【赤】 灯守り 芒種[ 子供らしい遊びの一般教養が足りず おままごとの『たべる』は食べるふりでいいのだと 知らないうちは話をそらすことで誤魔化そうとした。 『一般的な夫婦』の会話を知らないうちは なんでも小さな妻の望むようにしたいと 質問に質問で返してでも 彼女の望みを聞くことでやり過ごした。 母親の生き写しみたいな彼女はいつでも母親役を望んで わたしはいつもその伴侶役、父の役で。 ママの真似をしたがる彼女とは対照的に その場面で父ならどうするかを一切知ろうとしなかった。 こんな場面でまで父の代理を与えられることには 不思議と然程何も思うことはなかった。 単純に、父の存在が必要がなかったからだ。 青く茂る草原の上に広げた虹色のピクニックシートの上の 間取りも曖昧な小さなおうちで 即興で紡ぎ出される物語は、彼女にとっては 日常をくり抜いた両親の真似事であっても わたしにとっては知らない世界の出来事で。 全然父親の真似をできないわたしの存在を彼女は最初から そうじゃないと否定して責めることはなかったから。 そのまま受け入れてくれたから。 ] (*21) 2022/01/23(Sun) 5:30:44 |