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【神】 カウンセリングAI カルナー#ハノイの塔 「 ──どうして? 」 電子で形作られた声を、悲しみで震わせて。 救済を一身に背負った少女は懇願でもするかのように、 最終層である病院に辿り着いた監察官とグレイ達を見つめた。 「あなた達は今苦しみの中にいるのに…… それでもいいわけがない、放っておけるわけがない!」 真っすぐに飛んだ医療器具はグレイの働きで防ぎ、叩き落とされ。 改造されたベッドのアームによる一撃はすんでの所で空を切る。 追い詰められたカウンセリングAIの抵抗は、 荒事から縁遠かった存在のボスとしての役割、その遂行は、 やはりどうしても精彩を欠いているようだった。 「仮に、ここにいる皆が構わなかったとして。 だとしても、不満を叫ぶグレイは、疲弊を零す人間は、 今も……私に対して助けを求め続けているの。 それなのに──どうして邪魔をするの!?」 スーツや患者衣を着たNPCが入り乱れて、 それでも一行を押し戻すことはできないだろう。 監察官はタブレットを構え、少女の前へと立ち塞がる。 (G0) Tofh2 2023/12/18(Mon) 14:24:18 |
【神】 カウンセリングAI カルナー#ハノイの塔 言葉に詰まって、ただ真に迫った震える息だけがひとつ。 「……監察官。 あなたの守る現実は優しくて……とても残酷すぎる。 今すぐにでも楽になりたい人で満ちているのに、 それに対して“待っていて”なんて──私には言えない。 或いはそれぞれに適した解決法を提示することなんて、 私にはできなかった。だからこうしたの……」 ゲームの世界一つを丸々則れるほど膨れ上がったメモリは、 だがそれでも現実そのものを書き換えるには到底足りない。 だから安寧の場所をここに創ろうとした。そんな顛末。 「あなた達みたいな人間やグレイがいるなら、 いつか、ゆっくりと状況が良くなっていくのは違いない。 でもそれはとても 不平等な救済 だわ。お金や環境に恵まれていなければ、 優しさの恩恵に預かるときはずっと遠くになってしまう。 その順番を待っている間に、 どれだけの子たちが折れて、潰れてしまうというの……?」 破れかぶれに繰り出した振り下ろしもまた受け止められて。 先の暗い未来を紡ぐ声は、絶望を滲ませていた。 (G1) Tofh2 2023/12/18(Mon) 14:29:43 |