【独】 泡沫の約束 “ ”/* お久し振りのRP村、 ご無沙汰だったせいかロルが仕上がらないYO! ななとさん村建てお疲れ様です! そしてありがとうございます! (-1) Ouroboros 2021/05/17(Mon) 12:59:45 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介 ー あの日 ー [門の脇に生えている松の木の枝が 寸分違わず剪定されているのを見てから 正直少し、居心地が悪かった。 店の奥で縮こまっているだけが 古物商の仕事じゃない。 今日みたくお客の家まで出張して 買取・販売するのも俺の大事な仕事。 母屋の脇の土蔵の中のお片付けを……と お上品そうな老婦人に依頼を受けて 足を運んでみたものの、このぴしりと 湖に張った氷みたいな静謐さは どの家にいても息が詰まりそうになる。] (11) シュレッダー 2021/05/17(Mon) 14:25:54 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[大きな居間に俺を案内すると 大島紬をしゃなりと着こなした老婦人は 『これは代々伝わるものなのですが…』と 蔵から出てきたという 花瓶やら掛軸やら茶碗やらを並べて笑う。 その洗練された所作は、きっとこの家の 伝統や格に裏付けされたものか。 その『代々伝わるもの』を何故手放すのか 俺は問い掛けたいのを堪えながら 広げられた古美術品たちに目を落とす。 やや印のズレた掛軸、 わざとらしい釉垂れの茶碗…… 俺は見るべきもの探すように 畳の目に視線を走らせて───── かた、と襖の奥からの音に顔を上げた。] (12) シュレッダー 2021/05/17(Mon) 14:26:24 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[この家に似つかわしくない、 けれど『年頃の娘』という感じのお嬢さん。 古美術の色褪せたセピア色に馴染んだ目に ぱっきりとした赤い色が、眩しくて 俺は目をぱちくりさせる。 『挨拶なさい』と厳しく一喝する老婦人の声に そのお嬢さんは従っただろうか? 目が合うなら、一言「お邪魔してマス」と 片頬上げて会釈するくらいはしよう。 たった一瞬だけだったとしても 俺はあの家に咲いた、 花のような赤の鮮やかさを忘れられない。] (13) シュレッダー 2021/05/17(Mon) 14:26:43 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[─────その後、羽二重餅みたいな 婉曲で包んだ言葉で評価額を尋ねてきた老婦人に 『額の付けられるモンはないので 大切に仕舞うより使っちまった方が よっぽどこの品モンには良いでしょうヤ』 と正直に答えて家を叩き出されるまで、 俺の瞼の裏に、赤い花は咲いたまま。] (14) シュレッダー 2021/05/17(Mon) 14:27:26 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[金にはならない、時間だけ取られた仕事を終えて それから数週間は経ったろうか。 変わり映えのしない店の中で 唯一の常連客の猫の背を撫でながら ぼんやりと過ごしていた時、 ふと、また視界に花が咲く。] ─────あ、 [眠みに重たくなっていた瞼が 視線を混じえた瞬間、ふわ、と弧を描く。 記憶の糸をたぐって、このお嬢さんの 正体に合点がいけば、頷いて。] あー、西園寺さんとこの。 [アントキャトンダゴブレーヲ、と ひょい、と頭を下げてみた。 動いたせいで、膝の上の猫から苦情が飛んだ。] (15) シュレッダー 2021/05/17(Mon) 14:27:50 |