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人狼物語 三日月国


77 【ペアRP】花嫁サクリファイス 弐【R18/R18G】

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到着:鬼 紅鉄坊

【人】 鬼 紅鉄坊



千だ
私が娶るのは、あの子にする

[ 低くも穏やかな声と裏腹、
 その紅い片目は冷ややかに目の前の人間を見下ろしていた。 ]
(3) ガラシア 2021/06/15(Tue) 9:49:42

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 幾度も村人が落ち着きなく振り返る短い石段の先にある木製の門は、
 すっかり朽ちて見窄らしく、そして腐り果てている。
 彼が訪れているこの建物の屋根も、
 遠くから見ればところどころ穴が空いていることが分かるだろう。

 廃寺は山の比較的低地、村から近く開けた場所に存在する。
 それでも役目を果たしていない屋根から、
 今は閉ざされていない入口から光が届いていないように見えるのは
 空を覆う五月雨の鈍色のせいだけではなく。 ]
(4) ガラシア 2021/06/15(Tue) 9:50:02

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 小さな寺の、人間の寸法で作られた戸は狭い。
 少し身を屈めて尚、村人の視界は殆ど覆われているのだ。

 日に焼けた農夫とも違う浅黒い肌、右半身に目立つ焦げたような跡。
 捻れた四本の角が人道を外れた存在であることを示している。

 此処は神にも人にも見放された土地。
 清浄をとうに喪った寺には、鬼が棲まう。]
(5) ガラシア 2021/06/15(Tue) 9:50:49

【人】 鬼 紅鉄坊




聞こえなかったのか?

お前たちが幼き頃から閉じ込めているあの子の名前だが?
それとも、知らないとでも思ったか?

[ 語気が強まるのはこの鬼にとって珍しいことだった。

 人と妖怪とが契った古の約束に従い、
 この季に両者を仲介し輿入れを見届ける役目。
 山の妖怪の中でも優れた腕っぷしだけではなく、
 人間と平穏に関われる気質を持ってあるから担えるもの。

 ぎり、と頭上から聞こえる音に村人が小さく短い悲鳴を上げた。
 怒りを露にする程に、口にした名に思うことがある。 ]
(6) ガラシア 2021/06/15(Tue) 9:51:06

【人】 鬼 紅鉄坊




貴様らはさとの遺した子を、鬼の子などと呼び──**
(7) ガラシア 2021/06/15(Tue) 9:51:29
鬼 紅鉄坊は、メモを貼った。
(a1) ガラシア 2021/06/15(Tue) 10:01:11

【人】 鬼 紅鉄坊

─ 幾度かの日が巡り ─


[ 弱く小さな村人に激情を見せてしまった失敗は今は過ぎ。
 己を落ち着かせ、改めて思い返し省察出来る程の時間が経った。

 あの時から山に訪れた変化といえば、
 何処か落ち着きなくざわめく木々と人ならざる者らの声と
 廃寺の周囲が冷えを伴わない純白で彩られていること。

 数日前まで蕾であった花々が、六枚の弁を開き咲き誇っていた。

 白く、芳しく。
 直ぐに美を喪い地に落ちる運命の、一時の儚さ
 それはまさしく村の犠牲となる花嫁たちのように。

 娘らの輿入れを祝っているのか、はたまた嘆き慰めているのか。
 毎年この約束の日に蕾を綻ばせる。 ]
(70) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:52:26

【人】 鬼 紅鉄坊



[ それを見つめるのは、
 役目を終えた後の鬼にはよくあることだった。

 鬼は人間にとって見上げる程の異形の大男であり、
 襤褸のように変わり果てた着物姿で、廃墟に棲まい暮らす。

 獣を狩り、ただ火で炙っただけの肉を喰らい、暗がりで眠った。
 輿入れの対価の一つである余所者の妖怪の排除
 その殆どを請け負い、時にはその隻眼のように身体も紅く染める。
 
 花を愛で小動物を懐かせるような趣味は無い。
 しかし、心が確かに在った。

 だからこそ、最初は巡って来た権利を拒もうとしたのだ。 ]*
(72) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:52:44

【人】 鬼 紅鉄坊

── 回想 ──


私は花嫁など望みません
捧げられずとも、獣の肉を喰えば飢えは凌げるのです

[ 口にした瞬間、風が止み山に沈黙が訪れた。

 面して座す男の黄色の強い金の髪が鬼の目についたのは、
 無意識にその咎める視線から逃れようとしたせいであろう。

 鬼の知り合いはかつては村人たちのような黒髪であった筈だが
 それが何時のことなのか、記憶には無い。
 妖怪は人間のように加齢で見目が変わる者は少ない。
 神仏の敵となった存在と彼らでは時の流れも仕組みも違う。

 いけないよ、と男はいつもの温かな声のまま返す。
 お前だけが赦されることなどはあってはならないのだ、と。
 短い言葉には重い意味が込められている。 ]
(73) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:53:13

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 両者にとって大きく想いを違わせる約束を
 百数十年前に結ばせ村の伝統としたのは、この鬼だった。

 それまで数多の村人が、妖怪らの飢えと加虐性のままに
 獣の如く狩られ喰らわれていた。

 心身の片方でも成熟した妖怪は、皆番が巡って来れば村の娘を娶る。
 目的は多くが二つに分かれるが、忌避を示す者は今まで皆無。

 山の妖怪の中で体躯も腕力も優れ、村人との接触が多い。
 そのような者が唯一、喜ばしくあるべき権利を拒むなど。
 人間に同情しているのではと、いつか自分達を裏切るのではと思われ
 脅威として扱われることになるかもしれない。

 これでも今まで見逃してきたほうだと語る男は
 いつから山に居るのかも分からない、最も古株の妖怪。
 名前も無かった鬼を紅鉄坊と定めた、父のような存在だった。 ]
(74) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:53:42

【人】 鬼 紅鉄坊



…………

[ 丸太のように太い腕の先、大きな手が五指を折り握り込まれる。
 か弱き者の首ならば容易く手折れる力が込められる。

 真に正しく、山の妖怪としてあるべき道を示されていた。

 皆が約束に従いやがて訪れる花嫁を待って村人を喰らわぬのは、
 強き仲介役の報復が恐ろしいだけではなく、行く先が無いから。

 妖怪にとって短すぎる時間で変わりゆく人の世は、
 目まぐるしく光が増えていき、とても生きづらい。
 それは鬼もまた、同じことだった。

 それでも中々、肯定を示せずにいた鬼に続けられた説得は
 決定的かつ、記憶を呼び起こすものとなる。 ]
(75) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:53:57

【人】 鬼 紅鉄坊



「なあ、紅鉄よ。何も難しく考えるこたぁ無いさ。
 お前さんが親しかった、あの娘の子を娶ったらどうだ?
 いつか随分憤って、助けてやりたがっていただろう」

[ 人ならざる者らを取り囲む自然は、今も沈黙を破らないまま。
 鬼が息を呑む音は男によく聞こえただろう。 ]*
(76) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:54:16

【人】 鬼 紅鉄坊

── 現在 ──


[ 全ての娘たちを送り届け、最後に残るのは自身の花嫁を迎える役目。
 花を眺め思いに耽ることを止めた鬼は、門の前で待っていた。

 ここまでご苦労だった、私が引き受けよう。
 何度も口にした台詞が百数十回目に初めて出てこなくなった。

 村人の様子も声も届かぬ如く、
 白髪の花嫁をじっと眺める一つの紅眼は、驚いたように見開いている。
 ややあって、漸く一言が呟かれる様に場に落ちる。 ]

……男、だったのか

[ 今まで受けた仕打ちを何より物語る、痩せ細った姿。
 しかし女と見紛う要素は何も無い。
 せんという名前から想像したものとは大きく違っていた。

 同胞とは違う理由で指名する相手を決めたが故に──
 ──確かに性別も見目も聞いてはいなかった。]**
(77) ガラシア 2021/06/16(Wed) 1:54:41

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 常の調子を取り戻すことが、鬼には中々出来なかった。
 驚きの後に連なる驚きを齎したのは、
 か弱き哀れである筈の存在>>83の楽しげな嘲り。

 まるで周囲の心の内を覗き込み、弄んでいるかのような。

 ────「鬼の子め」と
 男衆の中の誰かの、思わず漏れたような声が聴こえた気がした。 ]


……そうだったか


[ 千太郎。その名の一部を奪う意味。>>84
 人間が赤子の名前に託す、期待や厄払いを無碍に扱うこと。
 或いは家督を継ぐ資格の無い男児だと、さとの兄が示したかったか。

 巡る思考の結論は、山に暮らす鬼には出せない。
 真新しい記憶のように怒りを見せることももう無い。 ]
(179) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:06:51

【人】 鬼 紅鉄坊




知らなかっただけだ。嫌だとは、言っていない
ここまでご苦労だった。今年の輿入れは、これで終いだ


[ そうして受け入れる意思を静かに示せば、
 場がこれ以上ざわめくことは無かっただろうか。

 老婆の様子はどうだったか。
 嘆こうとも涙しようとも、声は掛けられない。 ]

……それは私の花嫁だ。早く縄を解いてやってくれ

[ 続いて求めを口にするまでにあった少しの沈黙は、
 改めて千の姿を眺め、盗っ人の如く扱われていることに気づいた為。

 今までの花嫁たちもまた、
 逃げ出さぬよう沢山の村人に囲まれ連れて来られたが
 縛られてまでいることは今年も今までも無かった筈だ。

 例え目出度くあるのが仮初の名だけであっても、
 これは生け贄の儀式ではなく、輿入れなのだから。 ]
(180) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:07:12

【人】 鬼 紅鉄坊




年は幾つだ?

[ 返したのは当人か祖母か。男衆ではないだろう、きっと。
 二十二歳。本当ならばそろそろ花嫁を迎えてもいい年齢だった。

 思いは言葉にはならず、代わりに深く頷いた。

 ふと後ろを振り返る。
 廃寺に続く階段は短く低い、しかし── ]
(181) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:07:29

【人】 鬼 紅鉄坊




では、行くとしよう

[ 千の目前まで歩み寄り、両の腕で軽々と抱き上げて
 顔が鬼の背の側にくる形で米俵のように肩に担ぐ。

 孫の傍らには今も老婆がいただろうか。
 そうでなければ少しその視界に入り難い小さな身体を探してから、
 抱えた荷は花嫁の物なのか問うだろう。

 村に本来不釣り合いな裕福な家は、中心地に居を構えているらしい
 そうはいない長寿の女が苦労して山まで運んできた物が
 当人の物だとは鬼には思えなかったが、どうだったか。

 肯定を示すようなら踵を返す前に受け取り、
 千を抱えた方と反対の手で持って石段を上がろう。

 望み叶わなかった老婆と別れた最後の花嫁を
 白い花々が迎え入れた先に、朽ちた廃寺がある。

 久方ぶりの晴天の日であったが、空の色は既に薄らぎ始めていた。 ]
(182) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:07:52

【人】 鬼 紅鉄坊

── 廃寺 ──


[ いつもよりも低く低く身を屈め、戸を潜る。

 御像や貴重な品はとうの昔に運び出された内部は
 豪商の家で育った千にとっては特に、空虚に廃れて見えるだろうか。

 それでも、あるべきでないところから射し込む光は少なくなっている。

 説得を受けて心を決めてから今日まで、
 人間であり病を避けねばならない花嫁の為出来る限りのことをした。
 村人に幾つか頼み事をし、望んだ物を受け取って
 穴に板を打ち付け、布切れを何枚も使ってあちこちを拭い
 寝床も拵えてやった。

 抱えたまま向かった小さな部屋には
 真新しく鬼には使えない大きさの布団が敷かれ用意されている。

 その上に千を下ろし荷を置き、目前で胡座をかいて座り。 ]
(183) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:08:14

【人】 鬼 紅鉄坊



今まで辛かっただろう。もう、大丈夫だ

[ 白い髪に伸びかけた手は、途中で止まり引っ込められた。

 鬼の目にはどれ程小さく頼りなく映るとしても、
 千はとうに元服を過ぎた大人だ。 ]

怯えなくてもいい
私はお前を虐げも閉じ込めもしないのだから

[ しかし
 男であると知り、悦を滲ませ他者を言葉で嬲る振る舞いを見ても尚

 己にはどうにも出来ない理由で不当に虐げられた
 哀れな被害者であると、変わらず鬼は認識している。 ]
(184) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:08:39

【人】 鬼 紅鉄坊



今日はさぞ疲れたことだろう
小屋にも劣る我が家だが、ゆっくり休んでくれて構わない

いや、その前に……腹は空いているか?

[ 十年幽閉されていた人間が、山まで歩くのはどれ程難儀だったか。
 思い至らない程瞿曇では無い故に、短い石段すら歩かせなかった。
 
 答え次第では、部屋から辞した後に厨に向かうこととなる。** ]
(185) ガラシア 2021/06/16(Wed) 23:09:00

【人】 鬼 紅鉄坊

── 陽の昇る前 ──


[ 夜半から降り始めた雨の音が途絶える。
 手にしていた小刀を置き丸めていた背を伸ばし、鬼は顔を上げた。

 行灯に照らされる、今まで向かっていた文机に
 小刀と共に平たく四角い、小さな石版のようなものが置かれている。

 その太い腕で存外器用に道具を扱っていたらしく
 人間でも気が遠くなりそうな大きさで彫り込まれた無数の文字は
 ────全てが女人の名前である。

 即席で掃除された廃寺の中と違い、
 長年丁寧に扱われていたことが劣化の少なさから伺える。

 新しく増えた名は、三つ。そこにせんという名は無い。 ]
(237) ガラシア 2021/06/17(Thu) 15:15:09

【人】 鬼 紅鉄坊



そろそろか

[ 独り呟き、平たい石を文机の引き出しの中に丁重に寝かせ、閉じる。
 鍵は付けない、そもそも存在していない。

 今まで此処に立ち入るのは父のような男だけだったのだから、
 妖怪も人間も彼を除けば誰も近寄りはしないのだから当然だった。

 唯一の例外だった女は死んでしまった。 ]
(238) ガラシア 2021/06/17(Thu) 15:15:42

【人】 鬼 紅鉄坊

── 小部屋 ──


[ 鬼の拳のように大きく米の塊といってもよい有様の握り飯と、
 薄い汁を椀に詰め込まれた野菜が吸ってしまっている味噌汁。
 器用なのは長年続けている習慣を行う時だけなのかもしれない。

 そんな飯を運んできた頃には外は明るく、
 新たな意味を与えられたばかりの小さな部屋にも鳥の声が届く。

 声は掛けなかった。故に未だ眠ったままだったのならば
 死体のように身動ぎしない姿をじっと眺め
 一度口元に手を近づけ寝息を確認するのみで、起床を待とう。

 過ぎない程度までならばだが。 ]
(239) ガラシア 2021/06/17(Thu) 15:16:04

【人】 鬼 紅鉄坊



よく眠れたか?身体は辛くないか?
まずは食うといい。お前の為に、作ったのだ

[ 変わらず濃いままの隈の上、瞼が開いたのならば
 床に置いていた盆を持ち上げ、相手の側へ持ってくる。

 握り飯の塩気が強すぎることも汁の薄さも、鬼は知らぬまま。
 見様見真似で食事を与えようとも味見という言葉は未知。
 まあ、知っていたとして舌に合うものを出せるとは限らないが。

 食事を見守りながら、手を付けないようならそのまま
 隻眼は真っ直ぐに白を見つめ、話を切り出すこととなる。 ]
(240) ガラシア 2021/06/17(Thu) 15:16:22

【人】 鬼 紅鉄坊



それで、千太郎よ。私は何の勘違いをしているのだろうか

[ 真にあるべきだった名であり、母の想いが込められたもの
 当然そう呼ばれたいだろうと口にして約束の対話を求める。

 顔を合わせた時はあれ程楽しげだったこの者を>>186>>187
 どこか困った調子に変えてしまったのは>>188
 鬼にとっても予想外の展開だった。 ]

これから共に暮らす為、お前を正しく理解しておきたい

[ 話も早々に横たわるのならば>>189
 こちらから提案したに等しい休息を邪魔する気にもならず。

 訳も分からないまま一言謝罪し、部屋を後にしたのが昨日のこと。 ]**
(241) ガラシア 2021/06/17(Thu) 15:16:51

【人】 鬼 紅鉄坊


[ 永久に起きないのではないかと、思わず呼気を確かめてしまうような
 静かで深すぎる眠りの終わりは、見守る者には唐突に映った。>>284

 いつかもう居ない女が楽しそうに語ってはしゃいだ、
 絡繰り人形の話を思い起こさせられる。

 囁きよりも細い声が、白い若者を無機質から遠ざけた。>>285
 鬼に向けたようには響かなかった一言に触れることはない。
 未だ続いている命の継続を、問いと食事を持って求めるだけ。 ]
(386) ガラシア 2021/06/19(Sat) 1:17:55

【人】 鬼 紅鉄坊




自分が喰わないからといって、
作れないとは必ずしもならないだろう?

……うむ
確かによく舌が回っているな。何よりのことだ

[ 昨日の調子、恐らく素を取り戻した若者の揶揄に反論する。>>286
 が、その内容を否定はしない。そう間違ってもいないのだから。

 見守るつもりだった食事は直ぐに終わってしまった。
 否、決して相手が獣のように食い散らかしたわけではない。
 慣れない作業の成果の味と、痩せ身の喉に食事が通るのか
 ただただ心配で、見つめてしまったのだろう。 ]
(387) ガラシア 2021/06/19(Sat) 1:18:10

【人】 鬼 紅鉄坊



そうか
食事の量は少しずつ、増やしていくほうが良さそうだな

[ 食わねば体力は付かないが、器より大きな物は詰め込めない。
 次はもっと小さくしようと、残った量を見て思う。
 いや。当人に見てもらい、その内自分で作らせるのが一番良いか。
 味について語らない理由も知らず、一時巡る思考。

 随分と呑気なものだったと直ぐに知ることとなる。

 何か思いも寄らないことを言われるのは、
 勘違いをしているらしい以上覚悟したつもりだったが── ]
(388) ガラシア 2021/06/19(Sat) 1:18:29

【人】 鬼 紅鉄坊



……では、千太郎と

[ 咎めるように向けられた訂正と>>287
 結局はこちらに放るような態度。>>288

 確実に、言うべきことは他にある。だが、それ以外何も言えなかった。
 顔も知らないだろう母親の遺した想いはおろか、
 自分自身にすら関心が薄いかのような様子を見せられては。
 せめて自分だけは、さとの為にそう呼ぼうと決めることが精一杯。

 鬼は今までずっと、生活の殆どを独りで過ごしていた。
 こちらより口が回りよく喋る、あの妖怪の男やもう会えない女
 あまり気が合わない数多の同胞たち、
 そしていくら繕えど怯えていることに変わりない村人らとの接触は、
 鬼の舌の回りを滑らかにはしてくれなかった。 ]
(389) ガラシア 2021/06/19(Sat) 1:18:44

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 残酷な程あっさりと名の話が切り捨てられ>>289
 昨日は半ばで終わりを告げた話が再開した。
 聞き漏らさぬよう、鬼は頭を少し前に垂れて耳を低くする。
 
 肌にも重みにも、命の主張が感じられない白い手が、
 襤褸の着物から覗く筋肉質な影色に添えられて。

 近い距離で覗き込み、昏い意思を持って逸れぬ二つの黒眼。
 伏せられなくなった紅色は、しかしただただ静かで揺らぎない。
 汲み取れる感情など、覗きたがりにも見つけられなかっただろう。

 「鬼の子」を蔑みながら、その手で転がされた村人とは違い
 鬼の目線は逸れず、じっと話を聞いてから口を開いた。 ]
(390) ガラシア 2021/06/19(Sat) 1:19:02