妬ましいから。

そうして、夜は過ぎてゆく──。
(-159) 2021/07/09(Fri) 15:41:43

【置】 ルビーの花 アルレシャ

幕が下りる。酒と香水の匂いの中、あぶくのように拍手の音が爆ぜた。
天鵞絨の目隠しの前で、はだかの王は深々と頭を下げた。
豪奢な宝石、真っ赤なルージュ。役者が見窄らしくては務まらない。
ほとんど何にも隠されない乳房と男性器を備えた真っ白い象牙の身体は、きらきらと七色の照明を受けていた。
船旅の中でいつの間にか並び立つ同僚たちは壇上を降りてひまったが、女は隣に在るものがいるように横に手を伸ばして頭を下げた。
舞台劇の終わりに、演者達が揃って挨拶をするかのように、両手に虚空を握り締めて。

「本日はわれらのショウをご覧いただき、ありがとうございました。
 もうすぐ海の上で揺られるのも終わり。地上に足をつけるのは名残惜しくなってしまったでしょうか?
 なんなら、もっと船にいらしたって構いませんよ!」

どっと笑い声が溢れた。迫力のあるショウが途切れて、客達の心も緩んできているのだろう。
短い口上に耳を傾けながら、どれほどそれを確かに聞いているのか。酒気に霞んで、本質は見えない。

「カッサンドラはみなみなさまの再度の乗船をお待ちしております。
 耳を傾けられぬひそやかな予言が、皆様の娯楽となりますように。
 笛吹き男の演奏が、皆様の大切な人を攫っていってしまいませんように。
 またの機会に、われらの姿をご覧にあれ。
 それでは、これで、本当にさらばでございます」

パラパラと降り注いだ拍手はやがて大嵐となり、すべての演者の頭に届くことだろう。
舞台に上げられたもの、舞台を知らぬもの、舞台を見つめるもの、舞台を探すもの。
けれど此度の演目は、これにて、きっかり、ほんとうに、お終い。
(L4) 2021/07/09(Fri) 19:59:08
公開: 2021/07/09(Fri) 20:00:00