オレも会いたくて堪らなかったので、
　　全くもって問題ないよ。
　　でも約束の時間に間に合わなかったね。


［　苦笑いを浮かべながら謝罪を述べる。
　　遅れるつもりなどなかったのだ。

　　公私の切り替えの一環として、
　　一人称がオレに切り替わる。
　　けれど、最初らへんは他人行儀に
　　僕、なんて言っていたような気もする。

　　けれど恋人との時間がプライベートでないわけもなく
　　彼女と一緒にいるとき、いつの間にか
　　しっかりと一人称をオレに戻していた。　］

　　そうだな……この近くに新しく行くようになった
　　肉バルがあるんだけど、どうかな？
　　まずは食事から、と思って。
　　それと、夜景を見ながらお酒でもと思って
　　気に入ってるホテルをひとつ押さえたんだ。


［　バルが嫌だと言われても他にも案はある。

　　この近くなら確か、といくつか候補を考えつつ
　　約束を取り決めた後にすぐホテルへ電話をしたことを
　　ぼんやりと思い出す。
　　行きつけというか、ここ数年ずっと使っている
　　ホテルのひとつで、少しは部屋の融通をしてくれる。
　　勿論会員になっているからというのも
　　ひとつの理由だろうけれど。

　　雨が降っていなくてよかったと、
　　夜景を思い出しながら、ひしひしと感じる。　］

　　部屋はとったけど、帰らなきゃいけないなら
　　タクシー呼ぶから気にしないで。
　　……とはいっても、少しでも長くいたいんだけどね。


［　これで彼女が満足するような
　　遅れてしまったことへのお詫びになるだろうかと
　　考えてしまうが、彼女は寛容な時が多いので
　　大丈夫だろうと思っている。

　　ホテルの部屋には花束のお願いをしていて、
　　もし彼女が泊まらずに帰ることになっても
　　幾分かの手土産を渡すことはできるので、
　　深刻なまでに心配ということではないのだが
　　それでもやはり少しでもいい気分でいてほしい。　］

　　遅れてしまったお詫びになりそうかな？


［　連れ出す時に握った手。
　　今度は指を絡めて優しく握り直す。

　　笑っていた彼女につられるよう、
　　にっこりと笑みを返し、
　　歩くペースも彼女に合わせてゆっくりに。
　　今日も愛らしくて他の男を虜にする、
　　最愛の女性が隣にいることで、
　　街中の視線が向いているような気がしなくもない。
　　誰にも渡す予定は全くないのだけれども。　］　*