…………………………。

　

　




［　姿を捉え指三つほど折った頃
　　力の抜けたように膝を折り 足を着いた　］
　

　　　……こんにち　このときまで
　　　あなたさまのために　生きてきました
　　　
　　　ぜひめしあがって　いただきたく……おもい、ます

　

　
［　正しく、供物として捧げられた子に
　　まともな学も 話し言葉も身についてはおらず

　　ただ目の前の深紅に望むは安寧と結末。
　　　］
　

　

［　時が止まったかの様に
　　吹雪が止まる。

　　鈴の音が響く。　］




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

［　その音が消えると同時に
　　文字通り祭壇の上へと
　　空から降り立った。　］

　　如何にも
　　我は月迦嶺鬼

　　この山の主よ

　

　　気安く呼ぶとは不敬である
　　が、
　　そなたは我の巫子

　　特別に呼ぶことを許そう

　

［　愉快という表情を隠そうともしない。

　　長寿が偉い訳ではないが
　　経過した時が違う。見ているものが違う。
　　だからこそ人というものが嫌いではなかった。　］

　

　　綺麗な顔をしておる
　　だが面白くなさそうな顔だ







　　生贄は名誉なこと
　　誉と誇るが良い

　

［　少し屈んで、それでも視線が合わない
　　高さだからと>>17
　　力加減を知らぬ雑さで
　　その顎を掴み視線を向けさせる。





　

　　そう構えるな
　　今すぐ取って喰うことはせぬ

　　ここは寒いだろう
　　人の子は脆いからな、場所を移そう

　　おお、そうだ
　　巫子、そなたの名はなんと申す

　　そなただけ我の名を知っているのは
　　不公平だろう？

　　名乗らないと白と呼ぶぞ？
　　吹雪に隠されてしまいそうな白だ


　

［　愉快そうな態度は変わらず。
　　”今回の”巫子に挨拶程度の戯れだ。



　

　


　　それこそ戯れのひとつでしかないのか
　　ごうごうと吹雪いていた風が
　　時を止めるように止まった瞬間
　　私は 膝を地に着いた　］
　

　　　もうしわけ、ありません.......
　　　お許し、感謝いたします


［　嶺鬼様、とお呼びしようとして
　　勝手に名を縮めて呼ぶのは
　　また不敬でありそうで一瞬口篭り。　］
　

　

　

　　　...っ、...........不服など
　　　万に一つも、ございません......

　　　
［　恐ろしくないと言ってしまえば
　　鬼様の前で嘘を吐くことになる
　　食われることへの不服などはあろうはずも無い
　　その為だけに生まれ、拾われ、生きてきたのだから


　　
　　無理矢理に持ち上げられた顎のせいで
　　喉が閉塞して少し咳き込んで。
　　視線が合う。　］
　

　　　.......そう、なのですね


　　　私は.......私には、名は、ございません
　　　三月に拾われた子ですので
　　　みつき、と 呼ばれておりましたが
　　　白、も 素敵な名でございますゆえ
　　　どうぞ、お好きなように


　　　
　

　
［　あと何言、言葉を紡ぎ出せるだろう。
　　身構えも杞憂だというように
　　鬼様は場所を移そうなどと仰られる。

　　思わず、優しい だなんて。
　　測るような物言いをしてしまったことに
　　気がつくのは少し後か。　］
　

　

　　　"いつも"、すぐには食べないのですか？
　　　

［　食う物に困るようなこんな昨今だから。
　　ある時に食らいつくようなものだと
　　そんなことを考えていたのだけれど。


　

　

［　雪の結晶が光を反射し
　　まるで神聖にも見える鬼の山。





　

　

　　よい、そこまで畏まるな


［　口籠る姿を目に捉えれば>>32　］


　　。というものがある
　　言葉には霊力が宿り、言の葉に乗せることで
　　霊力が使える。
　　誰でも使える”まじない”だ

　　名前は相手を縛る、最たる言霊だ。




　

　　我が優しいと？
　　不思議なことを言う

　　ほう、”みつき”
　　名は無いと？
　　すでにその名はそなた自身に馴染んでいる
　　人が決めぬのなら我が決めよう