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人狼物語 三日月国


69 【R18RP】乾いた風の向こうへ

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[ 乾いた風の匂いに包まれて、
  賑やかに栄える城下町を穏やかに見下ろす。
  砂塵に混じる細かな礫さえ愛しい、
  褐色のはずの世界に鮮やかな色が咲く。

 
  そんな夢を見ていた気がする。
  嗚呼これは夢だなぁと己で理解して見る夢。

  醒めたくないと願う微睡が、
  現実的な騒がしい音で破られていく。 ]
 


[ 先ずはカチャリ、と鳴る微かな金属音。
  いつもの音だと無反応を決め込んで、
  あたたかな夢に戻ろうとした意識が、
  がごん、という鈍い音に引き戻される。
  それに続いてどさりと何かが倒れるような音。

  只ならぬ様子に、そっと目だけを動かした。
  安らかな夢にさえ居させてはくれないのかと
  おまけに付け足した小さな舌打ちに、
  なぁお、と澄んだ声が重なった。

  驚いて瞬きを繰り返し、ぼやけた視界を整えた先。

  光の届かぬ此処に不似合いな、質の良い布地が
  吹くはずもない風を孕んでふわり、
  舞っていて。
 


   ……なぜ、


[ 声は掠れて、ただそれだけの言葉しか出ない。
  ずるずると体を動かして、
  どうにか上半身を起こし壁に凭れた。

  身体のどこもかしこもが自分のものでないように
  重く気怠かったけれど、大きく開いた鉄の格子と
  その隣には意識のない従者、
  大きな壺は彼女の手にか床に転がっていたか、
  ともかくそれらに気付けば目を剥いた。 ]


   
正気ですか!?

   Mais ne vous emparez pas du pouvoir!?
 


[ 身体が動けば逃げられる。
  ただ、彼女は。

  思わず上擦ってしまった声に、
  気を失ったままの従者の様子を慌てて窺う。]


   あなたは、


[ 小刻みに震える足をひとつ拳で殴って、
  ざざと音を立て折り畳み片膝をついて、
  身体を起こした。

  彼女の瞳を覗き込む。

  己は困り果て途方に暮れたような表情で、
  きっとへにゃりと下がった眉で、
  それでもおずおずと片手を伸ばして。 ]*
 



   動ける体なのかしら……?
   紙越しの口付けになってしまったから
   きちんと、したくなったの。
   
   お父様に気づかれてしまう前に
   どこかへいきましょう?
   私、何もできないけれど…
   輿入れの後、何不自由なく暮らして
   でも全てに絶望するのなら
   不自由でいいから、出来ればあなたと


   ──────  幸せを感じてみたいの。







[ 彼相手に何を言っているのだろう。
  とても困った表情をしているのを見て
  思いはすれ違っているのかと思ったしまった。
  それでも、彼の声が聞こえると  
  彼女は手に持っていた壺のことを思い出し
  床に静かに下ろせば、伸びてきた彼の手を
  きゅっと握り、優しく指を絡めて
  ゼロ距離になるのは容易くて。

  彼女は体を起こすこともままならない
  彼に寄り添うように体に手を添えて、
  初めての口づけを彼に捧げた。
  柔らかな唇が少し震えて
  彼の唇に重なっていったことだろう。 ]








   ……彼をこの中に入れて、
   入れ替わりましょう?
   鍵もかけて捨ててしまえばよいのかしら。

   私、あなたのことを忘れられないの。
   とても大切な人だと、思っているから。



[ 彼の体が何かの原因でいつもより
  動きにくいのは初動で分かっていたから、
  どうやったら動きやすいの?と
  そのまま追加で聞いたはず。

  彼女が外に出るときに使っている
  裏ルートがこの近くあるので
  そこにさえいけたなら、
  ゆっくりと逃げ出すことができる。

  ピヤールもお気に入りの彼のそばを離れず
  喉を鳴らして、昼ぶりの再会を
  喜んでいる様子で緊張がほぐれてしまった。 ]*





     『 It is a tale told by an idiot,
         full of sound and fury,
           signifying nothing. 』 



[ 脈絡もなく、借りた本の中の言葉が反芻する。
  不思議だ、と思う。
  自分の中には怒りなど無いというのに、]



自分がひどく怖がりなのは性格なんだろう。
他の兄弟と比較してはそう結論づけていた。

臆病だったから、他人の顔色を伺い過ぎて
いつしか相手が何を思っているかは手にとるようにわかるようになった。


────"あの人"を除いて。


とても綺麗な色なのに、まっくらな瞳
人を惹きつける心地良い波長の声は、水分が感じられなくて喉が渇いた

近い歳の兄達は自分を無視したけれど、星座ひと回り以上離れた面倒見の良い兄達の中で、異質に思えたのは何故だろう

考えてもわからないし、考える程に囚われる気がして、ひたすら逃げ続けていたのに。


『おまえは、ならないよね?』

 おまえも、そうなんだね 



見透かされている。いるんだ、きっと。

                
.


[それは、悪夢の続きかと思った。よく知った天井の紋様は、かつての自分の部屋。抜けられない牢獄のような日々の象徴。

背の高い窓から射し込む陽は、落ちかけていた。目線を動かして側にいる人が誰かを確認して、ひと息つく。夢からは覚めている。何が起きたかもわかっている。

ただ悪夢より酷い現実に戻ってきてしまったことを、その大切な人の姿で確認した。]


 …………ダレン。


[その人は目を開けた自分に声をかけただろうか。きっとそうだと思う。心配させたかな、ごめんなさい。ここまで運んでくれたのはきっとあなただよね、ありがとう。

そんな日常的な交流よりも伝えなくちゃいけない事がある。恐怖に裏付けされた義務感のようなそれに煽られて身を起こす。

目を、見るのは、無理で。少し視線を落として、それからは口に任せた。]


 ごめん、今更なんだけど……
 今更言われても、困らせることなんだけど

 主従関係を、解消しても、いいかな。


[添える笑顔とは裏腹に、ぼたぼたと涙が落ちた。]*

                
.


[ 空を掴むように伸ばした手は、
  容易く絡め取られ

  夢か現か、境目がぼんやりと霞む意識の中、
  先端からほわりと温かな体温が伝わる。

  耳をさらりと掃いて流れて
  鼓膜を振動させる声は
  一切の躊躇いも不安さえも感じない、
  熱の籠った芯があって。

  肩に添えられた手も、冷えた身体には熱いほど。
  滅多に降らぬ雨の雫の如く、
  静かに優しく落ちる唇は柔らかく、

  微かに震えていた。 ]
 


   あなたは、


[ 同じ言葉を繰り返す。
  かさついた唇に残る感触が、じんと胸を焼いて。]


   …… 困った人だ。
   幸せなど、他にいくらでもあるでしょうに。


[ くん、と絡めたままの手を引いて、
  立ち上がりながらぐいと引き寄せた。
  情け無いことに、壁に凭れていないと
  うまく抱きしめることもままならない。
  それでも、己より小さな細い身体を
  そっと包めば彼女の匂いが鼻腔から、
  脳を揺らす。

  髪に顔を埋め、息を吸い込み顔を上げた。
  どんな人形も敵わないほど完璧な
  カーブを描く美しい頬に触れる。

  顔を傾けて、今度は此方から、
  触れるだけの口付けをひとつ。 ]
 


[ ひとりではなにもできない、と言う
  その形の良い唇から、
  なかなかどうして豪快な提案が
  飛び出せば、目を見開いて吹き出して。 ]


   ……ほんとうに、良いのですか。
   苦労を、すると思いますよ。


[ 大切な人、と告げてくれる言葉に、
  返せるのはそんな言葉でしかなくて。

  それでも、きっと彼女とて、
  生半可な決意でここに来た訳ではないことくらい
  理解できた。

  なかなかの体格の従者が、完全に
  伸びているのがいい証拠だ、と、ちらりと見やって
  またくすりと笑った。 ]
 


[ 息を吸い込めば気道がひゅ、と鳴いた。
  ごほ、と肺の中の穢れた呼気を吐き出して、
  職務に忠実な、可哀想な従者を
  どうにか室内へ引き摺り込めただろうか。

  にゃん、とピヤールの声が高らかに響く。
  猫の手も借りたいよ、と呟けば
  なんだか楽しそうに纏わり付く艶やかな身体に
  ふ、と身体の緊張が緩むのを感じて。


  こちらを案じてくれる彼女に、
  問題ない、と告げて足を動かす。
  どうにか格子を抜けて、外から鍵をかければ、
  悪戯っ子のような表情を浮かべて
  美しい共犯者のあとへ続こうか。

  上手く進めたのなら、だんだんと強くなる
  この国特有の、乾いた風の匂い。
  祖国とは少し違うはずのそれが、今は
  とても愛しいと、一瞬だけ目を閉じて思った。 ]*
 




 俺はね、この国に帰ってくる理由なんて
 別になかったよ……



[余計なモノが止められないから、なるべく気丈に聴こえるよう、声を振り絞るけれど少し難しい。
そう、あの試験会場で。助手として誘ってくれた人も居た。少し物騒だったけど、それでもこの場所に比べたらマシなんだ。

差し伸べられた手を取らないで、あなたを掴んだ、その理由。

──この部屋の音声は、きっと筒抜けになる。好意を表す単語は外してなんとか伝えようとすが、そんなに多くの言葉をもたない自分だ。

模索した末、右の手を、ダンスを求めるかのように彼に向けて差し出した。意図が分かるだろうか? 解らなくても、重ねてくれる事はしてくれそうに思っていた。]*

                
.

[傍に控えてずっと主を見守っていた。
 主が目覚めたときにはほっとして微笑んだけれど、主従関係を解消と言われると、胸に風穴が開いた心境にさせられた]


  ……私に……至らぬ点があったろうか。
  申し訳ない。


[従者の首は主の気分次第。
 そう思ってはいたけれど、こんなに急に言われると、割り切れない。

 「国に帰ってくる理由がなかった」
 その言葉に意外性は無かった。
 主の望む暮らしはここではできない──それはダレンも感じていたことだったから。

 手を差し出されると、意図を考えることもなく主に手を重ねた。
 そうしながら、主従でいられなくなったら自分はこの先どう生きていけばよいのだろうと、内心途方に暮れていた。

 (この人を放り出して、私は……
  どう、すればよいのだろう。
  この人は私無しでも生きられるのだろうけれど) ]**



[ 困った人、と言われてしまった。

  幸せの形は確かに探せばもっとあったはず。
  けれど、それを探すことさえ躊躇われた。
  それは、彼女だけが幸せであることを
  彼女が許すことができなかったから。

  あの日、本当に迷子になって
  あの鉄格子越しに彼を見た時から
  幸せとは何かの犠牲の上で
  作られているものなのだと
  彼女はまじまじと感じ取った。

  侍女や従者たちがいるけれど
  それらよりももっと日の目を見ない、
  陰ですべての生活を支える誰かがいて。
  彼女は、その誰かに出会ったから。  ]







   ん、…………
   苦労を知らない私が、
   沢山の苦労を知るあなたから
   何も得なかったわけじゃない。

   私がこうやって会いにきたのは
   あなたが話をしてしまったからなのよ?

[ 足繁く通った彼女に色んな話をした彼。
  知らないことばかりで、
  自分の足で知りたいと思ってしまった。
      ..
  だから責任を取ってもらうために、
  彼女は彼と共に動いていたい。
  絡めた指から、彼の方へと連れて行かれ
  細くとも大きな体に包まれた彼女は
  大人しく、彼の髪を撫でられただろうか。
  頬を彼の指が優しく撫でたのなら
  拒むことなく唇を受け入れて。    ]






   何かあった時のために、
   装飾品を隠しておいたの。
   ……使えるかしら?

   夜だから、眩しくないと思うのだけれど
   休みながら、都を離れましょう?
   大河に船があると、動きやすいかしら…


[ 家の人間に気づかれないように、
  裏ルートへと辿り着けば
  そこには外套などが
  なぜかきれいに飾られていた。
  彼女が侍女たちとの外出の際に
  いつも使っているであろう外套を
  身に付けると、少し大きな袋を
  近くのカゴに入れて
  あたかも何かを届けにいくような
  様子を作り出して準備を整えた。

  勿論、彼にも目立ちにくい外套を
  渡してあげて。
  父親の話から、大河に出れば
  一気に離れることができると
  前々から考えていたので
  目指す場所をそこにしようとおもった。 ]





   ピヤール、彼のそばを離れないでね?


[ 扉から外へ飛び出せば、
  賢い愛猫にそう小声で指示を出して
  月明かりと微かな灯りを頼りに
  逃避行を始めようか。      ]*








 !っ、違うよ!
 ダレンに至らないところなんてない……!


 違うんだ、俺がダレンを、

 (好きになっちゃったから
  好きだって事に気がついちゃったから


   ──なんて、駄目だ、言っちゃ。)


[やはり自分の稚拙な表現力には、限界がある。言葉にはできない、なら]


(──家族じゃしない愛情表現って、なに……?)


[しばし模索して、差し出した手にはその手が重ねられた。それだけで僅かに高揚する自分を心底恨めしく笑う。自分とは形の違うその手のひらを頬に当てて、口吻を落とす。]

                
.


[その手を両の手で包んで、手首から指先まで唇でなぞる。時折柔く食んで、形を確かめるかのようなそれを、話しながら続ける。]


 ……『俺を危険から護って欲しい』って、
 言えば、申し出は断られないと思った

 その為だけに、危険を捏造するためだけに
 この国に戻ってきたんだ

 ……莫迦だよねぇ……いろいろ、気づくの遅すぎて
 巻き込んで、ごめん


[もしかしなくても、言ってる事とやってる事に相当の乖離があるだろう。正気を疑われるかもしれない。

いやもう頭はおかしいのかもしれなくて、終わらせようとして苦しいのに、触れているのは嬉しいなんて、気持ちが滅茶苦茶になってる。

笑いながら泣いて、自分も何がしたいのか混乱している。とにかく今、守るべきはこの目の前の大切な人の安全だ。]


 このままここにいると、ダレンまで危ないから
 もう、やめよ……って。俺と離れれば、
 危害は加えられないはずだから。
 
*
                
.

 
  ……私を?


言葉を途中で切られ、重ねた手を取られて、主の唇が触れる。
 手首から指先まで形を確かめるように唇が滑るのは、まるで愛撫されているかのようで、頬が熱くなるのを感じながら主から目を逸らした]


  ……私が守りたくなるような危険を
  用意するために、戻ったと?
  ……そのためだけに?


[何故そんなことを、と問いかけて。

 「ダレンと会えて、良かったなぁ……」

 しみじみとした主の呟きが脳裏に蘇った。

 そんなに、自分の身を危険に晒してまで連れ帰りたかったのだろうか──]

[──でも、それは。

 「ダレンは、俺と家族になるの嫌?」

 その、言葉の意味は。


 試験会場では「求婚されているみたいだ」と言ったら「そうかもしれないな」なんて返されていたけれど、深い意味があるものとは思っていなかった。

 「家族になってほしい」とは、「生涯の伴侶になってほしい」という意味だろうと言ったときの、主の反応を思い返す。
 あれは。
 本当に、打ちひしがれたのかもしれない──]

 
  ……ハールーン殿。
  まずは……家に帰らないか。

  ここで込み入った話はできまい。


[主が流す涙を拭おうと、指先を主の頬に近づけた]


  それに、ここにいるとハールーン殿の身も
  危険だろう。

  一度、帰ろう。

  もう私は貴殿の従者でないのかもしれないが、
  危地に単身で残るのは友人として見過ごせない。


[諦めが悪すぎるだろうかと思ってはみても、護りたいと思った相手に首を切られてそのまま置き去りにすることはダレンにはできなかった。
 それに、従者でなくとも友人だとは思っていたから。
 彼の身の安全を確保しないことには、主従関係の解消を受け入れられるとは思えなかった]*

 (…もっとも、お前自身が目星をつけた皇子が
 王にでも成ったときは、話が違うかもしれないな。)


[彼が少し腹の中を見せてくれている最中、
その言葉だけは、咀嚼の中に閉じ込めた。
今のうちから龍の影に身を潜め、
新たな王に尽くすのも悪くない。]

[さて、この国に、
結局龍の審美眼に叶う者は結局存在するのだろうか。

市を取り仕切る民衆の味方?
手を汚す覚悟などとうに出来ている益荒男?
手を汚す事こそ捕食者として瞭然たる大蛇?
未だ未来も過去も純粋な幼き希望の種?

――混迷の道で従者に手を伸ばす幼き賢者が、
王となりえる欠片は、千夜一夜、大河の光の粒の一片に
消えているのかもしれないけれど。

嗚呼、嗚呼。
単なる傭兵は皇族には非干渉なもので。]

[付き従うのではなく、
 同じ紅の駒を取るという選択肢が。
 駒ではなく、盤の外から眺める楽しみ方を、

 様々な言語のように、旨い飯のように、
 沢山の本の物語のように、教えてくれるのならば。

 雲の上に上り詰めた龍が、いつ堕ちてくるのか。
 はたまた、革命家にでもなって雲の上の存在になるのか。]



 
[一切の濁り無い真実こそ強かであって。]