【人】 白衣の アルレシャ>>145 カウス テラス 「あっ。ううん。少しだけ知っている人が乗っているってだけよ。 本当なんだから、私失言なんてしていないわ、そうよね?」 聞き咎められた言葉を頭の中で繰り返して気づいたのだろう。リボンでまとめた髪を揺らして首を横に振る。 脅すというよりは懇願するみたいに弱気な表情で問答を押し倒すが、泳いだ目線の先に"彼"を船内に見てしまった。 シガーのフレーバーは料理の匂いに被るだろうに、気にした風では無かった。それぞれが別の料理であるかのように鼻を動かしている。 誘うようなゆらめきが何を映すのか、理解するとぱっと頬を赤らめた。椿の花でも咲いたようだ。 「もう」 拗ねるように唇を尖らせる。速く瞬きしたら睫毛は擦りあって音を立てるようだ。 「クローブの粒の入った煙草を吸う人は、甘い唇をしているのだって。 貴方は、リップ奥のどこまで甘いバニラを隠し持っているのかしら」 (155) 2021/07/01(Thu) 11:32:29 |