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人狼物語 三日月国


263 【ペアソロRP】配信のその先に【R18/R18G】

情報 プロローグ 1日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


 
[夢見るような心地だった。
 他人の旋律をなぞるのと違って
 想いを込めて弾くピアノは
 こんなに気分が良いものなのだ。

 ……そうして興奮冷めやらぬまま
 彼女のアカウントにDMを送信したのだが
 気分は一転、頭から冷水を掛けられたようだった。]


  返事が無い……既読にもならない
  何か設定を間違えてる……?


[ソワソワと落ち着かない様子で
 スマートフォンとノートPCを操作した。

 新たに捨て垢を作成してそこにDMを送る。
 ……届いた。間違っていない。

 彼女の身に何かあったのだろうか?]
 

 
[ホーム画面での投稿もリプライも無い。
 暁ソウマアカウントの投稿にいいねもつかない。

 いつもならまだ少し起きている筈なのに。

 そう言えば……、毎週生配信の時は
 投げ銭つきも通常コメントももっとくれるのに
 昨日もらったのは最初のひとつだけだった。]


  普段と変わらない時間に帰ってきて……
  うん、そう、配信に間に合うよう
  帰ってきてくれて……

  それから現在までも家を出た様子はない……


[密かに仕込んだ遠隔カメラの録画を確認しても
 安心は得られなかった。
 誰かが侵入した形跡もなかったけれど、
 死角はあるし、
 部屋の中の様子までは見られないのだ。]
 

 

  明かりがついたまま……?


[何事もなければ良いのだけれど
 彼女は一人暮らしだから……、

 もしも倒れていたら?
 誰かに襲われていたら?

 胸が騒ぐ。]
 

 

  ……いかなきゃ、


[押し潰されそうな心を押して、自宅を飛び出した。
 タクシーを手配して向かうよりは走った方が早い。

 SNSに上げられる写真のほんの僅かな写り込みから
 住処を特定できたのだが、そこそこな近所で良かった。
 地球の裏側だって、自分はきっと向かったけれど。]


  はっ、はぁっ、……生きてる……?


[息を切らして飛び込んだのは彼女が住む部屋の隣──、
 カメラを仕込んでいるのもここの玄関とベランダだ。

 土足のまま上がり込むと、
 彼女の部屋側の壁に耳を当てた。

 ────どうか無事でいて。]
 

 
[学生向けの建物は壁も薄いし
 生まれつき耳が人より良かった。
 それらに感謝する。]


  ……、寝息……?
  ただ寝てるだけなのかな……?


[壁越しに微かな息遣いが聴こえて。
 ……息を長く吐き出した。

 彼女は生きている。

 緊張が一気に解けて、
 壁に手を当てたまま重力に従って座り込む。
 規則正しい音を暫く聴いて。

 そのまま寝てしまった……。]
 

 

  ……しまった、あのまま寝てしまっ……

  
!!!!



[ジーンズのポケットが震えて目が覚めて、
 ぼーっとしたまま取り出したスマートフォン。

 「ハツナさんからメッセージが届いてます。」

 ……の通知に驚いて、端末を落としてしまった。
 立ち所に目が覚めて、そぉ……っと、
 それ以上物音をたてないよう拾い上げる。]
 

 
[拾い上げるとすぐさまDMの返事に既読をつけた。]


  (返事……嬉しい。凄く丁寧だ。
   一応警戒されているけど……)


[思い遣りの感じられる文面に口許が緩む。
 疑われるのは覚悟の上だった。
 だけど本人だと感じ取ってくれたのだろうか?
 自分がそうであって欲しい気づいて欲しいと願うから
 そんな風に考えてしまうのかも知れないけれど。]
 

 
[フォローリクエスト
 許可も拒否もせず宙ぶらりん。
 だってとても見せられたものじゃない……。*]
 


[髪を梳かしながら部屋に戻り、
 ソファ兼用のベッドに腰を下ろす。

 ──そういえば、
 泣きながら寝落ちたから
 昨日の配信、途中までしか観れてないな。
 配信の最中に寝てしまうなんて失態、
 ソウマくんを好きになってから初のことだった。

 三日月Tubeのメンバーシップには
 当然の如く加入しているし、
 コメントだって、いつもなら
 もっとたくさん送っている。投げ銭も。
 配信が終わった後も大抵、すぐには寝付けずに
 冷めやらぬ興奮をSNSで延々と書き連ねたり
 公式アカウントにリプライを送ったりしてきた。

 そのまま過去の動画を巡回し始めて
 気付いたら夜が明けていた、
 なんてことも数知れない。
 
 毎週欠かさずにずっとあったものが
 突然なくなったら、ソウマくんも
 淋しい、って思ってくれたりするのかな。]
  


[……まあ
 10万のうちの1人が居なくなったところで
 普通気付きもしないわよね、きっと。

 さっきのメッセージだって
 ソウマくん本人からなわけがないんだから──]
 

 
[絶叫が耳に届くが早いか
 背中を預けていた壁から衝撃が伝わる。


   
っ!!!!

  (びっっっっ、くりした……)


[それはもう驚いたが……、
 寸での所で声を上げずに済んだ。

 こんなに勢いよくぶつけて相当痛いだろう。
 きみには怪我をしてほしくない。

 ああだけど、そんな風に反応して貰えて
 嬉しいとも感じてしまっている。
 自分はなんてやつだろうか。]
 

 

  (好きだって……)


[聞いたのは何もこれが初めてじゃない。
 朝目覚めた時など
 部屋内のどこか一点に向けて
 語り掛けてくれているのを
 息を潜めて何度盗み聴きしてきたことか。
 それでも、何度聴いても胸は高鳴るのだった。

 それが秋月壮真に向けられたものではなく
 暁ソウマ宛のものだったとしても。


 悔やまれるのは
 彼女の反応でやっと自覚したことだが
 昨日と全く同じ服を着ている点。
 二日連続で着続ける不潔なやつだと思われたくない。
 そこには気付かないでくれると良いのだけれど。]
 

 
[またスマートフォンが震えた。

 先ほど自撮りに梃子摺っている時に
 早いと指摘されていたから
 少し置いてから確認しようとして……、
 結局一分と保たずに開いた。

 自分はこんなに堪え性のない男だったのか。]
 

 
[送ってからしまったな、と少し冷静になる。

 つい一度隣駅、と打ってしまったのを消して
 正式な駅名に打ち直したのはよかったものの、
 昨日の今日は早すぎるだろうか。
 今朝DMを開封した彼女にとっては今日の今日だ。

 でも、壁を隔てずに早く逢いたいから……。
 冷静になっても、今日が良いという結論になる。

 勿論彼女が別日を望むなら従う次第。]
 

 
[店は、何度も利用している
 一見さんお断りの高級料理店だ。

 顔が利くから
 彼女の好きなものを
 特別に用意して貰うことができるし、

 ……それ以外のことも。*]
 

 
[汚れを気にするどころか
 自分の身を案じてくれる彼女は
 なんて優しいのだろう。

 彼女が向けてくれる言動の一つ一つが
 自分にとってどれほど嬉しいことか
 言葉で表すことは難しい。]


  (ああ、華音……)


[心の中で呼ぶ名はHNではなく本名の方。
 郵便受けからはみ出していた手紙を
 悪いことだとは思いつつ手に取って知った。

 それ以降、彼女が同じ名の曲を
 リクエストしてくれることを
 可愛らしく感じている。]
 

 
[ご近所さん、と言い当てられれば
 ドキッとして壁越しに肩を震わせた。

 休学中だが一応学生の身分であるため
 借りられたこの部屋も自宅もそう遠くない。

 だからこそこの出逢いは運命なのだと
 思わざるを得ないのだけれど。]
 

 

  (また後で、華音……)


[向こう側に彼女がいるあたりの壁を
 大きな手でそっと撫でてから……、
 部屋を後にした。

 早く貴方に触れたいよ。]
 

 
[しかし────]


  ……、人がそこそこいるな……


[普段のランニングより遅い時間なので仕方がない。
 昨夜は慌てて飛び出したからキャップもなかった。
 足元の地面を睨むような目つきで帰路を急いだ。
 今夜も周りに人はいるだろうから、慣れる他ない。]
 

 
[溜息が出る。]


  (今日もかわいいな……、
   今日は特にかわいい気がする……)


[学校やバイトに行く時の服装も良いのだけれど
 今日は特にお洒落を決め込んでくれたようだ。
 ……俺のために。

 俺のための華音。

 自動販売機の隙間からスマートフォンのカメラで
 30枚ほど連写してから……、姿を表した。]
 


[カノンの演奏で始まった記念の生配信。
 いつもの音色とは少し違って聴こえた
 ショパンのピアノ協奏曲第2番第2楽章。
 SNSのアカウント名、『@Johann_Christoph_S』。
 最初に見たときにはバッハかな、なんて思ったけれど
 よく考えればパッヘルベルもヨハン・クリストフだ。
 
 もしも、ソウマくんがカノンを鍵として
 ハツナに連絡を取ろうとしてくれたのなら──

 待ち合わせ場所に、本当に
 ソウマくんが現れてくれたなら……
 
 どうして突然声を掛けてもらえたのかは
 会って話してみないと、まだわからないけれど。

 ……少しくらいは
 自惚れちゃっても良いのかな。]
 


[うわーーーーーーーーーーーーーーーっっっ
 本物だ本物だ本物のソウマくんだ!!!!!
 えっえっちょっと待って ま!!?!!!ま
 やばいやばいやばい麗しすぎるんですけど
 てかなになになにその恰好聞いてない!!!
 生ソウマくんのカッコよさえっっぐ……!!
 現実??? ホログラムじゃなくて????
 なんかいいにおいする気もする〜〜〜!!!

 きゃーーー映画でしか見たことないような
 優雅な会釈をごく自然に!!?
 実はどこかの国の王子様なのでは!!?!?
 わーーん今まで見てきたどの写真より動画より
 一億倍カッコイイよーーーーーー!!!!!

 好き!!!!!!!!!]
  



[ここまで約5秒]
 
  

 
[まろやかな甘さは異物の苦さを消してくれる。
 好きだと言ったわりに自分が飲むのは最初だけ……。*]