246 幾星霜のメモワール
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「どゆこと〜〜〜!?
俺様ちゃんさっぱりわかんね!
誰が味方で誰様ちゃんが敵かも、
ちゃんと書いておいてよね女神女神〜〜〜」
ていうか見た? あのクールな振る舞い。
教会の端で如何にも何かを知っている、クールな盾役。
こんなもうもうパラディンじゃん。融点58℃のワックスだわ。
ってそれパラディンじゃなくてパラフィンパラフィン!!(爆笑)
「……いやー、こういう内心がバレちゃったら、
皆からタンクとして頼って貰えないしモテないからね。
ホントはこんなやつだってバレないようにしないと。
ホントはこんなやつだってバレないようにしないとね!
大事なので二回説明しました。誰に?
おっ! おやっ!? なんだか共鳴してる気がする!」
「キャー! キョメ太さんのエッチ!
見ないで! 俺様ちゃんの本性!!
うっそマジで今年はこの役、俺様ちゃんってコトォ?
ごめんね、存在したら先に謝っとくけど、
確かにこの祭りでそういう能力持ちって例年いるらしいけど、
今年は俺様ちゃんでしたー!」
騒々しいテレパシーが送られてくる。
「今、俺様ちゃんは貴方の脳内に直接話しかけています……。
お互い大変だね。
でも多分キミの方が俺様ちゃんの
およそ100倍大変だと思うから頑張って。めげないで」
「うわあっ 何何何!?!?
すご〜い人懐っこいワンちゃんの心の声がする気がする!!」
テレパシー受信。魔女大喜び。
パッションだけで事態を呑み込んでいます。
「ええと……つまり?あたしはお祭りの中で、
念話能力が使えるようになっているって訳ですね?
いいじゃない!そういうの大好き!
大魔女だからフシギにはなんでも首を突っ込まなきゃ」
現在どこかでは両の人差し指をこめかみに当てて、
嬉しそうにうんうんとしている魔女が見られるという。
「心が筒抜けのあなたも勿論大変よ?
全然素敵だとは思うけど……隠してるみたいだし。
ああええっと、改めてあたしは……プリシラ!
これからどこでも話し相手になってね、能力友達さん!」
| 街で見たどれよりも美しく、背の高い聖女像を前に、指を口元にあてて何やら思案中。悪戯と礼節を天秤にかけて、後者に傾いたからにはうん、と頷いては諦めた。
それから興味は周囲に移る。 痣持ち。聖女に愛された幸運な者たち。 きっと皆が皆、それぞれ素敵な人々であることに違いない。
「あたしはプリシラって言います! ルフトの近郊、森住まいの魔女で…… 薬草やお花を育てて、この辺りで売らせてもらってるわ」
「植物の相談、お店巡りに、呪い占いの話…… な〜んにでも、誘ってくださいね。 折角だし、お祭りを機に仲良くなりましょうよ!」
ああ勿論、無理にとは言いませんから! 人懐っこく笑って両手を振っては、きっと周囲の反応が何であろうと満足そうにしていたことだろう。
(11) 2024/01/27(Sat) 2:55:09 |
「ワンワン! クゥーンクゥーン!
夜の飼い犬、グノウです。
ワオ、お相手ちゃんは大魔女ちゃんと来たかー。
俺様ちゃんに恋という名の魔法を掛けないでくれよ?」
案外ノリでテレパシーが返ってきて、脳内ハイタッチ。
「たぁしかに! 俺様ちゃんバレたの初めてかも!
魔女ちゃんに、そんな弱みを握られて、魔法を掛けられて、
使い魔にされちゃうんだ……一日三食と温かい寝床と共に。
オッケー、俺様ちゃん、独り言でも二人言でも
心の中じゃ話してないと死ぬ病だから、
祭りの話でも、コイバナでも、
ヘイグノウ!って軽いノリでなんでも聞いてきな!
すみません、よくわかりません。
俺様ちゃんも、夕日の綺麗さとかに感銘受けて、
呼吸音多めのポエムとか流しちゃお!」
「ふふ!もー、掛けない掛けない。
でもそーやって揶揄うようならお呪いしちゃうかもな〜?
テレパシーで勝手に語尾にワンがついちゃうやつとか」
かけなくともやってくれそうだが。適当言ってる。
「図々しい使い魔はいりませ〜ん。
それにあたしは現代の素敵な魔女なのだから、
弱みを利用するような真似はしないつもりです!
どうせ一日三食と暖かい寝床を与えるなら、
きちんとあなたのことを知って雇うぐらいがいいわ。
グノウさんってこう……
家に置いとくと便利そうなのはそうですしね?」
門番としてはとても優れてると思うし、
加えて何故だか頭を過ぎる一家に一台マシーン。
そういうこともあるかと深く考えずにいつつ。
「そういえばお祭りの事知ってるみたいだったけど、
前の聖女祭りって、どんな感じだったの?
マジックアイテムが卸されてるのは耳にしてたけど……
あっ、聖杯の痣が出てるなら一杯御馳走食べられたり!?」
| プリシラは、聖女像に気を取られて投げキッスを完全に見逃していた。 (a1) 2024/01/27(Sat) 3:34:05 |
| 「あたしの育てた子たちも幾つかお薬になってるって話、 たま〜にギルドの方から伺ってるわ!
魔女だしってたまに自分でも調薬を試してみるんだけど、 薬師の人たちほど上手くいかなくって…… ちょっと尊敬しちゃう。欲しいものがあったら教えてね」
力になれると思うから。 あるいはもう間接的に助力が出来ていたりして。 示された興味には快く応えていく。
「とはいえ色んな人がいるから頼みごとには困らないかな。 お祭り期間中は、何があっても何とかなっちゃいそう」 (17) 2024/01/27(Sat) 8:12:07 |
| 「褒められるのも悪い気はしない、かな!
気を付けないとすぐ枝に引っ掛けたり、 葉っぱ乗せちゃったりするから、 あんまり煌びやかなドレスは着られませんけど……」
これでも精一杯おめかししてきました、という意気込み。 怪我したら癒してもらえるし破けたら繕ってもらえそう。 ほんとに至れり尽くせりです。
「ふふ、にしてもあたし達は逃しちゃった子の代わり? お食事自体には興味があるなあ、 通り過ぎただけで良さそうなお店沢山あったし」 (18) 2024/01/27(Sat) 8:28:10 |
「クリームパン二つくれる?」
毎度あり!と店仕舞い前の店で受け取った袋を抱えて中央を逸れた路地を歩む。
広場にはまだポツポツと灯りが見えて、こんな裏手でも不安を感じる要素は少ない。
生まれ都合上、もっと治安が悪いところにはいたことがあるし。
「アンジュ……」
寒い季節の風を受けていた壁にもたれかかり、
友と呼んでも遜色はない大事な者の名前を呟き息を吐く。
私は盗賊ギルド員の一人娘、
違和感を持ってから、当たり前のことに気づくのは容易で。
私の友はこの世界の住民で、私はこの世界のイレギュラー。
単純で変えようもない事実が項にある痣となって自身に訴えてきている。
何か準備しておくべきだったかと思ったけど、どうしようか考えて結局時間ギリギリになってしまった。
この街はとても治安が良いとはいえ、犯罪がゼロというわけでもない。
祭りに浮かれた人から自衛できるように最低限の装備だけ仕込んで約束した場所へと赴く。
大通りが見えるこの場所は、入国してからずっと感じていた疑念と不安感を拭ってくれるような感覚がした。
「すみません、カリナさん。少々遅くなりました。
まだ寒いのに、こんな場所で待ち合わせてごめんなさい」
小柄な少女が駆けてくる。自分より少し年上で、先輩で、友人の彼女のもとへ。
ちゃんと会って喋るのは久しい。努めて尾を振る動物のように笑顔を浮かべてあなたを見上げた。
七色に緑のディスプレイが光る。
「置物とかにしておくと俺様ちゃん防犯に役立つよ。
人が来たらココとか光って威嚇できるし。
ヒェエ、魔女ホーダイのつもりでいたら、すっごい請求来そう」
顎に太い金属の指をやり。
「そうねぇ、基本祝祭だから"女神の名の下に"って名目ある以上、
派手に得して稼ぐこともできない反面、
売り上げ金額が信仰に紐づくせいで、ケッコーな適正価格で、
詐欺にならないアイテムの売り方してくれること多いからね。
だから珍しく価格交渉もせずに美味しいもの食べれるぜ!
俺様ちゃん食道ないけど!
面白グッズも出るから変な眼鏡とか掛けようぜ魔女ちゃん。
俺様ちゃん目もないけど!!」
タハー! 祭り楽しむ資格ないじゃん俺様ちゃん!
「なので気の合う仲間や、美味しさ共有できる子らといっといで。
コワイお兄さんが出たらいつでもテレパシーで呼ぶんだよ。
ファイト! なんとかなればいいね! って遠くから応援する。
魔女ちゃんはでも、今回お花とか売る方なんかな?」
| >>23 ディルク 「嫌よ、勝てないもの。 楽しみたかった花に代えられるものなんてないですし」 合わせた両手をお腹の前に降ろして、困ったように笑う。 言葉選びはやはり、少しの冗談色が滲んではいたが。 「……ふふっ、ごめんなさい。本当に代わりを探して声を掛けてたわけじゃないのは分かってますよ。 だから奢ってもらうのなんて悪いわ!返せるものもないし、どうしてもと言うのならもっといいタイミングにとっておいて頂戴な。食べたい物自体はいくらでもあるんだけど……」 イヤーカフに視線を向けて、それから顔へ。 近づいてきたから目で追っている、その程度の動き。 「ディルクさん、でいいんでしたよね? ちょっとしたら行きましょうか。あたしもお腹空いてるしね」 (27) 2024/01/27(Sat) 14:05:07 |
| 「こういう畏まった場所に集められると、 何だか変に行動を起こしづらいことありますよね」
でも神官様のお話は済んだしやっぱり大丈夫そう。
「男前と可愛い子から、 悪魔に動く鎧まで……聖女様も随分多趣味だこと。 あたしもそうやって色んな人集めてみたいなあ」
「それこそ、いつだってパーティが出来ちゃう!」 (28) 2024/01/27(Sat) 14:14:50 |
「あなたって案外荒事が得意じゃないんですか?
魔女放題、踏み倒すつもりでかかってらっしゃいな」
頑丈さをウリにしているけれど、
根はちょっと柔らかいのかしら(オブラート)。
やるときはやってくれると陰ながら信じています。
「よかった。聖女様の手前、阿漕な商売はできないものね。
食事は最悪お祭り価格と思えばいいとして、
掘り出し物のアイテムや武具が割高だったら……
お財布と相談する回数が増えちゃう。よくないわ。
えー、ギャップっていうのもあるから、
乗せてみるだけでも面白くなったりするかもよ。
買ってきたら試しちゃう。物は試し」
もし似合いそうなものがあれば、
話を思い出して買ってきちゃうかもしれない。
食べたものの話だって聞いてくれるならするつもり。
「ん−、完全にお客さんの気分で来ていまーす。
その気になれば即興でお店は開けるけど。
ほら、お祭りの時期だけ咲く花とかあるわけじゃなし、
あたしの商売は別にいつでもいい気がして」
「エエ〜ッやだやだ、荒事を抑え込むのは得意だけど、
自分が荒事を起こすのは向いてないし、
嗜虐よりも被虐に興味がある星の下に生まれたから、
俺様ちゃんカワイコには踏み倒すより
踏み倒された方が興奮するしさ〜」
これは倫理や信念ではなく性癖の問題です。
「オウイエだったら俺様ちゃんに似合う装飾探すってクエスト
個人的に依頼しちゃおっかな!
魔女ちゃんはクエストを受注した」
脳内でズビシ、と両手で指さし。
「このタイミングでしか来ないような冒険者もいるし、
奇縁が結ばれるかもしれないしね、
人生一度きりだから悔いなくやらないと、
何が起こるかわかんないからね!チャオ!」
―――あなたたちが、教会にと集められるその前日の夜。
「 ファリエ 」
聞こえたのはその声だけ。
足音もなければその身体の下に影ひとつ落とさず、聖女はひらりと突然現れた。
変わらぬ光景。空気に揺れる白銀の髪。
それが落ち着く頃、あなたを見てはくすりと微笑むのだ。
「 お祭り たのしみね 、ねえ ファリエ 」
くるくると、本当に楽しそうに、喉を鳴らして。
「あ……リッカ」
子供たちを寝かしつけ冬の重たい夜を享受していた時だった。
夜空に滴るミルクのような髪が視界を横ぎって目を奪う。
そうだ。女がここまで狼狽える理由は、何も不慣れな場に招かれたことだけ原因ではない。
何年も前から痣が光ったその日まで聞き続けた声。
それはすべての元凶の響きでもあって。
「…………楽しそう。聖女様の為のお祭りだもんね。
あなたにとっては誕生日のようなものなのかな」
楽しみだ、とすぐ答えられず。
白い息を吐く。歌うように踊るようにはしゃぐ己だけの■■を見る。
「 たんじょうび?
…… ふふっ、ううん、関係ないわ 」
また可笑しそうに、笑う声。
どんなに夜が暗くとも、リッカの姿は闇に溶けて消えたりしない。
白い髪に、肌に、衣服が。ぼう、とまるで灯りみたいに浮かんでいる。
「 お祭りは、お祭りだもの。
たくさんの人が集まって、たくさんのお店が並ぶのよ 」
「 ――― 考えるだけで、とっても たのしい。
雪も、降らないかしら。 降ったらきっと、とってもきれいね! 」
子どもの声が、子どもらしく。
薄ら細めた瞳は夜空よりもずっと寒々とした、蒼い色で、あなたを映す。
そう思わない? って。
「ただ単に賑やかなお祭りが楽しいの?
リッカってほんとうにいつまでも子供みたい」
目の前の存在は神秘的。幻のようだけれど夢と消えず確かに其処に居る。
隣で無邪気に笑うあなたを見る目が、孤児院の子供を見るのと同じになったのはいつからだったろう。
幼子でなくなり、少女でなくなり、大人になったファリエ。
あなただけはずっと変わらない。
あなたとの関係性が変わるとすれば、間違いなく己が原因なのだ。
「そうね。お祭りというのは本来そういうものね。
ここではないどこか知らない世界に迷い込んだようなドキドキ。雪だって世界を彩るイルミネーションになるよ」
底の見えない冷たい瞳を覗き込んだまま、眉尻を下げて微笑んだ。
「私も昔は大好きだったよ」
過去にはふたりで揃いの喜びを分かち合ったものだけれど。
大人になるというのは知ることだ。
例えばどんな楽しい事もいつかは終わるだとか。
例えば祭りの後は物寂しいだとか。
だから女はあなたほど純粋無垢では居られない。
「ねえ、リッカはお祭りをどう過ごすの?
何かとびきりの予定があったりする?」
「私は、まだ決めてなくて」
「全然、来てくれるって分かってたし。
ほら暖かくなる魔石もあるんだよ、名付けてカイロ石」
揺れる火のように光る宝石を取り出し微笑みかけ。
「こちらこそ改まらせちゃったしおあいこってことで。
あ、お腹空いてたら先に食べちゃう?」
本題を中々口に出せず勿体ぶるように先に紙袋を渡した。
この街に深い思い出があるわけでもない、なのにどうしてか郷愁を感じてしまうのは夢で聞いた幼い聖女の声のせい。
カリナにとってギルドの者たち以外に直近で仲良しなれた同性はあなたぐらいだ。
冒険者をするようになってから何度も会える人など減ってしまって。
だからと嬉しい再会を噛みしめていたいのに、いつもならかっこつけて自慢をするはずの口すら今ばかりは重くなっていた。
「お〜、便利なアイテムですね。火要らずで火傷の心配もありません」
取り出された光る宝石に目が煌々と輝いた。
それじゃあ食べながら、とクリームパンの紙袋を手に取り、一つを取り出した。
もう一個あったけどそれはあなたが食べるのだろうと思い、また紙袋を返した。
「……このパンには目を付けていたんです。やはりアタリでした」
まぐまぐと小さくちぎりながら食べる。
――合間を埋めて、隙間を埋めて、どうしたものかと会話を繋ぎ止める。
少し前の、祭りの準備中。
白昼夢のような心地の中で脳内に響いたのはかの聖女からの神託だった。
同じ痣を持つ者が消えてしまうかもしれない。
あの場にいた者、つまり目の前にいるあなたもそうなるかもしれない。
「……カリナさん、お話したい事とは何でしょうか。
相談事なら私、力になりますよ」
「これ試作品で2日しか保たないからあげるよ」
石と紙袋を交換すればくしゃりと軽い音を立てて抱え持つ。
聞き馴染んだその声を聞いて自分もゆっくりと深呼吸をしながらいつもの調子に戻していった。
「よかった、その審美眼私の探知スキル以上だね」
一呼吸置いてあなたが気遣ってくれるのを感じる。
話さなきゃ、うじうじしているのもらしくない、自分もあなたの力になりたいって言うんだ。
「聖女様の話、昼間にされたでしょ。
……私、なんだか他の人より聞こえる言葉が多くてさ。
定期的にあの痣を持った人達がどんな人なのかわかる みたい」
この街に来て、鮮明にすべてを思い出したそのとき。
聖女の言葉が頭に入ってきてその意味を理解した後。
一番はじめに聴こえてきたのがあなたのことだった。
「アンジュ。
あなたにその痣を光らせる力があるって本当?」
それは、転生者にとってはまるで。
「私ね……できたら光らせたく、ないんだ。自分の痣」
「本当ですか。ありがとうございます!」
石を貰い、両手にそれを包み込んでから、懐に一度入れた。こうしているだけでも体は温まるって、北国に行った際に教わったから。
いつも勉強していますから。あなたから教わったことや、独自で学んだことも含めて。
冒険者ではあるものの、本職は薬師であり行商の身。小さなことだけどこうした目を養うことは今後に繋がると信じているから。
「……はい」
あなたが語る声は、最初は瞬間的に理解するには難しかったけど少しずつ飲み込めた。
光らせる力があると問われると肯定した。
痣を光らせれば、祭りが終わった後消えるなんてことにならなくなる。
具体的な方法がどんなものかは――直感的に理解していた。聖女様の神託を受けた日から、きっと『そうなのだろう』という確信すら得ていた。
これがあればあの場にいた人を救える。自分にとっての『魔法の薬』なのだと。
けれどあなたは、なぜそれを拒むのか。
「なんで、ですか。元々この街には、その痣が光らなかったら消えてしまうかもしれないって噂があって……でもそれは真実らしいんです!
理屈や仕組みは分からないですけど、そうなったら嫌です。会えなくなる事になったら私……!
力に、なりたいんです! 私は助けたいのにどうしてそんなこと……!」
えー?と肩を竦めるように。
そう笑った聖女は、気分を害したというよりは「だって子どもだもん」とでも言いたげな。
確かにあなたの前にいて、声を届けて。
だけど確かに実像ではない、不可思議な聖女。
その証拠に、聖女はあなたの視覚と聴覚を借りるだけ。
触れることはない。すり抜けたことなら、幾らでもあったろうが。
"昔は"、とその言葉にも微笑みは変わらない。
では"今は"?―――聖女がその質問を紡ぐことはなかった。
冷たい色の瞳はあなたを映したまま。
そんな様子であると言うのに、続いた問いに、無垢にきょとんと瞬きして。
「 とびきりの 、よてい?
…… ううん 、ないわ。 ない。
………… ない…… けれど 」
思案の仕草に、またほの光る髪が揺れる。
冬だというのに聖女の衣服は袖もなく、すらりと細い腕は露出したままだ。
そんな白い左腕で口許に手を運んで。
ほんの少し、小首を傾げたりして。
「 ――― ふふ 」
そんな様子が、また、笑みに変わる。
「 とびきりの予定は 、ないけれど。
じゃあ、ファリエがわたしの
とびきりの予定に なってほしいわ 」
いつもの無邪気そうな声。
けれど、このときほんの少し、その笑顔に含むようなものがあったことにあなたが気付いたかどうか。
「 ――― ねえ ファリエ。
わたしと お祭りに行きましょう ? 」
聖女からあなたへ。本当に簡単な、"デート"のご提案。
| 「……そういえば痣が出た人ってどう知ってるんだろう。 探知できる魔法とかがあるんでしょうか?
あたしね、最初自分でもどこに痣ができたか分からなくて、 でも在る≠フはなんとなく肌で分かって。 暫く鏡の前で自分の身体と格闘してたなあ」
結局何処にあったかは定かではない。言い忘れている。
「どうせならただ隠すよりかは綺麗に飾りたいかも。 傷も印も、全部は冒険の証っ!そう──
植物を模してるなら何も言うことはないわね!」
聞きつけて描かれたものを見に行こうとしていた。 魔女故に、植物に関する話題に対してはとても耳ざとい。 (62) 2024/01/28(Sun) 2:18:12 |
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