ミアは、メモを貼った。 (a23) 2020/05/20(Wed) 0:50:52 |
【人】 軍医 ルーク ―― 医務室にて ――[ 名を呼ばれ、噤まれた言葉の先を追うことはしなかった。>>215 何が言いたかったのだろうと、軽く首を傾げただけ。 薬のことで他の医者を阿呆と呼んだところだったから、 口が悪いとかそういうところだろうか? などと 見当付けて置く。 けれど、それを今このうさぎが口にするようにも思えなくて。 考えても分からなかったし、 分からないなりに、話が先に進んでしまう。] 少しでも早く最初の襲撃の情報を、か。 わたしも、そういうことだとは 聞かされているけれど。 [ けれど、自分に与えられている情報は制限されている。 此処に来る前の研究所で起きた“出来事”を思えば、 当然のことだ。] (235) 2020/05/20(Wed) 2:08:27 |
【人】 軍医 ルーク[ さて、痣のことに気付かれてからは大変だった。 検査があったから冷やせなかったというわけでもないし、 問題がなければ放っておこうと思っていたというか―― などと、反論する間もなく、 医務室に響いた大声に、ただ不思議そうに首を傾ける。 このうさぎも声を荒げることがあったのか……という、 奇妙な感心だった。 言っていることを三回ほど繰り返して考えた後、 不思議そうに口を開く。 “なぜ心配するのか”とは言わなかった。] わたしの勘違いじゃなければ、君、 その言い方だと、 わたしがいない方がいいとは思っていないように、 聞こえてしまうのだけれど。 [ やっぱり聞き違いだよなあ、と眉を顰める。 返答を聞いてようやく、 自分が“心配”されているのだと理解した。 その怒りが、自分を殴った相手に向いているということも。 たっぷり五秒ほど押し黙り、] ええ…? [ 思わず変な声が出た。] (236) 2020/05/20(Wed) 2:11:57 |
【人】 軍医 ルーク[ なんだこのうさぎ。 部下の事だとか、ひとのことを気遣ってばかりだと 思っていたら、 まさかの相手にまでその対象が向いている。 恐らく自分は今、驚きを感じているに違いない。] 驚いた。 [ 礼を言うべきだったのだろうか、と気づいたのは、 それから随分後になって、検査も終わり、 タイミングをすっかり逃してからの事だった。] (237) 2020/05/20(Wed) 2:14:24 |
【人】 軍医 ルーク[ 検査を終えて頼みごとをして医務室を出ようというとき、 応えそびれていた問いがあったことを、思い出す。 言葉を返そうとしたところで、 相手が絡まったぺんぎんを見かねて手を出して、 返事をする機会を失ってしまっていたからだ。>>216] そういえば、さっきの話。 君が忘れている記憶の事だけれど、 それが最初の襲撃の情報、という意味なら、 ……知りたいと思っていることは、あるよ。 けれど、それは、君の記憶だ。 最初の襲撃の話しだけじゃない、 すべてをひっくるめて、ね。 ひとが何かを忘れることには、理由があるんだ。 逆さにして振れば 記憶が降って来るというわけじゃない。 上の方は、相応の理由があると言うのだろうけれど、 本人の心身を無視してまで、 引きずり出そうとしてどうする。 (238) 2020/05/20(Wed) 2:15:52 |
【人】 軍医 ルーク[ 例えば、耐えられないと思うほどの衝撃を受けたとき。 痛みが身体を守るように、忘却が心を守ることがある。 本人が望むよりも先んじて、無理に暴いてまで 何かを知りたいかと言われれば、 戦局をつかさどる上層部は、イエスと答えるのだろう。 けれど自分はそうではなく、医者だ。 患者に無理を強いる状況に異を唱えるのは当然のこと。 その答えで、間違いはないはずなのだ。 他の誰が患者の立場であったとしても、 自分は同じことを主張する。 けれど、いま目の前にいるのは“他の誰か”ではなくて、 自身がこのような目に遭いながら、 誰かのために身を投げ出すような、 あろうことか、目の前の“葬儀屋”にまで 心配の対象を広げてしまうような、 とびきり莫迦のうさぎだ。 『患者』ではなくて、このうさぎの記憶のことを、 検査のことを考えたとき、 ペンを握る指先に力が入った理由も、 自分がそうしたことさえも、知らない。 ――けれど、] (239) 2020/05/20(Wed) 2:17:40 |
【人】 軍医 ルーク ―― 外壁の外で ――[ 外壁から遠ざかり、大穴の下へと歩く。 元々はひとが住んでいた場所だが、 度重なる機獣との戦闘でひどく荒れている。 それでも、道なりに視線を巡らせ、耳をすませば、 植物の影にある小動物の姿だとか、虫の声が聞こえてくる。 普段外壁の外まではあまり出ない自分は、 彼の身に着けている武器が、護衛のためのものだとは 最初気付かずに、 外に出るなら装備は身につけるものか、と、 疑問に思うことはなかったけれど。 周囲に視線を向けながら、 警戒を忘れずに歩いている様子を見れば、 そういうことか――と、気づきもする。 脚の痛みに歩みを止めたことを案じてくれているとは、 やはり、気付けないままであったけれど。>>232] (241) 2020/05/20(Wed) 2:19:48 |
【人】 軍医 ルーク 楽しい…? ああ、確かに耳に新しい情報も、あったかもね。 わたしも君と話すのは“楽しい”。 前にも言ったかな、 君を見ていると時折、こう、 わざと苦いものを出したくなったりとかそういう。 ほんとうに、君くらいだろうな。 こうしてわたしと歩いて話をしていて、 これといって嫌そうなそぶりも見せないのは。 非番の夜中に物探しに引き摺り出されたのに。 変わってる。 [ にい、と笑みの形を作って見せる。 実際のところあれは、薬が嫌だったら無理をするな、 という意味合いが殆どだけれど。 飲んで涙目になっているところを見ると、 擽られるものがあるというのも嘘ではなく云々。 変わってる、という言葉は、 考えたことをそのまま述べたものだった。 その言葉を言ったときの声は、 苦いものの話をしていたときのような、 揶揄い交じりのものではない。 構えたところも皮肉もない、ただ、肯定的なもの。] (242) 2020/05/20(Wed) 2:21:26 |
【人】 軍医 ルーク[ ランタンの明かりが示す先を見ながら、先導に従って歩く。 道すがら、探し物の形状の予想は伝えた。 このくらいの大きさの箱のようなもの――と、 両手で大きさを示す。 ぺんぎんもまた、二つの人影の間のあたりをてちてちと。 うさぎが取り出した包みに気付けば、 頭の上にぴこん! と明かりでもともすような顔をして、 わあい、と飛び跳ねた。 なんだろう、と思っていると、 此方にも紫の包みが飛んでくる。 放物線を描いてゆるやかに掌に収まったそれは] 飴? [ そうか、さっきぺんぎんにあげていた。 確かぶどうの飴だったか。 うさぎがそれを口に入れるのと一緒に、 ぺんぎんもまた器用に羽で包みを解いて、 大事そうに取り出した飴玉を口に放り込む。 ほわああ、と幸せそうな顔をして、 その場でぺたぺたと足踏みをするぺんぎん。] (243) 2020/05/20(Wed) 2:23:13 |
【人】 軍医 ルーク[ 少しの躊躇いの後、包みをあけて、口に入れてみる。 ころり、と、硬い感触がした。 苦いものを甘いと言って渡すような悪戯はしないだろう。 だから、この飴は本当に甘いのだろう。 “甘いもの”、というのだから。 ――なんて答えたら正解なのだろう? あまい? ぶどうの味? 戸惑いに眉を寄せて考え込みながら、 先に飴を食べていたふたりの顔を見る。 ぺんぎんは、それはもう幸せそうな様子で、 ほわほわと甘味を楽しんでいるようだ。 うさぎのへらりとした笑みが見えた。 最初から三つ持って来たのだと、そう言って。] (244) 2020/05/20(Wed) 2:24:36 |
【人】 軍医 ルーク[ それを見ているうちに、自然と言葉が出た。] ……、 悪くないね。 [ 顔を上げる。 ああ、よかった――この答えなら、嘘じゃない。 我知らず浮かべた表情は、 混ぜ損ねた絵の具のようないつものそれでもなければ、 時折このうさぎに向けるような、物騒なものでもなくて。 夜目が効くその赤眼には、ふっと無防備に零れたような、 柔らかで微かな微笑みが、見えたことだろう。]** (245) 2020/05/20(Wed) 2:25:25 |