【人】 3年生 黒崎 柚樹[言い訳させてもらえば、"回路がまっすぐに繋がってなかった"としか言いようがない。 警戒がとか注意喚起がとか、武藤への"謎の信頼"がとかじゃなくて、"ここでする"という頭が、そもそも、すっぽり抜けてしまっていた……というか。 今は取り戻した現実で、日常で。 傍らには好きな人が居て、その人も私を好きと言ってくれていて。 ────までは理解できていても、どこか、あの夢の世界の一件と一直線には繋がってはいない感じがしていた。病院で過ごしたいくらかの時間もまた非日常に過ぎていて、"夢の世界の続き"のような区分に押し込められてしまっていた。 馴染みの通学路、見知った街並み、家族の顔。 太陽が沈んで月が天空に上る、あたりまえの日常。 細かな悩みはあれど、その悩みはむしろ現実みを加速させるばかりで、そしてもう、あの半ば腐ったような甘ったるい林檎の香が鼻に届くこともなくて。] (131) 2022/09/17(Sat) 20:40:41 |