【人】 空虚 タチバナ[彼も好きだと言うナポリタンがテーブルに置かれる。 湯気の立つ様を見る瞳は、 この部屋を探索した時のように新鮮な色を乗せた。] ……。 [暫くは黙って彼の横顔を眺めていた。 彼に乗って見下ろしたことも 覆いかぶさる彼を下から見上げたこともあるのに、 ここから見るのは初めてだなと思った。 柔く齧りついた鼻筋や、瞬きする度に震える睫毛、 胸に穿たれた空虚にも触れた唇が 赤いソースの絡んだ麺を飲み込んでいく。 咀嚼して、嚥下して。 喉仏が鷹揚に上下する様子まで、すべて。] ……え? [故に彼のフォークがこちらに向けられた時>>114、 ピントを合わせるのに数秒を要した。] (121) 2022/08/14(Sun) 16:11:12 |