【人】 雅楽 雅 [1.2.3……緊張に強張る身体を騙すように頭の中で数える。 じわりと背中や手が汗ばむのは飲んでいる薬の副作用のせい だと言い聞かせ唾を呑み込んだ。 運転手に向ける(チップは渡さないと)意志の籠った瞳。 背後でホテルの自動ドアが開く音が聞こえる。>>412] (誰か、来た…?) [視線は逸らさないままに、神経を集中させる。 ホテルの従業員が助けに来てくれたのだろうか。 お待ちしておりました、雅樂様とか声がかかれば この運転手も諦めてくれるかな、とか考えて、 流石にそんな都合良くいくわけないと甘い考えを 打ち消していると、その気配は私のすぐ傍に立っていた。] …え?あ、はい。払われている筈… 預けた荷物はこのスーツケースだけです。 [運転手と対面する気配に耳打ち問われることに応える。 今回の懸賞には宿泊代の他に、このハイヤーでの送迎も 含まれていた。 そもそも、含まれていなかったら頼まない、頼めない。] (435) 2020/07/25(Sat) 11:34:47 |
【人】 雅楽 雅…… [物語のように現れた救世主をそっと窺い見る。 びっくりするくらい綺麗な顔立ち。 本来の私の人生の中では絶対、関わり合うことはないだろう レベルの容姿。 や、容姿は好みによるものだけど、それでも、それなのに、 なぜだろう。どこかで会ったことがあるような。] うた みやび 『こう書くの、雅 樂雅。 上から読んでも下から読んでも一緒の名前。 新聞紙と一緒。』 [フラッシュバックのように過去の光景が脳裏を過る。 綺麗な救世主に睨まれた運転手はどこか決まりが悪そうに 去っていく。] (436) 2020/07/25(Sat) 11:34:50 |
【人】 雅楽 雅──良かっ た…。 [エントランスから出ていくハイヤーを見送れば心底 安堵したように表情を和らげ、やたら大きなスーツ ケースを手に改めて救世主に向き直り、] ありがとうございました。 [深々と頭を下げた。*] (437) 2020/07/25(Sat) 11:34:53 |
【人】 雅楽 雅 [気恥ずかしそうに下げていた頭を上げる。 それなりに見えるようにしようと思って来たのに、 こういう時の感謝を伝える優雅な振舞いがどういったもの なのかわからない。 早速、場に慣れていない無知な所を晒している。 人生で初めて味わいに来た非日常は、初っ端からこんな ドラマに溢れているというの? そう、こんな風に助けられるだけで、もう十分、 あり得ない展開だったのに、目の前で微笑む青年が 私の名前を口にするなんて。>>450] …え。 [頬を掻く様子を呆けたような顔で見つめる。 比喩ではなく、本当に頭が真っ白になって呆けていた。] (470) 2020/07/25(Sat) 13:45:58 |
【人】 雅楽 雅名前は違ってないけ ど… [お姉ちゃんって呼ぶ知り合い居たっけ。 無職引きこもり、昨年は殆ど入院生活を送っていたし、 その前も、職場でもそんなひと一人も。 それこそ昔々、小、中学生くらいの頃、懐いてくれた 実家近くに住んでた子くらい。 かわいかったな、あの子。 でもでもまさか、そんなことってある?] ……もしかして、麗央くん? [可能性を打ち消しながらも、声を潜めるようにして 内にある僅かな可能性を口に零した。*] (471) 2020/07/25(Sat) 13:46:00 |
【人】 雅楽 雅[あの頃、近所では私が一番年長で、他の子達と比べて 私だけ頭ひとつ年が離れていた。 授業で作ったものを学校から持ち帰ると、決まって欲しい と強請られたりして。 絵とか粘土とか地球儀、女の子には刺繍入り巾着とか 手袋をあげたかな。 当たり前のように信頼されて慕われることが嬉しかった。 私が人間関係を上手く築けないのは、機能不全家族の中で 育ったからと自己分析してたけど、あの頃は、あの子達とは そんなことなく心から純粋に関われていたような気がする。] …そう?って、だから、いつと比べてるの。 [無邪気に体型を指摘する麗央くんにつられて、自身の身体 を確認しかけて、ハっとして突っ込みを入れた。] してないしてない、食べてるよ。 痩せて見えるだけで体重はあるから。 [そういう、なんか病気っぽい雰囲気出てるのかな。 独特の匂いがあるっていうのは聞いたことあるけど、] (529) 2020/07/25(Sat) 16:32:15 |
【人】 雅楽 雅………なんか病気っぽく見える? [つい尋ねて、慌てて、無理なダイエットしてそうな。 と補足を付け加えた。] 麗央くんのほうこそ、どうなの? というか、このホテルに泊まってるの? [こんな高そうなホテルにと言外に告げながら、 自動ドアの向こうの豪華なロビーを見遣る。 元から芸能関係にはとてつもなく疎い上、もうずっと テレビすら見ていなかったから、彼の今の仕事のことも 知らなかった。*] (530) 2020/07/25(Sat) 16:32:18 |
雅楽 雅は、メモを貼った。 (a123) 2020/07/25(Sat) 16:46:34 |
【人】 雅楽 雅……2度と会えない、 会ったとしてもわからないだろうなって思ってた。 [言葉を交わすごとに少しずつ、再会が実感を伴って 胸の鼓動も表情も緩やかに解けていく。>>540 あの時、離れたくないと泣き喚く少年の麗央くんの頭を、 2度と会えないわけじゃないからと大人ぶって撫でた。 また会えるよって、大きくなったらまた会おうねって 出任せにそう言って、零れる雫を拭った。 さよならを受け入れて貰えないから、来ないいつかを 示して、またね、って別れを告げた。 子供のころの別れなんて、新しい出会いに塗り替えられる。 そのうち忘れるだろうって、] ──────大きく、なったね…。 [そんな最後に会った時を思い浮かべて、 感慨深げに私は目を細めた。] (577) 2020/07/25(Sat) 20:37:17 |
【人】 雅楽 雅それなら、よかった。 [痩せたと言われて少し不安になっていた表情が明るく なる。退院してから測ってないけれど、食べられるときに 食べなきゃって以前よりも食べるようになったとは思って いる。 それでも変わってしまった部分もあったから、 心配だった。 ]…あ、うん、ありがとう。 そんな風に誉められるの慣れてないから恥ずかしいけど。 でも、どっちかと言うと、麗央くんのほうが綺麗だよね。 [ストレートな言葉は聞き流すようにしても頬を熱く して、麗央くんの予定が自分と同じだと分かれば、 やっぱり顔が綻んでしまうのはもう、嬉しいものは 嬉しいのだから仕方ない。>>541] そうなの。 メルマガの懸賞に応募したら当選して……え? 奢るって……、え、待って。 いやだって、でもここ、 絶対凄く高いよ?! (578) 2020/07/25(Sat) 20:37:22 |
【人】 雅楽 雅 [根からの貧乏性が顔を出して声が大きくなった。 いくら働いていると言ったってさ。 いや、こういうホテルの食事の相場、知らないけど でも!] あ……すみません。 [いつの間にか来ていた出迎えのホテルの人に謝る。 聞かれた?聞こえた?!とドギマギしながら、 促しに応じて荷物を渡せば、本当に自然に麗央くんから 片手が差し出された。] (え、えー!何これ、本当に? 私、パラレルワールドに迷い込んでない?!) [お姫様という王子様のような麗央くんに内心でわーわー 叫びつつも] …あ、ありがとう。 よろしくお願いします。 [それを隠して恐る恐る静かに彼の手に 自分のそれを乗せたのだった。**] (579) 2020/07/25(Sat) 20:37:25 |
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