【人】 御曹司 ジャヤート―― 婚儀の日 ―― だからもう逃げねぇってだから解いてくれよ。 頭に血が登ってるんだ。 [訴えかけても誰一人として聞いてきれない。 解いたら絶対逃走すると誰もが認識しているからである。 舌打ちをしていると作り立てのような町とも言えない村が見えはじめた。 米粒大であったそれはすぐに大きくなっていき川を遡る船は簡易の波止場に停船すると船員が縄で船を固定しはじめた。 船で着たのには理由がある。 荷台よりも多くの荷物を運べるのだからと家財道具や当面の生活に必要なものを取り揃えて持ってきていた。 あとは婚約者の家族に渡す結納分であったりするらしいが荷は海の男たちによってどんどんと運び出され、ジャヤートもまた荷のように運ばれて邪魔にならぬ位置に置かれた。 やはり解かれる気配はない。 かなり気落ちした表情でごろごろと、拗ねていた*] (56) 2021/12/02(Thu) 20:13:46 |