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人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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視点:




   ウユニの昔の家族の話を聞くのは
   あまり得意ではなかった。

   もちろんウユニに非などなく
   決してそれを悟らせはしないのだが

   仮にも彼女が一度愛した相手達を
   いくら彼女が耐え難い煮え湯を飲まされたとして
   赤の他人である自分に糾弾する権利はない。

   その権利があるのは、ウユニだけ。






   しかしそれを理解していてもなお
   湧き出る感情に背くことは出来ない。

   明確に感じた強い怒りのやり場を失うから
   サルコシパラは困り果ててしまう。

   仕方の無いことだと分かっているから
   サルコシパラは何も言えなかった。






   だからこそ彼女の過去を
   自分の手でなぞるという行いに
   一種の希望さえ見い出せてしまう。

   水飛沫に舞うウユニに誘われて
   吸い込まれるようにその水面に足を踏み入れ
   楽しげに笑う彼女に、


   「もちろん。」



   そう応えるのだった。





   私の反応だって貴方にとっては
   どこか違和感のあるものだったのかもしれない。
   違和感を言葉にすれば、触れていれば。
   貴方が何を考えているのか、わかったのかしら。


  



   好きな人の前ではより綺麗でいたい。
   取り繕うとかではなくて……
   もっともっと綺麗な私を見ていて欲しい。
   ただ、それだけのこと。

 

    「ありがとう。
     ……でも、今度は、お洒落させてね。」


   悪戯な笑みとともに伝えられた言葉も
   綺麗だと言ってくれるのも
   嬉しいと思う反面…狡いな、と思うの。
   恥じらうこともなく真っ直ぐに伝えられると
   私の心に響くから。

   それでも。弱い私は、
   今度、なんて曖昧で不確かな言葉を重ねてしまう。

        時間が残り少ないと知っていながら。**


 



   家族の話をしたのは
   別に、貴方からの慰めの言葉が
   欲しかったわけじゃない。


   貴方がそんな安い同情をするような人なら
   私は、貴方を好きになんてなっていないもの。


   楽しい話じゃないのは、分かってた。
   ただ、聞いてくれたらそれでよかったの。
   家族だった人たちとの、あたたかいはずの思い出は
   今となっては全て痛みへと変わってしまうから。
   抱えていた痛みを、過去を吐きだして
   楽になりたかった、それだけ。

   酷いことをされたのに
   愛されていた時のことを忘れられなくて。
   未練を捨てたかったの。


 



   そんな、自分本位でしかない話だから。
   貴方が私の家族を糾弾したとして
   責めることなんてあるはずもないし
   怒りのやり場を失って困っているとわかったら
   謝っていたはずなのに。
   それを悟らせまいという貴方の優しさに、
   私は知らず知らずのうちに甘えてしまう。