【人】 1年 白瀬 秋緒[ 津崎先生は……悪い先生ではなかった 親にやらされたピアノであったが、楽しいと思えるぐらいには ……悪いのは、あたしだった、ってだけ 津崎先生は、姉を気に入っていた 幼い頃は全然分かってなかったけど、色々、色々世界の解像度が上がるにつれて、理解してしまう 津崎先生は、直接言うことはなかったかもしれないが、 ――ああこの人も、姉ばかり見るのだなと 実際、姉の方が良い生徒だったし、実力もあったのだから、当然なのだが そう気付いたら、馬鹿馬鹿しくなって、どうでもよくなって、 レッスンをサボるようになり、逃げるように教室をやめた 「絵音くん」も段々練習で忙しくなったり、 年齢的にも昔のような関係でいられなくなったりして、 たぶん、辞めるときも、挨拶はしなかった 姉と同じく、「絵音くん」も住む世界が違うと、理解してしまったのもある ] (616) 2022/10/14(Fri) 23:31:12 |