15:53:09

人狼物語 三日月国


242 『慰存』

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】    



    
『人としてやってはいけない。
 
 
            
やる理由が他にあるか?』


  
(0) 2024/01/10(Wed) 12:26:32

[最近では喫煙者は肩身が狭いと聞きますし
 喫煙者というだけで嫌な顔をされることだって
 あるのかもしれませんが……。
 煙草を吸っている姿をみても
 当然嫌悪感なんてありません。

 視線を感じさせてしまったのか
 不意に辺りを見渡しているのには
 少し驚いて、死角に身を潜めます。
 どうやら見つからずに済んだみたいですが
 気を付けないといけませんね。]
  


[渡した差し入れがもしかしたら
 道中で捨てられてしまうかもしれない、とも思いましたが
 杞憂だったようです。

 きっと、ファンの気持ちを無碍に扱わないから。
 
……私の気持ちを大切にしてくれる。

 それがどれだけ嬉しいか
 あなたに伝えられたらいいなと思うのです。]

 


[たどり着いた場所は、オートロックのあるマンション。
 住人に紛れて入ることも一瞬考えましたが
 騒ぎになってしまったら入居来ませんし。

 場所を確認した私は、一度帰宅することにしたのでした。]
 


[―――――というのは建前。

 好きな人の住んでいるマンションに住みたいから、 
 とはいくらなんでも言えませんから。

 止められたりしたら面倒でしょう?

 毎日ネットで確認して
 目的のマンションに空室が出たと知ってすぐ
 私はそこに引っ越すことに決めました。


 流石に隣の部屋に血腹先生がいるとまでは
 知らないままでしたが。]

 


[……発信機の示す位置はマンションから動かないまま
 きっと部屋に置かれたままなのでしょう。
 捨てられていないことをうれしく思いつつ。

 私は無事引っ越しすることが出来たのでした。]
 

***


[引っ越ししたことで大学生活に
 何か影響が出るかと言えばそんなことはありません。

 徒歩や自転車での通学ならともかく
 電車通学なこともあって
 通学にかかる時間が大きく変わることもなく。
 週に一度だけある一限から講義の日は
 満員電車に乗らなければいけないのも変わりません。

 掛け持ちしていたバイトは両方辞めて
 家から徒歩三分のコンビニで働くことにしました。
 家とバイト先が近い方が何かと便利ですし。

 とはいえ、頻度はそんなに多くせず
 週に2〜3日、大抵夜にシフトを入れていました。
 家がこれだけ近ければ、
 夜遅くなっても危ない目に合うこともないだろう、
 なんて慢心があったのは否定できません。]
 


[バイトも講義もない日はといえば
 本屋に行ったり図書館に行ったり。
 女子大学生らしくはなかったかもしれませんね。]
 


[引っ越してから一週間ほどは、大学を休んで
 隣の部屋にいるあなたがいつ外出するのか
 ドアの開く音を頼りに聞き耳を立てて。
 外出を書くんん出来たら、少し間を置いて後を追って、 
 行き先も確認していました。

 ゴミ捨てのために外に出たのなら、
 何時何分にごみ捨てに行くのかとか
 
 以前であったスーパーに行く日、時間は
 決まっていそうなのか、それともバラバラなのか。

 何か趣味はあるのか、どこかに遊びに行ったりするのか。

 とにかく、どんなふうに過ごしているのか知りたくて。]

 


[偶然を装って、同じ時間にごみを捨てに行っては
 おはようございます、って軽く挨拶もしました。
 慌てて梳かしたせいで残ったままの寝ぐせを
 気にする余裕もなく、
 好きな人に朝から会えて嬉しいな、と
 心の内で密かに舞い上がっていました。]
 


[別に相手に迷惑をかけてるわけじゃない。
 これくらい、なんてことない。
 持ち合わせていたはずの倫理観は
 とうに消えていましたから
 自身の行動を不思議に思うこともなく。


 ただ、知りたい、近づきたい。
 その想いを形にしていくだけ。]*

 



[葉山にとって、ストーキングとは自己防衛であった。]




[葉山という男の人生は、他人からの排斥が大部分を占めている。ストーキングという加害行為に基づく防衛行動、その異常性を幼い頃には母親に、成長してからは父親に指摘されてから今に至るまで、葉山が多数派と受け入れられることは万に一つもなかった。

小学校では白い髪は忌避され、中学と高校ではその顔立ちから反感を買い、その度に自分を悪くいう人間の事を徹底的に調べ尽くして恐怖を与えて追い詰めるようになってしまう。

特定の誰かに強い執念を持ち、プライバシーの柵を切り倒す。そうして首元に爪を立てれば、完了だ。

それこそが葉山が唯一持っている防衛の手段だった。]



[人は安息の地から石を投げる時にその本性を表す。醜く卑劣なやつらは自分の安全を確保できた時にしか他人に牙を向けない。

これは当然の措置なのだ。安息の地で石を投げる人々と腹を割って話し合うためには、彼らを地の底に引きずり下ろすしかない。

ストーキングという異常性が示す目的などただ一つ、葉山はそう信じて疑わなかった。]





      [ そ う 。あ の 日、ま で は 。




  [そう、偶然なのだ。

   前の入居者が突然出ていってしまったことも、
   こうして都合よく隣の部屋が空いたことも全て。]






    私なんて、誰にも好かれない。
    好かれるほどの価値がない。


  



  「せなちゃんは"いけにえ"なんだよ。
   だから……ごめんね、
   わたしもせなちゃんとなかよくするの、やめるね。」

  



[小学校の時、クラスの子全員から無視されました。
 小さい頃の私は今より泣き虫で、
 今より体力もなければ運動神経だって悪くて。
 学校の大縄跳び大会の練習で
 うまく跳べずに足を引っ張ったのがきっかけ。
 最初は女子のほんの数人から無視されてるだけで、
 私は友達と笑って過ごせていました。
 ……結局私は跳べるようになったのに、
 その子たちは無視を止めることはなく。]


 



  「ねぇ、なんでせなちゃんなんかと話してるの。」

  



[他の子にもそう言い始めたのです。

 逆らえば次の標的は自分かもしれない。
 自分が標的になるくらいなら、無視するだけなら……
 そんな思いで私を無視する子は増えていき。


 友達だと思っていた子に生贄だと言われたのを最後に、
 私はクラスで孤立しました。]


 



[勿論、両親は気づきました。
 担任の先生に相談しているのを私は見ていました。]

 



  「でも、無視されるってことは
   聖奈さんにも何か問題があるんじゃないですか?」


  




    
―――――………。



 



[見ていなければよかったのかもしれない。
 今思えば、そう思うのですが、過去は変えられません。]


 



[私は二度と同じ目に遭いたくなくて
 家から離れた中学校に進学することに決めました。
 私に問題があったのかもしれないから
 中学生になったら体力を付けようと思って
 自転車で長い時間かけて通学したり、
 休日だって運動を欠かさずにして。
 もちろん勉強だって頑張りました。]

  





           
[………それでも、だめでした。]

 



  「聖奈ってなんかいつも人の顔色伺っててキモい。」

  「優等生ぶっててむかつく。」


  



[上手く、馴染めなかったんです。
 何が悪いのかわかりませんでした。

 ……対象は誰でもよかったのかもしれません。
 ただ、私ばかりが損な役回りを引くだけで。]


 




   そっか、私は誰かに好かれることはなくて。
   たとえ誰かを好きになっても
   想いを伝えることは諦めるしかないんだな。



 



[いつしかそう思うようになりました。
 自分には価値がないからしかたない。
 価値がないのだと言い聞かせるように
 何度も手首を傷つけていれば、傷だらけになりました。]


  



  
そう、私は頑張っても誰にも好かれない。


         
―――――でも、諦められないから。


  



[まさか目的の人が隣に住んでいるなんて。
 こんなに都合のいいこと、滅多に起こりませんよね?]


  

***


[隣を伺っていれば、
 不在になるタイミングも自然とわかります。

 月曜日と金曜日の午後、5時間ほど家を空けること
 そして、どうやら家を空けるとき、
 窓は開けっ放しになっていることも。

 カーテンをしていなければ
 部屋の様子くらいは見れると思って
 バルコニー伝いに侵入したときに
 窓が開きっぱなしなことに気づいた時は
 少しびっくりしてしまいました。

 いくらここが中層で角部屋とはいえ
 無警戒にもほどがあると思って。]
 


[確かに困窮、というほど生活に困ってはいませんが
 所詮は大学生ですから。
 
 別に裕福って程でもありませんし
 お隣さんが作家さんだと知っていれば
 侵入される可能性がないとは言えないのに。]

  



[でも、私にとっては好都合。
 電源タップに偽装した盗聴器と
 いくつかの小型カメラを手に、
 好きな人の部屋へ侵入しました。]


 


[換気をしていても、
 煙草の匂いは完全には消せないらしく
 ほんのり煙草の匂いが残る室内。

 執筆に使っているらしきデスクの横には
 私が渡したぬいぐるみが倒れておかれていました。
 きっと、風で倒れてしまったのでしょう。
 なんの躊躇いもなく手をのばして
 ぬいぐるみを起こしてあげると、
 本来の目的を達成するために部屋の物色を始めるのです。

 コンセントに盗聴器を仕掛けて、
 見たい場所……デスク、キッチン、浴室の三か所に
 出来るだけ隠すように小型カメラを仕掛ければ
 今日はおしまい。あとは見つからないことを願いつつ
 葉山さんが帰って来る前に戻るだけ。

 何かを落としたりはしなかったはずです。
 強いて言えば髪の毛は
 落ちた可能性があるかもしれませんが
 葉山さんも私も白い髪ですし
 そこまで目立たないだろうと気にするのはやめて。]

 


[カメラを通して見る葉山さんは
 当たり前ですけれど知らないことばかりでした。

 男性の一人暮らしともなれば
 自炊よりは外食の方が多いのかなと
 勝手な想像をしていましたがそんなことはなく。
 朝ご飯もしっかり摂っているのを見ながら
 私も手作りのたまごサンドを作り、
 葉山さんが飲んでいる紅茶と同じ物を買ってきて
 ミルクティーにして飲むのがルーティンになりました。

 朝ごはんをしっかり食べると
 頭もよく働きますしいいことばかりですね!]
 



[ずっとずっと見ていたいのですが
 残念なことに学生である以上、通学は避けられず
 昼間講義を受けている間は
 あまり葉山さんを見ることは出来なくて。
 先生があまり厳しくない講義では時折スマホから 
 カメラ越しに何をしているのか、見ていました。

 とはいえ、お忙しいのでしょう。
 執筆している姿を見ることが大半でした。

 編集者さんとの打ち合わせ以外の外出では
 何処に出かけているのでしょうか。

 気になってしまえばすることは決まっています。
 後をついていけばいいんです。]

 


[葉山さんの前では着ないようにしている地味なパーカーを
 羽織り、こっそりと後をついていき。

 近くの居酒屋で飲んでいるらしいと知れば
 いいなぁ、私もご一緒できたらいいのに、と
 一瞬思いましたが、それは出来ません。
 お酒にすごく弱い体質で
 チューハイ1缶で酔ってしまうから……なんて
 体質的な理由でそもそもお酒を飲むのは苦手ですが
 理由はそれではありません。]

 


[……少しずつ距離を縮めようと頑張ったとして
 葉山さんがこっちを見てくれることなんてないからです。

 7歳下の異性なんて異性として
 見られる気がしませんし、
 私が誰かに好かれるわけがない。

 幼い頃に植え付けられたものは
 消えることなく、私の中に残っていますし
 忘れようとしても手首にもそれが刻まれていますから。]

 


[……とはいえ、未練がましい行動はやめられないもので
 朝のゴミ捨てで顔を合わせたときに
 軽い世間話を装って、]


  私、大学と家の往復ばかりで
  この辺のお店とかまだ知らなくて。

  葉山さんのおすすめとかいきつけのお店とか
  あったりしますか?


[なんて、聞いてみたりはするのでした。
 答えなんて知ってるのに
 知らないふりをしながら。]*
  


[優等生だろうと劣等生だろうと、心の中には独善という名前の悪魔が潜んでいる。いくら人の為と口では語ろうとも最後には自分の為に動くもので、下手な言い訳を並べ立てるよりも欲望を誤魔化さない方が余程可愛らしいとさえ思う。

自分の中に潜む狂気を誤魔化すことをやめた者の気持ちは、同じ側に立ったものにしか分からない。

良い子には決して分からない世界だ。]



***

[それから少し経ったある日。
その日は担当編集者との打ち合わせを終えて家へと帰ってくると、時刻が20時をすぎていた。
もう遅いからと担当者と食事だけ済ませてきて、あとはもう風呂に入って寝るだけというところ。

しかし葉山はデスクに向かいノートPCで作業に浸る。
このノートPCは打ち合わせにも使うもので、画面には覗き見がされないようなフィルムが貼られていて、その内容は本人以外には見えないようになっている。

まさか監視されているなんて知りもしないから、人目を気にするようなことはせずだらしのない欠伸をしながら。


調べていたのは、人の過去と歴史だ。

今の時代デジタルタトゥーなんて言葉があるくらいには情報が全てを支配する社会だ。それは誰かのことを調べようと思った時にはパソコン一つで略歴すら作れるほどに便利であり、深刻でもある。]




         (ふーん。)




[これまでの出来事を振り返る。こんなにも偶然が重なって、今となっては七海という人は葉山の隣人として自分の生活に深く食い込んでくる。

とはいえ距離は最低限取り、それ以上こちらには立ち入ってこない。

いつも、いつも、ただ自分の世界の端に席を予約されているような感覚がする。

それも全て偶然なのだろうか。]




   [違う。いつからだ。

      いつからそれは、偶然じゃなくなったのだ。]





[パソコンに打ち込んでいるのは七海聖奈のプロフィールだ。どこの大学に通っているのか、生まれてから大学に入学するまでのヒストリーは?身長と体重は?スリーサイズは?

欄を設ければキリがない。
それも今は空白だらけだ。

しかし、これから徐々に埋めていこう。
葉山にとって七海とはそういう相手なのだ。]



[自分の中に在る敵意という名の狂気
それとは真逆に位置する好意という名の狂気

彼女はどちら側の人間なのだろうか。
知りたいと願う葉山が、その日から七海に抱く感情は決して清純ではない好意的な感情だった。

彼女がどんな想いでここまで来たのか、知りたくて、仕方がない。]



[世の中の変質者には偽物と“本物“がいる。
“本物“の葉山にとっては彼女が“本物“かどうかはこの上なく重要なことで、そのためだけに、わざわざ前の住人の精神を壊して追い出したのだ。

部屋の窓もご丁寧に解放して、打ち合わせの時間も固定して、全て彼女が自分と同じ“本物“なのか知るため。

その為に、ここまでしたのだ。

何としても、知らなければ、抑えきれない。]**





[このマンションに都合よく空き部屋が出来たのは
 ただの偶然なんだと、信じ込んでいました。]


 


あなたがこのマンションに居るのは知っていました、

 とは言えないので思ったほど驚いてないと思われたら
 どうしよう、と不安は少しだけあったものの。
 疑われていないならこの話を掘り下げることはせず。]
 


***

[朝、いつも通り葉山さんが出る時間に合わせて
 ゴミ捨てに向かっていたある日の事。

 鍵を忘れてしまったのか
 入れずに困っている葉山さんを見かけました。
 ゴミ捨てに行く程度なら鍵をかけ忘れたかどうか
 確認を忘れることもあるでしょうし
 鍵を持っていないのに気づかなくても無理はありません。

 生活を覗き見ている私は
 しっかり者の葉山さんでも忘れることあるんだな、
 なんて微笑ましい気持ちになったりもしたのですが。]
 


[本当に鍵を忘れて、締め出されて
 オートロックを開けたいだけなら
 別にわざわざ鍵を渡さずとも私が開けるだけでいい。
 貸して、ではなく開けて欲しい、でいいはず。


 貸した後、あれ?とは思いましたが
 別に貸すのなんて一瞬の事ですし。
 深く考えるのはやめてしまいました。


 話しながらだったから意識は其方にそれてしまって。]
  


[ある日の夜、私は葉山さんの生活を盗聴しながら、
 私は葉山祐太郎のミステリー小説と
 血腹妖の官能小説を見比べていました。
 今日は葉山さん、帰りが遅かったな、
 打ち合わせ長引いちゃったのかな。

 時々思考が別方向に行くものの
 何度も読んだ小説ですし、多少集中できていなくとも
 中身は頭に入ってくるもので。

 ……セリフ回し、文章の区切り方、言葉の選び方。
 
 改めて見比べると似ている気がします。]
 


[かの有名なミステリー作家、アガサ・クリスティは
 ミステリー以外のジャンルを書くとき
 別の名義を使っていましたし、
 彼女は同一人物だという事を隠していました。

 ……もしかして。

 引っかかる程度だったものが疑念へと変わり、
 どうやったら確かめられるかなと暫し考えて。]
 


[SNSのDMにそんなメッセージを送りつけるのです。
 無視される可能性が高い?

 そんなことは分かっています。
 別に返信が来なくたっていいんです。

 私はメッセージを読んだ時のリアクションを
 この目で見ることが出来るんですから。]

 


[リアクションを見ようと思って
 ノートパソコンの画面を見ていても
 葉山さんが何をしているのかはわかりません。
 いえ、正確にいうと
 パソコンで作業していることしかわからなくて。

 のぞき見防止のフィルムさえなければ見られるのに。
 でも、キーボードで入力しているように見えますし、
 新作の執筆作業なのでしょうか。]
 


[いつもならそろそろ入浴の時間……だと思ったのですが。
 作業に没頭しているのか
 席を立つ様子がないのを確認すると
 少々眠くなってきてしまった私は
 欠伸をして、パソコンの画面はつけっぱなしにしたまま
 ベッドに横になるのでした。]
 


[今日は眠気に負けてしまったけれど。
 あなたが入浴するときも、
 私、いつも想いながら見てるんですから。

 あなたがどんな体つきをしているのかだって
 私は、私だけは知っているんですよ。

 他のミーハーなファンは絶対に知らない、知り得ない。
 誰よりも知っているのは私ですし
 誰より近いのも私。

 私が一番。私が特別……そうですよね?]

  


[画面を見ながら、ルームウェアに手を入れて
 あまり大きくない胸の先を弾いたり、
 くるりと撫でて、刺激を与えては
 小さく吐息を漏らす。

 好きな人の入浴を覗きながら
 自慰に耽る時間は普通よりも身体を昂らせて
 手の動きは大胆になっていき。
 下を脱ぎ捨ててしまえば、
 とろとろに濡れた秘部をなぞっていく。
 
 こんなことしてるなんて
 万が一にでも知られてはいけないから
 声だけは必死に抑えるものの
 部屋に響く水音は誤魔化せず。

 結局自分の手だけでは
 物足りない身体になってしまったから
 玩具まで使って絶頂を味わって
 ようやく背徳の時間はおわり。]

  



[葉山さんと出来たらいいのに。
 歪んだ欲を一人で発散させて、眠りにつくのが
 私の最近のルーティンになっていました。]**


 


[欲しい情報が手に入った。もう、その鍵に用はない。]



***

[七海の略歴を書いていると、パソコンに通知が表示される。音が出ないため漏れることはないだろうが、通知を開くと、SNSでDMが届いていた。

その送り主は、前にもリクエスト送ってくれた人で、内容はかなり踏み込んだもの。

流石の葉山もそこまで辿られるとは思っておらず、一瞬目を見開いてしまう。
それからすぐにまたいつもの表情に戻るのだが、常に見張られている以上誤魔化すにも限界がある。]




[まぁ、些細な問題だ。]




[深夜、ある程度略歴がまとまると、ポケットから鍵を取り出す。事前に鍵屋に鍵の交換という名目で頼んでいた複製だ。

今は鍵の製造番号さえ手に入れてしまえば複製など容易な時代。
鉄壁の城と呼ぶべき最も安全な自宅は、一度踏み入れられた途端に最も危険な檻へと変わる。

こうして彼女の聖域に立ち入れるのだ。
あの時わざわざ間抜けなふりをして鍵を借りた甲斐があったというもの。]



[葉山はパソコンを閉じて部屋を出る。

事前に準備していた小型カメラと盗聴器は、作家としての収入の一部で買ったもので性能も申し分ない。

自宅のモニターとの連結だってもう完了している。あとは取り付ければ完了だ。
だがそれは彼女がいない時にでもやればいい。

それらではないある物を持って、向かう場所は当然七海の部屋。
いない時に設置すれば済む話なのに、わざわざ寝静まっているところに侵入するのは、目的が下準備に留まらないからだ。]



[本来なら入れないはずの城は、今日届いたこの鍵を使えば容易くその扉を開けてくれる。
電気を使う訳にはいかず部屋の中は薄暗いままのためどんな状況かは見えないが、彼女が“本物“なら部屋の中でなにをされていようとも驚きはしない。

相手に拒絶される奇行こそ、“本物“の証。
今となっては実力を示すかどうかにすぎないのだ。


鍵を差し込むと、葉山はゆっくりと部屋の中へ、侵入を果たしていく。]




   [彼女は目を覚ましてしまうだろうか。
    いや、どちらだって関係はない。
    葉山がやることは決まっているのだから。]**




***

[顔を隠すこともせず部屋に入ると。
そ明かりが無いはずの部屋には一筋の光が見える、その正体はどうやらノートパソコンの電源ランプのようだが、音を立てないようにパソコンを開くと映っていたものに葉山は思わず息を飲む。

電気がつけっぱなしの部屋の映像。
まだ入られていない湯の張られた浴室、それも見覚えがあるものだ。

線と線はさらに結ばれ一本の道筋に成る。
七海が自分に対して何をやってきたのか、全てとは言わずとも察するのは容易。]




    [ 滲み出る狂気が獲物を求める。
      しかしただの血肉じゃ腹は満たされない。

           必要なのは、熟成。
           待て。一番美味くなるその時まで。]




[想像通り、否、想像以上だ。
彼女の好意は“本物“だ。だがしかし、足りない。

葉山は手に持っていた目隠しで眠る七海の目を覆うと、細い首に首輪を掛け、華奢な手には手枷をかける。

目覚めないように気をつけてはいるものの、途中で目が覚めてしまったとしても何も出来やしない。

七海の自由を奪い、その髪に口付けを捧げる。
檻の中の姫はあまりにも無防備で、顔を歪ませ狂ったような笑みを浮かべた狼は、静かにその身体を弄び始めた。]



[暗闇の中、冷たく汗ばんでいた手はほのかに冷たく、次第に七海の体温を奪うように熱を帯びていく。

飼い犬にそうするかのように優しく頭を撫でながら手を中へと忍びせると、そのまま指先で下着をずらす。

まるで玩具を嬲るかのように小ぶりな乳房を撫でると指を伝わせ、寝間着の下は膝元まで下ろして秘所を晒す。

本当ならば限られた男しか触れることを許されない聖域をまさぐるのは格付けのようなもの。
お気に入りの玩具に名前を書くのと同じ感覚でしかないのだ。]*




[キーホルダーこそつけているものの
 カバーも何もつけていない鍵から
 情報を盗まれたなんて、私は気づかない。]


  



[見られて困る予定はここではなく
 部屋のカレンダーに書き込んでいますから。
 例えば、血腹先生の打ち合わせスケジュールとか。]


  


***

[DMを送ってからしばらくして、 
 パソコンを見ていた葉山さんが何かに気づいたように
 一瞬表情を変えた瞬間がありました。
 
 絶対とまでは言えないものの、 
 私のメッセージを見た可能性が高いタイミング。]
 


[なにか追加でメッセージを書こうかと
 入力しかけて流石にやめました。

 もしブロックされたら今後作品の感想を送るのが
 手間になってしまうからです。

 
今なら直接ポストに投函は出来ますけれど。

 出来たら七海聖奈とセラが同一人物であることを
 葉山さんには悟られたくありませんから。]

 



[もうすでに悟られているかもしれない。
 そんな可能性は微塵も考えていませんでした。]


 



[最近は店長に頼まれて、バイトのシフトを
 少し増やしていた影響からか、
 ベッドに横になるとすぐ深く眠ってしまいました。

 ナイトルーティンのために出しっぱなしになっていた
 玩具もパソコンの横、目立つ場所に置いたまま。
 どうせ誰も入ってこないから。
 一人暮らしになると見られたら困るものさえ
 しまうのを忘れてしまいがちです。]


 



[ぐっすり眠っている少女は些細な物音にも気づけない。

 鍵の差し込まれる音も、扉が開く音も。
 静かな一人暮らしの部屋ではよく響くのに。

 布団をかけて背を丸めて眠る姿は
 傍から見ればとても無防備に見えるはず。]

 


 
[すうすうと寝息を立てる少女に
 血肉を求める狼が近づいているなどと
 本人は知りもしないまま、

 目隠しをされても、首輪と手枷をかけられても
 全く目を覚ます気配も見せない。]


 



[絶対に安全なはずの自室、

 意識のない状態でも冷たい手が這っていく感覚を
 身体は律儀に拾うせいで、
 時折色っぽく吐息が漏れる。


 
頭をなでられれば甘えるようにほんの少し身体が動き、

 
結果的に侵入者がより触りやすくなってしまう。


 毎夜のように自慰を続けていた身体は
 与えられる刺激には正直に反応して快感に変える。


 
眠っているのに。……いや、眠っているから。]


 



   
んっ……んふ……



[びくっと身体が跳ねて
 抵抗するようにかちゃりと手枷が鳴っても 
 まだ、少女は目覚めない。


 大切な人にしか見せないはずの場所を
 勝手に晒されているのに何の抵抗もせず
 脚を閉じることさえせず。


 弄ぶような指先が秘所に触れたなら
 既に刺激に反応して少し濡れてしまっているのも
 毎夜のように刺激され続けた秘部が
 悦楽の予感に期待して
 ひくつきながら男を誘っているのに気づくのは簡単。]