【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート祭りの喧騒から二人、逃れるように遠ざかる。 人混みにあてられた身体は、一口も飲んでいないのに火照った。 「少し飲みたいな」 男がはにかんで、真っ直ぐに君の目を見た。 細めた瞳の真ん中に、誰でもない君だけが映って。 「どう? 今から」 (-227) rik_kr 2022/08/19(Fri) 2:17:33 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーアジトの隅で全体を見晴はるかす。すれ違うもの、出ていくもの、入ってくるものに声をかける。この子は変わらない、変わった、あとで話を聞かなきゃあ。さて、どうしようか────組んだ手に顎を乗せた、ちょうどその頃だ。 「ン。……」 「やあ、ソニー。ご苦労さま」 近づく君を見て、片眉を上げてご挨拶。見上げるように首を傾げた。 「君はいつも熱心だね。立派だったよ」 言いながら撫でようと頭に手を伸ばす。汲みとって屈んでくれるだろうか。くれなくても問題はないだろう。君の言葉を最後まで聞いた男は緩慢に立ち上がって、今度は上からその頭をぽんぽんと軽く叩く。衣服をぱっぱと正して、向き直った。 「そうだね。吸うなら出ようか」 「僕も少し、考えていたところなんだ」 (-253) rik_kr 2022/08/19(Fri) 11:16:52 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート「あは、本当? 嬉しいな」 君の返事で、声音に素直な歓喜が混じる。 つい、と半歩の距離を詰めれば、その腰を引き寄せた。そのままの距離で歩き出す。 「おすすめのバーがあるんだ」 「まだ誰も連れてっていなくてね」 街明かりを離れて裏の方へ。 街灯はあるけれど、皆祭りの方へ行ってしまっているから、人通りは少ない。いつもより寂しい街を歩く。 通りを曲がって入った路地を、また三度くらい曲がったところ。 灯りすらつけない簡素な看板が出ている店が、どうやらそれらしかった。 (-275) rik_kr 2022/08/19(Fri) 17:39:00 |
【墓】 家族愛 サルヴァトーレ>>+11 アベラルド 「五日目は最終日だから忙しそうだね。四日目あたりにどう?」 ナンパにも冗談にも、けれど本気にも聞こえるような誘いをかける。勿論断ってもいいし、受けてもいい。ここでの二人はただの店員と馴染みの客であって、それ以上でも以下でもないのだ。どんな答えを返したって誰も気にしない。 手を出して商品を受け取る。小さな袋を大切に提げて、一歩下がった。 「それじゃあね。本当にありがとう。直にまた来るよ」 「楽しみにしていて」 (+12) rik_kr 2022/08/19(Fri) 17:49:22 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド受け取る際に男は君に顔を寄せた。 特に不自然さはない動き。荷物を受け取るのにおかしくはない距離。それよりは僅かに、ほんの少しパーソナルな距離に踏み入って、囁く。 「今夜、空いてる?」 (-278) rik_kr 2022/08/19(Fri) 17:51:01 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「bene.」 短く。 「そのまま開けておいて。部屋に行く」 告げて。 自然な緩慢さで離れる。パーソナルスペースより少し広い、従業員と客の距離。 そのまま、場は後にした。 ××× (-323) rik_kr 2022/08/20(Sat) 0:18:55 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド××× その夜。 ノックだかチャイムだかインターホンだか、とにかく君は来客を告げられる。 一応の警戒をするも、平然と迎えるも君の自由だ。結局最後に男が訪ねてくることには変わりないのだから。 (-324) rik_kr 2022/08/20(Sat) 0:21:16 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート毎度のことだから、にこりと笑って誤魔化す。ずるい大人の仕草だった。 「『アマラント』、ね」 「いいところだ。一人で飲むには」 あれがどういうところか、このあたりに住んでいて知らない人間はいない。 だから居心地が良いのだろう、大抵の場合、あそこに行けば顔見知りと出会う。一人寂しくグラスを傾けるなんてこととは無縁でいられる、けれど。 「今日は君と酔いたいんだ。いいだろ?」 つまり二人で飲むには野暮だと。 君の髪を撫でて、小さな木戸を押し開けた。 やはりそう広くない店の中は薄暗かった。それが深い青のライトで照らされていて、幻想的な雰囲気を醸し出している。飴色に光るカウンターの向こうで、初老のマスターがこちらに会釈をした。手で席を示すに従って、カウンターに座ろうか。 (-339) rik_kr 2022/08/20(Sat) 3:31:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「おや。謙遜も上手くなったね、驚いたよ」 昔はもっと些細なことでも褒めさせてくれた、と。 もしかしたら口にしたかもしれないけれど、べつに惜しいと思っているわけではないのだ。多少遠慮を覚えようと、年齢に相応しい振る舞いを身につけようと、君が男にとって可愛い子どもなのは変わらない。謙遜したところでこちらは勝手に褒めるのだから関係ない、ということでもある。 喫煙室、というほど上等なものではないが、二人で話すには好都合だ。柵にもたれ掛かるようにして陣取り、君が嫌煙家でないなら男は愛用のシガレットケースを取り出すだろう。ひとつ咥えて、君にも差し出す。君が煙草嫌いなら遠慮しておこうか。家族の健康は何よりも大切だから。 「まだどちらだとも断定できないな」 答えは当たり障りない。しかしそれは慎重さの表れでもある。 「どちらの可能性も捨てきれない。確かなことは、仕組んだのがアルバの人間だとしても、家族の意向ではないってことだけだ」 (-341) rik_kr 2022/08/20(Sat) 3:56:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート少し殺したような君の声から緊張が見て取れるだろうか。安心を促すように軽く肩を叩いた。 「だろ?」 高い椅子の座面は柔らかく、座り心地もいい。 「こうしているのも久しぶりだね。君は何が好きだった?」 「僕はチェリーロワイヤルsake。お願いね」 カクテルメニューを受け取る。マスターの方を見もしない慣れた手つきだ。よく来るのだろう。 (-367) rik_kr 2022/08/20(Sat) 13:12:32 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「うん。お邪魔します」 つい、と遠慮なしにお邪魔する。なんの警戒もない、気安い態度だ。 「冷蔵庫、借りるよ」 入るなり、そんな声をかけて。 止められなければ、そのままキッチンへと直行。 冷蔵庫をぱたん、開いて。ぱたん、閉じて。 どうせ君の好きな酒でも買ってきたのだろう。この男はいつもここに来る時、何かしらの土産を買ってくる。 (-370) rik_kr 2022/08/20(Sat) 13:28:11 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーきらりと光を捕まえるジェイドの瞳。それを男は可愛く思う。 男は君を子どものように扱うが、その実君が最早ただの子どもではないことをきちんとわかっている。 それでも、だからこそ、少しでも変わらぬところを残していてほしいと思いながら。 陽光を跳ね返すその翠に目を細めた。 「裏切り者がいたら?」 対照的に深く息を吸う。馴染んだ味を染み渡らせる。 「どうだろうね。僕は────」 男は、少し笑って。 「家族を殺したくはないな」 甘い言葉を吐く。 「そうならないために、僕がいるのだから」 顧問。 ファミリーの一員でありながら、それらの立場から少し浮いたところにいる存在。 直接的に何かを行うことは本来少ないはずのその立場にありながら、男はまるで中間管理職でもあるかのようにせっせと現場に足を運ぶ。 「なにか苦しいことはないか」 「なにかつらいことはないか」 「なにかいやなことはないか」 「家族が裏切り合う前に、どうにかできないか」 「それが僕の役目だからね。……参ったな、どうしよう」 ▼ (-407) rik_kr 2022/08/20(Sat) 17:56:56 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーファミリーの仕業なら、僕がみんなを見られていなかったってことだ。 そんなことを暗に滲ませる様は、なんとなく楽観的に見えるだろうか。 組織を家族に例えるのではなく、もっと親密さを持って。そのまま家族だとするような口調は、似つかわしくない温度を持つ。 「君は、どうしたい?」 (-408) rik_kr 2022/08/20(Sat) 17:57:08 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート「なら、それを」 マスターにオーダーを告げる。マスターの手つきは流麗で、カクテルを作る音もほとんど立たない。 「確かに忙しいけれど、僕は楽しくさせてもらっているよ。可愛い家族に会えるわけだし」 「君のところも、上々のようだね。よく話を聞く」 やがてやはり静かにグラスが差し出されれば、軽く持って乾杯を。 (-410) rik_kr 2022/08/20(Sat) 18:04:09 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「いつ来ても片付いているね、ここは」 「そういえばどうだったの? 行くって言ってただろ、新作のオペラ」 君の人となりがわかる調度品。こじんまりとして、しかし確かな存在感を持った趣味の品。 そう代わり映えしないそれらを、来る度男は面白そうに見遣った。何かが増える度にこれは、と聞いたものだ。時には勝手に持ってくることも。 「いいもの飲んでるね、ドニ」 冷蔵庫におさまったワインのラベルを指でなぞる。 「うん?」 それからチョコラータの箱に目を留めた。 見慣れないパッケージだったのかもしれないし、それがこの冷蔵庫に似つかわしくなかったからかもしれない。 「試作品?」 軽やかな口調で問いかけながら振り向いて。 二人でいる時、この男は普段より少し早口だ。 (-412) rik_kr 2022/08/20(Sat) 18:19:12 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ君の言葉を、男はじっと聞いていた。 赤に近い紫の瞳は慈愛を宿している。 ────高い位置から降り注ぐそれは、やや翳って見えるかもしれない。きっと気のせいだ。 「返してほしいものなんて何一つないさ」 男が身を折る。君の上に影が落ちる。空気を含んだ柔らかい声が、君だけに聞こえるよう囁いた。 「愛してるよ、ヴェルデ。どうか、ただ受け取っていて。 ────君が僕に、何かをしたいと思うなら」 そのまま、君の頬にキスを落とすだろう。もちろん嫌がられなければ、の話だ。僅かにでも拒むのなら、にこりと笑って引いてくれる。それから何もなかったように焼きあがったものを受け取り、店主に礼を告げた。 どこかに座るにしろ歩くにしろ、ひとまず店からは離れなければいけない。店頭は先程より賑わいを増している。 「行こうか」 「選り好み、すればいいじゃないか。どうにも君たちはわがままってものが苦手みたいだけど」 (-416) rik_kr 2022/08/20(Sat) 18:44:47 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「違いない」 「へえ、じゃあお言葉に甘えようかな。連れて行ってよ」 笑みを含んだ同意。それから素直に誘いに乗る。 先導して何かを与えることが好きな男は、しかし君からの厚意はいつも素直に受け取った。こうして音楽鑑賞に出かけたことはこれまでもあっただろうし、食事を共にしたこともあるだろう。 男は食事も娯楽もなんでも、君に提案されたものをそのまま喜ぶ。だからこそ、本当に好きなものが見えにくくもあった。 「飲みたいなぁ。やっぱり赤より白だよね」 こんな、簡単な二択が時々零れることはあれど。 「へえ、ルチアか」 思い出そうとするような素振りは見せず、すぐに名前を反芻した。多くいる構成員の全てを、男はほとんど完璧に把握している。よくアジトに顔を出す者であればなおのこと。 名前と顔を一致させる手間なんて必要ないのだ。 「可愛がっているね、随分」 「わかるとも。家族は大切だからね」 冷蔵庫の前を君に譲る。準備してくれると言うなら任せよう。 手頃なソファにでも座って、もてなしを待つだろう。 (-427) rik_kr 2022/08/20(Sat) 19:15:45 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「……」 男が君の言葉を遮ることはない。 君が話す時、男はいつも黙って君の瞳を見つめる。慈愛、親愛、友愛、諸々のあたたかなものを湛えて、じっと見るのだ。 指先だけが軽く動いて灰を落とした。 「そうだね、ソニー」 「君は正しいよ。昔から賢明だとは思っていたけど」 最低限の犠牲を払って大きな利益を手にする。 残酷でも無情でもなく、当然に普通のことだ。大きな組織では平然と行われることだし、ことこの社会では特に珍しくもない。末端を切って中枢を守れるなら誰だってそうするし、避けられる争いは避けるが道理だ。 「きっとそうなるんだろう。本当に下手人が僕らの中にいるのなら」 「ファミリーが抱えているものはあまりに大きい。全員が全員、自分の身を自分で守れるわけでもないし」 首一つ。たかが首一つ。 それで収まるなら、確かに安い話だ。 ▼ (-437) rik_kr 2022/08/20(Sat) 19:37:27 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニーされど首一つだ。 「逃がしてあげたいな」 「……だけどね、僕は今回ばかりは、そうじゃないと思ってる」 「だって、ね。真っ先にいなくなったのは、アマラントのマスターだって話じゃないか」 彼の遺体は見つかっていない。しかし誰もがわかっている。 「あそこはある種不可侵の領域だった。ここいらのマフィアにとってはね。もちろん、ノッテにとっても」 「そこをわざわざ潰すっていうのは、もっと大きな意図を感じる。この島自体に対する宣戦布告、みたいなもの────」 (-438) rik_kr 2022/08/20(Sat) 19:47:23 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c6) rik_kr 2022/08/20(Sat) 19:49:48 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 小夜啼鳥 ビアンカ「おや。これは手厳しい」 くっくと喉の奥で笑みを転がす。君の靴音と相まって愉快な調べを奏でた。 「君たちはよく似ているよ、本当に」 『君たち』と。 男がひとまとめにするのは、金の髪のあの子のことだ。素直で従順な彼もまた、男に対しわがままを言わない。 もう少し甘えてくれるといいのだけど、そんなふうに小さくごちる。 「────そう言ってくれるなら」 舌の上で転がす言葉。 ただの音は君の唇を滑って、甘やかな魔法になる。 「裏切るわけにはいかないな」 魅せられずとも、男はそう答えたろう。 (-441) rik_kr 2022/08/20(Sat) 20:01:16 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → ノーモアベット マキアート「その通り!」 クイズ番組の司会者のようなおどけた言い方で肯定して、朗らかに笑う。 「全くだよ。知ってるかい? ブルーノなんかは子どもが産まれたんだってさ」 「何が欲しいかって聞いたらベビー用品だって言うんだ。おかしいだろ? あんなにお酒が好きだったのに」 愉快そうに喉を鳴らして笑う。しかしその笑顔は馬鹿にしたものではなく、愛おしむそれだった。グラスをカウンターに置いてから、靴下がこんなに小さいんだ、と片手で円を作って見せる。 「あは、あの噂か。誰が流したんだか」 「妙な輩に絡まれたりはしていない? まあ、そんな無謀をする奴はいないと思うけれど────」 男の視線が君のかんばせに注がれる。そのままなぞるように下へと視線を滑らせた。 着込んだ布の下のその肌を、男は知っている。 「君は美しいから」 (-446) rik_kr 2022/08/20(Sat) 20:12:46 |
rik_kr 2022/08/20(Sat) 20:52:40 |
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