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人狼物語 三日月国


69 【R18RP】乾いた風の向こうへ

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[ 荷物を封解こうと長椅子に腰掛ける自分へダンテが身を屈める。
 昨日なにかを言えたかと聞くから何のことかと小首を傾げると、そのまま彼は長椅子の背に手を掛け更に身を屈めた。寄せられる唇に目を閉じた。頬へと柔らかな感触が滑る。

 目を閉じていたので、何処か恥ずかしげにも聞こえたおはようのキス、と言った時の彼がどんな顔をしていたかはわからない。]**


   鼠の死体を得意げに咥えて持ってきたとて、
   嫌悪感を滲ませて叫んだりしては
   いけませんよ。
   ピヤールを褒めてあげてくださいね。


[ 貴族の娘にあるまじき、
  地面にドレスの裾が擦れるほどに
  しゃがみこんだ姿勢の彼女と
  いつものように壁に背を預け
  床に足を投げ出して座る己の視線は
  柔らかく絡む。

  精神的な隔たりが少しずつ解けるに従って
  物理的にも距離は詰まった。

  初めの頃とは、座る位置が少し変化していて。
  格子から離れた部屋の隅に居たのが、
  今は床について伸ばした手は、
  白い手が外から侵入し、己の指を
  容易く掬い絡め取ることが
  容易になるほどにすぐ、側で。 ]
 


[ 彼女の口から出た唐突にも思えた
  疑問の理由がぽつりと聞こえる。
  
  なんとなく、想像がついていたことだ。
  
  僅かに眉が動くだけで、
  表情が大きく乱れたり変化することはない。

  ただ、言葉の最後に、
  消えそうに小さな声で呟かれたことには、
  思わず目を見張った。 ]
 


   ─── 馬鹿なことを。
   あなたの相手が俺になるなど。


[ 珍しく、いつもより大きな声は微かに震えた。

  住む世界の違いに気付かぬほど、
  考えのない娘とは思えないのだけれど。

  嗚呼、やはり、ここへ来ていることは
  正しくはなかった。
  わかりきっていたことなのに、
  己の甘さに反吐が出そうだ。
 ]
 


   ……良いと、思いますよ。
   お父上が連れて来られた方であれば、
   申し分のない男性でしょう。


[ 平静を装って、婚姻を勧める。
  彼女を利用してここから出ようなどという
  考えはいつのまにか、何処かへ消えていて。

  彼女の幸せを願う想いだけが残っているようで。]
 

   そういうことなら、今度こそ此処へは
   来ないほうが良い。
   俺はいつでもあなたとピヤールの幸せを
   祈っています。


[ ふ、と口元を三日月の形に持ち上げて
  彼女から視線を逸らした。 ]
 

 *

[ 彼女から婚姻の話を聞いて、しばらく。
  彼女の父に閨に呼ばれた際、
  あえて己のほうから、

  そういえばお嬢様のご結婚、
  誠におめでとうございます、と
  完璧な笑顔を添えて言ってやった。

  幾つもの修羅場を潜ってきたであろう
  彼女の父は、取り乱すようなことこそ
  なかったが、それでも生意気な犬から
  不遜な事実を聞き出そうと
  様々な方向性からの陵辱や暴力を
  与えることになった。 ]
 


[ 呻き声ひとつ、あげることを拒みながら。

  薄ら遠のく意識の寸前には、
  心配しなくても手は出してねェよ、と
  言ってやった。

  不敵に見えるよう笑んだつもりだったが、
  上手くいっただろうか。

  そのまま、視界は闇に沈んだ。 ]*
 

.


  [――本当に、最近の己は頭がまわらないようで。]


.


 兄弟ならこんなに格好悪く迷走してないよ

[ 普段が格好良いかといえばいささか自分でも疑問なのだができる限り格好つけたいとは思っている。そんなことはおいといて、独占欲の話をしたなら驚いた様子の後に再び笑うような気配。ヴィが自分のためにだろう笑おうとしてくれているから、そのことで自分の目頭の奥が熱くなってくる。

 過去に彼に押し付けてしまった鈴のお守りだって魔除けの意味が込められていて、どうか自分以外の邪なものが彼に近づかないようにとかそんな願掛けだというのに。
 
 兄弟は上にも下にもいて、さらに甥っ子姪っ子もいるから帰省なんてすれば囲まれているし、扱いも慣れているのだが。]

 君を小さな子だなんて思ってないよ

[ 今は自分も少し笑い声混じりだったかもしれない。腕の中でヴィは今もじっとしていて、ぐしぐしと目の前の衣服で涙を拭う。もちろんそれは自分が寝間着にしている木綿のシャツだが、その事が甘えられているようで抱きしめる腕に少しだけ力がこもる。]

 僕が君を泣かせちゃったんだよ
 わからないならそうしといて

[ 泣きたいわけじゃないんだけどという彼にはそう冗談めかして返した。いつも凪いだ湖面みたいな彼が感情を揺らすなんて、
 今すぐ思い出せるのは、手帳を彼が読んだ朝か、自分が見送りを遠慮して一人で出発しようとした時くらいしか]

 …君が泣きそうなのに笑ってくれるから

[ 自分が泣いてしまいそうなのはそれしかない。*]



   なら、近くに布を置いておくわ……
   褒めるのね、褒める……


[ 慣れていないことに変わりなく。
  こうやって、彼は知っている知識を彼女に
  優しく教えてくれることが多い。
  やはり、この国ではない彼だからか。
  外を知っている分、知識量は遥かに多く。

  近い距離で話をするようになってから
  彼の吐息を偶に感じるようになった気がして
  その度に胸の鼓動は速くなる。
  熱というものを、手のひらとその吐息で
  密かに感じてしまっているからだと
  彼女も少し気づき始めていた。

  しかし、いつもより大きな震え声に
  その感情は一気に切り裂かれてしまう。  ]




[ 自分は知るよしもなかったが、ヴィがダンテは眠いのでは?と考えた、目元が赤かったのなんて昨日の晩のせいにきまってる。

 ヴィの顔はどうだったか、自分のぼんやりした様子とちがい、夜中から朝の彼は薄暗い部屋でそこだけ薄ぼんやり光っているみたいに涼やかで。]

 君こそ、眠たくなったら言ってね

[ これは夢じゃない、昨日のことも今も。彼はここにいるという、額に触れるような口づけをくれたのだから、これくらいは許してと、それにこんなにそばにいるのだからと。彼を抱きしめて額をすり寄せる言い訳にして。*]



    どうして、そう言うの…?
    私は、…………


[ ひとまわり以上歳が違う異性のところなんて。

  その一言さえ言えていたら、
  話は変わったかもしれないのに。

  彼くらいの年齢、
  もしくは彼女と同じくらいの年齢なら
  もう大人しく従うしかないと思ったが、
  まさか、12歳以上も歳上の相手だなんて
  まだうら若き彼女にとっては受け入れがたい。
  だから嫌だと言っていたいのに、
  結局は子供は親には勝てないことが分かる。
  どう足掻こうとも、この婚礼は勝手に決められる。 ]






   っ……────

   期待をしてしまった私が……
   子供だったのよ。そう、ね。……


[ 口元は笑っているのに視線を逸らされると
  彼女は立ち上がり別れの挨拶もなく
  その場を去っていった。
  その瞳は絶望を感じていたが、
  視線は合わなかったので彼に気づかれることも
  なかったと思われるのだが、定かではなく。 ]





──────────


[ あれから、彼の元へ迷子にはなることはなく。
  ただ手元にピヤールを置いて
  彼女は窓の外を眺めるのみ。

  婚礼など頭にはなく、衣装なんて
  そこに飾ってあるのみで、
  日の目を見るのだろうかと考えさせられる。 ]


   ピヤール?…………
   彼の元に行けるわね?


[ そう言って、彼女は簡単な手紙を
  愛猫の首輪にくくりつけて送り出した。
  多分、これが最後かもしれなくて。
  筆記具もなかっただろうから、
  彼からの返事は期待できないけれど
  もう会えないのであれば、
  最後くらい甘えさせてほしい。

  というのも、あの後彼女はほぼ幽閉に近く
  部屋から出ることを禁じられ、
  婚礼までの間、会う人を制限されていた。 ]





[ たしか、地下室を出るときに
  この言葉を使ったことはない。
  また、といつも言っていたはずだから。

  気づいてくれるかどうかもわからないけれど
  彼女は輿入れのタイミングを見計らって
  生きることから逃げ出してしまおうとしている。
  それは、勝手に婚礼を決めた父親への反抗。
  それだけを示しているが、
  正直言って怖くてたまらない。
  どうせなら誰かに連れ去られてしまう方が
  まだいいのではないかと、
  悪い方向にばかり考えてしまうほどに。  ]*




[ 浴室へ向かう途中、長椅子の前で立ち止まり彼のそばに身を屈め。謎かけのようなことを言えば、ヴィは小首を傾げるばかりで、きっと自分は何も言えないまま眠ってしまったのだろう。それともヴィが眠ってしまったのか。

 改めて言うねと、言いなおす自分は多分恥ずかしげに聞こえたことだろう。

 ヴィがだまって目を閉じてくれたから、彼が身を預けた長椅子の背に片腕を置き、それを支えにして彼のそばに寄る。
 目元と頰に触れるだけの口づけ。]

 おはよう
 
[ 一応建前どおり挨拶の言葉を呟き、たったこれだけなのに鼓動が早まっているのがわかる。
ヴィが目を閉じた様子はひどく可愛らしくて、いつもより幾分か柔らかな様子に見える頰や唇。もっと触れたいと思い寸手で堪えて身を離す。*]

 - ねずみのこ -


[彼女は、ダイゴと同じように父母を病で亡くした孤児だった
同じ士官学校の学友として、木刀を何度も交わした。
弁当なんて作る親がいなかったから、至急される握り飯を隣で食べた。

戦場で剣を振るっているにも関わらず、
それが続けばいい、と。彼女が願うのは安穏だった。
果たして、願いは届いている筈だった。

繰り返される乱闘、喧噪、滴り濁る血の泡沫。
何も変わらないのだ。何も変わらなかった。
自分達に出来る事はこれだけなのだと、塵が積もっていく。

虎の子は、何も変わっていなかった。接していた。
靡くだとか揺れるだとか震えるだとか一切も無く。
ことの顛末を全て受け入れているように見え始めていた。

―――それは、本当に良い事なのかしら。

 彼女が疑問に思い、悩む事は、当然の事だ。
 虎が可笑しいだけなのだから。

 その考え自体が、虎にとって裏切りであると、
 普通は繋げない。考えない。だからこそ、]



 「……失礼、傭兵団というのは此処で合っているか?」
 「あ、はい……貴方は…?」 **

『私は……私なりに国の為を思って動きました。
 だって団長……ダイゴ。
 貴方、何も変わってくれないんだもの。』

[鼠の剣がずるり、という音をたてたような気がしたかと思えば、たちまち錆びたように黒ずんでいく。
彼女の得意とする毒の魔法だ。自分と同じように遠距離ではなく近接で攻め、齧りついた所で弱らせていく。手の内がわかりきっているのは此方も一緒だ。
けれど、ぶつからざるにはいられなかった。]

 『王が作ってきた国が、こんなにも揺らいでいるのに、
 守ろうとか、なんとかしようなんて、一言も言わない。
 私達にも何も相談してくれない!

 私、この国が好きなの!守りたいの!
 でも私の立場じゃあどうすることもできない!』

[ずぐ、と毒から漏れる腐臭が漂う。]

 『国を変えようって、言ってくれたのよ、
  ココウの力を貸して欲しいって、だから!!』

 ひとつ。私は、
 王にこの国を「守ってくれ」なんて命じられていない。
 結末を見届けてほしいと言われたんだ。
 それが例え砂の城であったとしても、だ。


 お前ほど多分、私はこの国を愛してはいなかったよ。

 私は何も変わってない。
 アーサーも何も変わってない。

 本当に変わろうとするなら、その時に私が止めるさ。

 ……戦場の友として、必ず。

 格好悪いだなんて思ったことないけど。

[ 寧ろ、容貌なら優れている方ではないだろうか。
 そういえば彼が自国に足留めされた初対面の折、目ぼしい宿は既に埋まり、個人が片手間に開いているような自分の宿を漸く探し当てたなら、断られては困る為心象を良くしようと努めていたなど、その夜の酒の席で聞いたような覚えがある。]

 見栄っ張り。

[ 断定でもなく揶揄でもなく、もしかしてそうであるのかと問い掛けのような投げ掛けだ。
 更に加えて、自分の為の嵩張る荷を彼に任せているのだから、酒瓶の1本くらい片腕に抱えると、憮然とも言えない表情を帰路に浮かべていたようことも思い出す

 様が好いであるとか、振る舞いが洗練されてあるだとか、そういったものに心を惹かれている訳ではないと言える。ふとした育ちの良さを感じる温柔さであるとか、良くあろう、それは自分が彼を見栄っ張りと呼びつけてしまった部分かもしれないが、そういった部分を愛しく思う。

 歳の離れた兄弟や、その子である甥姪に囲まれる彼の話を聞くのが好きだ。願わくば、遠くからでいいからいつかその風景を見てみたい。

 何故自分が泣いているかわからないと言うと、余計に彼が自分を抱き寄せた。
 僕が君を泣かせたんだという言葉に、腑に落ちる思いがする。いつかも似た事があった。自分にとってダンテは特別なのだと彼が言った。それと同じ心持ちだ。]

 悪い。

[ だからこれはダンテが悪いのだからと、余計に溢れる涙を勝手に彼の夜着で拭う。]

 泣かないで。

[ 自分は駄々を捏ねる子どものような素振りの癖、彼の腕の中で手を伸ばす。手を伸ばし彼の頬に触れる。温かい。
 ずっと穏やかで優しいものだけが彼にあればいいのに。]

[ 今は眠いと言うよりも、泣いたせいか頭の奥がぼんやりと重い。明け方の今は問題ないが、流石に昼方、熱射の中を動くのは厳しいのではないかと思う。
 眠気を我慢せずともいいとのダンテの気遣いに、恐らく甘えてしまうことになりそうだ。
 抱き締める腕が甘く温かく心地良く、このままもう一度寝台に潜ってしまおうと誘い掛けるのを堪え、寝台を出る。

 窓からまだ陽の登りきらない街を眺め、そのまま浴室に向かうと思ったダンテが、長椅子で着替えを解く自分の傍へ身を屈めたのではずみで見上げる。目が合うと、謎掛けめいた言葉が落ちた。

 答えは待たされることなく、彼が唇を寄せるのと、目覚めの口吻の許可を問うのとどちらが早かったか自分からは判然としない。どちらでも、先に目を瞑った自分が待ち詫びていたようで、唇が触れる感触に羞恥を覚える。]

 おはよう。

[ 彼が型通りの挨拶をするから、何でもないことのように平静のなりで挨拶を返す。彼がどんな顔をしていたか、見られたら良かったのに。]*


[ 嗚呼、やはり。
  責めるような、縋るような声が、
  澱んだ空気をひりつかせる。

  いい年をして、彼女の言いたいことが
  わからないはずもなかった。
  けれど、どうしようもないではないか。
  あの主のもとにいる限り。
  そうして己の飼い主は彼女の父なのだから。


  アウドラにと彼女の父親が選んだ相手が
  どんな人間か、そんなことは
  どうでも良かった。
  ただ、彼女を大切にしてくれるなら。
  彼女が幸せなら、それで良かったのだ。 ]
 


[ 自分自身に言い聞かせるように
  ぽそりと呟いて
  こちらを見ることも
  別れの挨拶もないまま去っていく姿。

  翻るドレスの裾はいつもと変わらないはずなのに、
  やけに重く、いつまでもその場に残像が残るよう。

  まるで幼子が、母親の衣服の袖を握りしめて
  引っ張って離さないような。

  そんなふうにそのゆうるりと揺れる
  柔らかな生地を、白い指ごと掴んで
  引き留めることが出来れば

  どんなに、と─── ]
 


[ 彼女が幸せならそれで良いと思っていた。
  意思を無視して諸々の事情のみで与えられた
  婚姻であっても、その全てが
  不幸というわけでもないだろう。

  けれど、彼女は。
  自身の足で、自身の手で、
  掴みたかったのではないだろうか。
  そんなことをふと思う。

  その相手が己だったと自惚れて良いなら、
  えらく泥濘んだ道を選んだものだと
  苦い笑みも浮かんだ。 

  同時に、何もかも与えたつもりで、
  何もかもを奪い、全てのことから彼女を
  ひとりにする彼女の父親に、
  今まで以上の怒りを感じた。 ]
 

 *

[ なぁお、と鈴を転がすような声がする。
  目を閉じたままの頬にざらざらとした鈍い痛み。
  ゆっくり持ち上げる瞼が重い。
  こつん、と滑らかな毛皮に包まれた
  小さな頭が擦り寄せられたのがわかった。]


   ………… ピヤール。


[ 希少な宝石よりずっと煌びやかに輝く
  エメラルドグリーンの瞳。

  ふ、と息を吐いて、久しぶりだね、と
  声を掛けた。 ]
 


   ……君のご主人は、元気かい?


[ 訛りのように重い腕を動かして頭を撫でる。
  身体中の傷と痛みで、起き上がることは諦めた。

  喉もとをそっと掻いてやろうとした時、
  美しい首輪に結ばれたものに気付く。

  両手をどうにか伸ばし、首輪から外そうとした。
  がたがたと震える両手で、
  それが傷つかないように外すのは
  存外に苦心したが、優秀な配達猫は自慢げに
  じっと座って喉を鳴らしていてくれた。]
 


[ 別れの言葉。

  今まで幾度となくここで会い、
  けれど聞いたことのなかった、
   
Au revoir

  さよなら───


  ぎり、と唇を噛み締めた。
  このままでは、きっと。 ]
 


[ がり、と音を立てて、歯で薬指の皮膚を破く。
  ぷつぷつと湧き上がる赤い滴を、
  そのまま己の唇に塗った。

  ここには返事を返すためのペンも、紙もない。
  感謝を、もしくは朧な愛を告げるための
  花も、宝石も。
  言葉すら、届かない。

  ならば。

  その手紙の隅に、そっと唇を押し付けた。

  血の赤が、唇の形に咲く花のように
  見えただろうか。 ]