[ 先代の彼は、先々代処暑様の蛍だった訳でも、弟子だった訳でもなく、
只の年若い、処暑域の行政職員だった。
処暑様の下で働いているのだから、処暑様と面識もあり、やりとりを交わす事も多かったようだが、
それにしても、本人も、周りも、住民も、突然の指名に驚いていた。
しかし先々代処暑様はこう言った決定を譲らない人であったし、灯守りの言う事に異議を唱えられる人は居ない。
処暑域は少々慌ただしくなったものの、中央に迷惑は掛ける事もなく、やがて滞りなく灯守りの引き継ぎは成された。
先代の彼が良き灯守りであった事は前述の通り。
先々代様と統治の形は違ったが、人に寄り添う灯守りとして、住民に慕われていた。
……上に立つ者として、優しすぎるぐらいであったと思う程に。
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