その生気さえ我に比べれば
　一滴の雫のようだ

　

　さて、今回の巫子はどんな者か



　さあさあ　宵の刻
　迎えにいこうぞ

　

［　雪の中、白が覆い隠す中。

　　愉快そうに舞う姿。
　　深紅の髪が靡き、揺れる。

　　山は礼を重んじる。
　　捧げる謳を
　　神聖なる舞を

　　与えよ、さすれば山は鳴動する。　］

　

　

［　時が止まったかの様に
　　吹雪が止まる。

　　鈴の音が響く。　］




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

［　その音が消えると同時に
　　文字通り祭壇の上へと
　　空から降り立った。　］

　　如何にも
　　我は月迦嶺鬼

　　この山の主よ

　

　　気安く呼ぶとは不敬である
　　が、
　　そなたは我の巫子

　　特別に呼ぶことを許そう

　

［　愉快という表情を隠そうともしない。

　　長寿が偉い訳ではないが
　　経過した時が違う。見ているものが違う。
　　だからこそ人というものが嫌いではなかった。　］

　

　　綺麗な顔をしておる
　　だが面白くなさそうな顔だ







　　生贄は名誉なこと
　　誉と誇るが良い

　

［　少し屈んで、それでも視線が合わない
　　高さだからと>>17
　　力加減を知らぬ雑さで
　　その顎を掴み視線を向けさせる。





　

　　そう構えるな
　　今すぐ取って喰うことはせぬ

　　ここは寒いだろう
　　人の子は脆いからな、場所を移そう

　　おお、そうだ
　　巫子、そなたの名はなんと申す

　　そなただけ我の名を知っているのは
　　不公平だろう？

　　名乗らないと白と呼ぶぞ？
　　吹雪に隠されてしまいそうな白だ


　

［　愉快そうな態度は変わらず。
　　”今回の”巫子に挨拶程度の戯れだ。



　

［　雪の結晶が光を反射し
　　まるで神聖にも見える鬼の山。





　

　

　　よい、そこまで畏まるな


［　口籠る姿を目に捉えれば>>32　］


　　。というものがある
　　言葉には霊力が宿り、言の葉に乗せることで
　　霊力が使える。
　　誰でも使える”まじない”だ

　　名前は相手を縛る、最たる言霊だ。




　

　　我が優しいと？
　　不思議なことを言う

　　ほう、”みつき”
　　名は無いと？
　　すでにその名はそなた自身に馴染んでいる
　　人が決めぬのなら我が決めよう

　

　

　　山も認めたようだ
　　この名はそなたの魂へと刻み込まれる

　　そなたがそなたである証だ

　　我も忘れずに覚えておこう

［　からからと笑い声を上げながら、
　　それでもその次の言葉に
　　笑顔も突如、消える。
　　それは静かな怒りが揺るがすかのように
　　空気は重くなる。　］


　　ただの戯言よ
　　置いていったりなどせぬ




　

　　すぐ食べられることを望むか？

　　生贄とは生気を捧げる
　　死で生気は捧げられぬ

　　みつきの働きによっては
　　”すぐ”ではなくなるかもしれぬな

　

　

　　冷えてしまったか
　　全く、人の子とはこれしきのことも耐えられぬとは
　　不便よの

　　手を


［　その言葉を告げると同時に体ごと持ち上げる。　］


　　まるで重さを感じぬな。それに冷たい
　　雪を運んでいるかの様だ
　　凍えてしまっては務めも果たせぬぞ巫子よ

　

［　みつきの体を持ち上げたまま
　　飛ぶ様に山を高速で移動する。

　　風を感じるはずの感覚はなく、
　　逆にどこか温かみすら感じるはずだ。




［　人がどれだけの温度で死ぬかはわからない。
　　動物も生き物も寒さで死ぬことは知っている。



　　そうして鬼の塒へと向かっていった。　］

　

［　廃れた神社の本殿のような造りの建物。
　　こぢんまりとした印象ではあるだろう。

　　中に入れば神気が満ち、清浄な空気が漂う。
　　囲炉裏も見当たらないが
　　温かさもしっかり感じられる。

　　その場に鬼はみつきを下ろすと
　　深く息を吐き、己の巫子を見る。　］

　

　　ここがこれから我と巫子が住む塒だ


　　よいか？
　　巫子には務めがある
　　それを果たせば山の機嫌は良い。
　　吹雪もなく天候は安定する。
　　夏は日照りもなく雨を降らせることもできる。
　　村を、人を、守ることができるのだ。

　　

　　早速そなたの、巫子の生気を我に与えてみせよ
　　さあ、みつきならどう与えてくれる？