【人】 灯守り 白露—統治域のおはなし— [白露域に住む人たちは、手先が器用な人が多い それは、領主たる”白露”がモノを生み出すことが好きだからであった 今代のみに限らず、それはなぜか続いており、先代も先々代もそうであった 今回の会合に白露が着て行ったドレスは、そんな領民からの贈り物である 肩から続く長袖は、繊細な模様が織られているレースで出来ていて、光を柔らかく放つようだった 幾重に重ねられたチュールのスカートはビジューで飾られていて、朝露みたいだと感じた ミモレ丈の裾がふわりと揺れるたび、きらりと七色光の雫が零れるのが好きだった 淡い髪の色の”わたし”に似合う、淡い雪みたいなドレス 白露の任に就いたわたしに、一番初めに贈られた、とっても大切なプレゼント 合わせる靴は、薄い水色のストラップシューズ いつか白露が持っていた -初めて買った靴だった- ものによく似たデザイン踵のシフォンリボンが一等気に入っていた 石畳を蹴るたびに、カツカツと奏でられる軽やかな音を聞くと、前を向ける気がした] 「灯守り様の新しい旅路に、どうか」 [そう言って贈ってくれたパラソルは、フリルとレースがふんだんに使われたラグジュアリーなもの アクセントにあしらわれたサテンのリボンが艶やかに揺らめいて わたしのお気に入りだった お人形だった時から、たくさんの可愛いお洋服は着てきたけれど わたしの為にみんなが用意してくれるものが、一番嬉しかった みんなが作ってくれたものを、黙って着ている様はまるでお人形みたいだと かつての知り合いに言われたこともあるけれど こんな幸せなことが続くなら、今のままのお人形で良いと 実はちょっぴり思ったりして……*] (84) 2022/01/29(Sat) 2:38:31 |