「う〜ん……打楽器が足りない感じはする。何か見に行きたいよね〜、ボンゴ？」
ボンゴだけはないだろ。

「へぇ！面白そう！バーナード器用そうだもんな〜……そういうのオレでも使えるかな？」
何用なのかよくわかってないけど。

あなたを伴って移動する間にも周辺の様子を確認済だ。
そのまま二人がけソファに座り、あなたに隣を薦めるだろう。
……そうしてまた片方の手袋を取った。

「ん。……はーこれ本当どきどきすんな。お手をどーぞ」

『水分も塩分もまだ取ってねえよ、もちっとしたらちゃんと動けるようになるだろうからそしたら取るわ』

ここでいうもちっとは肌のもちもち感ではなくもうちょっとの意だ。なので差し入れは素直に嬉しい。

『お前から連絡取られる理由あんま思いついてないんだけど、話してみたかったのと聞いてみたいことがあって。
俺が生まれてこのかた男性体なのもあって両性具有って想像つかなくてさ、実際どっち役のほうが好きとかあんのかなとか。仕事で身体を許すってどういう感情なんだろうなとか。なんかそういう感じの……なんだろうなー？』

まだ若干ぼーっとしている。思考ぽやぽや垂れ流しだ。

「個人用っていうよりは少人数用かな。人を運ぶこともあるからそれなりの装備選んでる」

半径3メートル以内とかその程度のものだ。

「はは、そこは環境適応系の主動力部分。無酸素はこっちの酸素供給でカバーしてっから1時間くらいは耐久できるよ。高圧も長時間じゃなきゃ大丈夫、こっちの身体補強も併せて使うから挙動にも支障はない感じ」

説明しながらコートを脱いで胸元や太腿を指差した。コートで遮られていた分がなくなったので電子機器の主張がうるさいかもしれない。

「おっとご愉快ユニットの気配。ポルクスの慧眼に期待すっかな」

ギタロンがある時点でご愉快寄りなのはまあ間違いなさそう。

「使えるかもしれないけど練習はやっぱ必要だぜ？とはいえ生体情報系、環境調節系、身体補強系、戦闘系……とここまで色々使い分けしないならそこまで難しいことじゃない、ギタロン弾けるやつなら問題ないだろ」

「映画の種類……、強いて言えばシャト……子どもと見られるようなやつがいいかな。視聴ランキング上位のやつなら大丈夫だと思うけど……」

アーカイブスの視聴ランキングページを見る。

「…………この辺はどこかで聞いたことあるな。バーナードくん、これは面白いやつかな？」

よく見ろシトゥラ、それは成人指定タブのランキングだ。

読み上げられたタイトルを聞いて真っ先に吹き出した。マジで持ってるなお前。

「あーシトゥラ、それは絶対子どもに見せちゃいけないタイプだぞ。具体的にはそれエロいやつだから。この『成人指定』ってやつは大体セックスしていると思ってもらっていい。子どもに見せるなら『キッズ』タブがいいんじゃねえかな、シャトはこの辺好きそうなイメージあるわ」

ちゃんと説明したぞ。ついでにシャトって言ってたのも聞いてたのでを薦めておいた。

「ちなみにとだったらまだホモの気姫のほうが抜ける。とはいえお前そもそもとしてそういうエロいこと興味あんの？」

成人指定タブと言われて慌ててキッズタブに切り替える。
自分のミスが恥ずかしいのか、それともタブの意味するものが分かったからなのか、とにかく顔が赤い。

「せ……せっくすしてるのは流石にシャトには見せられないな……うん。……ああ、確かにここは肌色率が低いな、安心して見られる」

薦められたタイトルを検索し、ブックマークに追加する。
機会があったらシャトと一緒に見よう。

「その、ホモってその……ソドミーだろう？君はそっちの方が興奮するタイプかい？」
「エロいことへの興味……うーん、あんまりないかな？生殖とか自分には無関係だと思ってるし……。」

「ええ そのまさかのでございました
･･･ありがとうございます いただきます」

シフォンケーキとマテ茶を受け取りました。
わ〜 いただきます！

「わぁ」「･･･ああっ」「おや」「なるほど」
等シフォンケーキを食べつつ言葉を零しながら見ております故若干騒がしかったことでしょう。

音楽に関しましては一度頷き、
「良いでございますね」

なんて笑いかけてみたり。

「肌色率が高い全年齢、相撲くらいしかないだろうからその判断はまあ正しい」

古来、人がひとつの星に住んでいた頃にとある島国で行われていた儀式が現世にまでスポーツとして継承されたとかされていないとか。

「いやぶっちゃけどっちでもいいんだよ俺。生まれてからずっと男性体だしどっちにしても穴に入れてヤってるなら同じかなって。ただ……」
「……ほほーん。まあセックスって生殖以外にも快楽を得る目的でする人もいるし恥じる必要はないんじゃねえかな。割と仕事人間してるっぽいけどどうよ、たまにそういう気分になったりとかしねえ？」

『
了解した。それじゃあ飲み物持っていくよ。

俺からの連絡は君と似たような理由だよ。君と話してみたかったからだね。あとバーナード殿は運び屋だろう？今後も船の外でお世話になるかもしれないから、知り合いになりたいなとかそういう理由もある』

恐らくそこまで時間が経たないうちに貴方の自室に差し入れを持ってやってくるだろう。

『両性具有についての話だけれど。
どっち役が好きなのか、仕事で体を許すかとかについては…………実は殆ど思うところがないんだ。
俺は人に求められたことを全て聞いて、こなせることをこなすだけ。それがどんな仕事であろうともね。
だから男役女役どちらであっても大して変わりないし、仕事で求められても「今こういうの必要なんだね、そっか〜」くらいにしか感じないかな』

「スモウ……」

スモウで検索すると

とかなんかそんなのがいっぱい出てきたので、シトゥラは首を横に振って見なかったことにした。

「ソドミーでもいいのか……。でもその……アヌスだろ？出す穴……うーん……。ん？出す……ザーメンを出す穴……、そうか！そういうことか！！」

そういうことか　ではない。
そういう気分になったりとか　と言われると顔を赤くして慌てて首を横に振り

「なっ……ない！ないよ！！！！」

必要以上に否定した。

囁きと笑いを交わす中、次々とクルーが減っていき……スタッフロールに移る。
映画内では8人ほどの命が犠牲になったがこちら2人は大分楽しめたのかもしれない。
なおフォンダンショコラは一口くらいしか食べていない。

「2時間をドブに捨てた分は挽回できたかな。な、どうだった？」

大分こちらもわーになっている。わー！

「ええ ええ 大変楽しい時間でした
バーナード様 流石にございます」
元より責任を取っていただくなど一緒に観る為の口実にございます。
･･･ギャラシャを観たことは本当ですが。

わーとなるバーナード様と一緒に わー！しつつも、一口しか進んでいないフォンダンショコラに視線を落として おや と首を傾げました。

映画を観るのに夢中になった というところでしょうか。
シェルタンは全て食べ終えました。ご馳走様でした。

隣に腰かければ自らも白い手袋を外し、そっと手を重ねる。

「それ、先ほどの資料の感じですと大分精密機器のようですものね。
……ふふ、こうしているとエスコートでもしていただいてるみたいだ」

『あっ飲み物はマジで助かります。理由もなるほどなー』

あなたがバーナードの自室に来ると、軽装でぐったりonベッドのバーナードがお出迎えする。
手袋だけはいつも通りにつけている。

「ろくな出迎えができなくて悪い。とりあえずアレだ、船外でもぜひご利用いただけたらと思うよ。
で、諸々の話はなんか新しい価値観に触れた気分だわ。仕事だから、そういう役割だからで最初から思考外に置けるならそういう感じなのな。
じゃあ例えばさ、本当は辞めたいけどせざるを得ない事情があってやっている……みたいな人がいた場合、お前はどう声かけてどうする？」

まとも度を保つ試みはすべてポルクスに任された。たぶん。
というか今も任されているかもしれない。

「ホホァ〜……？なるほど……超・器用！」
何もわかってないときの顔（つまりいつもの顔）をしている。
「覚えるほうがたいへんそうだぁ〜……」

「だって穴があって締まれば気持ちいいじゃん。って今普通に同意求めたけどお前どっちかわかんなかったわあっはっは。セクハラだったら悪い、許して☆」

めちゃくちゃ今更である。あとお前は何を理解したんだ？
顔が真っ赤な様子には分かりやすくにんまり笑っている。にまー。

「逆にそこまで否定すると図星っぽく見えるけどなー。
そういう気分になって、誰かとヤりたいまでは行かなくても自分で処理して……ってことあんだろ？
いくら人間とは言えそういう動物的な面があることは否定できねえよ？」