【人】 学生 涼風【三日目 丑三つ時】 目が覚めた。 草木も眠る丑三つ時。生きる全てが眠りについて夢を見て、傍にある時計の針を進める音だけが部屋を満たしている。 秒針が進む音が今だけどうしてか怖くてたまらない。 暑さで少し乱れた寝巻き代わりの浴衣の襟や裾を整えて、広がる黒に慣れた目で辺りを見回す。眠れないのなら、眠くなるまで何かしていればいいかもしれない。 「……そうだ。呼子さんへ出す連絡、絵葉書にしたら楽しいかな。 こっちの村に着いたよって連絡は電話で簡単にして、楽しい話はモモと一緒に葉書に書こう」 ふと連絡を取り合っていた同い年の友人を思い出す。帰省の話になった時、小さな弟分を泊めたいと申し出たのは自分だ。 無事に到着した連絡くらいは済ませたほうが姉もきっと安心する筈。ただちょっと趣向を凝らして、帰省する前の連絡方法とは違うものを──。 「……。……?」 文机に伸ばした手がぽすりと自分の膝の上に落ちた。 何か、引っかかる。何故だろう? (21) 2021/08/13(Fri) 3:42:44 |