>>357【美術館の中にて】
[展示された陶器類を見ながら、少しずつ少しずつ進んでいくと、聞き覚えのある声がした。
弾かれたようにそちらへと向かい、恐る恐る声がした通路を覗く。
視界に入ったのは松本さん。
声をかけようか少し迷い、一歩そちらへ踏み出した時にもう一人、津崎さんの姿を見つけて足を止める。
二人が何を話しているのかは聞こえなかったし、聞いてはいけないような気がしたので、足早にその場を去る。
自分がいつか羨望を感じた人と、自分が今日憧憬を抱いた人。
その二人の間に入ることは…自分にはできない。]