――――柊一は、優しいね。
[凛はふっと柔らかく笑う。
二人で過ごしたいろんなことが走馬灯のように頭に浮かんできていた。
>>290嬉しそうに黒鉄を自慢していたときの柊一の顔。
凛の、年季を感じさせる生活の知恵を物珍しそうに聞いていた姿。
古紙を編んで作る籠や裁縫、編み物、裏山に黒鉄の散歩に出かけるときは果物以外にも食べることのできる茸や薬草を摘んだりもしていただろう。
ずっと続いていくと錯覚しそうな毎日の中で、不意に訪れる大人へと進む変化に戸惑いながら、少しずつ、けれど確実に二人は成長してきた。]