【人】 狐娘 レイ[その日は唐突に訪れた。 いつものように一人で村を抜け出して泉に向かえば、先にロンが待っていてくれた。 花冠の作り方が上手くなってきたことを褒めて、また母に新しい花を摘む。 レイの力ではびくともしない石を簡単に削るロンの力は凄まじく、彼がその力を見せる度にすごいわ!と感嘆の声を上げた。 彼の力は大人でさえも敵わないかもしれない。 透明の石に花が閉じ込められていく様は不思議で、まじまじとその光景を見つめた。 出来上がった指輪は、彼の力が込められた、わたしの好きな花が添えられた可愛らしいもの。 お伽噺で読んだみたいに、指輪を小さな手に嵌められて。 まるでお姫様になったような気分で高揚した。] わぁ……、わたしにくれるの? ふふ、きれいね。すてきね。 ロンは「おうじさま」みたいね。 [くふくふと花の咲いた手を口元に添えて笑っていれば、背後から声がした。] (66) 2021/12/02(Thu) 21:46:22 |