【人】 高山 智恵 幼馴染の結婚式に出てきたという客の、愚痴の続き>>0:49にうんうんと耳を傾ける。 思いを零しこそすれど、多くをここで語ろうという風にも見えなかった相手の事情に深入りはしなかった。彼が今話したいことだけ話してくれればいい、と。 これは、お客様のプライベートを無暗に詮索しない、というのもあったけれども。 今のこの話、他者の聞き様によっては「横恋慕」「略奪愛」「不倫」というワードが出てきかねない話題でもあったので……。店が空いている時間帯とはいえ、大食い勢なあの客はじめ他の人だって今はいるし、その中に彼の知り合いがいないとも限らない。 別に私自身は、目の前の客が略奪愛だなんだをしそうだと考えていた訳ではなかったけれど。断じて。 「おっ、ショコラバナナパフェのドリンクセットですね? うんうん、甘い物はストレスにも効きますし―― かしこまりました。少々お待ちください」 温かいもの単品ではない、ホットのアールグレイをセットにしたパフェのオーダーを早速承り、厨房へと。 ……甘い物はうんたらくんたらとか余計な一言を挟んでしまったけれど、まあ、別にいいか。 (16) sakanoka 2022/10/14(Fri) 9:44:28 |
【人】 高山 智恵 注文を受けてから、厨房で作るパフェ。 常設メニューのそれは、少し小ぶりの――ふたりでシェアするよりはひとりで食べきるのに適した程度の――グラスに盛られたものだ。 輪切りのバナナにバニラアイスクリームとビターチョコレートアイス、その上にたっぷりのホイップクリームとチョコレートソース、ささやかに添えられたミントの葉一枚。 ホットのアールグレイは、カウンターで茶葉を蒸らし、ポットからティーカップに注いでお客様にお出しするもの。 勿論、オーダーにあったレモンのスライスを添えることも忘れずに。 「お待たせいたしました。 ごゆっくりお寛ぎくださいね」 こうやって客の目の前に出したグラスのパフェとアールグレイは、このカフェならでは、という目立った特徴のあるものではない。多分他のカフェでも、よく見かける感じの見た目のものだろう(あちらの客が頼んだ飾りっ気のないスタンダードなエピビラフ>>0:51も、そんな感じだったかもね)。 それでもこのパフェが、彼の知っているショコラバナナパフェの記憶とどの程度重なるものなのかは、私に解ることではなかったけれど――。 (17) sakanoka 2022/10/14(Fri) 9:45:43 |
【人】 高山 智恵 それから今一度この客の出で立ちを見て、ふっと思ったんだ。 ( まさかこの人も…… ) 丁度いま、まさに結婚式帰り>>0:22、といってもおかしくない感じのしゃれた出で立ち。 ……いや実際はそんな服装とかメイクとかじゃなかったかもしれないけれど、もし私が何か勘違いしていたとしたらそれは少し前までの修羅場の疲れの所為だったんだと思う。あと、個人的にちょっと塞いでいたこととかね。 「お財布がダメにならない程度に、 遠慮なくたくさん食べていってくださいね」 お客さんも結婚式帰りの傷心の最中なのか、なんていきなり尋ねることは勿論する訳もなかったけれども。 そういうことなら――無論、元々の大食いならそれでも――どんどん食っていけ、って思ったものだったよ。 彼女の傷心に付け込んでがっつり稼ごう……なんていうのはとんでもなかったから(これは愚痴を零したあの彼に対しても、だ)一応お財布の件も言い添えておいて、ね。** (19) sakanoka 2022/10/14(Fri) 9:47:02 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a4) sakanoka 2022/10/14(Fri) 9:50:42 |
【秘】 高山 智恵 → 古寺 貴菜バニラアイスかショコラアイス、 他にもクランベリーアイスの追加トッピング、 それぞれ1個につきプラス50円で承ってますよ。 ……3個以上追加して乗せると、グラスから 零れ落ちてくると思うから注意してくださいね? (-6) sakanoka 2022/10/14(Fri) 15:32:37 |
【人】 高山 智恵注文された通りのショコラバナナパフェを彼女のもとに持ってくるまでに、おそらく、そう時間はかからないだろう。* (24) sakanoka 2022/10/14(Fri) 15:33:07 |
【人】 高山 智恵 さて、私が勤務しているこのカフェの話を少しだけしようか。 大学すぐの場所に立地しているこの店がオープンしたのはかれこれ20年以上前。流石にあの老舗のトンカツ定食屋ほどの歴史の長さはないけれど、学生たちお馴染みの店のひとつ、といって間違いない。 実際私がここで働くようになった切欠も、大学に入ってすぐの時にこの店を訪れて(そう、私はあの大学の卒業生だ)バイトして稼ぐならここがいい、ってすぐに思ったことだった。ご飯やスイーツの美味しさもだけれど、この店の空間の雰囲気が気に入ったんだよね。 まあ実際働き始めることになったら、掃除に接客に調理補助、それからメニュー開発、今では仕入れや売上管理や新人バイト育成……そんな見事なマルチタスクっぷりも待っていたのだけれど。 うちの店長は、勿論オープン時からの店長なんだけれど。 オープン当初から店の雰囲気だけじゃなくって、ちゃんと料理やドリンクの味や素材にも拘る人だった>>7>>8。それも金欠になりがちな学生の味方になるような価格で。けれどもカフェっていうある種の特別感もちゃんと大事にして>>20。 そんな店長は、キッチンスタッフに対しても相応の厳しさを求める人だった。 (25) sakanoka 2022/10/14(Fri) 16:39:56 |
【人】 高山 智恵 ……“ 彼女 ”は丁度、そのキッチンスタッフだったんだ。 元々が独立志望で、修行の心算でこのカフェで働いていた彼女は、去年にこの店をやめている。 彼女自身、私と同じく元々は客の立場で、その頃からぽつぽつと顔を合わせていたような覚えはある。 けれどもちゃんと知り合うようになったのは、私がバイトに採用されて接客を任されるようになってからのこと。 彼女は私より少し遅れて、シェフ兼パティシエという形でここで働き始めた。 少し異なる役職での「同僚」となった当初は、単にいつもの子がうちの仲間になってくれた、程度にしか思わなかったのだけれど――。 (26) sakanoka 2022/10/14(Fri) 16:40:43 |
【人】 高山 智恵 ――もしかして、私を追ってきてくれた? そんな独りよがりな妄想が頭を過るようになったのは、ふっと、私は彼女を「好きなんだ」、と気付いてからのこと。 実際のところはさっき言った通り、馴染みのある店を自分の修行先に選んだ、というだけのことだったけれど。少なくとも、彼女はそう言っていた。 そうして彼女はひとり、自分の店を構える目標を抱いて、この店を出て行った。 (27) sakanoka 2022/10/14(Fri) 16:41:23 |
【人】 高山 智恵( ふたりでカフェ、開けたらいいな。 ) そんな夢物語ひとつ口にできなかったのは、なぜそうしたいか、を言えなかったから。 (28) sakanoka 2022/10/14(Fri) 16:41:38 |
【人】 高山 智恵( ……開きたかったな。 ) 過去形の――もう、過去形にする心算でいる――願望だって、未だ口にはしていない。 (29) sakanoka 2022/10/14(Fri) 16:41:57 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a6) sakanoka 2022/10/14(Fri) 16:52:17 |
【秘】 古寺 貴菜 → 高山 智恵「追加トッピング、そういうのもあるのか」 店員からの提案に声が漏れる。 注文したのはショコラバナナパフェ、ならば追加するのはショコラか?いや、逆をいって白黒のバニラもいい。いっそのこと酸味を追加するクランベリーを追加するのも手だ。 ……あまり悩んでも店員に悪い、ここはぱっと頭に浮かんだものにしよう。 「じゃあ、バニラ。お願いします」 (-11) tanuki 2022/10/15(Sat) 7:44:47 |
【秘】 高山 智恵 → 古寺 貴菜「……本当はこれ、常連さん向けトッピングなんですけどね? お客さん、いい食べっぷりでしたので、 特別にお教えしちゃいました」 「いい食べっぷり」とか要らなかったかもしれないけれど、まあいいか。 あまり迷う素振りなくぱっとバニラトッピングに決めて貰えたこともあって、声色ちょっと弾んじゃったよね。 (-20) sakanoka 2022/10/15(Sat) 13:59:14 |
【人】 高山 智恵 見事なお米のオンパレードを平らげてウーロン茶で流していた客>>44は、ショコラバナナパフェにもすぐに手を付けてくれた。 綺麗な盛り付け見たら撮ってSNSにアップしたくなる人の気持ちは解らなくないんだけれど、食べないでいる間にアイス溶けちゃうのはやっぱり勿体ない。特にうちのパフェのアイスは、味だけじゃなくこの不思議と軽い食感にも拘りがあるからね。 その点彼女はそういうクチじゃなくって、ちゃんと「食べる」ことを大事にしている人なんだろう。後で店長にバックヤードで報告しに行こう。あの人なら間違いなく喜ぶ。 私自身――オーダー時の応対のしやすさもあって――こういうお客様の存在は素直に嬉しい。 「ありがとうございました! またぜひ、うちに食べにいらしてくださいね」 レジ会計が済んだ時にそう言い添えて、店を出て行く客の背中を見送った。 (61) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:00:08 |
【人】 高山 智恵 このカフェの営業時間はまだもうちょっと続く。 とはいえうちはバータイムまで設けているカフェではないので、遅い夜中まで営業するわけではない。晩ご飯になんとかありつこうとやってくる学生の存在を考慮して、夜のはじめ頃くらいまでお店を開けておく程度だ。 当然昼間のようなピークタイムも夜間は普通はないので、夜のカフェは比較的穏やかだ。 ……ハロウィーン前夜や当日の夜、あと少し先だけれどクリスマスの時期は、まあ、例外として。楽しむのはいいけれど、羽目を外しすぎるなよ学生諸君! (62) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:08:57 |
【人】 高山 智恵 さて、これはこのカフェの従業員のみぞ知る秘密なのだけれど――。 この店がバータイムを設けていないということは、この店の中に酒類が存在しないこととイコールではない。 といっても、実は裏メニューでアルコールが出てくる……という訳でもない。酒類を提供しないのは、開店当初からの店長のスタンスだ。 まあ回りくどくなっちゃったけれど、つまるところ。 店の仲間同士で、仕事終わりにバックヤードとかで飲んでることはあるよ、っていう話。 生憎、私は飲めないクチなんだけれどね……* (63) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:09:44 |
【人】 高山 智恵 さて、本当に忙しくて雑念の入る隙もない時ならともかく、そうでないゆったりとした営業時には、余計な一言二言が頭の中にぼんやりと浮かぶこともある。というかさっきからそんな感じだし私……。 そう、例えば、あの客みたいに>>0:49。 遠く離れている誰かのことばかり頭の中にあるようなお客様ばかりだったら、こっちは苦労ないよな〜って(純粋に食べたり飲んだりしに来てくれるお客様はなおのこと大歓迎、っていうのは言うまでもないだろう)。 もっとも当人の気持ちも考えたら、余計にこんなこと言える訳ないんだけれどね。向こうからしたら「こんな客面倒だろ」って思っててもおかしくないし――今の私自身と照らし合わせてみればなおのことそう思えたし。 (64) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:13:58 |
【人】 高山 智恵 ……いるんだよねえ、店員をしつこくナンパしようとしてくるご迷惑なお客様方って。 うちはその手のバーでもクラブでもない、ただの学生街のカフェだっていうのは見て分かると思うんだけれど(寧ろ、分かってても?)こういう連中は意外にいる。 口説かれた当人にそのケがあるなら別に口を挟むこともないんだけれど(これは客同士の場合でもそうだ)……そうじゃないケースの方が見た感じ多い気がするかな。 うちのバイトは社会経験が未熟な学生が多いってこともあって、ナンパ客の迷惑行為への対応に関しては、新人の研修時にきちんと指導する。 細かい指導内容については割愛するとして、大原則は【しつこいナンパはセクハラだと認識せよ】【困ったら些細なことでも店長か正社員スタッフに相談する】。ちなみに私も今や正社員スタッフだ。 そうそう、逆のパターン――「店員が客をナンパする」は明確に禁止行為だからね! 店の外で個人的にする分には勿論、こちらから何も言うことはないんだけれど。 (65) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:15:35 |
【人】 高山 智恵 私自身も、ナンパ客に絡まれた経験はそれなりにある。 バイト時代は当然のように店長や先輩方に言いつけにいったよ。正直、研修時のマニュアル指導にすごく助けられたと思ってる。 今では私もそれなりにタフになって、その場できっぱり断れるようになったもんだ。 あんまりアレでソレな場合は、店長との協議で店から叩き出すけれどね! (66) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:23:18 |
【人】 高山 智恵 今年のまだ暑くて堪らない頃だったかな? その時もナンパ野郎の客がいたんだけど――。 そのナンパの口上というのがあまりにもあまりだった>>11ので、断るよりも前にぎょっとして、そして、笑いがこみ上げてきてしまった。今どきそんな口説き方あるかな??って。 あの時の同席のお客様が、すぐさまお連れ様のナンパを止めてくれたお陰で、私はお客様方の前で変な爆笑をせずに済んだというものだよ。 同席のお客様からの謝罪>>12は、明るい笑顔で快く受け取った。それはそれとして、当のナンパ客に対しても 「仕事中の従業員へのお誘いはご遠慮ください」 と笑って明言しておいた。流石に目は笑えなかったけれど。で、ナンパ男の迷惑行為をちゃんと制止できる連れがいるならまあ大丈夫だろうと、彼らへの応対はそのまま私が続けることにして――。 (67) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:27:26 |
【人】 高山 智恵 実際、この夏限定のデザートを持ってきた時、当人に笑顔で感謝されこそすれまた何か言い寄られることは無かったので>>13、ひとまずこの件はこれでおしまい、で済んだものだった。 まあその後何かの折で目が合ってウィンクとかされた時には>>14ちょっと殴ろうかなとも考えたけれど(本気で殴ったら流石にクビ案件だ)その役は私じゃなくてお連れ様だったので、やっぱり私から特に何かしたり報告に行ったりする必要はなかったさ。 正直、あの二人組が二人揃ってナンパ男だったらどう捌こうか……と思った瞬間が無かった訳じゃない。けれどもその懸念は杞憂だった訳で。 良き友人同士かそれ以上のマブダチか――までは私の知るところではなかったけれど、ともかく、良識のある大人の連れが睨みをきかせてくれたことに内心感謝したものだった。 ……恋人同士の可能性? 片方が相方の目の前で別の相手堂々と口説いてるカップルとかいないでしょ。っていうかいないでほしい。 (72) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:31:19 |
【人】 高山 智恵 ところで「仕事中の」誘いはNGということは、オフの時ならOKなのかって? 答えはNo。ナンパ自体が鬱陶しいってのもあるし、そもそも興味湧かない相手だったし――今や店を去った未来のカフェオーナーにずるずると引きずり続けている想いが仮になかったとしても、これは変わるまい。 (73) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:35:02 |
【人】 高山 智恵(“ 天使 ”っていうのは、あの娘のことを言うもんだよ。 ) 宗教上の「天使」の定義についてはともかく(これ、大学の講義で聞かされたなあ……)私は率直にそう感じたものだった。 自分のカフェを構えたいと、フードもデザートもドリンクも妥協しない店を出したいと、目標に邁進していた彼女。 その専心ぶりやあまりのものだったので、店長も普通ならキッチンスタッフにも接客を求めるところを、彼女には厨房中心の業務に就かせていたくらいだった(店やる心算なら経営もきちんと学んだ方がいいよ、とも言い含めていたけれども)。 ひとつの“ 使命 ”――彼女の場合、そう表現してしまって差し支えあるまい――にひたすらに突き進む者の崇高さ。 裏表なく、決して豊かではない表情の中にも素直に現れる感情。それでいて、ふとした時に見せる無邪気で屈託のない笑顔。 そんな彼女を“ 天使 ”と呼ばずして、一体何と呼んだらいい? (74) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:35:15 |
【人】 高山 智恵 そんな“ 天使 ”にだって“ 素敵なあの男 ”がいるのだと聞かされた時は……ただただ笑って、「そっか」って頷いた。 恋も仕事も望めば両方手に入れるくらいのことは、彼女ならやりそうだとは思えた。 けれどもその恋は、私には向かない。そう悟った。 悟っていて、それなのに…―――ああ、未練がましいっていうのはこういうのを言うんだろうなあ。 …………。 あの美辞麗句のナンパ男は――どこまで本気かは置いといて――振り向くことのない女を口説こうとして。 当のその女は、自分を見ていない女にうだうだと拘り続けている。 ああ、幼馴染に想いを寄せていても、その幼馴染が知らない間に別の人と出会ってしまったっていう人もいて。 好きだった人が別の人と結婚するのを見送るだけの人は、他にもいるんだろう。 世の中かみ合わない恋ばかりじゃないっていうのは、幸せな祝福の場の存在が確かに示してはいる。 けれどもどうして、こんなにも、一方通行になっちゃう恋って多いんだろうね。** (75) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:37:44 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a13) sakanoka 2022/10/15(Sat) 14:59:47 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a16) sakanoka 2022/10/15(Sat) 18:59:50 |
【独】 高山 智恵/* ちなみに「室生さん→ ナンパ男 彼」の片想いの可能性を高山さんが挙げていない(=気づいていない)のは意図的なものです。室生さんの言動を注意深く観察していればもしかしたらピンとくるのでは?とも思ったのだけれど、すぐに気づいちゃうのはなんかちょっと勿体ない気がしたから、というだけのことなのですが。 (-25) sakanoka 2022/10/15(Sat) 19:17:47 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a20) sakanoka 2022/10/16(Sun) 7:52:02 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新