![]() | 【人】 天原 珠月[このコテージにはちゃんとキッチンまであり、外でのバーベキュー以外にも食事には困らなさそうで一安心。 材料面というより幼馴染が使える設備という意味で。 キッチンを探りたくなる気持ちを抑え、その奥の窓へ。 カーテンとガラス窓を開けるとほんのり涼しさを増した風が頬をかすめて部屋の中へと入っていった。 森の方は木々の影が長く伸び、複雑に交差している。 深い森の恐ろしさというよりは森のざわめきに癒やされる心持ちの方が強いが、迷子になりやすいかもな、とは思った。 ふと思い出す記憶がある。>>54 幼い頃にまだ見知らぬ土地をひとり彷徨っていたとき。 全部が嫌で、全部が怖く見えて、近づいてきた大人たちからも逃げ、びーびー泣くしかできなかったとき。 『だいじょうぶだよ』と言ってくれた声。 見上げた顔。表情。一緒に進んでは止まる足音。 あの頃から自分より大きかった手。] ……。 [あの時って幼馴染は、雅空は幾つだったんだっけな。] (139) 2023/03/01(Wed) 19:09:07 |