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人狼物語 三日月国


169 舞姫ゲンチアナの花咲み

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   次の日も、その次の日も。
   私は何もする気力も起きなくて
   ただただ、死ぬ方法ばかり考えていた。


   
家にいれば、貴方との思い出ばかり蘇って

   
そのたびに何度も泣いて

   心の痛みを誤魔化すように、
   自分の身体を傷つけ続けた。


   何かを食べても味がしないと気づいて
   食事も疎かになっていって。

   
それでも私は死なないように、生きていた。


   
死ねなかった原因は二つ。

  
  



   一つ目は、貴方が遺した手紙。
   
W数十年後にW
の一言は
   今、死んでも貴方にあえないんじゃないか、
   私にそう思わせたし、

   私が貴方の宝だという一言は
   この命を投げ捨てるのは、
   貴方の宝を投げ捨てるのと同じだと、
   私に思わせたから。

   死のうと体に傷をつけても
   躊躇うような傷で終わったのはそのせい。


          今まで散々貴方の気持ちを
          蔑ろにしてきたから。
          罪滅ぼしにもならないけれど
          それでも、……。


  



   二つ目は……
   あの日にきいた声。
   誰の声か分からない、貴方に似た声。
   その声を、何度か聞いたから。

  
   どうしてかしら。
   誰か分からないはずなのに

   
おしい、と思うの。



   引き止められるように、
   
誰かに生かされるかのように、
私は生きて。

   痛みから目を背けたくて、こう思うようになった。

  

【人】 ウユニ



   
あぁ、私は……。


            
を、見ていたのね。


  
(0) 2022/08/27(Sat) 17:53:20

【人】 ウユニ



   家族に見捨てられた私を、優しく迎え入れて
   普通なら到底受け入れられない病を受け入れて
   私の事を、愛してくれる人と、過ごしていた。

   綺麗だ、と言ってくれたことも
   私の贈り物に喜んでくれたことも
   思い出をなぞるように湖で遊んだことも

   愛を誓いあったことさえも。
   すべて、ゆめだったの。


  
(1) 2022/08/27(Sat) 17:53:59

【人】 ウユニ




         
私の身に余るほどの幸せな、永い夢。

 
(2) 2022/08/27(Sat) 17:54:41

【人】 ウユニ




   いっそ忘れられたらいいのに、
   
手にした想い
のせいで、忘れることもかなわず
   夢をいつまでも忘れられなかった。


 
(3) 2022/08/27(Sat) 17:55:37

【人】 ウユニ



             ✽

             ✽

             ✽
 

  
 
(4) 2022/08/27(Sat) 18:00:45

【人】 ウユニ



    『―――さん。
     おかあさん……?どうしたの?』

  
(5) 2022/08/27(Sat) 18:02:04

【人】 ウユニ



   
―――――また、哀しい夢を見ていた気がする。


   呼ばれて、ふと、現へ意識が引き戻された。
   心配そうにこちらを見つめている子に
   私は優しく笑いかけて。

  
(6) 2022/08/27(Sat) 18:03:01

【人】 ウユニ



    「なんでもないの。
     ……ごめんね、ヴィオラ。
     起こしてしまったかしら。」
   

   まだ、陽が高くない時間、
   幼子が起きるには随分早かったから、
   まだ寝ていていいのよ、と頭をなでた。

  
(7) 2022/08/27(Sat) 18:03:56

【人】 ウユニ



    『ううん。
     もう、ねむくなくなっちゃった。

     おかあさんは……?
     ねてるときのおかあさん、
     ずっと、くるしそうだった。
     だいじょうぶ……?』

 
(8) 2022/08/27(Sat) 18:04:23

【人】 ウユニ



   眉下げて、此方を見つめる目元は
   愛しいあの人に、似ている。
 
   この子は……、ヴィオラは、
   最愛の人の忘れ形見。
   だから似ていて当然なのに、
   数年見続けてもまだ、はっとしてしまう。

   今でも、この子の存在は夢じゃないのか、と
   ヴィオラを見ては
   驚いてしまうことがあるくらいだから
   身籠っていると分かった当時は、
   本当に驚愕したし
   暫くは信じられなかった。


  
(9) 2022/08/27(Sat) 18:05:10

【人】 ウユニ



   でも、我が子の存在を知れば
   死ぬわけにも、この身を蔑ろにするわけにも
   いかなくなってしまって。
   裁縫で生計を立てる術はあったから。
   誰にも頼ることなく、私は子どもを産んだ。
 

  
(10) 2022/08/27(Sat) 18:05:41

【人】 ウユニ



   見とれていたせいで、
   咄嗟に言葉が出てこなくて。
   
大丈夫よ、
と続けようとすれば
   私の言葉にかぶせるように、
   
 
(11) 2022/08/27(Sat) 18:06:26

【人】 ウユニ



    『あのね、おかあさん。

             私は……。』

  
(12) 2022/08/27(Sat) 18:06:51

【人】 ウユニ




         
そばにいるよ



 
(13) 2022/08/27(Sat) 18:07:53

【人】 ウユニ



   優しく響く声が、
   あの時の声と、重なった気がして。>>D73>>D20


   それを聞いた瞬間、
   私の目からは、一筋の涙が零れ落ちた。
   
貴方だったのね。あの時私を引き止めたのは。


   ヴィオラが慌ててこちらを覗き込んで
   小さな手で頬を伝う涙を拭おうとする、
   その手を包み込んで、私は微笑った。

  
(14) 2022/08/27(Sat) 18:08:50

【人】 ウユニ



    「ありがとう。
     嬉しくてつい、泣いてしまったみたい。
     これは悲しいからじゃないのよ。

     だから、お母さんは、大丈夫。」


 
(15) 2022/08/27(Sat) 18:10:13

【人】 ウユニ



    「ねぇ、ヴィオラ。
     もう眠くないなら、
     朝ご飯にしましょうか。

     今日は、素敵な場所へ出かけましょう。」

  
(16) 2022/08/27(Sat) 18:10:32

【人】 ウユニ



   なおも心配そうなヴィオラの気をそらすように
   朝食を作って、食べさせて。

   視力を失った左目を隠すように眼帯をして、
   机に置いてあった仮面を一度、撫でた。
   ヴィオラが生まれてからは、付けていない仮面。
   それは埃一つ被らず綺麗なまま、置いてあった。


   身支度を済ませれば、
   ヴィオラの手を引いて、家を出る。

  
(17) 2022/08/27(Sat) 18:12:49

【人】 ウユニ



   目指すのは、あの日以来訪れていなかった丘。
   行けば、あまりにつらい出来事を
   思い出してしまいそうだったから、避けていた。

  
   久々に来た場所は、
   
花が増えていること以外は

   何も変わっていなかった。 
   吹き抜ける風の心地よさも、景色も。

 
(18) 2022/08/27(Sat) 18:17:56

【人】 ウユニ

   

    「ここはね。
     貴女のお父さんと出会った場所なの。

     
……久しぶりね。」


   
(19) 2022/08/27(Sat) 18:18:20

【人】 ウユニ



    
最後は語り掛けるように呟くと、

    蒼空を見上げて、
    天国そらにいる貴方へ笑いかける。
    つられた様にヴィオラも
    天を見上げて、笑って。

    つながれた小さな手の温もりを感じながら、
    私は密かに誓った。

 
(20) 2022/08/27(Sat) 18:19:35

【人】 ウユニ



    足元に咲く
竜胆

    母娘を優しく見守っていた。**

 
(21) 2022/08/27(Sat) 18:21:19


   幾度も季節は巡って。

   一組の男女が夫婦になった日。
   祝福の鐘の音が鳴り響く。

   
   それを嬉しそうに、
眩しそうに

   見つめていた隻眼の女性がいた。

   彼女は柔らかく微笑むと、
   
夫婦に気づかれないように

   そっとその場を後にした。

  



   女性が向かったのは、街を見下ろせる丘。
   来るまでに着替えて来たのか、
   白いドレスを身にまとって
   白い薔薇の花束を手にした彼女は
   周りに花々が咲き誇る
   木の根元に
寄り添うように
腰を下ろして。

  



    「この身も、魂も。
     全て朽ち果てるその時まで……

        私は、貴方を愛しているわ。」


   



       誓いを風へと乗せた女性は、
            眠るように、目を閉じた。