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人狼物語 三日月国

55 (R18)竜宮城


【人】 因幡 理恵

[最初は気のせいかと思った。今日はよく腹が鳴る。
 けれど、ぺこん、ともう一度。自分の中で、自分が持つ拍とは全く異なるタイミングで、腹の中で何かが動く。その動きは全く予測がつかなくて、ぱちっと目を見開いて腹を腹を見下ろす。
 手を合わせたままじっとしていると、再びぺこ、と腹が内側から押された。

 腹が張っている感じは、すこし前からあった。
 しかし、内側でもぞりと動く感触を、初めてはっきりと認識した。
 自分の意志とは無関係にうごく物体が体の中にある。
 異物ではない。むしろ異物とは対極にあるもの。
 この地球の中で、どんな存在よりも自分自身に──フウタに、近いもの。
 地球上にありふれた、どこにでもある奇跡に違いない。はるか昔から、人間も、兎も、亀も、その他の動物も、これを繰り返しながら数を増やしていったのだ。

 あァ、と声が漏れた。合わせていた手を腹に当てて、自分ともう一人だけに聞こえる声で、呟いた。]
(25) 2021/01/09(Sat) 13:15:11