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人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「知らねえよ。
見栄っ張りで意固地なとこはそうかもしれねえけどさ。」

男がみんなそうかと言われれば肩をすくめる。
ある程度はそうかもしれないし、そうでないかも。

「なるほどな。アンタらしいや。
俺は先生のこと、恨んだりしねえよ。
アンタは殴られたから殴り返しただけなんだから。
俺の方が恨まれると思ってたくらいだぜ。」

息を吐いて。
けれどこれで終わった訳じゃない。

「こんな法律、長くは続かないさ。
戦おうとしている奴もいる。
市民の反発なんて言わずもがなだ。」

「さっきの話。
もしお互い無事だったら、その時は付き合うよ。」

貴方だったからこそ、だろう。そう言えたのは。
そうして貴方を、警察署まで連行する事となる。
とはいっても…きっと、途中で貴方と別れて
この男もまた、同じ場所へと連行されることになるのだ。

貴方の、友人の手で――
(-270) ぴんじぃ 2023/09/21(Thu) 22:13:57

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 月桂樹の花 ニコロ

「ああ、なるほど。やっぱ似たような事言ってるわ。
 傷の自慢したがり、だったかな向こうは……」

きっと、やはりどこかで似ているのだろう。
それはある種の、『筋』の通し方なのだ。たぶん。

「生憎、恨むほど――まあいいや」

長々と話す事でもあるまい。
互いに恨まず、互いに憎まず。
終わったらメシでも食いに行こう、それでいい。

「よし、んじゃさっさとこのトンチキな騒ぎが
 収まる事でも祈っておくとしようぜ。
 ……あ、お代はそっち持ちな!」

カンターミネは、最初から誰も信じていない。
それゆえに、カンターミネは誰の事も恨みはしない。
たったひとつ――
『ダニエラに手を出す』というタブーさえ、侵さない限り。

故に、手錠で繋がれたその手を、別れ際のあなたに振った。
何を奢るか考えておけよー、そんな風に投げかけて。
(-274) shell_memoria 2023/09/21(Thu) 22:25:11
カンターミネは、手を振る。手錠の鎖が音を立てた。
(c13) shell_memoria 2023/09/21(Thu) 22:26:48

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

尋問にかけられるという話は逮捕当初に聞いていたはずだった。半ば脅しめいたその言葉を貴方がどう受け取ったかは分からない。テンプレ的でつまらないと思ったか、僅かでも焦りを感じただろうか。
呼び出しまでの期間のことだって、貴方はどう感じたのだろう。案外長いと感じたかもしれないし、短かったかもしれない。
実際のところ、貴方に呼び出しがあったのは、共に捕まった数人よりも後のことだった。

「カンターミネ・ヴォーフル、『取調べ・・・』の時間だ」

二人の警官が貴方を引き立てる。一応の気遣いか、それ以外の理由か、どちらも女だ。
ここは警察署内。例の法への反発もある中で、被疑者を目に見えて乱暴に扱うのはまずい。そういう気遣いがあってか、貴方を連れる動作はそう強引ではなかった。
取調べ室に入るまでは。

(-366) rik_kr 2023/09/22(Fri) 14:39:06

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

開いた扉の中にいたのは男である。
手に持った資料に粛々と目を通していた男は、その音で顔を上げた。

「お疲れ様。」

声をかける先は貴方ではなく、警官たち。
彼女らは溜息をついて貴方の尻を蹴飛ばした。もう触りたくもないという風に。
さて、貴方はそれでよろめいただけかもしれないし、転んでしまったかもしれない。
どちらにせよ男は気にかける様子を見せず、「座れ。」と言うだけ。
(-367) rik_kr 2023/09/22(Fri) 14:39:21

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 法の下に イレネオ

牢に入ってからというもの、それはそれは退屈な時間だった。
何せ普段は休まる時が殆どない訳で、
その全てを情報の摂取に使う女はそれら全てがない
牢獄の中でやる事もなく、ただ惰眠を貪る一方であった。
故に、尋問の引き立てが来た時も欠伸混じりで。

「あぁ〜あ。……取り調べ、ね」

はいはい、と素直に応じ、道中でも大人しく、静かに。
抵抗した所で無意味だし、この手の連中が
まとも・・・だった試しがない。

そうして取り調べ室に入った途端の行動を
鼻で笑いながら、「ほらな」と内心で呟いた。

となると、それを平然と見ているこの男もまた、
まともではない。よろめきから立ち直ると肩を竦め、
用意された席に大人しく座るだろう。

「……あいつら可視化法って知らないのか?っていうか
 あんた逮捕された側だろ?よく尋問する側になれたな」

へら、と笑いながらまずは出方を見る。
さて返る反応はどんなものか。
(-383) shell_memoria 2023/09/22(Fri) 16:32:14

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

マフィアお前たちには適応されない。」

事もなげに言う。
それはつまり、貴方は例外であって、
この一室はある種治外法権的な空間であるということを示していた。
言いながら、男はさっと壁の方に視線を走らせた。それが本当に機能していないか、疑って確かめるような視線だった。


「そうだな。毎日毎日頭の湧いた悪人の相手をするのは気が滅入る。」
「お前もさっさと吐いてくれると助かるよ。」
「そうだな、まずは例のテディベアについて。仕掛け先と総数、利用目的から利用した内容、データの所在まで。全てだ。」

貴方からの問いにはずれた答えを返して、こちらの聞きたいことばかりを押し付ける。
まるで自分の立場が絶対的に上であるというように、自分の手に裁きの天秤があるのだというかのように、男はつらつらと言葉を続けた。
(-402) rik_kr 2023/09/22(Fri) 18:41:49

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 法の下に イレネオ

「ヒューッ。世も末だな。真っ先に捕まったクセに?
 自分は正義だって信じて止まないツラだな。
 ……その癖『パパ』からの視線は怖いか?
 言いつけを守れてるかビクビクするガキみてえだ」

情報を食う女は、視線を食い、その結果を歌う。

「ああ、俺も同じ気分だ。一日だってごめんだね」
「だから頭の湧いた正義面した犯罪者相手でも、
 素直に答えてやるからよく聞けよ」
「仕掛け先はそこら中。総数は渡し過ぎて忘れた。50か60か。
 利用目的は大体プレゼント。内容はお喋りクマちゃん。
 データの所在?録音した音声ならテディベアの中だ、以上」

まともに答えないなら、こちらも同じ。
情報屋は対価なき情報取引に精度を保証しない。

実際、『子機』のテディベアにはお喋りの機構がついている。
事前に録音された音声を小型のスピーカーから再生する。
それとはまた別に、『親機』から遠隔でデータを受け取り、
それを出力する機構もついていたが、
残念ながら子機から親機は辿れないようになっていた。
(-405) shell_memoria 2023/09/22(Fri) 19:02:28

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

その歌声は男にとって酷く耳障りだ。

「余計な口を開くな。」
「それとも怯えているのか? 追い詰められた鼠はよく鳴くらしい。」

一睨み。
それで黙ってくれるほど、貴方は優しくないだろうが。

それきり再び、視線は紙面に落とされた。

「データの受送信の機能がある。」
「大元の親機があるだろう。どこへやった。」

それくらいは警察の方でも解析できる。
やはり目を向けないままに問い詰める。

「俺は全て吐けと言ったんだ。」
「お前には薬物についても聴取の必要がある。」
ほか・・より手間がかかるんだ。さっさと話せ。」

とんとんとん。ペン先が紙面を叩いている。
苛立っている仕草だった。
この男は、マフィアが嫌いだ。
それでも────何か、貴方のことは特に気に食わないらしかった。どの発言が気に触ったのだかわからないけれど。
(-474) rik_kr 2023/09/22(Fri) 23:52:25

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 法の下に イレネオ

「おお、そうだな。おっかなくて震えあがるね。
 天下の警察サマで犯罪者がデカい顔してるから」

睨まれるとおお、こえ〜。そんな風に声をあげた。

「へぇ、そんな機能が?そりゃ知らなかったな。
 機械音痴なもんでね。中に入れたのも
 適当な店で買ったレコーダーだし。
 最近あるだろ?『ハッキング』って奴?」

けろりと吐いて・・・みせる。
何を、とは指定していないのが悪いとでも言うように。

「ははあ。そりゃ大変だね。簡単にストレス溜めて、
 苦労が絶えないな。薬物?そりゃ調剤免許もあるしなあぁ。
 おっと、だからってその辺の子供に配ったりはしないぜ。
 これで『先生』なんて呼ばれてるくらいだからな、ハハハ。
 俺がこうやってさっさと話す、協力的な奴でよかったろ?」

変わらず、にやけ顔で形式上は質問に答える。
実際調剤免許も捜査の一環で発見されるだろう。
これに関しては本物だ。何故取得したかと聞けば
『趣味で』程度の答えしか返ってこないだろうが。
そうして苛立つその仕草を見て、一度息を吐くと口を開いた。

「手を煩わせる気はなかったがね。
 入るなりケツを蹴り、法の下に平等って言葉を忘れ、
 『パパ』の盾を使ってデカい顔してるような奴に
 素直に従えってのが無理筋だと思わねえ?
 逆の立場ならすらすら喋るか、あんた?」
(-485) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 0:34:40

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

革靴の底が鳴る。こつ、こつ。
牢獄を繋ぐ通路。…目当ての場所まで、真っ直ぐに。

「…ミネ」

とある牢獄の手前で立ち止まった女は、底に収容されたあなたへ声をかける。
今は、眼鏡を外していた。
不安げで悲しげな面持ちが、そうっと檻の中を覗く。
(-492) oO832mk 2023/09/23(Sat) 0:56:11

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

カンターミネは、通路に背を向けて横たわっていた。
どこかぐったりとして見えたが、
足音が牢の前で止まり、そこに声がかかれば
のっそりと転がってあなたの方を向いた。

「……わお、エ……エーコじゃん。元気そう……でもないな。
 いやー捕まっちゃったぜ、酷くない?
 俺別にそんな悪い事してないってのになあぁ」

へらりとした声。いつもと変わらない声。

眼鏡を外しているなら、顔に浮かぶ憔悴の跡に気付くのは難しいだろうか。
その分、いつもと変わらないように聞こえる声の奥に
ほんのりと我慢の色が見えるかもしれない。
(-496) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 1:12:23

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「自分のことか? 立場をよく分かっているじゃないか。」

わざとらしく嘲って笑う。
とんとんとんとん。紙面を叩く速度は段々上がる。
実のところ、この男は普段こんな風には話さない。
悪人と話すことなどないというように冷ややかな面差しを向けているのが男の常だ。
貴方の言葉のどこかがこの男の心情を逆立てている。貴方のペースに巻かれている。


「そうか。直ぐに辞表を出した方がいい。」
「『協力的』の意味も正しく知らないんじゃ役不足だろう。それに」
「お前は存在自体・・・・が教育に悪い。子どもたちが可哀想だ。」

とんとんとんとん。
とんとんとんとん。
渋面とにやけ面が向き合っている。
紙面を叩く速度は徐々に上がっている。

お前たちマフィアには適応されない。」
「法による権利も庇護もお前たちに与えられるべきではない。」
「それを享受していいのは法を守っている人間だけだ。」
「抜け道ばかり探しておいて利用しようなどと」
「都合が良すぎると思わないのか?」

とんとんとんとんとん。
とんとんとんとんとん。
問いには答えない。
答える義理はない。
(-504) rik_kr 2023/09/23(Sat) 1:46:03

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

「ん?ああそうか、自分の事は省みれないタイプ?
 そりゃそうでもなければ厚顔無恥すぎて尋問なんか
 出来るわけないもんな、あっはっは」

普段のあなたを知らない女は、歌う。

「人のふり見て我がふり直せって言葉が極東にある。
 あんたの辞書には書いてなさそうだな?
 じゃなきゃやっぱ鏡は見たくないタイプか。」
「へえ。その可哀想な子供達が頼りにしてるのが
 『正義のおまわりさん』じゃない方が
 よっぽど可哀想だと思わないか?あ、悪い。
 自称・・正義にはわかんないよな」

歌う、歌う。叩く音はメトロノームの如く。
言葉の切れ味はスタッカートで。歌う、歌う。

「おや?また同じ言葉。録音機を相手にしてたか?」
「爆笑モノだな。大体の奴は2回言えば理解できるが、
 あんたには3回目が必要らしいや。」
「鏡を、見ろよ、犯罪者くん。
 法も守れず、人も守れず、苛々だけため込んで、
 次はなんだ?物にあたる?それとも人にあたるか?」
「なあ?抜け道を通ってそこに座ってる奴がさあぁ」
「"都合が良すぎると思わないのか?"」

これは、鏡のふりをしてみせる。
お前は俺だ。或いは、お前の方が醜いと、歌う、歌う、歌う。
(-508) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 2:05:22
カンターミネは、歌う、歌う、歌う。
(c23) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 2:38:49

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「どうせお前が唆したんだろう。」

決めつけだ。

「お前たちの十八番。口八丁で無知な子どもを誑かす。」

偏見だ。

「二回で理解出来ないのはお前の方だろう。」
「俺が法を守らないんじゃない。法はマフィアお前たちを守らない。」
「────、」



激しい音を立てて男が椅子から立ち上がったのと、
取調室の扉が叩かれたのは同時だった。

立ち上がった男はびたりと動きを止め舌打ちをする。そうして長い息を吐いてから返事をすれば、一人の警官が入ってくるだろう。
彼は何かを手に持っていた。そうして貴方の方を伺いつつ手短に男と言葉を交わし、それを渡して、また出て行った。

さて。
再び室内には静寂が訪れる。しかし状況には変化があった。
男が手の中で弄ぶそのケース、或いは瓶を、貴方は見たことがあるはずだ。
(-521) rik_kr 2023/09/23(Sat) 3:00:33

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

「クハッ!ハハ、ハハハッ!
 質問には答えません、相手の事はきちんと見ません、
 自分と向き合う事も出来ません、
 権力を振りかざす事しか出来ませんか!
 いいねえ、『パパ』そっくりになってきたな?
 あー笑える。ひとつ予言してやるよ、その内お前、
 ママにも署長代理パパにも見放されるぜ!」

見てみろよ、あいつの動き。
今ノックが聞こえる前、なにをしようとした?
所詮、法を守るとか言ってる正義面でもこの程度だ。
警察なんて肩書も、紙屑以下の嘘っぱちだ。
裏で嘘を吐き、人を嘲り、笑い、貶める。
そうとも、誰も彼も信じるに値しない。


「――その程度なんだよ、お前の正義も、法も。」

へらついた笑みを張り付かせたまま、口を開く。
……正直言って、あまり見たくない物が見えているが。
それをわざわざ態度に出してやる程、
こいつに優しくする理由はない。
(-523) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 3:15:53

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

新しい玩具を手に入れた赤子のようだ。
まるで不思議そうな顔で手の中のものを見る顔はそういうものによく似ている。
それ以外への興味が抜け落ちたような、奇妙に冴えて一途な表情。
警官から何かを受け取った男はそういう顔をしていた。そういう顔をしているだけの、やはり苛烈な男だった。

へらりと笑う貴方が言葉を切る。
それとまた、ほとんど同時に。

ガシャン!


先程より大きな音が部屋に響いて、貴方はそのまま後ろに吹っ飛ばされることになるだろう。
顔面に強い衝撃。
椅子ごとひっくり返り、頭を強かに打ち、手錠で戒められた腕では身体を庇えもせず転がったはず。目の前の男がテーブルをひっくり返したのだと気づいたのはどのタイミングだろうか。
どうあれきっと全身が痺れたように痛むはずだ。打ち付けた頭も方向感覚を失うだろう。それでも貴方は立ち上がろうとしたかもしれない。それくらいは出来たかもしれないが。

仕掛けた側の方が状況の理解は早いものだ。
貴方が起き上がる前に、この男は貴方の左肩を踏みつけている。
(-528) rik_kr 2023/09/23(Sat) 3:41:34

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

……ああ、マズったな。処分が甘かったな。
そう考えた時には、ぐぶ、なんて湿った音が鼻奥から響く。
脳の天辺なのか、後ろか、ともかく痺れの波が
寄せては返し、きいんと耳鳴りが続く。

頭の奥では冷静に、やっぱりこうだよな、と笑う。
表情にもまた、笑みは張り付いたまま。
呂律が回らない事は口を開くまでもない、
いやそもそも口を無思慮に開けたら不味い・・・
せめてどれかひとつでも砕ければ、そんな考えの元
身体を起こ――せない。二度、三度と試して、
やっと左肩を踏まれている事に気付いた。

女の扱いも知らないのかよ。声もないまま、
赤く揺れる視界に映る、鬱陶しい顔に毒づいた。
(-529) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 4:03:08
カンターミネは、歌うのをやめさせられた。
(c24) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 4:05:35

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

乱視の視界に鮮やかに灯るライムグリーン。
女には
受け止める
意気地がなかった。
…そんなあなたの様子や顔色をだ。

「…」

いつも通り、――ううん、ちょっと違う。
ただそれだけなのに胸が痛い。
そうっと手を持ち上げる格子に触れて。
指先には、ぞくりとするほどの冷たさだけが残った。

「…あはー。そおだよねえ。」
「ミネはちょおっと、盗聴とかそゆことしてただけでえ。」

…頬を緩めて、へにゃりと笑う。
この特技はきっと、こんな時にこそ役立てるべきものだった。
それにしても発言は身内贔屓が過ぎるが。

「……あたしは。」
「だいじょおぶ、元気だよお。」

えへへと笑って、左手を翳す。
少し傷が入ってしまっても剥がさずにいるこの小指のネイルは、あの日あなたに塗ってもらったものだ。
…だから、大丈夫。ダニエラ・エーコは、まだ頑張れる。
(-531) oO832mk 2023/09/23(Sat) 4:45:17

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

わかってる。だって『エリー』は優しいから。『エーコ』は聞き分けがいいように見せているから。
鼻血の跡、きちんと拭けてるよな。よだれ、垂れてないよな。


「そうそう、ちょっとだけってオーイ。しーてーまーせーん。
 俺のテディに変な仕掛けがされてただけですぅー。」

ふざけるように笑いながらも、近づかない。
普段なら絶対に駆け寄って、その手を握るのに。
悪い。今はふらついて真っ直ぐ立てないからさ。


「そりゃあ、……元気ならよかった。おまわりさんも
 日々激務だろうけどさ、ここからのんびり応援してるよ」

そう言って寝転がったまま、片手を上げる。
この仕事のない場所をそれなりに満喫しているらしい。
お前だけは同じ場所に入らないでくれよ。


そして、少しの沈黙があって。ふと、思い出したかのように。

「あそうだ。今度あいつ、あのーあれ。ほらあいつ、
 花屋で『マリーゴールド』をよく買ってた奴。
 あいつにもし会う事があったらさ」

あなたの指を見る。フレームの歪んだ眼鏡だと、
少し見え辛いけど、きっと約束の花はそこにあるから。

「……無理すんなって、伝えといてくれない?
 あいつ、すーぐなんでも我慢しちゃうだろ〜?」

へにゃりと、ブレてても見えるように大きく笑った。
(-532) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 5:08:19

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

守りたいものが、あった。ひとつ、ふたつ。…ふたつとも、こぼれ落ちて行く。
守ることができなかった、その想いだけで枷なのに。
そのふたつの現在いまを知ると今度こそ先に進めなくなってしまう。


「…ふふっ。」

何がおかしいのか、あなたの様子を見た女は笑う。

「…大丈夫だよお、ミネ」
「カメラとか、全部、弄ってきたからあ」

びっくりしたあ?なんて女は悪戯に笑った。
元から女は警察に忍び込む内通者。これくらいなら、易くあり。
…更に言えば、上層部が検挙されたこの署内を好きにするのは、日頃より少し、更に易かった。

「…あんまり長くは保たないけど、でも」
「話したいことが、あったのお。」

とはいえリスクは多分にある。
毎度面会でこんなことはしていられない。
…リスクをとる必要があったのだ。だから、今こうなっている。

「その、お兄さんのこと、なんだけどお。」
「…ううん、あんまし長く話す時間もないしい、要件だけ、言うねえ。」

指先が上がる。5本。時計を見ながら、1本減った。
時間の猶予は、それだけだ。

「ミネのモーテルに、まだ仕事道具が残ってるなら」
「場所と使い方、教えて欲しいんだあ」
(-542) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:58:20

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……。あーもうほんとびっくりした。
 俺のお姫様はおてんばな事で……
 いっそ王子様って呼んだ方がいいかもしれん……」

いや、その座は譲る気ないけど、とも思うが。
ともかく、軽口を叩くほどの時間はなさそうだから。
『お兄さん』の事も気になりはするけれど。

「……おいおい、あそこに踏み込まれたんだぜ?危ない……」

そこまで言って、かぶりを振る。この子は、子供じゃない。
隣に立つ相手。唯一、信を置くその人だから。息を吸い込む。
(-593) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 11:38:38

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「……連中も色々探ったろうが無茶は出来ないと思う手間のかかる大型の備品は運び出してないはずだベッドまだ買い替えてなくてよかったよ『あのベッド』のマットレスを外してスプリングの中から緑色の部品を全部抜いてくれそしたら頭側にある収納に幾らか道具が落ちるからそれを組み立てて使ってくれ番号のシールが貼ってある」

一息に伝える。それが、あなたに渡せる唯一の仕事道具。
誰も信用していないカンターミネが、
万が一、億が一に備えて用意した最後の"武器"だ。

「フェイクの部品も入ってるから、番号を間違えるなよ。
 正しい組み合わせはフィボナッチ数列の順だからな。
 起動すれば後は5番の部品を捻って、
 チャンネルを合わせればいい。
 34番と、55番がそれぞれ送信機と受信機。
 13番が録音機だ。全部本体のスイッチ一つで起動する」

なるべく簡素に、必要な情報は確実に渡す。
後は、あなたに全てを任せて、女は息を吐く。

「……もし、万一……本当に万一、エリーが捕まったら。
 全部俺が指示したって言ってくれ。俺に脅されてたって。
 昔馴染なのを利用して、無理矢理やらされたって」

実際、それに近しい事をするんだから。
自分の道具を渡して危険な橋を渡らせるんだから。
これくらいのリスクは、せめて背負わせてほしかった。
(-596) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 11:39:55

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

「やあだ、王子様はあ、ミネだもん


そう口を尖らせたのも一瞬のこと。
すぐに和やかににこりと笑った。

ありがとう。信じてくれて。
その言葉だって本当は嬉しいんだ。
でもただ守られるだけのお姫様では、やっぱりいたくなんてなかった。


立てた指が曲がる。1本、2本。
その間あなたの言葉を1字1句忘れることなく聞いた女は、密やかな吐息をまたひとつ落とした。

「…うん。ありがとお、ミネ。」
「でもお、あたしは優秀だからあ。そんなことにはならないよお。」
「…ふふ。見ててよねえ。」

そう嘯いたのだって、もしかしたら強がりかもしれない。
それだってあなたにはわかるはず。だって女は、笑っていたわけだし。

「『マリーゴールド』の子にも、伝えときまあす。」

けれどからかうように、あなたのお転婆姫はいう。
茶化して笑って、ゆるりと変わらないあのモーテルでのことみたいに。

指が、あと1本。
反対の指先を冷たい格子に滑らせて、その向こうに薄い微笑みを向ける。
…本当に、あっという間なのだ。最後の指も、次第に折られるだろう。
(-600) oO832mk 2023/09/23(Sat) 12:12:36

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

長身が室内の光源を遮った。
逆光のせいで男の表情はよく見えないかもしれない。
概ね無表情のようなそれと、やはりにやけ面の女が向かい合っている。

貴方は解っているだろう。男がこれから何をしたいか。
男もまた解っている。貴方が解っているということを。
ここからは根比べだ。けれどそれも、貴方に分が悪い。
人は痛みに耐えられる。
痛みになら耐えられる。
大抵は、絶叫を対価に。

薄暗い顔の中で金色の瞳だけが光っていた。

裸足ならまだしも、靴を履いた状態で人体を​────しかも腹や胸ならともかく肩を踏みつけるというのは難しい。肉の薄い部位では骨と関節で作られた凹凸が目立つし、靴底の形はそれに添うものではないからだ。

ぐ。
ぐい。ぐり。

だから自然、強く力を込める必要が生じる。
硬いラバーが肌に食込むだろう。骨と皮膚の間で押しつぶされる神経が悲鳴をあげるだろうか。
(-603) rik_kr 2023/09/23(Sat) 12:36:07

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

説明が終わって、お願いも終わって。
指折り、時間の流れを見ながら、
ため息とともに笑みがこぼれる。

「見てるさ。一番近くでな。
 しっかり伝えといてくれよ」

きっと、そう遠くない内に朝が来る。
真っ暗な内はライムグリーンの方が目立つけど、
明るさを交えた頃にはミントブルーが輝き出す。

「……なあ、残りの時間の間、目ぇ瞑ってくれる?」

言って、立ち上がる。ふらつきながら。
一度、二度とたたらを踏み、二度目には壁にぶつかりながら、
あなたの方へ。最後の1本が折られてしまう前に。

「後は頼んだ、エリー。いってらっしゃい」

あの夜と同じように、送り出す。
今はネイルを塗り直す事は出来ないから。
ふらつく姿は見せたくないから、
片膝をついて、少し背伸びして。

格子にかかる指先に、ほんの一瞬のくちづけを。
あとは、指が折れるだろうから、また床に転がった。
(-604) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 12:36:34

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ

笑んで頷き。
続いた言葉に、一瞬だけきょとん。
あなた相手に身構える必要はないけれど、多分このときの女は他の人に同じことを言われると警戒の色を見せていた。


「…いいよお。なあにい?」

そうして目を瞑ってのしばしの時間。
ゆっくりとあなたが近付く気配がして、…少しして、指先に湿ったやわらかな感触。
それだけでぎゅうと胸が潰されるくらい痛くって、手が届く距離にいるはずのあなたに今すぐ触れたいってそんな我儘が過ぎっていく。

だけど、女はそうはせずしっかりと目を閉じたまま。

指を折るまでの時間は心の中で正確に数えた。
最後の指まで折り曲げた後、目を開いた女は恥じらうようにはにかみ笑っていた。

「…ミネ」
「早くこんなとこ、出られるといいねえ。」
「ミネはなあんにも、悪いことしてないんだからあ」

カメラに載せられるぎりぎりの本音に虚言を添えて。
…ただでさえ小細工もした今日はあんまり長居ができないから、それを別れの挨拶みたいにこつこつ靴音を立てて立ち去っていくんだろう。
(-613) oO832mk 2023/09/23(Sat) 13:34:53

【秘】 いつもあなたの傍に居るから カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ

「ふふん」
「なーに、きっとすぐ出られるさ」
「なんせ今日の俺は運が良いからな、
 わざわざ面会に来てくれる奴がいるくらいだから」

いつものように、笑い、歌う。そして手を振る。
くた、と脱力しながら、心中で笑う。
何言ってんだか。俺はもうとっくに出てるよ、お姫様。
だって――。

そうして、また、眠りに落ちる。
床の冷たさが、心地良かった。
(-616) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 13:40:57

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

「ぎ」

真っ先に出た音は、それだった。
或いは、揺さぶられた脳と、やられるままでたまるかという、
微かな意地が見せた歯を食いしばる抵抗の音だった。
ことここに至って、女の口元は未だ形だけは笑んでいた。

それでも、例えこの女がマフィアであったとしても、
手足のように扱う機械ではないから。
鼻の奥から流れ込む血が喉に落ちていき、
踏み躙られる肩からの悲鳴はそのまま口から出ようとする。

女は拷問も担当していたから、今何をされたら不味いか、
手に取るようにわかっていた。だから、靴底から
"緩急"が与えられた瞬間があったなら、
「あ、終わった」と。そう思う事だろう。
それでも、ほんの僅か。

「ぐ、あ、ぎぃ、ああ……」

その程度で済ませたのは、きっと意地と張り合いのおかげで。
しかし同時に"その程度"こそが、分の悪い根競べの敗北を、

即ち、天秤の傾きを意味していた。
(-621) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 13:58:38

【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ

引き絞れるような声が耳に届けば、男は口の端を軽く歪めた。
やはり不快そうだった。不愉快そうだった。
つまらなそうだった。


とはいえ、これは仕事・・だ。
快不快で判断して辞めていいものではない。

貴方の口が僅かも開いたなら。
男はその隙を見逃さなかった。

錠剤をひとつ。
手のひらで覆うようにして放り込む。こうすれば貴方はもう逃げられない。
口の中に入りさえすればこっちのものなのだ。飲み込まずとも溶け切るまでこのまま待つだけのこと。傾いた天秤は一層男に利する。
どうあれ長い根比べが始まるのは明白だった。

男は、貴方の口に入った薬の効果を知らない。
途中で一緒くたにされてしまった錠剤の見分けを知らない。
ただ、先程の警官の言葉によれば。
この場にあるのは
興奮剤
自白剤
の二種類で、
貴方が感じた効果によると​────それは興奮剤の方だ。
(-626) rik_kr 2023/09/23(Sat) 14:29:10

【秘】 歌い、歌わせた カンターミネ → 幕の中で イレネオ

その表情に「煽り所」を見つけはしたものの。
口元を覆う手のひらが相手では、声もほとんど出せず。
どうせ一度開いたならもう変わらないから
喚きでもしてやろうかと思ったのに。

現状を考えれば。男が肩を踏み砕くような姿勢でなければ、
女に覆いかぶさって口を塞ぐ男という図式は、
強姦魔に等しいもので。或いはそこを突けば、多少なれど
男の動揺か、怒りか、その辺りを引き出せるかもしれないが。
今は煽りより、「何」を入れられたかだ。

普通は、薬は目で確認するのだから、色と形で薬を判断する。
だが手のひらに覆われた状態ではそれを判別は出来ず。
しかしケースに入っていたのだから、数種類までは絞れる。
処分しそこなったものなら、数世代前の物か。
味は知らん、飲んだことなど一度もないから。
どれにしろ、致死の薬はなかった。ならば――。


カンターミネは、考えをシフトした。
即ち、いずれ朽ちる『正義』と遊んでやる、と。だから、

ぴちゃり。


嫌がらせの念を多分に込めて、手のひらをぬるりと舐めた。
目元にまた、張り付かせる。痛みを越えて、にやついた顔。
目尻を下げて、掌の向こうで口角をあげる。
もごご、と口の中で僅かに溶けた錠剤と共になすりつける。
『雑魚が』。たった3文字、ただの笑み。
即効性のある薬なのか。痛みは少しずつ、和らぐ。
分泌されたアドレナリンが、恐れを削いで笑みを返した。
(-635) shell_memoria 2023/09/23(Sat) 15:14:51
 




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