［　物語のなら、信じてくれるかな。　］

　　

　　　ここに来たのはそう……
　　　みたいなものかな。

　　

　

　まほ う？


［その言葉は私にとって、普通にあるもの。



　え、君なの！？


［子供だったから、余計にだったと思う。
　同じ存在がいるの？　って思って
　それが純粋に嬉しかったの。］
　

　


　

　　　


［　変なこと言ったね、って
　　続けようと思ってたのに。

　　疑問の後に続くのは
　　僕の予想外の言葉だったんだ。

　　疑うでもなく、馬鹿にするでもなく。
　　僕の言葉をそのまま受け止めただけでもなく。　］
　　

　　　―――君、って。
　
　　　

　　

　　

　　　　　　　　　　　


［　言いかけた言葉を飲み込んで
　　嬉しそうに笑ったんだ。　］
　　

　　

　
［　この時もうすでに
　　私にとってのは君になったの　］
　

　

　どうして謝るの？



　

　

　ふふっ

　あのね、


［答えになってないずれた返答。

　

　　
［嬉しい、という言葉に心の柔らかい部分がくすぐられて
　思わず照れて顔がぽぽぽって、熱があがるの。
　手を頬に添えて足をもじもし、とせわしなくしながら
　私も笑顔を返したの。］


　あ、あ、あのあの あのね　

　

　　

　私はね、こうやってちょっとした風を吹かせたり
　ちょっとした怪我を治したり他にも出来るわ

　つまり いわゆるなのよ　　　


［信じてくれる？　って
　私の視線はちょっと不安げだったかもしれないわ。］　**
　

　　　
　　　勝手にそう思っただけだから気にしなくていいよ。


［　魔法使い、じゃなくてヒーローになりたいって
　　真っ直ぐな言葉にすごいな、って
　　素直に思ったんだ。　］
　　

　　　猫を探してたのも、そのため？
　　　偉いね、君は。


［　
　　なんて自分のことは棚に上げて軽く言った。

　　言いたくて仕方ない、って顔の君の話は
　　もっと聞いていたかったんだけどね。
　　今日はもう、遅いから。　］
　　

　　　魔法……


［　魔法って言われても嘘だとは思わなかった。
　　地味なんだけどって君には言われたけど
　　僕はそうは思わなかった。むしろ……　］


　　　え、風を吹かせる以外にも
　　　いろいろできるの？

　　　


［　目を輝かせてそう言ったあと。　］
　　

　　　、なんだ！

　　

　　でも、今なら。　］


　　　
　　　特別な力を持ってるってこと。

　　　　　　　　だって、僕も同じだからさ。
　

　　　あの日、君のこと見つけたよね。
　　　あれ、偶然見つけたんじゃないんだ。

　　　
　　　

［　君の魔法より地味かもしれないけどね、って
　　頭を掻きながら言って様子を伺った。
　　きっと信じてくれるとは思ったけど
　　それでも、君の力に比べれば分かりにくいものだし
　　不安な気持ちは少し、あったから。　］
　　

　


　そんな事ないけどわかったわ。


［その言葉がなかったら同じだって思わなったもの
　でも、その言葉の意味もわかっちゃうから

　だから素直に頷いたのよ。］
　

　

　偶々見つけたから、なのもあるわ
　……そうなのかしら。


［歯切れの悪い返答。
　魔法使いは嘘じゃないと証明したい心もあった。>>12


　ヒーローは見返りを自分から求めるものじゃない
　だから偉いとか、違うかなってちょっとしょぼくれたの。］
　

　

　そう、魔法……




　でも、君の反応はそうじゃなかった。］

　
　……偶々って思わない？
　そう言ってくれる？


［今日なんて風は普通にふいているわ。
　確かに狙いすましたような現象でも
　偶然だってあり得るもの。］
　

　
［そのはそんな私の不安を吹き飛ばすのに十分だったわ］　
　

　
［秘密を打ち明けるのは怖くないわけじゃないわ。
　でも、同じ魔法使いだって信じたかった。

　ヒーローにはいつも仲間がいるからそう信じたかったの。］


　……信じて、くれる…？




［期待するように言葉を促すの。
　あの時言ってくれた魔法の言葉。その意味を知りたくて。］
　

　

　そう、なの……そう……


［この感情をどう表せばいいのかしら。
　偶々迷い込んだわけじゃない。だって探してくれていたから
　偶々見つけたにしては、場所が特殊だったわ。


　仲間がいる。特別を持つ仲間が。
　それが、それがとても……。］
　

　




［ぽろぽろと涙が零れるの。困らせちゃうかしら。
　手に持ったままの帽子でちょっと顔を隠しちゃうの。］
　

　
　じゃあ月影君は私と同じなのねっ
　あ、でもね、私そういう事は出来ないわ。


　それで私助けて貰ったのね。
　そっか、そうなの……うん、
　
　

　　
［私より地味と言われれば目を丸くするの。］



　だって私の出来る事本当に地味…というか大した事ないもの

　魔法使いって言っても、皆が思うような力はないの




［思うままに正直に返したわ。］
　

　　　


［　君の目を見て、不安を吹き飛ばそうと笑いかけたんだ。
　　特別な存在を知ってる人しか
　　特別な存在なんて簡単には認めない。

　　君なら大丈夫、って思ってたけど。
　　最初の方は歯切れが悪かったから
　　どうしよう、困らせてしまったのかなって。
　　心配したんだけど……杞憂だったみたいだ。　］
　

［　それで簡単に涙を止められるわけないって思っても
　　つい、言葉にしてしまって。
　　慌ててハンカチを差し出すんだ。
　　泣き顔、見られたくないみたいだったから
　　目はそらしたまま。　］
　　

　　　そう、かな……
　　　すごいって言ってもらえると思ってなかったな。
　　　
　　　


［　認められたみたいで。
　　役に立ってるって言ってもらえたみたいで。
　　でも、色々できるらしい君と比べると
　　地味かなあ、とは思ってた。
　　そんな後ろ向きな考えも、君のが
　　吹き飛ばしてくれたんだ。　］
　　

　　　いろいろできるヒーロちゃんはすごいと思うよ？
　　　
　　　でも、そんなすごい人に凄いって言ってもらえると
　　　なんだか自信が出てくる気がするな。
　　　



［　それは子供の思い付き。
　　でも、君が凄いって言ってくれるなら
　　不思議と実現できる気がしたんだ。　］
　　

　




［力強い言葉に支えられて笑みを浮かべるの。
　信じて貰えるのがこんなに嬉しいって初めて知ったの。］
　

　

　ごめん……うれしくて、ふぇ…


［悲しい涙じゃないけどやっぱり戸惑わせちゃったみたい。
　ハンカチを素直に受け取って
　何とか少しずつ自分を落ち着かせていくのよ。］
　

　

　そうよ、すごい事なのっ！
　へへ、お互い嬉しいに出来ているってことかしら
　それってすごいことね。


［お互い特別を持っていても自分を凄いと思えてない。
　それは人から見れば凄いことで
　言葉にしあうことで褒めてもらえることなんだって
　嬉しい気持ちに出来るのは凄いことだなって思ったの。


　

　

　へへ…これはもうお互いすごい〜！　でいいと思うわ。
　月影君はもっと自信もって大丈夫よ！

　わぁ！　それは素敵ね！
　私もそれお手伝いしたいわ！


［思い付きの言葉を聞き逃さず
　お店をやって色々な人を助ける君を想像したら
　凄くわくわくしたの。


　

　

　ありがとう
　私の事ヒーローって言ってくれて。
　そっか……私ヒーローになれたのね。


［なりたい自分を認めてくれた君は
　やっぱり私のヒーローだって、思うの。


　その言葉は私の特別で、
　大事な思い出をまた増やす。］
　

［　悲しくて泣いてるわけじゃないって
　　教えてくれたから、ちょっと安心したんだ。
　　落ち着くまで待ってたけど
　　気の利いた言葉はかけられなかったな。　］
　　

　　
　　
　　

　

　　　お手伝い……そうだね。
　　　人助けってヒーローの基本、だからね。
　　　


［　
　　君が言ってくれるなら、出来そうだなって。

　　まだ見ぬ未来に思いを馳せて、夢を見て。

　　この時の僕は、そんな夢が
　　本当に実現するならそれは

　　
　　

　　　うん、きっと大きくなったら
　　　もっともっと色んな人を助けられる
　　　にだってなれるよ！


［　そんな可愛い君が嬉しいって言ってくれるのが
　　やっぱり嬉しいって思ってた僕は
　　君が喜びそうな言葉を無責任に言ってしまう。
　　勿論、思いもしないことを言ったわけじゃない。
　　心からの言葉だったよ。



　　
　　
　　

　




［その言葉に目を丸くしたの。
　ヒーローになりたいのは私の夢。］


、一緒にヒーローになってくれるの？


［お店を手伝うって言ったのはやりたいと思ったから。
　私の夢に手を差し出す勇気は出してないまま。

　まさか相手から言ってもらえると思わなくて
　びっくりしすぎてわたわたしちゃったの。］
　

　

　そうかな、そうかしら。




［責任の伴わない言葉でも良かったの。
　そう言って貰えるのが嬉しくて
　もう既に君にとってのになれていたのも
　私の自信になってくれていたの。


　

　



　帳君へ

　宝物はっけんおめでとう！
　あらためてお手紙を書くとドキドキしますね。
　
　あのね、私ずっと魔法使いって信じてもらえなくて
　うそつきって言われたこともあったの。

　私の魔法の力はよわくて、物語とちがうから
　わかりやすくできなくてもどかしいなって思うの。

　帳君が信じてくれたの、本当にうれししかったです。
　いっしょにって言ってくれたのとってもうれしいです。
　私もね、帳君といっしょがいい。
　帳君が学校そつぎょうしても
　その先もずっといっしょがいいです。

　お店いっしょに開きたいしお手伝いもしたい
　だれかを助けるヒーローになるのにとなりに帳君にいてほしい
　そうしたらね、私は君の一番のヒーローでいれるし

　
　

　


　　これからもよろしくね

　　　　　　　




　

　
［私そういえば大好きって書いたのよね。
　……好き、うん。好きよね。
　一杯嬉しい事言ってもらったし
　優しいし同じ特別がある人だし。］





［そう、私は

　すとん、と納得しちゃったの。］