【人】 ルビーの花 アルレシャ>>50 ゲイザー 少しだけ目をぱちくりと瞬かせて、それから吹き出すように笑った。馬鹿にしているわけではなく、女にとっては突拍子が無かったのだ。 まるで母が娘を見るようにきゅうと目を細めて、はにかむ少女を見守っている。 「私は大したことなんてしていないわ。駆けつけたはいいけど慌てふためいただけだもの。 少しの失敗はあったかもしれないけれど、皆無事だもの。前を向いていればいつか報われるわ」 安楽椅子が揺れるように頷きながら、なんだか見上げるような称賛を聞いている。 少しばかり大げさだと思っているようではあったが、わざわざそれを言葉で制して謙遜したりはしなかった。 そう思っているのなら、それでいいのだ。ひとつの憧れに無為に傷をつけるようなことはしない。 「ふふ、なんだか照れてしまうわね。よく、人を見ているのね、まるで占い師のあの子のよう。 ……ねえ、よかったらあなたもパイくじを引いてみない? よい結果が出るかもしれないわよ」 (57) 2021/07/06(Tue) 18:53:36 |