水子たちの霊 ヒルコは、メモを貼った。 (a9) 2022/08/11(Thu) 13:39:45 |
【人】 水子たちの霊 ヒルコ―分娩室― 部屋全体に、強烈な死の臭いが満ちている。 「空気が重い」と形容すればいいのだろうか? 湿気とは違う、肌にまとわりついて離れない、例えようのない「嫌な空気」。 その理由が、この部屋の中央に「在る」人物の発する怨念の深さだと言う事は、同じ怨念の自分だからわかる事だが。 (60) 2022/08/11(Thu) 21:36:43 |
【人】 水子たちの霊 ヒルコ人物の様相は、あえて詳細な描写を省くなら、『酷い有様』だった。 その有様を部屋の真ん中、分娩台の上に乗せられて、これ見よがしに晒されている。 よほど、趣味の悪い相手に捕まったのだろう。 ―――少女と共に居てくれるのが、カナおねぇさんで良かったと心底思う。 一つ、溜息を吐いて「人物」に歩み寄る。 このまま、この「人物」を晒し者にしておく気はない。 同じ人ならざる者ではあるが、趣味嗜好はそれぞれだ。 少なくとも、この状態を悪趣味であると、自分は断じた。 (61) 2022/08/11(Thu) 21:37:05 |
【人】 水子たちの霊 ヒルコ→地下通路 「人物」への対応を終えて、分娩室を後にする。 「人物」の背格好は、少女と似通っていた。 そして、何よりその髪色。 他人の空似かもしれない。 けれど、もしかしたらあの「人物」が『イモウト』かもしれない。 少女が、あのままカナおねぇさんと共に、この病院の一員となるなら、それもよし。 けれど、もしまだ『イモウト』を探し、『私達』を呼ぶなら、その時は分娩室に案内するとしよう。* (62) 2022/08/11(Thu) 21:37:24 |
水子たちの霊 ヒルコは、メモを貼った。 (a18) 2022/08/11(Thu) 21:39:43 |
【人】 水子たちの霊 ヒルコ―いつかの日 立花と― 「よく、『生きる事に価値はある』、なんて言う人がいるでしょう? 随分と、残酷な言葉だと思うんだ。」 精神病棟の一室。 あまり喋らない彼女>>0:221の傍ら、硬く冷たい金属製のベッドの手すりに腰かけて、言葉を投げかける。 「死んでしまった人に、価値はないのかな? どんなに悪人でも、生きているなら価値があるのかな? 『俺』は?おねぇさんは? 死んでいても、意思を保っていて、生きている人に干渉もできる。 なら、生きている人たちと何が違うんだろう?」 率直な疑問を連ねていく。 生きる事の定義とは、なんであるのかと。 (73) 2022/08/11(Thu) 22:52:28 |
【人】 水子たちの霊 ヒルコ「まるで、生きる事が出来なかった『私達』に、価値が無いとでも言ってるようで、一人残らずぐちゃぐちゃに呪い殺してやりたいじゃない?」 (74) 2022/08/11(Thu) 22:52:45 |
【人】 水子たちの霊 ヒルコそっと、彼女の胸の穴へと触れる。 彼女の、欠けてしまった一部。 「おねぇさんと、『僕』は似た者同士だね。 『私』にも、お母さんって呼べる人が欠けてるんだ。」 手すりから身体を離して、硬いリノリウムの床へと降り立つ。 手すりが擦れあう金属音と、靴が床を打つ高い音が響いた。 「お互い、欠けた部分を見つけられると良いね。」 最期に一言だけ告げて、彼女の病室を後にした。 なんてことは無い、怨嗟と嘆きが響く病院での出来事だった。* (75) 2022/08/11(Thu) 22:53:03 |
水子たちの霊 ヒルコは、メモを貼った。 (a20) 2022/08/11(Thu) 22:55:59 |
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