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【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 金毛の仔猫 ヴェルデ男は何より愛に敏かった。 それだけは誰よりも見出して見せた。 君のその気持ちだって、きっと届いていたのだろう。 ただ受け取る側に甘んじることはなかった、それだけ。 君の言葉に、男は少しその目を見開いた。アメジストの瞳、すみれの色、夕闇の一つ手前の空。それに少しだけ大きく、君が映って。 男はいつも笑んでいた。こんな顔をするのは、君の前でくらいのものだ。 それから軽く息を吐いて、唇に笑みを灯すのだ。それはため息や窘めというよりは、どこか満足気なものだった。 「……これは一本取られたな」 「なら、お言葉に甘えて、王子様。辛いのは好きかい?」 (-14) rik_kr 2022/08/25(Thu) 12:40:52 |
【秘】 坑道の金糸雀 ビアンカ → 金毛の仔猫 ヴェルデ「ふ」 きれい。 誰からも言われなれて、 なんなら自分かわ言わせることもあるその言葉。 けれどそれが、あなたから出たこと。 そうして感じた暖かさは、それまで感じたことがないもので──── 違う。 ――それは、失ってから、十年近く。 その灯火は、久しぶりに物置から引っ張り出したガスストーブのように、がたごととノイズをたてながらビアンカ・ロッカの胸の内を暖めた。 「――なぁまいき」 ありがとうなんて言葉には、やめてよ、と手を振って。 ▼ (-17) gt 2022/08/25(Thu) 20:07:09 |
【秘】 坑道の金糸雀 ビアンカ → 金毛の仔猫 ヴェルデ▼ 結局、ビアンカ・ロッカはいい育て親でもなかったし、母親なんかにはなれなかった。 ゴミ捨て場で見つけた少年を、何かの代わりのように育てて自分の胸にぽっかりと空いた、 どんなかたちかもわからない穴を埋めようとしただけだった。 それでも、彼女は人間だった。 ビアンカ・ロッカは、あなたのことを愛していたし。 失いたくなんて、なかった。 ただそれだけの、ことだった。 ▼ (-18) gt 2022/08/25(Thu) 20:07:27 |
【秘】 Ninna nanna ビアンカ → 金毛の仔猫 ヴェルデ▼ あなたの手をとって歩く道すがら。 ビアンカは、めったに歌うことのない歌を口ずさんでいた。 「――Ninna nanna,mio figliuolo!」 「――Ninna nanna,occhi ridenti…」 Ninna Nann。 古臭い、子守歌だ。 「――Canta,canta,rusignolo…」 「――…che il mio bimbo s'addormenti!」 ニンナ・ナンナ、おお、夜鳴鶯。 みんなでここへ来て、坊やに歌を聞かせてね。 ニンナ・ナンナ、おお、墓場鳥。 そうしたら坊やは眠るでしょう──…… そんな古い歌を、彼女はなぜか覚えていた。 きっといつか、誰かに歌うために覚えた歌を、 あなたにだけ、歌うのだ。 幸せそうにはにかむ笑顔で。 嬉しそうな、ステップで。 (-19) gt 2022/08/25(Thu) 20:10:37 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレさて、少年は口が巧くないから、丸め込むことも簡単だったろうけれど。 あなたはどうやら、応じてくれる様子。 暮れかかる空に似た色の、ずっと高いところにある瞳を見つめる。 少年もまた、唇をかすか、笑みのかたちに歪めた。 「……大袈裟だな」 「食べてみないとわかんないけど、多分、ヘーキ」 そうして、食べかけの串焼きをあなたへ差し出すのだ。 だってきっと、『家族』とは、こんな風に支え合うものなのだろうと、知り始めているから。 愛することも愛されることも知らなかった少年は、あなたの姿に、振る舞いに、それを学んでいるのだから。 (-50) beni 2022/08/26(Fri) 23:51:08 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 金毛の仔猫 ヴェルデうっかり落としてしまわないよう、二人で慎重に交換。口をつけたものでもお互いに気にはならないだろう、特に今は、相手が相手なのだから。 「辛いもの、苦手なんだった。滅多に食べないから忘れてたよ」 そう言った浮かべた笑顔はいつもの柔和なそれではなく、なんとなくはにかむようなものだった。 最早無表情と形容していいくらいに笑顔のみを浮かべる男は、何故だか君の前では、こうして血の通った表情をすることが多かった。寂しがる時や悲しがる時でさえ薄ら笑んでいるような男だったのに、君には驚きも、決まり悪さも晒した。 それはきっと無意識だったのだろう。男が家族と向き合う時に、自分を繕ったことはない。 「ん、おいしい。ちょっと冷めていい感じだ」 「ヴェルデも無理はしなくていいからね。辛かったらスープに入れてしまおう。行儀は少し悪いけど、こんなところじゃ誰も咎めない」 あの子がいれば注意されちゃうかもしれないな、と、言葉の裏が語っている。君の脳裏にも浮かぶだろうか、軽く顔を顰める彼女の姿が。 「昼ごはんはちゃんと食べたよって、それだけ言うんだよ」 (-55) rik_kr 2022/08/27(Sat) 0:42:20 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ誰が口を付けたものであれ、躊躇うことはない。 そう、特に、あなたが相手であれば。 「そんなの忘れるなよ」 呆れたような声。 かたちのよい眉が片側だけ、わずかに歪む。 少年は、あなたが普段、どんな風であるのか知らない。 あなた方の集まるような場へ顔を出すこともないのだから、少年の前のあなたしか。 あなたが何であれ、どのような人物であれ。少年にとっては、そういうあなたがすべてだ。 だから少年も、いつもよりすこし、ただのこどもみたいに。 交換したウインナーをかじる。 辛みがじんわりと舌に熱を灯す。 「そお、よかった」 「おれも大丈夫。 でもそうだな、これは喉が渇くかも」 よく叱られる相手と言えば、脳裏をよぎるのは一人だけ。 けれど彼女だって存外、口が悪いことを知っている。 それに、何より。 怒らせたいわけでは勿論ないけれど、彼女に叱られるのはべつに、少年はそんなに嫌ではないのだ。 くす、くす。唇がかすかに、笑声をこぼした。 (-81) beni 2022/08/27(Sat) 22:12:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 金毛の仔猫 ヴェルデ「滅多に食べないからさ。食べようとも思わないし……」 稀にしかその気にならないから、食べようと思った時に自分の限界を測りかねる。どうやらそういうことらしい。一般的なことかは分からないけれど。 そんな胡乱な説明をしながら、な交換したものに口をつける君をじっと観察する。平気そうなら軽く頭を撫ででもしたのだろう。褒めたいだとか明確な意思があったわけではなく、何となく触れたくなった、程度の柔らかな手つきだった。 そうやって、しばらく歩いて。 「あった、あった」 距離で言えばそう長くはなかったのに、人の多いせいで随分かかってしまった。 流されないように注意深く大通りを逸れて、目当ての屋台へと向かうのだろう。 (-93) rik_kr 2022/08/28(Sun) 5:47:25 |
【秘】 金毛の仔猫 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ「そういうところ。 もっと自分のこと気にしろっていうのはさ」 などと言う少年は、やはりあまり表情を変えないから、平気そうに見えるだろう。 ひと口、ふた口と食べ進めるごと、口内が熱くなるのを感じてはいるのだけれど。食べられないほどではなかったから。 撫でられても、瞬くだけで。 けれどそう、嫌ではないのだ。いつも。 言葉を交わしつつ人波の中を歩き、スープの屋台に立ち寄って。 あたたかな液体を啜り、ウインナーも食べきって。 のんびりと食べ歩くふたりは、最初の目的地だったジェラートの屋台へとたどり着く。 そこでもあれやこれやと並んだフレーバーに、少年は悩む姿を見せるのだ。 (-108) beni 2022/08/28(Sun) 22:46:47 |
【置】 金毛の仔猫 ヴェルデ>>-17 >>-18 >>-19 うたがきこえる。 おまえなんか生まなければよかった ――Ninna nanna,mio figliuolo! 幸せそうにはにかむ美しいかんばせ。 私を見ないで、その目がいちばん嫌い ――Ninna nanna,occhi ridenti… 石畳の上を踊るステップ。 私を呼ばないで、その声も嫌い ――Canta,canta,rusignolo… 繋いだ手が揺れる。 おまえも同じ苦しみを知るべきよ ――…che il mio bimbo s'addormenti! (L14) beni 2022/08/28(Sun) 23:08:22 公開: 2022/08/28(Sun) 23:10:00 |
【置】 金毛の仔猫 ヴェルデ>>-17 >>-18 >>-19 あなたはいい育て親ではなかったのかもしれない。 ――それでも、その細腕は確かに、ゴミ捨て場の命をすくい上げた。 あなたは母親ではなかったのだろう。 ――それでも、その不器用な愛が、人間を育てた。 天使は自らを生み落とした女を見殺しにした。 だれも、それがわるいことだと教えなかったから。 けれど翠眼の少年は、 の手を握ったままでいたかった。 自ら考え、選び、そういう未来がほしかった。 おやすみ、■さん。 死んでしまってごめんなさい。 少年はあなたのことを愛していたし。 ――――死にたくなんて、なかった。 ただそれだけの、ことだった。 (L15) beni 2022/08/28(Sun) 23:09:11 公開: 2022/08/28(Sun) 23:15:00 |
【置】 翠眼の少年 ヴェルデ>>-17 >>-18 >>-19 確証はないけれど、託したものは何となく、届く気がしている。 裸の紙幣をそのまま渡したのは、残るものは少ない方がいいと思ったからだ。 ただでさえ、部屋に荷物を置いたまま。 そう多くないと言えど、処分するにはやはり、手間もかかるだろう。 思い出してしまうかもしれない。悔いてしまうかもしれない。旅行の約束は守れなかった。 それでもヴェルデは幸せだった。 意識を手放すそのときに思い出した、この歌が。 よく眠れるようにと祈ってくれたから。 願わくば、あなたもよく眠れますように。 (L16) beni 2022/08/28(Sun) 23:09:52 公開: 2022/08/28(Sun) 23:20:00 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 翠眼の少年 ヴェルデ一つを選びかねるなら、「二つにするかい」。 それでもまだ悩むなら、「三つでもいいよ」。 ……なんて、段階を踏みやしないのだ、この男は。 伝える言葉はいつだって、こう。 「どれがいい? ヴェルデ。好きなのを選ぶといい」 「それで足りるの? ほら、これだっておいしそうじゃないか」 うんうんと悩む君の後ろから、男は毎度そんな声をかけた。 それから君が選び終えれば自分の分はさっさと決めてしまって、君の手を制止して二人分の代金を払うのだろう。きっと今だって。 いつだって男は、君に何か与えようとしていて。 いつだって男は、君が何か選ぶのを待っていて。 君が選んだものを否定することは、絶対になかった。 (-125) rik_kr 2022/08/29(Mon) 4:33:20 |
【秘】 翠眼の少年 ヴェルデ → 家族愛 サルヴァトーレ二つと聞けば、「そんなに食べられない」と。 三つと聞けば、「なんで増やすんだ」なんて。 そんなことを言って、少年はかすかに笑う。 早く決めてしまおうと目についたものにしようとすれば、他のものを示されたりして。 それはきっと、慌てなくていいことの裏返し。 あなたは少年が選ぶまで待っていてくれるし、きちんと選べば何も言わない。 「……ん。じゃあ、これ」 そうしてたっぷり迷って選ぶのは、紫色のぶどう味。 結局また支払いはさせてもらえないから、困ったような、呆れたような顔で。 なんでもない普通の親子のような、或いは兄弟のような気安い距離で。 ひんやりと甘いジェラートを食べ、祭りの喧騒を楽しんだ。 迷子の仔猫みたいに所在なく立ち尽くしていた少年は、確かに。 あなたに誘われて、この騒がしさを楽しむことができたのだ。 (-132) beni 2022/08/29(Mon) 13:54:19 |
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