【人】 “観測者” 処暑[ 先に目を逸らしたのは、手帳に視線を帰した私だったか、それとも周りに興味が行った彼女だったか。>>119 彼女の顔が打って変わって明るくなる。 その視線の先を見れば、ああ、と納得した。 ] ありがとうございます …………ええ。また、いつか、お話する機会がありましたら…… ……そうですか しかし……態々処暑域まで来てもらうのも申し訳ないです [ 席を立つ相手を引き止めはしない。 面白い事があったら、と、そう素直に言える相手が少々羨ましい。 ……彼女にとって何が“面白い”観察記録なのかというのは量りかねるが、そこはいつか機会が来た際の自分へと投げた。 『融解』能力を彼女自らが口にしたのは少々驚いたけれど。 “過去”の事を思えば、随分前向きな言葉だ。 ……とはいえ、彼女もあまり自分の領域からは出ない部類であった記憶があるから、 転送装置があるとはいえ、態々私の所まで来てもらうというのは、中々申し出にくい話ではあった。 処暑域は特別冬が寒いということはないが、領域の入口は少々奥地にあるから時折雪が積もる。 領域の入口が塞がっては、訪ねてくる主に灯守りたちにも厄介だろうから、助かる話ではあるのだろうけれど。 じゃあ、と言う相手を、会釈をして見送った。* ] (183) 2022/01/17(Mon) 1:11:04 |