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人狼物語 三日月国

70 【第36回TRPG村】百鬼夜行綺譚


【人】 封じ手 鬼一 百継

しかし、誘蛾はそれをあまり好まないようだ。
時々このように、普通では考えられないような場所で、惜しみなく奏で、披露する。

過去、百継が彼女に、"何故普通の貴族然としていないのか"と尋ねたところ、明確な答えは得られなかった。
ただひとこと、ちいさなちいさな声で、"窮屈 は……"とだけ、聞こえた気がした。
それ以来、百継は、誘蛾が自由に振舞うことに何の意見もしないようになった。


彼女の正体を、心を、百継は何も知らない。
宙を漂う蝶のように、彼女は常に、百継の理解をすり抜けていく。
しかし、身分や常識など歯牙にもかけず、気まぐれに歌いたい場所で歌う彼女に、百継は親近感を抱いていた。

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誘蛾のまわりにできていた人だかりは、彼女が歌を止めると、三々五々、散って行った。
ふうとちいさく息をついた誘蛾が顔を上げると、そこには彼女の主、百継が立っていた。

「まこと素晴らしい歌声じゃ。
 お主は天より音を授かったとしか思えぬ。
 館へ帰るのか?
 ……帰ったら、ひとつ、歌ってはくれぬかのう。
 その……儂のため」

[*]
(7) TSO 2021/04/20(Tue) 23:17:56