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人狼物語 三日月国


65 【ペアRP】記憶の鍵はどこ?【R18】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


[
 どこまでも続く海。
 太陽の光を反射してキラキラとしている海辺。
 そんな場所に、私は   立っている。

 静かで私 以外は誰もいない砂浜。

 そこは私 にとって、大切な場所。

 
―――――――――――――――。


 砂を踏みしめる音も、陽の光も。
 波のさざめきも、あの時吹いていた潮風も。

 
――――――――――――――――。


 
―――――――――――――――――――――――――。

 
―――――――――――――――――――――――――。



 
―――――――…………。

                           ]

【人】 エン

[ハチヤがベッドを抜け出してドアに向かって歩いていく足音がする。


どうしたんだ、と声をかけようとちょっとだけ布団を持ち上げた──ところに。


>>1]


 ……は?


[愉快犯な誰かの悪戯?記憶の一部。試しに自分の記憶を辿ってみるが、消えた記憶なんて自分では分からない。本格的に布団を持ち上げて、ハチヤの姿を探すとすぐ近く、隣のベッドに姿が見えた]


ハチヤ?


[こいつが包帯を巻いてるのを見るのなんて久しぶりだ]
(4) 2021/04/03(Sat) 2:23:10
エンは、メモを貼った。
(a2) 2021/04/03(Sat) 2:31:19

 
    んん……

[
 不思議な夢を見た、気がする。
 私は海…たぶん冬の海に
一人で
立っていて。
 その景色がとても綺麗だったことと。
 そこが大切な場所っていう記憶だけがあって。

 でも、なんで大切なのかは……わからない。
 何故だろう、景色は鮮明に覚えているのに。
 
 ぼんやりとそんなことを考えつつ目覚めた。
 
……あれ、私のベッドじゃない。

 そう気づいて意識が覚醒した。
                     ]

    ここ、どこ……?
 

[
         ・・・・
 ふと横を見ると、知らない男性が寝ていた。
 恋人がいた経験なんてない私はびっくりしすぎて、
 思わずベッドから転げ落ちてしまう。
                       ]

    いったぁ……
    てか誰だろう、この人……

[
 落ちる前に顔がちらっと見えたけど……
 かなりの美形。
 100人中90人は振り返りそうな美形。
 しかもそのうちの70人くらいはお近づきになりたい
 とか思っちゃうんじゃないかって感じ。
 ……私?
 
リアルイケメンは信用できないので。

 だって、女性に困ってなさそうな人って
 私みたいな地味な女を手玉に取るのなんて簡単でしょ?
 それに……
個人的にいい思い出もないし。

 
 だから、その知らない人が
 私が落ちた音で起きたかどうかなんて確認もせず
 部屋を調べよう、なんて思った。
 
                         ]*

【人】 エン

[
ハチヤが。俺を見る目が、まるきり他人を見る目をしてることに、凍りついたみたいに思考が止まった*
]
(6) 2021/04/03(Sat) 2:38:07

     ん…………




  あれから、いつの間にか彼女を抱きしめて
  眠ってしまっていた彼。
  彼女と一緒に眠るのは心地良くて
  起きるギリギリの時間までベッドから出られない。

  心地良かったはずの睡眠は、
  ベッドの微かな沈みによって妨害された。
  ベッドが沈んだと思えば、音が立つ。

                      ]

   どないしたん……



  そんなに彼女の寝相は悪くなかったはず。
  彼は体を起こして、あくびを漏らしながら
  彼女のほうを見つめる。

  いつものように、両腕を開いて

  おいで、と二度寝の準備を促してみて。

                      ]*

[
 とりあえずここどこだろう、
 私の部屋ではないな…なんて考えて
 扉のほうへ行こうとしていたら、
 どないしたん……なんて声が。
 
 ああ、まあ…起きるよね盛大に音立てたし。
 てか知らない人と一緒に寝てたのかな…
気まずい…。

 そんなことを思って振り返ると、
 こっちにおいで、と促すような仕草。
                         ]

    ……???

[
 思わず首を傾げた。
 当然だけど、初対面の人と寝れるわけない。
 ……この人寝ぼけてる?
 どうしよう…と思ったけど
 とりあえず挨拶くらいはしておこうか…
 気が進まないけど……
                     ]


        ・・・・・
    あの、 
初めまして。

    ……ここがどこか知ってますか?

[
 見覚えのない場所。
 どこか空気が乾燥しているような、気がした。
 まあこの人が何か知ってるとも思えないけど
 でも、一応聞いてみようと声をかけた。
                      ]*




  いつもなら、女性特有の暖かさが
  腕の中に入ってくるので二度寝に入れるが、
  今日は何か違うらしい。

  いつまで経っても、彼女が寝ようとしない。

                       ]

    ……美鶴?



  彼は、初めましてと言われて
  冗談はもっと面白いもんを、なんて
  返したかもしれないけれど、
  目が冴えてきて周りを見渡すと
  いつもと違う光景が広がっており、
  流石の彼も少し動揺の色が滲み出たかも。

                     ]

   俺のこと、分からへんの?


   *

[
 ……名前を呼ばれた。 
 あれ、私名乗ってないのに。
 この人、なんで私の事……
              ]

    ……わからないも何も
    
会うの初めて
、ですよね。
    それになんで私の名前知っているんですか?

[
 向こうが動揺の色を見せていたのなら
 此方は疑念と困惑の色が浮かんでいたことだろう。
 実際に目の前の人が誰なのかわからないし、
 少し考えて。
                        ]

    誰かと人違いしているんじゃないですか?

[
 そう結論付けたのだった。
 世の中には三人似た人がいる、とかいうし。
                      ]*

【人】 エン

[記憶の一部を奪った、という誰だか知らない声は、疑うべくもないらしい。一部というのがまさかピンポイントで俺だとは。タイミングといいよっぽど性格が悪いらしい]


[あいつの目が俺を知らない人をみるみたいな目をしてた。あいつは感情が全部顔に出るから、隠すなんてできないし嘘だってつかない。だから>>1はたぶん本当で


誘拐されたの?なんて見当違いに違うという否定を返す余裕はない。むしろそれが事実であった方が、むしろいいのではないだろうか。だって違うというのなら]



「ごめん、きみ、だれ?」



[凍り付いたみたいになった俺に、一番聞きたくない言葉が聞こえた]
(25) 2021/04/03(Sat) 20:51:50

【人】 エン

 ──………。


[これは、なんと返すのが正解?友達?寮の同室?それとも、お前の嫁だとでも?

どれと答えたところでこいつは俺のことを覚えていないのに。何と答えても、きっと俺はこいつにとって不審者だ。こいつは不審者は徹底的にスルーするやつだから、俺が不審者になったらきっと俺に興味なんてなくすのだろう。


この上なにこいつ?みたいな目を向けられたら泣くかもしれない]


 ……あー…


[どうしよう。けど]


 ……ちょ、っと。たんま。ちょっと、待て。おち、つくから……


[それだけ言うのがやっとだ。一度剥ぎかけた布団をばさりと頭の上までひっかぶって、完全にこもってしまおう。今は、コイツの声も聞きたくない*]
(26) 2021/04/03(Sat) 20:53:12



[ひっかぶった布団のかたまりは、ちょっとふるふるしてるかも*]
 
 
 

[
おれの疑問に2番の人はだんまりで、でもぐるぐるして泣き出しそうなのはわかっちゃった。
ねえ、すごい気になるんだけど。

ちょっと落ち着くまで待つ必要があるっぽい?そんなに2番の人の事情って複雑なのかな。
……ねえ、おれ、すっごい気になるんだけど!


ふるふるしてる布の塊っていつ落ち着くんだろ?
おれ、めちゃめちゃ気になるんだけど!!


目の前に答えがあるのにおあずけなんてしたくない。
だから、おれが2番の人の布団を引っぺがしにかかるのは仕方がないことだと思うんだ!
]

[

 って、さっきまで思ってたおれを、おれは殴ってしまいたくなった。

]

[
2番の人は服こそ着ている状態だったけど、それでもそこからのぞく首筋や腕にうっ血のあとがあったんだ。

それがなんの痕なのかってことくらい、おれにだって──…ちがう、おれだから、わかる、から。
]


 ──ごめん、おれ、お湯持ってくる……


[
これって、他人に見られたくないものだよねって、おれはわかるから、
それを暴いちゃったおれは、ばつが悪くなってその場を去ろうとしたんだけど……
]

[

 
『旦那さんが旦那さんになった時の匂いがあった』



──ふと、意識を失う前におれが食べたものを思い出してしまったんだ。

だから、去ろうとした足は止まるし、2番目の人の布団どころか服も脱がそうとするよ、おれ!

だって、もしおれが考えたとおりのことがあったなら、この人にもおれみたいな
が生えちゃうってことだよね!!
鱗そのままにしてたら死んじゃうもん!ちゃんと確認しなくっちゃ!!*
]





  流石に、彼女はここまで頑なになれると
  彼は思えなくて、凄く焦った表情が
  彼を疑い深くみる彼女には写ったかも。

  どうして、という感情と
  なにがあった、という感情と、
  訳がわからなくなってしまう。
  これが家族の出来事なら
  頭を掻き毟るなりなんなりしていた。

                    ]


   …………勘違いでも、人違いでもない。
   貴方は、俺の恋人。

   絶対に、これだけは譲らないし譲れない。








  初めて会う人に対して言うことではない。
  多分これは、彼が彼自身に対して
  間違えるな、と言い聞かせている行為。
  そして、彼女を見据える目は
  少し朗らかになっただろうか。

                     ]

    ……でも。

    初めまして、忽那です。


   *




[待てって言ったのにこの馬鹿犬…


暗かった布団の中が一気に明るくなって、布団をひっぺがされたんだって分かる。臥せっていた顔をシーツに押し付けて、せめて顔は見られないようにしよう。

一応、寝間着は着てる。俺は動けなかったけど目の前のこいつが着せてくれたから。でも眠っている間も抱きしめてきていた犬のせいで着崩れてたし、夢中になった犬はなんども首元に吸い付いてた。きっと痕がたくさん残ってる。


けして見られたいものではないが、やったのが目の前の本人だからそこは俺の中では許容内。なのだが]

 ……あぁ。


[申し訳なさげにお湯を持ってくるなんて気を使った馬鹿犬の様子に、ああそうか、こいつ記憶がないから俺が誰か他のやつとヤった後みたいに見えるんだろうなと思うと複雑な気持ちが大きくなる。


お前だよお前!!!

ほんと犬みたいに興奮して、でも腕は温かいし必死で優しくしようとしてるのが分かる手のひらで。あれが全部なくなったことになったのか、と思ったらまた泣きそうで、必死でシーツに顔を押し付けていたのに]

 ──?!


[臥せっていた体を乱暴に持ち上げられた。焦ったようにボタンを外そうとする手を必死で押しとどめる]


ちょ、おまえ、な
記憶、ないん、じゃ


[脱がそうとする手に抗って。どういうつもりか分からない、夕べの薬がまだ残ってる?それにしてもいきなり見ず知らずのやつ相手にこいつが襲うとも思えない。


混乱しながら、力の入りきらない手で必死で止めた*]

[
 なんでそんなに焦った顔するんだろう。
 そう思って言葉を待っていたけれど。
 
 ……続く言葉には眉をひそめた。
 同級生でした、とかならまだわかる。
 でも、恋人は……
 
それだけは絶対あり得ない。


 私なんかが、こんな美形と?
 あり得ない、信じられない。
 あまりに驚いて何も言えずにいたけれど

 そのあとに続く言葉で名前を知ることは出来た。
 ……人の好さそうな顔でこちらを見ている。
                       ] 

    ……忽那さん、ですか。
    悪いけど、
貴方の言葉は信じられません。

    私に恋人なんていないし、
    いたとしても……
    私は貴方みたいな人とは付き合わないです。
    私だって、譲れません。
 

[
 疑うような表情は崩さない。
 はっきりと言う、絶対人違いだ。
 信じろなんて言われても無理。
 可愛くも美人でもない私が、こんな人に
 好かれるわけない。
 なんでそんな噓つくんだろう、とすら思う。
                     ]

    いっ……。

[
 馬鹿にしないでください、と言おうとして
 思わず手に力をいれてしまい、
 鈍い痛みがはしる。
 ちらりと左手首のほうへ目をやると
 さっきベッドから落ちたせいだろう、
 痣が出来ていた。
 思わずさっと背中に腕を隠した。
                    ]*

[

 『記憶、ないん、じゃ』


2番の人がボタンに手をかけたおれの手を押しとどめなら言った言葉に。
旦那さんの時と同じだっておれはわかっちゃったんだ。

あの時と同じってことは、おれはきっとこの人を手酷く抱いたんだろうなってことだから、必死の抵抗も仕方ないって思うんだ。


おれはしちろが旦那さんだったからまだマシだったけど、この人はおれが覚えてられないほどに面識がないおれが旦那さんになっちゃったんだ。

それは、つらいことだってことぐらいはわかるから。
]

[だから、泣きたいだろう2番の人より先に、俺は泣き出してしまうし]


 ごめん。
 おれ、おれのせいで、君に、うろこ、死んじゃうから……。
 
 おれ、覚えてないけど、
 君を無理矢理、抱いたんだと思う。
 おれの、時が そうだったから……。

 ごめん、ほんとうにごめん……


[ぐしぐし泣きながらも、鱗を確認するという鉄の意志は揺らがない*]

[必死で脱がせてこようとする手をとめていたけれど。


ごめん、という声が聞こえる。ぐすぐすと鼻をすする音も。今泣きたいのは俺の方だと思うのだけれど泣きながらのこいつの発言に、問題があるのではないだろうか]


鱗、はえて、って。
ていうか、お前の時?ってなんだよ。お前、こんなのされ……って。


ああもう、いっぺん落ち着け!!!



[ぐしぐししながらも人を脱がそうとしてくる犬の頭に、拳骨ひとつ落としてやった。これで少しは会話が成り立つだろうか*]

 
 
 ……いたい

[
ボタンに集中してたのもあって2番の人の拳骨は、見事におれの頭を捉えたから。

ぐわんぐわんとする痛みに、俺は手を止めちゃうし、もう一回はくらいたくないから、両手で頭を覆いながら2番目の人の顔を見たんだ。
]

[
……うん、ちょっと落ち着いた。
襲われたヤツに服を剥かれかけたら普通は怒るよね。
ちゃんと説明しなくっちゃ。
]

 えーっと。んーーー…

 おれがお嫁さんになったから鱗が生えたんだってしちろが言ってて。
 一週間くらい番ってれば血が安定して鱗なくなるって言ってたんだけど、その前にしちろが死んじゃっておれはこうなっちゃった。

 あ、しちろはおれの旦那さんのことだよ。


 今度はおれが旦那さんになったから、君にも鱗が出るかもって思って、
 鱗出たらちゃんとやらないとおれみたいになっちゃうから……

 だから鱗あるか確認しなきゃって、おれ思って……
 

[うまく言葉を選べなくて、でも言いたいことが伝わらないとだめだから。
おれはいろいろぶっちゃけた。ぶっちゃけすぎたけど仕方がない、人命が最優先だからね**]

 ──へー。ほー。ふーん。


[どこから突っ込めばいいのか分からない。旦那ね、旦那。こいつの。




それ俺初耳なんだが?鱗ってこいつの天然ものじゃなくて、旦那由来だったのか、とか。
その旦那何者?だとか。
一週間くらい連続でああいうことする気だったのか死ぬわ。とか。



なんか色々と言いたいことがありすぎて、どこから言っていいものか。




──俺が一番だって言ったその口で、旦那の話をするのか、とか。]


 ………。


[いろいろと文句を言いたいのに、今のこいつには記憶がなくて。しかも文句を言おうにも、相手がずっと前に死んでいると言われれば比べても仕方がないともいえるのだ。とりあえず、ふつふつと湧いてくる文句の吐き出し口がない。]


 つまり、お前は一週間くらいこれから毎日俺を抱くつもりだ、と。そういう話か。


[嫌かと言われるなら、実際そうでもない。それで嫌がるなら最初の一回だって拒んでいたし。嫌ではないのだ。嫌ではないのだけれど、納得がいかない]

 ……まぁ、大体わかった。が。
 俺さぁ、昨日コウイウことになる前に、言ったよな?


 抱かれるのはいいけど、条件つけただろ。
 そんで、今その条件満たしてないわけだ。じゃあ、抱かれるわけにいかないな。


[かかっているのはこいつのじゃなくて、俺の命だけど。そんなのはどうでもいい。
記憶を取り戻したとしても、こいつの中での一番が俺ではない可能性だってあるけれど。



どうなるかは分からない。けど、ハチヤの記憶の一部が消えているらしいこと及び、その手がかりについては説明してやろう。本当かは分からないけど手掛かりにはなる筈だ。けどその前に]



俺、風呂入りたい。でも立てないんだよな。
だから手伝って。


[そういって、両手を持ち上げようか**]

[2番の人がたてる聞き耳に、どんどん室温が下がってってる気がしたんだけど、それでもおれは話さなきゃいけないから話したんだ。

話し終えてちょっぴり静かになったあと、2番の人の口からでた言葉に]


 うん……抱かきゃならない。


[って、正直に答えるよ。2番の人がそんなん死ぬわって思ってるなんて気付かないからね。
今のおれにはわからないことだけど、おれじゃなくて2番の人の旦那さんになったおれが同じことを聞かれたら「抱きたい」って答えたと思うんだ]




  なんだろうか。
  ここまで拒否されると、
  意外となんでもよくなってくるらしい。
  というより、距離感の感覚としては
  出会ったあの頃に戻ったか、
  もしくはもっと遠くなった。

  どんな人となら付き合うのだろうか。

                     ]


   まぁ、とりあえず俺みたいなやつとは
   付き合うことはないってやつね。

   はいそうですか、で納得するほど
   俺はいいやつではないので、っ……







  話をしよう、と言おうとしたその言葉は
  館の主とかいう声に遮られ。
  つまり、今は仮想空間なりパラレルなりで
  目の前にいるのは彼のことを忘れた
  最愛の人。性格も出会う前に戻ってる。

                     ]

   ふざけんなって話か……
   …大丈夫?
   何かあるとそうやって隠す癖、
   昔からなんだ?



  彼女が苦痛の表情をした。
  腕を隠したから何かあったとは思う。
  見せてくれるならいいのだが
  多分今の彼女は見せてくれなさそう。
  信頼されてないし、
  警戒しかされてないから。

                    ]*




 
 条、件……ごめん、頑張って思い出す。

[
お嫁さんになる前に条件があったらしいけど、頑張って思い出そうとしても、きれいさっぱり消えてしまったおれの記憶が戻ることはないみたいで。

思い出して満たさないと2番の人を抱けなくて、
このままじゃおれと同じになっちゃうから、頑張ってみたさないといけない。
そうなるまでは…………そうだ。
]

 じゃ、じゃあ、今度から鱗出たら教えてほしい。
 鱗出なくなるまで、おれが君の鱗剥がすから!

[
応急処置にしかならないけど、やらないよりはずっといい。
お風呂の手伝いはもちろんするよ!鱗のチェックもしたいもん*
]

[条件を思い出すと悲壮な顔をしているけど、悪いのはこいつじゃなくて記憶奪ったやつなんだよな。そうは思うけど俺のことを考えるって言葉に不満がちょっとだけ和らいだ。なにかの拍子に思い出さないだろうか。物語みたいに愛情で思い出すとか、信じてはいないけど。思い出してくれたら、という気は、ちょっと、する]


 ──、…。


[鱗が出たら、俺が剥がしてやるから教えろ。俺がずっと前にこいつに言った言葉だ。忘れてても、記憶のどこかにあるのだろうか?それともただの偶然?


コイツの中に、俺の痕跡があるのかどうか。そう思ったら、またなんか泣きそうだった*]

[この部屋のお風呂はやけに広い。


その湯船にいっぱいお湯を用意してもらい、ゆっくりと湯船に降ろされる。服を脱がされて気付いたんだが全身噛み痕やらがたくさん残っていて、そりゃこれは痛いよな、という状態だった。
そういえばこの風呂も夢の産物なのだろうか。分からないけど俺はシャワーよりも湯船にゆっくり浸かる方が好きだし気持ちいいから構わない。


さっきからハチヤが俺の体を見てはごめんねを連発している。鱗チェックはするっていって、湯船につかった俺の体を検分しているのだが。とりあえず俺はハチヤ以外が相手っていう誤解だけはされてないようなのでよしとした]


 なー。左手。


[湯の中から手を伸ばして、ハチヤの左手を貸せと要求する。


 昨日、あのとき。こいつは自分で自分の手を握りすぎて傷を作った。血のにおいに酔った俺は行為中にずっとその指を舐め回していて、途中から必死になりすぎてガリガリ噛んでた記憶がある。確かめた指先は爪痕と、噛んだ痕とで酷いことになっていた]


 ……。


[そういえば聞かれていないからと自己紹介もしていない。俺に興味を持てよ嫁のつもりなんだろうに。傷のついた指をぱくりと口に含み、指先で自分の牙に触れさせる。これで気付いただろうか、俺がクリムゾンだって。


塞がりきっていない指はちょっとだけ甘いあじがして、このまま続ければそのうち酔ってしまいそうだ*]

[
 勢いで言ったけど私どんな人となら
 付き合うんだろう……
 いや、まあ美形とは付き合いません。
 それは確か、かな。
 いいやつじゃない、なんて言って
 何か話そうとしたらしい目の前の人は
 ふと黙った。
 何?と思ったけどすぐ理由はわかった。
 ……声がする。
                    ]

    記憶、の一部…

[
 記憶の糸を手繰り寄せてみても
 自分の記憶に何か変なところがあるとは思えない。
 でも、目の前の人との話の齟齬からすれば
 記憶をなくしているのは私……
 ってことになってしまう。
 
 ……そんな、記憶を奪うなんて。
 そんなことできるわけないし、
 何よりもし奪われた事実を認めれば
 目の前の人と恋人だったことになる。
 ……ますます信じられない。
                   ]  


    ……何でもないですから。
    貴方に心配されずとも平気です。

[
 腕を隠したことについて言われたけど
 見せる気なんてない。
 ……多分ただの打撲傷。
 捻挫とかはしてないはずだし、少し痛いだけ。
 それより気になることを言われた気がする。
 隠す、癖……?
 よく分からないけど失礼なこと言われてるような。
                        ] 

    隠す癖、とか言ってましたけど。  
    どういうことですか。

[
 イラッときたので思わず聞いてしまった。
                     ]*

[
2番の人を湯船につける前に、その衣服を解いていくんだけと…
]


 …………っ!


[
うっ血噛み跡、丹念に舐めたんだろうなって唾液黙りまである状態に、きちんと洗ってやってから寝かせなよ昨日のおれ!!!って、なるよね。
なっちゃうのはしかたないよね。
]


 どんだけだったんだおれ……


[
残された痕は行為の激しさを雄弁に物語っていたから、ごめんねって言わずにはいられない。
真っ赤になったり真っ青になったり、おれの顔はちょっと酷いことになっていただろう。
]

[
言われるままに左手を出したら、その指が2番の人の、おれのお嫁さんの口に含まれた。
]

 ──っ! あー…

[
昨晩のあとをそのままにそんなことするのって、おれの理性試してるのって聞きたくなったけど、おあずけされてる真っ最中だから。

それは我慢するつもりだから、尖った歯でかりかりするのはくすぐったくて変な気持ちになるので止めてほしいなあって思うんだ。
……って、尖った歯の存在を主張されれば、おれにだってお嫁さんが吸血鬼だってわかるんだ。
それがわかれば、この行為も血のおねだりなのかなって気がするから。
]


 お嫁さん、吸血鬼なの? 血、吸う?


[
おれは、真っ赤な顔のままでお嫁さんに確認することにしたんだ。
名前は聞いていないし教えてもらえなかったけど、お嫁さんはお嫁さんだから、お嫁さんでいいかなって**
]

[吸血鬼じゃなくて、クリムゾンだって。

それは何度も言ったけど変わらなかったから、きっと言っても変わらないのだろう。だからそれはそのままに]



 ……エン、だよ。名前。エン=クルス。
 ん。のむ…


[やけに赤い顔をしてるのはなんだろう。まだのぼせるほどの時間は経ってない、というか湯に浸かってるのは俺だけで、こいつは服も脱いでないんだけど。

牙で触れていた左手をポイと手放して、服を着たままの体にぎゅっと腕を回す。指からの血液は少量すぎて、燃費が悪く人より多めの血を必要とする俺には物足りない。ちゃんと血を飲むなら、こっちがいい。


首元にちろりと舌を触れさせて。やっぱり思い直して服のままのこいつを湯に引き込もう、こっちの方が安心して抱きつけるし]

[改めて、首元の下の方。襟で隠れるくらいの位置に牙で小さく傷をつける。噛んでしまうのが一番吸いやすいって知ってるけどめちゃくちゃ痛いとも知っている。ノアさんなんかは傷をつけたら後でちゃんと回復するらしいけど、魔法の効率が悪い俺が回復をすると、せっかく血を吸って得た力を全部使ってしまって血を吸った意味がなくなってしまうから。俺に回復はできない。その代わり、長い寮生活の中で覚えたのが]



 ──ん。ふ…


[小さく傷をつけて、流れた血を舐めるって行為。これなら血もあったかい。

ただ問題があって、俺は血に酔いやすい。だから最初の頃はこいつに注射して血をもらい、水で薄めて飲んでいた。こいつは注射を嫌がってたけど。でもこれで血を舐めると、どうしても血液そのままを舐めることになる。現に今、だんだんと思考力が弱まっていってるのが分かるけど……どうしてもやめる気にはならない]



 はちやぁ…


[首元に舌を這わせながら零れた名前は弱弱しいものだった。あまえる。体を包む温かいお湯も、抱きついた体もきもちいい。頭がぼんやりする]



 おれを、おもいだせ、よぉ……


[どっか、おれのこえで、しゃべってるのが、きこえる……**]



   美鶴さん、何かあるとよく隠す。
   寂しい時も、大丈夫っていう。
   軽く怪我した時も、指摘するまでおしえない。
   あぁ、生理の時も……
   いやこれは俺の配慮不足だけど、
   教えてくれればいいのにって思ってた。




  若干喧嘩腰の彼女に
  ひとつひとつ説明していく。
  1番最後は、気づかなかった彼が悪い。
  察してあげられれば良かったけれど、
  そんなことは容易にできず。

  彼は、見せてくれないならそれでいい、と
  とりあえず彼女にも椅子か何かに
  腰掛けたらどうかと促しただろう。

                     ]

   距離保ったままがいいなら、
   それはそれでいいので。

   *

[
 喧嘩腰なのにも動じてないのか
 一つずつ説明される。
 …初対面の人になんでこんなこと言われてるんだろう。
 でも確かに、心当たりがないわけでもない。
 軽い怪我なら指摘されるまでほっとく。
 
 寂しいとき…に関してはちょっと―――…。
 避けるように目をそらした。
 
 
なんでほっといてくれないんだろう。

 
 でも言われっぱなしも癪なので
                     ]

    教えてもらえないくらい
    
信頼されてない
ってことじゃないですか?
    そんなので恋人だなんて言われても。
  

[
 そんなことを言って、
 立ちっぱなしなのも疲れるので
 手近にあった椅子を引き寄せ、
 忽那さんからは離れた位置に座った。
 座って相手が何か言いかけたと思いだせば、
 渋々促してみようか。
                     ]*

    何か私に言いたいことでも?

 
 

[

 え、ん。


お嫁さんの名前はエンっていうらしい。
確かめるように名前を口にしていると、エンはおれの手を離して服も着ないでおれに抱きついてきた。
お風呂だから服着てないのはあたりまえだけど、あたりまえだけど!

意地悪って自覚はないんだろうな!
なんかぽやぽやした顔をしてるけど、おあずけまるっと無視して襲われるとは思わないのかな。

エンと一緒にいたおれってそんなに信用されてたのかな。
エンの隣にいたおれってどんなヤツだったのかな、エンの隣でどんな顔してたのかな……。

そんなことを考えてたのもあって、腕力の差があるのもあって、ろくな抵抗もできないまま、おれはエンの手によって湯の中に引き込まれてしまったんだ。

……着替えってあるのかなぁ]

[濡れた服は脱がせにくいと思うんだけど、それでもエンはおれの首元に牙をたてることができたみたいだ。

しちろみたいに、がぶっと噛むと思ってたから、おれはぎゅっと目を閉じてくるだろう痛みに備えていたわけだけど、なんか空回りしたっぽい]


 ……んっ


[ぴりっとした痛みのあと、滑ったものが首から下を這う感覚に、おれは体を捩って逃げようとするんだけど、
上に乗ったエンがそれを許してくれなくて。

舐める音に混じるような弱々しくて切実な願いに、
おれは頭を捻って応えようとするんだけど、
手強いにすぎる記憶の蓋がそれを許してくれない。


逃げ場なんて見つからないまま、おれはエンが大人しくなるまでされるがままになるしかなくて。
やっとのことでエンを寝かし付けると、おれは一人で部屋の外に出ることにしたんだ*]

[襲われる心配はしないのかって?大丈夫俺の方が力は強い。もっとも酔っぱらってる間の記憶はほぼないのだけど。以前から酔うとやらかしてるのかたまにじっとり見られるけど、記憶にはさっぱりない]

 んん…

[気持ちよくて、足の間で緩やかに反応してる。自分で触ってもいいけど、昨夜散々気持ちよくされた俺はもっと気持ちよくなる方法を知っている。

片腕はハチヤの首に回したまま、片手でこいつの手首を掴んで触らせると、自分の手のひらよりも気持ちいいんだって]

[硬直したみたいに動かないから、勝手に握らせて上下に動かすと、昨夜の行為で敏感になったからだはあっさりと上り詰める]

 んっ、あ、あ、ふ…

[昨日散々出したからそこまで反応はよくないけど、時折舌を伸ばして流れる血を舐めとりながら手を動かすと、ちゃんと吐き出すことができた。


もっと気持ちいいのもしってるけど、それはお預けだから。あ、指くらいならいいかな。でも今は無理、昨日は本当に激しかったから。体力尽き欠けていたところにもう一度の吐精で、俺はもう限界だったから。ハチヤに体を預けて、とろとろと意識を落としてしまったんだ**]



  彼女の一言は1発KOものだった。
  そう、彼は付き合って以降も
  彼女から絶対的信頼というものを
  得ていないことを分かっていた。

  何かあるなら言ってほしかったし、
  聞いてほしかった。
  でも、そこまで踏み込んでもらえなくて
  一緒に暮らす時も彼女の意見は
  そんなになかった気がする。
  勿論、聞いたけれども。
  好きなようにしていいよ、と
  言われていたので選択肢を作って
  何度も彼女に選んでもらった。

                   ]

   そうなんですよね。
   信頼されたかったけど、
   信頼に値しなかったみたいです。
   だから、……潮時かなとか、
   たまに頭によぎる時もあったんです。
   だって結婚しようって言っても
   彼女すんなり受け入れてくれるとも
   考えられなかったので。





  自嘲気味にはなしていると、
  彼女から話したかったことがあるのでは、
  と改めて話を振られた。

  あぁ、と彼は悩んで一瞬口をつぐんだ。
  早速というにはあれな内容で、
  彼女はすぐに教えてくれなさそうな
  内容なのである。

                    ]

   んー…………
   そうだなぁ…………
   話せるなら教えてほしいことがあって。
   貴方の学生時代の話。
   どんな人と仲良くて、
   どんなことが好きだったのか。



  記憶がある彼女に聞いても
  過去の話はあまり好んでしてもらえなかった。
  だから、まぁ今の彼女に聞いても
  教えてもらえないとは思うのだけれど、
  聞いてみないことには何も始まらなくて。

                       ]*

[
 信頼されてないんじゃないかと、
 半ば挑発気味にいったのに
 相手は怒らない。
 自嘲気味に話しているのを、淡々と聞いていた。
 
 
……なんか若干可哀そうな気がしなくもない。

 でも、結局この人の話は
 “私”が踏み込んでこないって話だ。
 踏み込まれないなら踏み込めばいいのに。
 なんて、思うけど。
 それこそ、今している話をそのまま
 “私”にすれば何か変わるかもしれないじゃないか。
                         ]

[
 正直今の私に恋人?だった頃の話をされても
 反応に困るとしか言いようがない。
 だから黙って聞いてた。
 そのあとに促した言葉には、
 一瞬の沈黙の後、言葉が返ってくる。

 ……話せない。
 恋人だったという話が本当なら、
 この人は私にとって大切な人だったはずで
 そんな人ですら知らないのなら、
 “私”は話そうとしなかったってこと。
 ……今の私もそれは同じ。
 話したくなんて、ない。
                    ]

    恋人だった私から聞き出せていないのなら
    今の私から聞き出せるわけ、ないと思いますけど。
    それこそ、私は貴方の事、
    信頼なんてしてないんですから。
 

[
 冷たい返事だと思うけど事実。
 でもこれでは流石に少しだけ可哀そうかな、
 なんて思ったから。もう少し言葉を重ねる。
                     ]*

    人のことを聞きたいなら、まずは自分のことを
    知ってもらうことからじゃないですか?
    私は貴方の下の名前すら知らない。
    そんな人に何か話したいなんて
    思えるわけないと思いますけど?
 


  ……忽那潤。
  京都生まれ京都育ち。
  貴方と同い年で、
  母親は専業主婦。父親は会社員。
  大学からこっちに出てきて、就職決まって
  歳月荘に引っ越してきました。
  貴方の住んでいた203の横、202に。
  菓子折を持って行ったら、怪訝そうな目で
  見られて、名前聞いたら若干嫌そうな顔されて。
  でも、自然体で生活してるんだって
  思ってしまったから、一目惚れをしました。

  そこから、貴方に連絡先を聞くまでに2年。
  付き合うまでに2年かかりました。
  
  …………自分が覚えている体型より、
  体つき丸くなったと思いません?







  確かに、今回に関しては
  フルネームで自己紹介をしなかった。
  故に、彼はダム決壊のように
  つらつらと真顔で彼女を見ながら
  ある程度のことを話した。

  それで彼女がどう出たかは定かではないが
  少しでも、彼女に警戒されないように
  話せることは話したかった。

                     ]*



[
 自己紹介をひとまず遮らず聞く。
 正直ツッコミどころだらけというか。
 いや、彼にとっての事実ならおかしなところは
 ないんだと思う。思うんだけどー…。

 ……一目惚れなんて、現実にある…?
 でも、この人は顔じゃなくて
 私の……素に惚れた…?
 そんなことある……?
 だって私、相当自堕落な生活をしてたはず。
 自然体って言えば聞こえはいいんだけどさ…。

 ……少なくとも四年間くらいずっと、
 この人とは何らかの付き合いがあった。
 そういうことになる、んだけど……。

 ……………私の記憶に、ない。
 え、そもそも……
                       ]

    ……ありがとうございます。
    あの、いくつか言いたいというか、
    確認というか……。
    
    一つ目。
    私は確かに歳月荘の203に住んでました。
    でも……

        ・・・・・・・
    202は、空室だったはず、なんですけど…。

[
 そう、204なら隣人の記憶がある。
 でも、202は…ずっと空室だったと思う。
 ……あれ、もしかして本当に記憶が消えてるなんて
 そんなこと、ある…?
 だって、この人が嘘ついているのなら、
 私が歳月荘の203に住んでたって
 知ってるのはちょっと不自然、だよね…?
                     ]


    二つ目。
    ……隣人としての私は、
    どんな態度を取っていましたか?
    連絡先を私から聞くって相当…
    難しかったんじゃないかと思うんですけど。

[
 私は基本的に煩わしい付き合いが嫌いなので
 警戒している相手にはまず連絡先なんて渡さない。
 年下の男の子であったり、私が苦手なタイプでなければ
 隣人として連絡先を交換してもいいか、とは
 思うだろうけど…この人は多分。
 私が連絡先を渡さないタイプの人だ。
 
 
関わったら面倒ごとに巻き込まれそうだし…

                         ]


    三つ目。
    体型は……私ちゃんと朝食をとるようになって
    自炊も…………。
    ………もしかして、
    貴方が私に食べさせたりしてましたか…?

[
 体型の事を指摘されれば、
 確かにそう。
 いつから太るほど食べるようになったっけ、
 と思い返しても、食べてる時の記憶がない、
 と言うか…お昼ご飯の記憶なら思いだせるけど
 朝と夜の記憶が、いや一人で食べてはいるんだけど。
 夜は私が作っている記憶が確かにあるんだけど。
 
 
朝食は、誰が作っていた……?

                        ]*


 う…ん

[ぱちり、と目を開けると寮の自室だった。俺はあまり寝起きがよくないから眠る前のことをゆっくりと思い出して──]


 ……ん?


[ハチヤが俺のことを忘れていた。

あれは夢だったのか現実か。よく分からない。寝返りをうとうとしたけど、腰がだるすぎて諦めるしかないらしい。


ハチヤに風呂に入れてもらったのは本当?あれが本当だとしたら、ハチヤの記憶喪失も本当になるのだが。でも寮の自室の風呂は木製なのに、あの時に風呂は大理石風だったような。あれは寮じゃなくてクルスの家の]



  ……そっけなさすぎて、
  引越しを考えるくらいだったかな。
  挨拶しても若干避けられたし、
  お裾分けに行ってもなんとも言えない対応。

  あれ、俺初対面で何か悪いことした?
  ってすごく考えたこともあった。
  別になびいてほしかったわけでもないし、
  警戒され続けるなら友達にもなれない。
  めちゃくちゃとまではいかないけど、
  かなり、滅入った時もあったかな。

  ご飯は付き合い始めてからはよく
  一緒に食べるようになったんじゃない?
  美味しそうに食べてくれるから
  作るときは結構頑張ったなぁ……





……分からんなぁ。


[そもそも記憶なんて狙って取れるものか、取れたとして何の意味があるのか。それから





















ほんとうに、その記憶を戻らせる必要があるのか]





  彼女の確認事項に、丁寧に答える。
  それは、現状把握のために
  とても必要なことだから。

  彼女との物理的距離が少しでも
  短くなれば行動しやすくなるけれど、
  多分それにはもう少し時間がかかりそう。
  彼は彼女に、まだ質問ある?と尋ねただろう。

                        ]*




[ハチヤは俺と違ってコミュニケーション能力が高くて、俺はいつもハチヤの斜め後ろから学園を眺めていた。

例えば、記憶が戻らなかったとして。あいつは俺とあったことなんて忘れて皆と楽しく過ごして卒業していくのだろう。なんの問題もない。これが記憶をなくしたのが俺だったら、そうはいかない。ハチヤ以外に知り合いのいない学園でハチヤを失ったら。なかなか打ち解けられない俺は、きっと今よりも孤立するのだろう。


そう、そう考えればハチヤの記憶なんて戻っても戻らなくても大した問題ではないじゃないか。鍵も、みつかったらラッキーくらいで。気楽に、さがせば、いいじゃないか。


なんの問題もない。忘れられた俺のこの感情なんて。]





 ──嫌、だなぁ…



[どうでもいいものだ]

[ちょっと目じりに浮かぶものを振り払って視線を動かすと、視界の端に光るものがみえた。何の気なく手を伸ばして触れて、あ、これひょっとすると鍵?と思うのだけれど]


 うわ?!


[触れた瞬間にぱちりと小さく痛みが走る。静電気のような。同時に頭の中に笑い声と、話し声が響く]



『あいつめんどくさいよなー。クルスに拾われただけの出来損ないのくせに』


[誰の声だかは知らないが、言われている内容はいつものものだ。俺は陰で俺がなんて呼ばれているかなんて知っている。『クルスの出来損ない』なんて、もう言われ慣れたものだ。けれど]


『だよねー。クルスじゃなきゃ、話しかけないって』


[答える声が聞きなれたものというだけで、意味が違ってくる。ちがう、あいつはそんなの言わない。俺は枕で両耳を塞ぐようにして、必死で聞こえないふりをした*]

[
 確認事項に相手は丁寧に答えてくれる。
 素っ気ない態度。
 避けてた、お裾分けにもあんまり反応しない。
 ……私が想像した通りの対応。
 本人がそうするだろうって思うことを
 この人が知ってるってことはつまり、
 ほんとにそうされたってことで……
 私は結構その、極端なことしてしまう自覚はある。
 多分、“失礼だろうな”と自覚するくらいに、
 素っ気ない態度を取ってたんじゃないだろうか。

 ……ご飯も作ってもらってたことがあるなら
 作った記憶がないのに、美味しい料理を食べた記憶とか
 私なら作らないような朝食を食べた記憶とかを
 覚えているのは……辻褄があう。
 しばらく考え込んでしまったと思うけど……

 
記憶が欠けているのは、多分事実だ。

 頭では多分そうだろうとわかっても
 心が追い付かないので、質問を重ねる。
                         ]

    
    ……そうでしょうね。
    私なら、そうする。
    その上でもう一つ聞きたいんですけど。
    そんなことされて嫌いにならないんですか?
    滅入るくらいのことされて、
    失礼な態度を取られて
    
……私じゃなくたっていいじゃないですか。


    私なんかよりいい人なんて絶対いるのに、どうして。


    それに……私と貴方が恋人だったのなら聞きたい。
    
    
貴方は幸せだったんですか?

    さっき言いましたよね、
    潮時かもしれないと思ったって。
    私は隠し事してて、信頼されてないと感じてたって。
    
    そんなふうに思うなら……
    私に執着する必要ないじゃないですか。
    
そう、今この瞬間だって。



    *

[勢いよく扉を開け、部屋に転がり込んで、
おれはすぐさまエンの眠ってたベッドを見たんだけど]


 ……エン?


[枕を被ってぷるぷるしてるエンがいるんだけど、一体何があったんだろう。
厨房のあれを見た後だと、震えるエンに不安になるから。

おれは枕をひっぺが──…せるかはわからないけど、エンの安否を確認したいから頑張る]


[ふっくらした枕を通すと音は遠く鈍くなるらしい。

くい、と枕を引っ張られて俺は素直に枕を手放す。だってここにいるとしたら、ハチヤしかいないだろうから。



現れた顔はやっぱりハチヤのもので、ほっとした顔を見たら胸に蟠ってた不安のはしっこが崩れる。だってこいつの目はすごく感情を表すから。心の中ではあんなことを思いながら俺に接していただなんて、こいつを見ていたら、ないって思える]


 
 
はちや…



[それでも残る不安に、声は小さく頼りないものになった。掴まるみたいに、片手を伸ばす*]

[弱弱しい声と一緒に差し出された手を取って、遅れてやってくるエンの体も抱きとめると、エンの顔がこんなにも近い。
今にも零れそうだった涙がぴんとまつ毛に弾かれて、雫となって流れるのを、おれは、とてもきれいだなんて思ってしまったから。
だからおれは──…

額に落とす唇に許可なんてとらない。
頬を撫でる唇に許可なんてとらない。
耳を緩く噛む唇に許可なんてとらない。

エンを宥めるようにあやすように唇を落として、きょとんとするエンを抱きしめたベッドに潜り込んでしまおう]

[

 それにしても。
 こんなに可愛くてきれいなお嫁さんを不安にさせるなんて……
 ハチヤって奴はほんと悪い奴だな。

 おれだったらこんな……

 ……記憶が戻ったら、おれは、どうなるんだろう。
 消えるのかな? それはちょっと嫌だな。
 
 でもエンが会いたいのはきっと、おれじゃないハチヤだから。

 *消えなきゃいけないんだろうな……*


]

[夕べこそああいうことになったけれど、もともとハチヤと俺の間にあった感情は恋愛ではない。いやそうだったのかもしれないけど、少なくとも俺がそうだと認識する関係ではなかった。なのに。


 緩く額に唇が落とされる。
 そこから頬までゆるゆると移動して、
 最後に耳がやわく食まれる感触に俺は身を震わせた]


 ん……


[安心させるみたいな唇。なんでこんなことをするんだろう。こいつは、俺を覚えてないのに。

俺のいるベッドの中に潜り込んでくると、ぎゅっと抱きしめられるのに安心する]


 ──、


[今度の声は、小さすぎて声になってない。ほとんど唇が動いただけみたいな小さな呼びかけなのに、さらにぎゅっと抱きしめられて心のどこかが安心する、を通り越してぽっと温かくなった。だから]


 おや、すみ。


[耳元でそっと囁いて、あいつからは触れなかった唇に小さく口づける。お預けって言った俺がこういうことするのはダメなんだろうけど。なんか、胸の中心が熱くてしたくなったんだよ**]


    …………………

   しゃぁないやん。好きなんやから。


   滅入って引越し考えた時も、
   好きっていえない関係が続くなら、
   物理的に距離をとって
   貴方のことを忘れたほうがいいと思って。
   でも、好きだったから踏ん切りつかなくて。

   付き合ってからも、潮時かなって、
   信頼されてないなって思った時も、
   それでも貴方の笑ってる姿とか
   ちょっと怒った姿とか、
   その全部が愛おしくて仕方なかった。
   だから、好きな人とわざわざ
   辛い思いして別れる必要は
   微塵もないんだ、って思ったから
   ずっとそばにいてもらってる。







  彼女が投げかけた質問は
  的を得ている内容なので
  これから先の何かに繋がればと思った。
  彼女の記憶が戻らなくても、
  お友達くらいにはなりたい。
  そんな諦めにも近いことを
  彼は既に選択肢の中に盛り込んでいる。

  ズルくてごめんね、と呟いた言葉は
  彼女の耳に入っただろうか。

                     ]*




    
    ……っ、…………。

[
 正直に言おうか、ずるいのは私だ。
 貴方が少しでも迷ったそぶりを見せるなら
 好きじゃない面もあったなんて言うのなら

 
記憶なんて捨てて、離れればいいと


 そう思ってしまった。
 だって、私は好かれるわけない、から。

 それなのに――――
                    ] 

    
ず、るい………。

    わたしは…
好かれるような人じゃ………。

 

[
 何故だろう、じわりと涙がにじむ。
 見られたくなくて俯いてしまったけど
 ずっとこっちを見ていたのなら
 泣きそうな顔も見られてしまったのかな。

 ああ、この人は確かに
恋人

 記憶はないけど、多分そうなんだろうなと
 そう思わせるだけの
好意
を…

 
 この人の言葉から感じてしまった。
 ……私はどう思っていたんだろう。
 この人のこと、どう思って……。

 気になるのに、こんなに色々教えてもらっても
 微塵も記憶は戻りそうもなくて
 この人と過ごした時間を
 一瞬でも思い出すことは叶わなくて。

 
……もどかしい、って少し、思った。

                     ]*

[目が覚めた時、ハチヤはそばにいるのだろうか。いなければ、手がシーツの上を辿って動くのだけれどそれはほとんど無意識のもの]


……、


[ここにいるのは、確かにハチヤだ。ハチヤだけれど、どうしてだろう。俺の中で、今のハチヤはあのいつものハチヤとイコールにはならないのだ。

俺とハチヤの関係は、犬と飼い主だったのに。今のハチヤは、重ねようとしてもどうしても犬ではない]

呼び方…?

[犬のハチヤは俺をエン君と呼ぶけど今のハチヤはエンと呼ぶ。試しに、前のハチヤは俺をエン君と呼んでたって言ってみたけど呼び捨て嫌?と聞かれたから。嫌ではないと伝えたら、それならエンがいい、と言われたからそのままになった]

[実際嫌ではないのだ。けれど犬ではないハチヤは、何故だか俺を大切にして守ろうとする。いつの間にチェックしたのか、食堂にはエンは行っちゃダメだとか。この部屋は狭いから俺が探すから他の部屋に行こう、とか。


寝付くまでと抱きしめてくるのに、やたら心音が早いとか。あれでは眠れないだろうに]

[俺を嫁にしたのは、犬のハチヤだ。

だから言ってしまえば今のハチヤは、俺の旦那のハチヤではない。けれどこれもハチヤの筈なのに、


なんで俺は二股かけてるみたいな気持ちになってるんだろうな!
]




  彼女が何を言ったのか、
  彼には聞き取ることができなかった。
  物理的距離がありすぎたのだ。

  でも、彼女が泣きそうなのは分かったので
  彼女の様子を見ておくことしか出来ず。
  少し落ち着いたのなら、
  彼女に声をかけて次のアクションを。

                     ]

   鍵……探してみますか?
   貴方が俺と一緒に行ってくれるなら、
   見つけ出したい。




  鍵。鍵……
  とりあえず、この部屋を出たら
  何があるのかさえわからない状態なのに
  反応に見つけられるのか不安でたまらない。

  でも、不安な様子だけは絶対見せない。
  見せたら、彼女も不安になるかもしれないから。

                        ]*

[
 幸か不幸か、私の言葉は相手に届いてない。
 届かないほうがいいのかも、しれない。

 泣きそうになって、
 でも忽那さんの前で泣きたくなくて。
 だから、俯いて泣きそうな目をこすって
 泣いてないって、言い聞かせた。

 ……ああ、質問に答えてもらってばかりで
 私は質問に答えていなかったな、なんて
 そんなことをしながらも思ったから。
 鍵を探す?と言う質問を聞いてから、
 でもその質問にはすぐに答えずに。
                     ]

    …友達は少なかったです。
    私に似た、今でも交友のある人が数人。
    ゲームが好きで、あまり外に出たりはしなくて
    客観的に見れば悪くない学生生活だったはずだけど
    
    ――――……。
 
    
私個人は、楽しかったとは、思っていません。

 

[
 だから、話したくないと思ったし、
 “私”も話したがらなかった。
 それだけ相手の目を見ずに話して
 ようやく顔を上げて、意思を告げる。
                  ]

    探します。
    
貴方と、一緒に。

    …欠けている記憶がどんなものか
    少し、確かめたくなりました。
 
 
    *



   …………楽しかったわけじゃない、か。
   だから話してくれんかったんかぁ……

   …なんか、いじめられたとかはない?




  異様に避けられていた気がしたから、
  似た顔にいじめられていたのかと
  一瞬思ったこともある。
  けれども、彼女の口からそういったものは
  聞いていないので、聞いてみた。
  違うのなら、詳しく話をいたはず。

                    ]






   ありがとう。
   何かあったらいけないから、
   手を繋いでみてもいい?
   嫌なら、何か別のものを
   それぞれを持とうか。




  例えばロープだったり、布だったり。
  はぐれたら見つけられるか
  わからない場所だからそういうものは必要。
  周りを見たら、何かしらはあったはず。

  なければ、道中見つけることにしよう。

                       ]*




[
 話さなかったことに納得している様子。
 いじめられたのかと聞かれれば、
 少し迷って首を振る。
 
 いじめくらい明確なものだったら
 むしろよかったのに
                   ]

    そんなにわかりやすいものだったら
    解決もしやすかったでしょうね。

[
 それだけ言って、口をつぐんだ。
 ただの悪口だ、私が言われたのは。
 
 その悪口にいつまでも縛られている、
 それだけのこと。
 でも、詳しく聞こうとされるなら…
 本当に些細な出来事を話すことになるだろう。
 彼が意図しているだろう学生時代、より前のことを。
                         ]

[
 最初はそう、大したことじゃなかった。
 小学校低学年の時。
 可愛いと思った服を着て登校した時の事。
 たまたま買った場所が同じなのか
 同級生と同じワンピースを着ていったことがあった。
                         ]

    「みつるちゃんには、にあってないから」

[
 似合ってないから着てこないで、と言われた。
 被ってるのが嫌、なんて
 客観的に見るならそんな理由だったのだろう。
 気にしなくていい言葉だったはず、だけど。
 私はそのあとワンピースを着る勇気が出なかった。
 似合ってないなら着ないほうがいい、なんて。
 私は、“ワンピース”が…
 可愛い服が似合わないんだなって思った。
 最初は、その程度だった。
 
 その程度だったけど、私の認識は少しだけ、変わった。
 
可愛く、ないんだなって。

                          ]

[
 自嘲気味に笑って、そんなこといつまでも覚えてるなんて
 変でしょう?なんて言って見せて。
 まだあるけれど…というより
 楽しかったわけじゃない学生時代の話はここじゃない。
 楽しくなかった原因は、この程度の出来事だと
 伝わればよかった。
 いじめとかだと思われてから話せば
 たいしたことないって、言われそうだったから。
 もっとも、すぐ話そうとしてるわけじゃないけど。
                          ]


    ……つなぎ方にも、よりますけど

[
 恋人つなぎくらいは知っている。
 それだったら、まだ無理だな、
 気持ちが追い付いてないからって思ったから。
 普通に手を握るだけならいいって伝わっただろうか。
 恋人だったんならそれくらいはしてるだろうって思えば、
 手をつなぐこと自体には抵抗ない。
 
 それに……

 見知らぬ場所で不安を感じないわけ、ないから。
                        ]*



   ……まぁでも、そうなんよなぁ。
   なんでもかんでも、
   そんな簡単に解決できるもんでもないなぁ。



  彼女が口をつぐめば、とりあえず、と
  彼女に近づいて手を差し出した。
  勿論、普通の繋ぎ方。

  恋人ではない関係に戻っているので
  そこは線引きとして。
  部屋から廊下に出ると見えるのは
  長い長い廊下。
  でも、1ヶ所光が差す場所が見えたような
  気がしたので、彼女に行ってみないかと、
  誘ってみたと思う。

                      ]*




 なんで……


[ぽつりぽつりと知らない風景が流れ出す。俺に見せつけるように。


それは決まってハチヤのいない時ばかりで、見ているだけで気分の悪くなるそれらのどれにも一人の少年が映っている。その顔は、今よりずっと幼いけれど、ハチヤとそっくりだ。あれが本当にハチヤなのか、あれはハチヤの過去なのか。聞いてみたいけれど]


 う、え……


[見るたびに気持ち悪くなる。ハチヤが戻ってくる前になんとかしないと。くたりとベッドに横になって吐き気を堪える。ああ、けれど]



 あれ、旦那ってやつ…?


[最後に見えた風景。ハチヤにそっくりな少年に話しかける見知らぬ男。いつも不安そうな顔をしていた少年が、こらえきれないように笑みを零す、暗い風景の中唯一の]

 ──あー…


[目を開ける。あれがハチヤだとして。あいつが一番になるのは、当然じゃないか?だって一番つらい時期にきっと救いになったのだろう。分かる。けれど


 もそもそと布団に潜り込み、自分の胸に手を当てる。その時に俺がいれば、何かをしてやれたのだろうか。もやりと感じる嫌な気持ち。これは多分あれだ。うん。ということは]



 俺、ハチヤ好きなんだなぁ……

    
    ……忽那さんは、大人ですね。
    いや、同い年だけど……
    
[
 なんとなく、彼の言葉に気苦労と言うか
 そんなものを感じてしまった。
 ……“私”も原因かもしれないけど。

 手を差し出されておずおずと握る。
 普通のつなぎ方でちょっと安心した。
 部屋から出てみれば長い廊下で、
 本当に見知らぬ場所に来たんだと思い知らされる。
 行ってみようという誘いには乗って
 歩きながら少しだけ、聞いてみようか。
                        ]

    忽那さんは…他人の悪口とか
    気にならない人ですか?

[
 まあ、この人そもそも悪口言われるというよりは
 ちやほやされてそうな気が……とか言うのは
 偏見が過ぎるから黙っておこう。
                        ]*

[なんだろう、これは。

俺に見せたいのか?ハチヤは自分のものだと。うるさい知ってる。きっと今でもあいつの一番はこの男のもの。




思い出にどうやったら勝てるのかなんて知らない、知らないからもう見せなくてもいいんだ]