【人】 鳥葬 コルヴォ【バー:アマラント】 >>@5 フラン 「あんたの寝起きが悪くない方で助かりましたよ」 返る言葉は、挨拶でも気遣いでもなく。 グラスの冷たさに驚きそこかしこを強かにぶつけ、 随分痛い目を見たらしい青年を見下ろす視線は冷ややかだ。 とはいえそれは小馬鹿にしているわけでも侮蔑でも、 はたまた特別悪感情を抱いているわけでもないのだけど。 残った酒を乾して、さっさとグラスを片付けて。 何処から引っ張り出して来たのか、 店の帳簿らしきものに何やら書き付けて放る。 並ぶ名前とツケとされた代金の中、その最下部に まったく異なる筆跡が一つだけ混じっている。 "パスカル・ロマーノ"。 「書いとく事をおすすめします。 それから、寝る場所は選ぶことですね」 それ、と言って指差したのはカウンターの上の帳簿。 言うだけ言って、さっさとドアの方へ足を向けてしまった。 まったくもって好き勝手に振る舞っているものだ。 店主の友人というわけでもないようなのに。 事実あの店主と友人だと宣う人間が居るかなんてのは、 今この場に居る誰にも定かではない事だろうが。 (51) 2022/08/16(Tue) 19:46:30 |