71 【R18】歪んだ愛の形【身内】
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[
名前をきちんと読んでもらえないことは
彼の中で許容範囲のことだった。
でも、そこから派生して
名前をつけた両親を揶揄したり、
全く違う呼び方を悪意を持ってしたり、
そういうことをする奴らがいて
彼は自分の名前が嫌いだった。
セフレをセフレで止めてるのは、
彼女たちもまた笑ったから。
本名だよっていうと笑った彼女たち。
だから、穴として使うだけ。
そこに優しさなんてものはなくて。
]
失恋した女の子だから、心配。
その様子なら、大丈夫みたいだね。
[
勿論、一夜を楽しんだけれど
それ以上に彼女の涙を見たから
そっちのほうが心配になっていた。
だから、彼女が泣いていないのを
しっかり確認してから、彼女とは分かれた。
]
*
フリーランスでシステムエンジニア。
だから、お願いされたら
忙し過ぎなければ会えるよ。
……恋人は、いらないなぁ。
[
恋人の段階は要らないけれど、
結婚願望はある。
そこまで彼女には言ったかな。
もしかしたら言わなかったかもしれないが
そんな大事なピースではなかったはず。
勿論、彼にとっては、の話。
]
ケーキ?いいよ、何か買っていこう。
[
ふふっと笑いながら、
恋人のように最近の出来事を話していると
男の声が聞こえ、彼女の手の力が強くなった。
彼女が立ち止まれば、
彼もその場に立ち止まって、
声の主の方を見たけれど、ふと思う。
『別れて正解』
どう考えてもチャラそうで、
頭が悪そうで、恋人を不幸せにするタイプ。
]
この子に恋人がいて、
なんで自分には恋人がいないんだって
僻んでるの?小さい男だね。
桜ちゃんにはそれだけの魅力があって
君にはそれがないってことでしょ。
[
ケラケラと彼女の前ではやらないような
相手を蔑むような笑い方をした彼。
恋人が出来ることに気持ちが軽い重いは
全くもって関係性がないだろうと
彼は全面的に攻める姿勢をやめなかった。
]*
なんだか、新婚さんみたいだねぇ。
[ だって一緒に住んで、一緒に家具を選んで。
こんなことって普通はしないでしょう?
関西弁のお兄さんも、
お姉さんといっしょだったみたいで
楽しそうだなぁって思いました!
家具は直接お引越し先に届くようにして
お引っ越しの日はまりんの両親も
海斗くんの両親もお手伝いしてくださって
2人での生活が始まりました! ]
紫、ですか?
私も好きです!青とか紫が好きなんです!
[ あげていこうかと思っていた色を
清玄さんも好きだと知れば
とっても嬉しくなるのです。
たくさんある中から選ぶのは大変ですけれど
清玄さんと一緒に選ぶのなら
きっと楽しいのです! ]
清玄さんから離れなければ
旅行の時も大丈夫でしょうか…?
もしそうなら離れません!
[ 髪をなでられて少しホッとするのです。
もちろん話せるようになれば
それが一番よいのですが、
勉強と実践は別物なのです。
私には難しく感じてしまいます。 ]
────────
海斗くん、……やっぱり、
一緒におやすみしちゃ…ダメ?
[ ある日の夜のことです。
少し寂しくなって、電気を落とした
海斗くんのお部屋に
枕を持ってお邪魔します。
お引っ越ししてからは、
1人で頑張って眠っていたのです。
でも、やっぱり広いせいか寂しくて。
それに、海斗くんにおやすみって
言ったから別々の部屋に行くのも
なんだか…モヤモヤしてしまって。 ]
あ、でも…海斗くん、ひとりが…
よかったんだった、ごめん……
寝てるときに、ごめんね?
*
―――――
[ 今日は高校を卒業する日です!
学校なので髪は結っています。
エンゲージリングは、チェーンに通して
服の下に隠れています。
学校を出たら指につけ直すつもりなのです!
教室前の廊下に清玄さんの姿を認めれば
笑顔で駆け寄っていくのです。 ]*
卒業しましたー!
システムエンジニア……
プログラミングとか……?
……そっか、なんか………
ううん、やっぱりなんでもない。
[
プログラミング?なんて聞いたのは
大学の講義でそんな内容のものをとって
いたからでした。あんまりきちんと理解できなくて
単位をあきらめようかなと思っていたので
一瞬教えてもらおうか、なんて考えましたが
……ちょっと虫のいい話ですよね。
おうじくんは恋人はいらないみたいです。
……勿体ないと言おうとしてやめました。
私が勝手に思っただけの事ですし、ね。
胸がチクリと痛むのです。
……恋人がいらないのなら私もきっと、
遊び相手の一人なのでしょう、ね。
少し考えてしまったせいで、
彼が結婚願望を持っている話は
たとえしていたとしても
聞きそびれてしまうのです。
私にとっては、大事な話だったのに。
]
[
ケーキを買おう、なんて和やかに
話していたのに。
楽しい時間は簡単に壊されました。
元恋人はそれなりに顔はいい方でしたが
成績はそんなに良くなかった気がします。
……頭は良くなかったかもしれませんが
でも、私に“恋人”だと思い込ませるだけの
口のうまさと、人を丸め込むための観察力は
持っていたようです。
それは立ち直ってから、気づいたことでしたが。
ともかく、私が何も返せずに黙ってしまったのを
あの人はきちんと見ていました。
―――何かを、察したような顔をしました。
何か言われる前に無視して通り過ぎなければ
と思って彼のほうを見ましたが
彼は何故か反論していて。
蔑むような笑い方をしているのです。
]
『僻む?そいつに?
まさか。なんか勘違いされてるみたいだけど
そいつはハナから本命じゃねーし、
今、本命のコとは付き合えてるし?
そいつは性欲満たすためだけに付き合ってたけど
思ったより何倍もめんどくさい女だったわ。
そいつの魅力?
体だけだろ、そんなの。
たかだか学生の付き合いで
将来まで考えようとするとか重すぎて
誰も付き合いたくねーよ。』
[
馬鹿にされたのに苛立ったのか
なおも彼は何か言い募っているようでしたけれど
正直聞くだけ無駄です。
彼の手を少し引っ張って、もう行こう
と促そうとしましたが……
彼は動いてくれたでしょうか。
]*
……そう、だな。
[ 今はまだ、みたい、で合ってる。
そのうち本当に新婚になるつもりでいるけど。
あのカップルはもしかしたら
新婚だったのかもな、なんて
少し思ったりして。
引っ越しは両親の手伝いもあって
難なく終わった。
二人暮らしは俺から見たら
特に何も問題なさそうだったんだけど…? ]
―――――
……それさ、前から思ってたんだけど。
男と一緒に寝ることの意味、
わかってて言ってる?
わかってないなら、嫌だ。
意味を教えてもいいけど……
傷つけそうで、やっぱり嫌、かも。
[ せっかくベッドは二つで
部屋も分けたのに。
自分の部屋にまりんが入ってきて
俺は多分困った顔をしていたと思う。
ベッドに座って、彼女のほうを見ながら言った。
手を出したくない、
二人で暮らしていてすごく近い距離で
二人とも大学生だから……
そういうことしてもいいのかもしれないけど
……まだ学生だから。
悪影響が出たら、と思うとそれも嫌で。
―――自分がすごく臆病なだけなんだけど。 ]*
プログラミングもやるよ、勿論。
あとはそういう開発の取りまとめとか。
興味があるならいつかそんな時間取ろうか?
建築系だから関係ないかもだけど。
[
偶に、頼まれて小学生向けの講座もやるから
人に教えるのは下手ではないはず。
大学生をダメにするほどのクズではない。
彼女が、彼の答えに顔を少しだけ歪ませた。
でも何にひっかかったのか
彼には到底予想ができない。
だって、話すことは話した筈だったから。
]
まぁ別にさぁ、学生の若気の至りもいいけど
桜ちゃんが将来見据えるって
結構女の子としては当たり前だと思うよ。
だって、大学生で出会った人が
そのまま奥さんとか旦那さんになる確率知ってる?
脅威の38%だよ?
分かる?この可能性の高さ。
小中高それぞれからの付き合いで
結婚する確率を足してそれに満たないよ?
残念だなぁ……
[
完全なるはったり。
でも、人間は自分の知らないことを
理路整然と話されると、
そうなのだと思い込んでしまう。
だから彼は、目の前の相手を
そういう感じに追い込んで、
疲れたからと彼女の手を引いて
その横を通り過ぎるだろう。
もし、止められたなら、
彼はこういうはず。
『僕みたいに年収1000万になってから
また話しかけてね。』
]*
……単位がその…
そういう科目があって……
[
ちょっと目をそらしつつそんなことを言って
もし時間があるのなら教えて欲しいと
頼んでみたことでしょう。
思ったことをそのままいえば
もしかしたら何か違ったのかもしれません。
でも、言えなかった。
聞けなかった意気地なしの私は
こう思ったんです。
“恋人がいらないのなら好きになったら嫌われる”
]
*
[
おうじくんは何か理路整然と話しています。
……なんでそこまでかばってくれるのか
わかりませんけれど。
きっと優しいから、ですよね…?
はったりだとは分からず聞いていましたが
元恋人の方はといえば
めんどくさいと思ったのか。
私たちが動くのとほぼ同時に
通り過ぎようとしました。
……私の横を通ったあの人は
私にだけ聞こえるような小声で
最後にこんなことを言い残して。
]
[
思わず元恋人のほうを見ました。
何も、言えなくて動揺してしまって。
私の反応を見たあの人はふぅん、と
それはそれは嫌な笑みを浮かべました。
]
『馬鹿な女だな、ほんと』
[
どちらにも聞こえるように言って
今度こそ去っていきました。
……そう、私がいくら意気地なしでも
ここまで何も言い返さなかったのは
私を知っているあの人にとっては
私たちの関係性を推しはかるには十分な情報で。
その一言が、何より私には辛かったのです。
何を言われたのか聞かれても
おうじくんに教えるつもりはありません。
先ほどかばってくれたお礼を言いましょう。
]
あの、ありがとう……
ごめん、ね、巻き込んで……
*
紫の振り袖か……似合いそう。
入っていてほしいモチーフはある?
[ 蝶や花。色んなものがあるだろうから
彼はひとつひとつ彼女がいうことに
耳を傾けてメモを残していく。
反物を選ぶのは、まだ少し先だが
もしかしたら、彼女はそれを使って
大学の卒業式に出るかもしれない。
そう考えると、尚更。
彼は真剣に話を聞いたことだろう。 ]
僕としては、いつか自分で話せるように
なるところを見てみたいけれど、
無理強いはしないでおこうかな。
[ 成績が悪いわけではないけれど、
彼女にはそれを使う環境がない。
だから、実際に使う環境に一緒に出向いて
練習するお手伝いでもしてみたいもの。
クスッと笑ってほっとしている彼女を
優しく包み込んで。 ]
────────────
おめでとう理子。
チェーンを外してごらん。
直哉に写真撮らせるから。
[ 彼女に渡そうとしたバラの花束を
彼の友人に任せて、彼は廊下で指輪を
彼女の薬指につけようとした。
それは多分、欲にまみれた考えで
花束を抱え指輪をはめた彼女と
写真を撮りたいだけ。
しかも、外ではなくこの廊下で。 ]
『きぃよぉ……眩しいんだけど』
[ 一眼レフを肩にかけていた友人は
花束を使って、隣に並ぶ彼らを
視界に入れないようにしていたかも。 ]*
え、?……一緒に、寝たいだけじゃ…
ダメなの?ねぇ、海斗くん?
まりんは、…海斗くん好き、だよ?
[ 大人しくお部屋の扉のところで、
枕を抱っこしたまま海斗くんの話を聞きます。
分からないことばっかり海斗くんは言います。
まりんは何かおかしなことを言っているのですか?
誰が正解で、何が正解なのか。
さっぱりわかりません。
夜で、2人で暮らしてるのに寂しいから
まりんはまた泣き出しそうです。
海斗くんはまりんが泣くと困った顔をしますが
もう既に、困った顔をしていました。 ]*
そうですか?嬉しいです!
モチーフ……
紫なら藤の花が好きです!
動物ならうさぎさんの柄も可愛いと思います!
[ ちょっと紫というには色が薄いかもしれませんが
すぐ思い浮かんだお花を言ってみるのです。
あと浮かんだのは兎、でしょうか。
七宝文も派手さはないけどいいかなあとか
思ったりするのです。
うさぎの柄には子孫繫栄だとかツキを呼ぶ意味が
あるらしい、なんて知るのはモチーフの意味を
調べようとしたときになるのですけれど。 ]
やはり話せた方がいいです、よね…?
清玄さんが一緒にいるなら頑張れる気がします!
[ 優しく包み込まれると
何でもできる気がしてきます。
清玄さんのためならなんだって
頑張ろうって思うのですよ! ]
―――――
ありがとうございます!嬉しいですー!
お写真ですか?
はい、わかりましたっ!
[ 制服の下に隠れていたチェーンをはずして
清玄さんに指輪を付けてもらえば
清玄さんのご友人の直哉さんに
お写真を撮ってもらうことになるのです。
バラの花束を抱えて
清玄さんとぴったりくっついて。
撮ってもらった後は
直哉さんにお礼を言うのです! ]*
単位かぁ。おっけー、あんまり難しいのは
いらなさそうな気がするね。
[
彼女が単位と口にすると、
彼は納得した感じで頷く。
大学でプログラミングをとるとは
面白い子だな、と感じつつ
仕事の詰まり具合を確認して
彼女の考査前に週一でも教える時間を作った。
]
*
気分が悪い……
ホテル行こうかと思ったけど、
うちに来てくれる?
[
ケーキはまた今度にして、
お礼と謝罪をする彼女の手を
ぐっと引っ張ってしまったなら、
彼女は体勢を崩さなかっただろうか。
彼の家は偶然にもここから近くて、
徒歩5分くらいのところにある。
地上何階建てだろうかという
タワーマンションにたどり着けば
彼女とずっと繋いでいた手を離しただろう。
凄くイライラした表情を、
彼女の前では見せないようにしたけれど
果たして出来ていただろうか。
]*
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