167 【R18G】海辺のフチラータ【身内】
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「………どうしていつも、こうなるんだか」
「今更な事だ。ああ、わかってたさ……」
「Sentite condoglianze」
──カシャン、軽くも重い金属音がまたひとつ。
「器用そうな顔してるのに」
なんて。雑踏に溶けるようにして、くすくすとちいさく喉が鳴る。
人混みの中にあっても長躯のあなたはよく目立つから、こちらからは見失う心配もないのだけれど。
小柄な少年は人波に流されそうにもなるものだから、つい、手が出たのだった。
屋台のそばへ寄れば、一層、香ばしさが鼻腔をくすぐる。
耳を楽しませるのは、肉の焼けるよい音。
「ん――」
迷うように、うろ、うろ。
看板に視線を這わせて。
「じゃあ……これにする」
ぴ、と指し示すのは、ウインナーの串。
| >>0 ヴェルデ【街中】 【よろしい】と言葉にはせず、ただそうであろう態度で首肯する。 ふん、と軽く鼻を鳴らすと、持っていた傘を閉じて、あなたにずいと差し出した。 「ん」「何がいい?」 (1) 2022/08/14(Sun) 22:34:45 |
――情報屋が、死んだ。
幾らかの情報を渡したのは、事実。
けれど、いずれも彼の命を縮めるものではなかった筈だ。
何故という疑問。
そして、それ以外の死者も。
それもノッテばかりに。
狙われている……?誰に?
何故という疑問。
ボスが倒れたのを契機にアルバが攻勢を強めている?
アルバにノッテの怒りが向かうよう仕向けている?
疑問、疑問、疑問。
分からないことだらけだ。
手を、引くべきだろうか。
いや、もっと早く引くべきだったのかもしれない。
Rrr...Rrr...
電話が鳴る。電話が鳴る。
電話に、手を――
| >>14 ヴェルデ【街中】 当然のように渡すのだから、当然のように歩きだす。 かつ、と真っ直ぐに石畳に突きつけられる靴底は甲高い音を立てる。 どことなく誇らしげで、 ――どことなく、自らを奮い立たせるようだった。 「揚げ物はちょっとな。 串焼き」 振り返ると、細い飴細工のような指を突き出す。 朱色の 爪の隙間には、 小さく折りたたまれたユーロ紙幣がはさみこまれていた。 「買ってきて。任せるから」 こういう時に、あなたの分もしっかり買わないともう一度使い走りをさせられる。 あなたが学んだことだ。 (21) 2022/08/15(Mon) 12:59:39 |
うろうろと視線をさまよわせる様子をやはり笑みを浮かべて見ている。
たくさんのものから一つを選ぶというのは、簡単なようで難しい。どれがいいのか、何が決め手か、どうしてそう思ったのか。選択は経験の積み重ねだ。与えられるものを受け入れるだけでいては、些細なことも選び取れなくなる。
「ん、いいね。おいしそうだ」
「それだけでいいの? 君、放っておいたらすぐ食事を忘れるだろう」
彼女に聞いたのか、それとも個人的に知っているのか、そんなことを付け加えた。
上から見る項は細く、成長期の少年にしては肉が足りない。
| ビアンカは、本当にいいたいことなんて何一つ言わない。 (a8) 2022/08/15(Mon) 17:38:55 |
| >>25 ヴェルデ【街中】 あなたが人の波をかきわけ、屋台であれこれと会話をする姿を、 ビアンカはゆるく腕を組み、両足を確りと石畳に打ち付けるようにしてただ、見ていた。 それは日本語に堪能なものは、この街には少ないのだから、その表現が使われることはあまりないのだけれど── 仁王立ちというにふさわしいような姿だった。 「ん」 あなたが釣銭を持ってきたのなら、またよろしい、と頷いて、それを受け取る。 それをどこかしら、おそらくは服の隙間に拵えられた隠しポケットの類──にひょいと放り込めば、 掌を空にしたままであなたの先を歩きだした。 「行くよ」 ふうわり、と、スカートが膨らみ、踊る。 細く長い足が、かつかつとまた音を奏でだす。 あなたはさきほど、人波を縫うように歩いたけど。 彼女は人並みの真ん中を、相手が退くのが当然といわんばかりに歩くのだ。 (27) 2022/08/15(Mon) 20:43:21 |
少年は、選ぶことがあまり得意ではない。
これまであまり、選択肢を与えられてこなかったから。
けれど今は、そうではなくて。
だから、少しずつものを選ぶことを覚えている途上だ。
「……だって、ジェラートも食べるんだろ」
頼りなく薄い身体は、食の細さも影響している。
が、食べないとビアンカが怒るし、あなただってこうして気にする。
これもまた、意識を変えている途上のことだった。
「あんたはどうするの。
不器用だって言うなら、食べやすいのがいいよな」
と言って、どれがいいかわかるわけでもないけれど……。
会ったばかりの頃の君のことを覚えている。
今よりもっと人形のようで、痩せて色の悪い肌をしていた君のこと。それこそ捨てられた子猫のようでいたのだ。その頃から考えれば、随分よく育ったものだ、とは思うが。
「食べるけど……足りるかい。成長期だろ?」
「ああ、それともほかのものがいい? 向こうにパン屋が出張してるのを見たし、あっちにはスープが……」
何くれとお節介を言う男はまるで子煩悩な父親のようですらある。
「僕もソーセージにしようかな」
「もうひとつの……こっち。辛いんだって」
棒切れのような手足をしていた頃に比べれば、今は随分と血色もいい。
こうして陽の下で見れば、夜な夜な街路に立っているとは想像もつかないふつうのこども。
だからそう、少年にとっては、既に身に余るほどなのだけれど。
「……あ〜、わかった。
じゃあ、スープも飲む。それでいいだろ」
根負けしたように言う。
触れられたわけではないのに、撫でられるときに似た、すこしくすぐったいような感覚。
ふるりと金色の髪を揺らして、屋台の主へ向き直る。
「辛いのって、大丈夫か?
まあ、食べらんなかったらおれのと替えればいいか……」
独り言ちるようにこぼして、店主へ注文を。
そうして、財布から自分の分を支払う。
| >>48 ヴェルデ【街中】 あなたが後をついてきているか、スニーカーの靴音でしか確かめない。 それでもときたま、曲がり角にさしかかるたびにぴたりと脚をとめ、 軽い足音がついてくるのをじっと待っている。 緩くくくった髪が歩くたびに揺れて、 あなたの足音が遠ざかるたびにぴたり、と止まって。 「ねえ、旅行は好き?」 そんな様子なのだから。 彼女がそう呟いた言葉があなたにむけられた言葉なのかどうか、すぐは判断がつかなかった、かもしれない。 (49) 2022/08/16(Tue) 19:28:12 |
| >>52 ヴェルデ【街中】 「あんた以外誰がいるの」 目線すら送らず、けれど呆れたようにそう返す。 察しろというのも無理な話なのだが。 「旅行するってなったら、どう? って聞いてるの」 あなたの声と足音を確認して、また歩き出す。 かつ、かつ、かつ。 石畳の音は、ペースを崩すことなくまた響きだす。 (54) 2022/08/16(Tue) 22:05:13 |
| (a23) 2022/08/17(Wed) 0:10:22 |
| >>62 ヴェルデ【街中】 「そ」 そっけなく。 けれど、あなたが答えてすぐに、彼女は頷いて。 「それじゃ、旅行に行きなさい」 かつ、と。 石畳を踏む足音が、止まった。 ビアンカはあなたの前で立ち止まって、ぐるうり、と振り返り。 「旅費はまた、貸しとくわ」 なんて勝手な女なのだろう。 (63) 2022/08/17(Wed) 0:55:29 |
| >>68 ヴェルデ【街中】 なんで、と聞かれても、 すぐに明確な返答は帰ってこない。 ただ、 「いや?」 と、首を傾げて。 ↓[1/3] (71) 2022/08/17(Wed) 12:28:17 |
| >>68 >>71 ヴェルデ【街中】 「――――――――、……」 ぽつり、と強張った顔で零されたその言葉に、 どのような感情が込められているのか。 それはとても簡単で、とても難解なといかけだ。 通り過ぎていく車が、彼女の髪をふわり、と揺らして。 「……いいならいい」 こちらを向いていた顔がまた、くるりと前へと消えていく。 [3/3] (72) 2022/08/17(Wed) 12:31:45 |
僻地の廃倉庫。
今日もがらんとしたその場所に響くのは、
やはり小さく無機質な音だけだ。
手入れを終えた『仕事』の道具を元の場所へと戻す。
明らかに通常業務の範疇を逸脱したその仕事を引き受けたのは、
一言で言えばただ、断る理由が無かったから。
飾り気の無いランタンの明るすぎない灯りの下、
懐中時計の針でその時が来た事を確かめて。
そうして今日もまた、廃倉庫は静けさに包まれる。
| (a38) 2022/08/17(Wed) 20:08:51 |
| (a39) 2022/08/17(Wed) 20:09:10 |
| (a40) 2022/08/17(Wed) 20:09:23 |
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