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人狼物語 三日月国

70 【第36回TRPG村】百鬼夜行綺譚


【人】 京職 一葉

「────?……あれ、は」

軋む轅と足音、鈴の音に、近くの街道に目を遣れば、牛車の影。
牛車を引いているのは牛ではなく、数人の見目麗しい半裸の男衆だ。

それはこの都に居を構える豪商奥方の無粋な習慣。

己の──ではないな。夫君の、だ──権力を誇示したいものか、悪趣味としか言い様のない美意識ゆえか。

奥方の斯様な趣味もさることながら、かの家の商売自体、飢饉の際に米野菜を売り渋るなどの行いが鼻につき、私は全く奴らを気に入ってはいなかった。

「団子が気に入ったのなら、あの牛車に付いて行けば良い」

足元の妖に語りかける。
豪勢な食卓から多少の食べ物をくすねるなど、仔兎程度の小さき妖怪ならば造作も無い事だろう。

家に憑けば貧乏神になるやもしれぬ?
それは私の知った事では無いな。

「私は……妖怪を全て滅ぼしたいわけではないのだ」

人は人の世界に。妖は妖の。

今日のこの行いは、それを些か逸脱していたやもしれぬけれど。*
(35) Valkyrie 2021/04/21(Wed) 10:12:15