「……へへ。そう言われるとめちゃくちゃ嬉しい。来てくれてありがと」

少しくすぐったそうに笑いながらお礼を言って、部屋に再度ロックを掛け直した。
部屋はほとんど物が置かれていない無機質なままだ。
必要最低限の荷物しか持ってきていないらしい。

テーブルの上に両手の手袋とゴーグルを置き、ベッド脇に持ってきたコートハンガーにコートをかけながら口を開く。

「悪い、何も用意してなくて。シャトにコーンポタージュ^drinkあたり頼もうか？」

「感想は求めていたが、な。
　世の中には様々なサメが居るらしいが、シトゥラの故郷のサメは相当なのかもしれない。
　」

尚シトゥラから話を聞いたのは、シャト処刑の件より前である。サルガスはその場に居たので、勝手にシトゥラにこの様な見当を付けている。

上映が始まれば、再び画面のギャラクシーなシャークに対して、この行動の意味は果たして、といった事をぶつぶつと呟く。
残念ながらキファの様子には気付いていない。あーあ。

そうして、2時間を無駄に絶やした後掛けられた声に。



全ての伏線に合点がいった。

無機質な部屋は然程気にはしていない。
けれど、貴方が気を許してくれているのだと分かるから。装備を外していく様子を嬉しそうに眺めている。

「いえ…、お気遣いなく。貴方がいてくれるなら、僕はそれだけでいいから」

彷徨う視線を見て、少しだけ意外そうな顔をした。
その後、ふっと息を抜き。

「よかった」

ぽつりと、まずは一言。

「言語化なんてしなくていいけど。どんな気持ち？
……アタシはねぇ、悲しくなるくらいいつも通りよ。大丈夫」

自分のことを告げる部分は、眉を下げ、自嘲気味に笑い飛ばし。

コートをかけスーツも脱ぎ、どこかの誰かさんに『前線の指揮官にも似た重装備』と言われたものは全て外して。すっかり軽装になりながらベッドに腰かける。
椅子よりもこちらのほうが話しやすかろう触れやすかろうといった心情だ。

「はは、みたいだな。お前嬉しそうな顔してるし雰囲気も違うもんよ。
体調はどうだ？昼寝の時も一応は眠れてたみたいだけど」

何がよかったのかと疑問を抱いたが、大丈夫と言われればそれも思考とともに霧散する。


「俺さ、カストル連れて出てったじゃん」

問いかけに対しての回答とはズレた第一声。

「あそこ出てから変に胸のあたり気持ち悪くて、よく分かんないけど廊下走ってアイツの部屋行っちゃった。手ぇ震えてたのも理由思いつかないんだよ。
……同じ殺し方したカストルがああだったし、武器が悪かったのかな？なんか、思い出すだけで、変で、」

『よ、レグルスー。お前パン屋なんだろ？なんか変わり種のパンとか知ってたりしねえ？』

これは何の脈絡もなく雑に見分を深めに来た男。

/*体調等大丈夫な範囲で軽く話しませんかのお誘いです！

ほんの少し考えてから、貴方の隣へと腰掛けた。

「雰囲気は分からないけれど、本当に嬉しいですから。
…貴方の傍は、とても落ち着いたし、もう大丈夫」

触れてしまおうか、と指先が僅かに彷徨う。

「そう言う貴方は？…大丈夫ですか？」

「もちろん知っている、と言いたいところだがな。
　ただの役職にそんな期待をするな。
　昨日作ったのが今までで初だ。
　手作りのパンなど非効率極まりないだろ？

　とはいえ、故郷には

蝉の唐揚げ

^foodパンというものがある。シャトに言えば出てくるかもな」

隣に腰掛けたあなたの指先をそっと手で包み引き寄せる。
甘えるようなしぐさでもあり、声を潜めるために近づけた様子でもあり。

「眠れはした。けどなんつーか……なんつーか、昨日から変。
より正確に言うと、処刑のことを思い出すと変な感じがする」

自分の中でも言語化が上手く行ってないような声。

『おっそうそう、そういうの聞きたかったんだよ！
蝉かー。食用蝉って3種くらいしか知らないんだけどさ、レグルスの故郷だとどれ使ってるんだ？
以前ゲテモノ食いのお客様がが一番とか言ってた気がするんだけどやっぱそういう感じなのか？』

/*
拝啓 51%バーナードPLさんへ

ご機嫌よう。オネエ嬢様ですわ。



具体的に言うと「じゃあ試しに抱いてみる？」と言うだけなので、バーナードが応えても応えなくてもどちらでも構いませんわ。
というよりそもそも、なんかだかバーナード懇意の相手がいそうだしヌンキも今恋愛感情とかないけど体の関係持っちゃったPCさんがいるのでこれがバーナードPLさんのNGである「寝取られ」に抵触しないかが心配ですの。

なおバーナードもバーナードが懇意にしている人(いたらですが)も寝とる気はなく、セフレなみにスナック感覚でセックスするだけになります。これ最悪発言じゃない？

というわけでPL連絡でしたわ。わたくしはバーナードPLさんのお気持ちを最大限尊重したいので、無理そうでしたらどうか遠慮なくおっしゃってくださいませ。チュッ

/*拝啓 ヌンキオネエ嬢様へ。
御機嫌よう！51%バーナードPLですわ。結論から申し上げますと、




バーナードに懇意の相手がいるのは事実ですしそっちも他PC様とヤってるんだろうなって思っていましたけれど、なのでなんとこちら側は完全にNG回避できておりますの！


その上で、こうして相談を下さるPL様であることから寝取る気がないなと確信できたので思う存分ヤる気になりましたわ。

というわけでPL連絡でしたの。言い辛いことだったでしょうに確認いただきありがとうございました！

「……私は近々管理職補佐あたりになるので、なにか必要があったら貴方に仕事を頼むかもしれない。ゲーム後に支障がなければ、連絡先を伝え合うのを考慮しておいてほしい」

新しい仕事候補だ！
この男が軍属なのにこんな急によくわからん群れとゲームしているのは、そのへんの理由もある。民間のことでも勉強して来い、みたいなニュアンスがあるのだった。

とはいえ、民間の常識にイマイチ遠いテレベルムは、今なおふんふんと人の所有する端末と雑談のような反応を示しているわけだが。

「……？いや、貴方の手入れは上手いので、機器が懐いている……という話だ。自覚はないか。動物を撫でるのが上手い人間がいるだろう？それに近いな。良いことだ」

怖……

『すまない、そこまでは詳しくないんだ。
　やも使うような話は聞いたことがある。
　そもそもが火を通せば食えるみたいな風潮だったし、
　蝉も熱湯につければ種類がなんでも食える！
　ということだったのかもな』

「えっマジ？お得意様候補になるかもしれないのはさておき、出世はすげーよ。マジでおめでとう。ご祝儀いる？ゲーム終わってからのほうがいいか、今渡して襲撃の時に傷付いても嫌だし。連絡先もその時でどうだ？」

お得意様になる可能性があるのも嬉しいが単純に出世を祝う気持ち。おめでとう！軍のことはあまりよく分かっていないが民間のことが勉強できていればいいと思う。


なんか挙動不審になっている。雑な男っぽく振る舞っているのがバレるじゃん……！？怖いのと恥ずかしいのと半々くらい。

「そりゃあ少しでも長く使えたほうが嬉しいしいつも助けられてるの俺だしそのくらい当然じゃねっていうか……あ、なんか聞こえてんならさ、調子悪い機器がある……いる？のとかわかんの？」

『あーね。熱湯による殺菌消毒ができてんのが大事みたいな概念なのか。
なあ、もしかしてお前の地域に拳闘士^jobの煮付けとかあったりする？学生時代に誰かが色んな文化圏の煮込み料理について自由研究しててそれっぽい言葉を見たことがあるんだけど』

「ある程度長生きして経験を積めば、この程度にはなる。身内の管理だからな。ニュアンスとしては、長男とか、そういうものに近い。が、給料が上がるのはうれしいので、祝いの言葉は受け取る」

頷いた。なんの頷き？連絡先とかその辺りだ。
意思疎通についても勉強か必要そう。

指先で端末を撫でている。
よそんちのペットがよく懐いてきて可愛い、みたいな心境なのだが、全くなにも知らないものから見ると結構な異常行動であった。そりゃ怖いよ。

「機械に対してそういう心持ちでいる人間というのは、貴方が思っているよりも少ないものだ。だから我々が駆り出されることになるのだが…… …………ああ、不調は当然わかる。が、彼らは今のところ、軽く見た限りでは人間でいうならば、『健康』だな。……なにか困ったことでも？」