【人】 夕凪>>169 涼風 甘えていいといってくれるあなた。 頑張ってると認めてくれたあなた。 夢を見ていられないというあなた。 一瞬悲しい気持ちになってしまったけれど。 私はあなたが変わってしまったと思わないわ。 「謝らないで。 夕凪たちね、昔からあなたの書いた物語が読みたかったの」 そばにいたわけでもないのにふざけた話だ。 10年も経ち同じ夢を見ている方が珍しいのに。 「あなたが捨ててしまうなら預かっておくわ? 私たちの願いはあなたの夢がかなった先で叶うのね」 けれど、諦めてしまったあなたがそんな顔をするものだから。つい、わがまま娘が出てしまったわ? 「お医者さんだなんて立派じゃない。 お父さん思いで優しい涼風くんなら絶対なれる…、だけどそれだけで諦めたりしないで。 それにまだあの時からたった10年、あなたのファン1号と2号は不変よ。 私たち、待つことは得意なの」 無茶なことを言っているかもしれない。 本当に後悔をしていないのなら、わたしの話はすぐに蹴れるはず。 確かめるために、ゆっくりとあなたの手を包み込むように手を伸ばす。 安心してほしい。迷っても、怖がらないでほしいから。 今が私たち人生の中で一番夢を見ると決められるときだと思うから。 (173) 2021/08/12(Thu) 16:01:02 |