【人】 瀬戸 海瑠― 夏がやって来る ― [翡翠先輩が卒業して、そして自身が三年生になって初めての夏がやって来ようとしていた。 冬休み明けに彼と過ごす時間が減って、 特に一緒に寝るなんて事ができなくて淋しかったけれど、 一緒にゲレンデに行ってスキーをするなんていう 楽しい思い出もできた。 バレンタインとホワイトデーもそれぞれ恋人らしく過ごせたし、 彼の卒業式、そして誕生日も贈り物や想いを交換して、 彼の卒業後も元気にやっていける……と思ったし、 実際元気には過ごしていた。 でも最初のひと月くらいは心にぽっかりと穴が空いた様だった。 翡翠先輩の事を翡翠さんと呼び名も改めたのに、 その音を口にする機会は決して多くはなかった。 最上級生になった忙しさでは埋まらなかったけれど、 スマホでやり取りする度、 彼も頑張っていると知れる度、 自分のやるべき事に目を向けられる様になった。 梅雨が終わろうという頃、 電話をかけてもいいかと断りを入れてから、通話ボタンを押した] こんにちは、翡翠さん。 [彼の誕生日の時みたいに、言い直すなんてミスはしなかった] (38) 2023/04/22(Sat) 19:53:17 |